週刊3Dプリンタニュース

製図機器の「ムトー」が作った国産3Dプリンタが登場

~MakerBot「Replicator」が3モデル発表~

 1月最後の週刊3Dプリンタニュースは、国産パーソナル3Dプリンタの新製品と「2014 International CES」で発表されたMakerBotのパーソナル3Dプリンタ「Replicatorシリーズ」の新製品について紹介する。

製図機器の「ムトー」が作った国産3Dプリンタが登場「Value 3D MagiX MF-1000」

Value 3D MagiX MF-1000の外観
Value 3D MagiX MF-1000の造形中の様子。冷却ファンが2つあり、両側から冷却する

 株式会社ムトーエンジニアリングは、パーソナル3Dプリンタ「Value 3D MagiX MF-1000」(以下MF-1000)の販売を1月6日に開始した。価格は210,000円。

 同社は、設計・製図機器やCADソリューション事業を展開している会社であり、大型業務用プリンタ製造に関するノウハウも持つ。MF-1000は、同社が業務用プリンタのノウハウを生かして自社開発したパーソナル3Dプリンタであり、既存のパーソナル3Dプリンタの問題点をクリアするためにさまざまな工夫が施されていることが魅力だ。3Dプリンタで製造の高い造形を実現するには、筐体の剛性が重要なポイントとなる。MF-1000は、高剛性ボディとZ軸両持ちテーブルを組み合わせることで、高精度な造形を可能にしている。

 本体サイズは、550×500×530mm(幅×奥行き×高さ)とかなり大きく、サイズ的には3D SystemsのCube Xに近い。最大造形サイズは、200×200×170mm(幅×奥行き×高さ)で、Cube Xよりは小さいが、パーソナル3Dプリンタとしては大きいほうだ。ヒーテッドベッドを標準装備しており、PLA樹脂だけでなくABS樹脂による造形も可能だ。ただし、パーソナル3Dプリンタでは、直径1.75mmのフィラメントに対応していることが多いが、MF-1000は、標準では直径3mmのフィラメントを利用する(ヘッド交換により直径1.75mmにも対応可)。積層ピッチは最小0.1mm、最大0.5mmである。

 ヘッドは1個だが、ヘッドの両側に冷却ファンを搭載していることがポイントだ。このダブル冷却ファンにより、出力された造形物を適切な温度に素早く冷却し、樹脂を硬化できるため、オーバーハングが厳しい形状でも、ある程度まではサポート部分不要で造形できるとのことだ。また、筐体はアクリルカバーで覆われており、周囲の風の影響を受けずに安定した造形が可能である。

 スライスソフトとしてはオープンソースの「Slic3r」を、プリンタ制御ソフトとしては同じくオープンソースの「Pronterface」を利用する。どちらも日本語化されたものが同社のWebサイトからダウンロードできるので、英語が苦手な人でも安心して利用できる。

【Value 3D MagiX MF-1000の動作】

Replicatorシリーズが3モデル登場、小型と大型がそれぞれ追加確認用のカメラも装備

 MakerBotのパーソナル3Dプリンタ「Replicatorシリーズ」は、パーソナル3Dプリンタの代名詞的な存在であり、年々進化を続けている。2004 International CESで、MakerBotは3Dプリンタ関連の新製品や新サービスの発表を行ったが、その中からパーソナル3Dプリンタの新製品について紹介する。

 今回、MakerBotはReplicatorシリーズの新製品として「Replicator Mini」、「Replicator」、「Raplicator Z18」の3機種を発表した。

小型で安価な「Replicator Mini」

コンパクトモデル「Replicator Mini」

 Replicator Miniは、その名の通り、コンパクトなパーソナル3Dプリンタであり、初心者にも気軽に使えるように設計されている。

 最大造形サイズは、100×100×125mm(幅×奥行き×高さ)とやや小さいが、いくつかに分割して造形を行えば、大きなパーツも造形可能だ。ヒーテッドベッドは備えておらず、PLAに最適化されている。最小積層ピッチは0.2mmで、プラットフォームの高さ調整が不要なことも利点だ。

 エクストルーダーには、最新の「Smart Extruder」が採用されている。Smart Extruderは、フィラメント切れを検出する機能を備えており、フィラメントが切れると自動的に造形を一時停止し、PCやスマートフォンなどに通知する機能を備えている。また、カメラを搭載しており、造形中の様子を離れた場所のPCやスマートフォンから確認できるのも便利だ。Replicator Miniの価格は1,375ドルで、2014年春に出荷が開始される予定だ。

標準モデルは新「Replicator」、無線LANも搭載

MakerBotの第五世代製品に当たる「Replicator (5th Generation Model)」

 「Replicator」は、Replicator 2の後継製品だが、Replicator 3ではなく、単にReplicatorという名前になった。

 この新Replicatorは、同社の第5世代にあたる製品であり、初代Replicatorと区別するために、Replicator(5th Generation Model)とも呼ばれる。新Replicatorの最大造形サイズは199×252×150mm(幅×奥行き×高さ)と、現行のReplicator 2の153×285×155mmに比べて、11%ほど大きくなっている。新Replicatorは、3.5インチカラー液晶や大型操作ダイアルを備えており、スタンドアロン動作時の使い勝手がより向上していることが魅力だ。

 インターフェースも、USBメモリやUSBケーブルだけでなく、イーサネットや無線LANにも対応。クラウドから直接無線LANやイーサネット経由で造形データをダウンロードすることも可能だ。こちらもPLAに特化した製品で、最小積層ピッチは0.1mmとなっている。また、Replicator Miniと同じく、新型のSmart Extruderやカメラを搭載しており、トラブルも少なくなったという。新Replicatorの価格は2,899ドルで、2014年2月に出荷が開始される予定だ。

「18インチ対応」の大型モデル「Replicator Z18」

MakerBotの新製品「Replicator Z18」。人が被るヘルメットなども一度に造形できる

 3つめの新製品「Replicator Z18」は、一般的なパーソナル3Dプリンタの最大造形サイズでは物足りないという人向けのハイエンドモデルである。

 Z18の18という数値は、高さ18インチ(約45cm)のものまで造形できるということを表しており、最大造形サイズは305×305×457mm(幅×奥行き×高さ)と非常に大きく、業務用3Dプリンタのエントリー機と比べても見劣りしない。パーソナルユースだけでなく、業務での筐体試作などにも利用できるだろう。

 最小積層ピッチは0.1mmで、新Replicatorと同じくPLAに最適化されている。Smart Extruderやカメラを搭載していることも、他の新製品と同じである。

 サイズの大きな造形を安定させるために、造形エリアが覆われており、内部をヒーターで温める仕組みを採用していることも特徴だ。Replicator Z18の価格は6.499ドルで、2014年春に出荷が開始される予定だ。

(石井 英男)