週刊3Dプリンタニュース

曲がる新素材が近日登場、「着られるドレス」も制作可能に

~日本初の3Dプリントものづくりマーケットが誕生~

 今週の週刊3Dプリンタニュースは、3Dプリンタで利用できる新素材とそれを使って作ったドレスの話題、そして、3Dプリンタを使って個人でも制作物が販売できる日本初の3Dプリントものづくりマーケットに関するニュースをお届けしたい。

MakerBot、新開発の曲がるフィラメントでドレスを制作

曲がるフィラメントを使って制作されたドレス「Verlan Dress」
この複雑な形状を作れるのは、3Dプリンタならではだ
Verlan Dressを構成するパーツの分割図。すべてReplicator 2を利用して造形されている

 パーソナル3Dプリンタ「Replicatorシリーズ」で有名なMakerBotは、6日、新開発の曲がるフィラメントを用いてドレスを制作したことを発表した。このドレスは、ニューヨークファッションウィークにあわせて制作されたもので、デザイナーのFrancis Bitonti氏が率いるチームによってデザインされた。

 このドレスは「Verlan Dress」と名付けられており、MakerBotより近日発表予定の新素材「Flexible Filament」を利用して制作されていることが特徴だ。一般的なFDM方式のパーソナル3Dプリンタでは、材料としてABS樹脂またはPLA樹脂が用いられるが、ABSもPLAも固い樹脂であり、ゴムのような弾性は持たない。それに対し、Flexible Filamentは、ポリエステル樹脂をベースとしたフィラメントであり、PLAやABSに比べて弾力があるという。実際に人が着て動くためのドレスは、弾性を持った自由に曲がる材料で作る必要があるが、これまでFDM方式の3Dプリンタでは、弾性を持った材料を使うことはできなかった

 今回制作されたVerlan Dressは、全部で59個の部品から構成されているが、そのうち39個の部品がFlexible Filammentで、残りの20個がPLAで造形されている。3Dプリンタとして、同社のReplicator 2が2台用いられ、造形にかかった時間は400時間程度とのことだ。Flexible Filamentは、直径が1.75mmであり、同社のReplicatorシリーズ以外のFDM方式のパーソナル3Dプリンタでも、ヘッド温度などのパラメーターを調整することで利用できる可能性が高い(もちろん、ユーザーの自己責任になるが)。。Flexible Filamentの登場により、FDM方式の3Dプリンタの応用範囲がさらに広がることになるだろう。

 Flexible Filamentについての詳しい情報は、専用フォームにメールアドレスを登録することで配信される予定になっているので、興味がある人は登録してみてはいかがだろうか。

日本初の3Dプリントものづくりマーケット「rinkak」が正式オープン

 株式会社カブクは、9月10日、3Dプリントものづくりマーケット「rinkak」の正式版サービスを開始した。

 rinkakは、3Dプリンタを活用したまったく新しいものづくりマーケットであり、3Dデータさえ作れば、誰でもプロダクトを製造販売するメーカーになることができるというものだ。rinkakは、6月19日にクローズドβ版の事前登録が開始され、クローズドβサービスが行われていたが、この度、晴れて正式版サービスが開始されることになった。

 rinkakでは、あらかじめ登録済みのクリエイターが作った3Dデータをアップロードし、そのデータからプロダクトを製造販売できるので、3Dプリンタなどの製造設備を持っていなくてもメーカーになれることが魅力だ。造形に利用できる素材のバリエーションは全30種類以上と充実しており、プラスチックはもちろん、陶器や金属、ラバー、石膏など、さまざまな素材を選べる。また、プロダクト・リミックス機能やコミュティ機能のような、クリエイターやユーザー間でのコラボレーションが生まれることを目的とした機能も搭載されている。

rinkakでの製造の流れ。データを作って製造物を販売できる

[イベント紹介] デザイナーが本音トーク「3Dプリンターはデザイナーにとって本当に有効なツールなのか?」

 9月27日に東京ミッドタウン・リエゾンセエンターにおいて、「第6回JIDAプロダクトセミナー 3Dプリンターはデザイナーにとって本当に有効なツールなのか?」と題した、セミナーが開催される。

 セミナーを主催するJIDA(公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会)は、イン ダストアルデザイナー唯一の全国組織で、インダストリアルデザインの職能の確立と向上のために、さまざまな活動を行っている。今回のセミナーは、最近、過剰なブームにもなっている3Dプリンタがインダストリアルデザイナーにとって、実際にはどれだけのメリットがあるかということについて、日本のラピッドプロトタイピングの第一人者である原雄司氏と、実際に3Dプリンタを導入して活躍しているプロダクトデザイナーの澄川伸一氏の二人が、本音のトークセッションを繰り広げるというものだ。初心者向けセミナーでありがちな「3Dプリンタを導入すれば万事解決!」ようなものとは一線を画す、濃い内容になりそうだ。

 本セミナーは、JIDA会員だけでなく一般の人や学生も聴講できるので、実務に即した3Dプリンタの話をききたいという人は、以下のURLから申し込んでみてはいかがだろうか。

(石井 英男)