PCパーツ名勝負数え歌
SSDはプラットフォームで性能が変わるのか? Intel/AMDの4環境で試したところ驚きの結果に
【第17戦・番外編】PCIe Gen 5/4対応で異なる仕様の製品でクロスチェック text by 芹澤 正芳
2025年12月8日 09:00
ウィー! どうも芹澤正芳です。みなさんはプラットフォームでSSDの性能に差は出るのだろうかと考えたことはないだろうか。私はある。ということで、今回は「PCパーツ名勝負数え歌」の番外編として実際にテストを行っていく。大仁田厚と蝶野正洋が電流爆破デスマッチをやったらどうなるのかに近い感覚と言えよう。ちなみに、こちらは1999年4月10日の新日本プロレスの東京ドーム大会で実現している。
用意したプラットフォームは、IntelがCore Ultra 9 285K+Z890チップセットとCore i9-14900+Z790チップセット、AMDがRyzen 7 9800X3D+X870EチップセットとRyzen 7 5700X+B550チップセットの合計4種類の環境だ。
SSDもPCI Express Gen 5最速クラス、Gen 4のハイエンド、エントリーなどバリエーション豊かに4種類を用意。インターフェースやNANDの種類によっての変化も見てみようというわけだ。
新旧“上位”4プラットフォームで各種SSDの性能を比較
では、テスト環境を紹介しよう。以下のとおりだ。
| 【Z890環境】 | |
| CPU | Intel Core Ultra 9 285K(24コア24スレッド) |
| マザーボード | MSI MAG Z890 TOMAHAWK WIFI(Intel Z890) |
| メモリ | Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G60C36U5B(DDR5-6000 16GB×2) |
| 【Z790環境】 | |
| CPU | Intel Core i9-14900(24コア32スレッド) |
| マザーボード | ASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790) |
| メモリ | Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G60C36U5B(DDR5-6000 16GB×2) |
| 【X870E環境】 | |
| CPU | AMD Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド) |
| マザーボード | ASUS ROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E) |
| メモリ | Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G60C36U5B(DDR5-6000 16GB×2) |
| 【B550環境】 | |
| CPU | AMD Ryzen 7 5700X(8コア16スレッド) |
| マザーボード | MSI MPG B550 GAMING PLUS(AMD B550) |
| メモリ | Micron Crucial DDR4 Pro CP2K16G4DFRA32A(DDR4-3200 16GB×2) |
| 【共通環境】 | |
| システムSSD | Micron Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB) |
| ビデオカード | MSI GeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OC (NVIDIA GeForce RTX 5060) |
| CPUクーラー | Corsair NAUTILUS 360 RS (簡易水冷、36cmクラス) |
| 電源 | Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1 (1,000W、80PLUS Gold) |
| OS | Windows 11 Pro(24H2) |
SSDはCPU直結のM.2スロットに装着し、ヒートシンクを標準搭載しているSSD以外はマザーボード付属のヒートシンクを利用した。バラック状態でテストを行っているが、M.2スロット後方に12cm角ファンを設置してSSDの冷却を強化し、サーマルスロットリングが起きにくいようにしている。
1世代前のZ790は各ベンチマークテストで好調な結果を見せる
今回のテストには、ストレージの性能比較では定番と言えるデータの転送速度を測定する「CrystalDiskMark 9.0.1」、オフィスワーク、クリエイティブワーク、ゲームなどさまざまな処理をエミュレートしてアプリへのレスポンスのよさを見る「PCMark 10」の「Full System Drive Benchmark」、ゲームのロードやコピー、録画しながらのプレイなどゲームに関する多彩な処理をエミュレートする「3DMark」の「Storage Benchmark」を使用した。
まずはCrystalDiskMark 9.0.1で各チップセットの傾向を見ていこう。1台目に用意したのは、1世代前の製品ではあるもののGen 5対応でも最速クラスであるMicron「Crucial T705」の2TBモデル(CT2000T705SSD5)だ。公称シーケンシャルリード14,500MB/s、ライト12,700MB/sで232層TLC NAND、キャッシュ用のDRAMも搭載というハイエンド仕様だ。

Core UltraとZ890チップセットの組み合わせは12,000MB/s前後までしか出ないと言われているが、その話のとおりの結果が出た。B550チップセットはGen 4までの対応なので7,500MB/s前後で頭打ちとなる。シーケンシャル性能ではX870Eがトップだが、ランダム性能ではIntel系のチップセットが強い傾向となった。
2台目のSSDはGen 4対応となるMicron「Crucial T500」の2TBモデル(CT2000T500SSD8)だ。公称シーケンシャルリード7,400MB/s、ライト7,000MB/sで232層TLC NANDを採用、キャッシュ用のDRAMも搭載。こちらも後継機が発売中だが、今もGen 4トップクラスの性能を持つ。

AMD系はシーケンシャル性能に優れ、Intel系はランダム性能が高いというGen 5以上にプラットフォーム別の傾向がハッキリ出た。AMDだけに目を向けるとランダムリードはB550がわずかに上回るが、ランダムライトではX870Eが約1.5倍も高速だ。AMD内でも傾向が出ている点に注目したい。
3台目は同じくGen 4からSandisk「WD_BLACK SN7100」の1TBモデル(WDS100T4X0E)だ。公称シーケンシャルリード7,250MB/s、ライト6,900MB/sでTLC 3D NANDを採用する。DRAMレス仕様なので手頃な価格ながら高い性能を持っており、人気が非常に高い。手持ちの都合で容量が1TBとなったが、今回のテストの趣旨としては、基本的な傾向は把握できる。

Crucial T500と同じ傾向だ。シーケンシャルはAMD系、ランダムはIntel系が強い。DRAMレスのSSDでも傾向に変化はなかった、という点が重要だ。
4台目はGen 4からSandisk「WD Blue SN5000」の4TBモデル(WDS400T4B0E)だ。公称シーケンシャルリードは5,500MB/s、ライトは5,000MB/sで、QLC 3D NANDを採用する。4TBの大容量、DRAMレス、QLCとこれまでの3台とまた違う属性を持つ製品だ。

それほど高速仕様というわけではないため、シーケンシャル性能ではあまり差は出なかったが、ランダム性能についてはこれまでの3台と同じくIntel系が強いという傾向だ。それぞれスペックが異なる4台を用意したが、CrystalDiskMark 9.0.1ではほとんど同じ傾向が出ている。これがプラットフォームごとの特徴と言ってよいだろう。
では、PCMark 10のFull System Drive Benchmarkと3DMarkのStorage Benchmarkではどうだろうか。このテスト結果はSSDとチップセット別の結果を1つにまとめている。


PCMark 10と3DMarkはすべてのSSDでスコアのよい順にZ790、Z890、X870E、B550となった。アプリの処理はランダム性能が重要になる場合もあるため、Intel系のチップセットが強い結果だ。なかでもZ790は、PCI Express 5.0 x16レーンを分割してのGen 5対応が低レイテンシーにつながっているのか、特に強かった。
誰もが体感できるほどの差ではないものの、なんとも“モヤる”結果ではある
特定チップセットだけ異様に強いというようなSSDが出てきたらどうしようとも思っていたが、プラットフォーム別の傾向はどのSSDでも同じだったのは安心した。同じプラットフォームを使う限り、SSDの性能比較に問題がないと分かったからだ。それだけでも今回のテストを行った意義があったと言えよう。また、誰が見ても明らかなほど体感できる大差ではないというところも、ひとまず許容できるところではある。

とはいえ、である。Crucial T705でのPCMark 10の結果だけ取り出して見比べると、Z790はX870Eの約1.4倍ものスコアだ。通常のPC利用において旧世代プラットフォームがトップに立ってしまったのは少々複雑な気持ちにはなる。SSDに着目した場合の話ではあるが、Z790は、1990年代初頭に全日本プロレスで超世代軍に立ちはだかったジャンボ鶴田やスタン・ハンセンと言えるのかもしれない……。










