週刊3Dプリンタニュース

オートデスクの無料3Dアプリ「Autodesk 123D」ファミリーを使いこなそう(後編)

~iPadが3Dスキャナになる「iSense 3D Scanner」が3D Systemsから登場~

 前回前々回で、オートデスクが提供している無料3D関連アプリ群を紹介してきたが、今回は、後編として残りの3D関連アプリを紹介する。また、「2014 International CES」で発表された、3D Systemsの低価格3Dスキャナについても紹介する。

 アプリの一覧については前々回分を参照のこと。

指でなぞって使うiPad用3Dモデリングソフト「123D Sculpt」

まず、ベースとなる形を選択する。ここでは、クリーチャーの中から犬を選択した
次に、左のアイコンで機能を選択し、モデルを指でなぞって、変形させていく

 123D Sculptは、iPad用の3Dモデリングソフトで、粘土細工や彫刻のような感覚で、モデリングを行えることが特徴だ。

 最初にベースにする形を選択し、それを指でなぞって、削ったり、膨らましたりして、形を作っていく。ベースとなる形は、クリーチャー(人間や動物)、幾何学形状、その他オブジェクトの3つのカテゴリに分類されており、例えば、クリーチャーなら、人の頭や人体、犬、フクロウ、象などのベースが用意されている。幾何学形状では、もっとシンプルな立方体や球、ドーナツ型など、その他オブジェクトではスニーカーやTシャツ、車、ジェット機などのベースが用意されている(有料でその他のベースをダウンロードすることも可能)。

 ベースを選択したら、左に並んだアイコンを指でタップし、機能を選択。画面に表示されているモデルを直接指でなぞっていくことで、モデリングを行なっていく。形ができたら、ブラシ機能を使って色を塗っていく。完成したモデルの3Dデータは、クラウド上にアップロードすることができ、一般に公開できる。

 アップロードされたモデルの3Dデータは、PCのWebブラウザでアクセスすることで、STL形式やOBJ形式でダウンロードできるので、そのまま3Dプリンタで造形することも可能だ。

形ができたら、ブラシ機能を使って色を塗る(3Dプリンタで出力するだけなら色塗りは不要)
完成したら、クラウド上のギャラリーにアップする

「生き物」に特化したiPad用3Dモデリングソフト「123D Creature」

まず骨格となるスケルトンを作る。青い点が関節で、白い棒が骨となる。関節や骨は自由に追加できる
スケルトンができたら、肉付けを行なう。太くしたり、細くしたりすることでだいたいの形を作る

 123D Creatureも、iPad用3Dモデリングソフトで、モデリングの仕方も123D Sculptとよく似ている。ただし、123D Sculptは、ベースとなる形が各種用意されていたのに対し、123D Creatureでは、「クリーチャー」のモデリングに特化していることが特徴だ。まず、スケルトンと呼ばれる骨格を作り、そこに肉付けしていく。スケルトンは、関節と骨から構成されており、自由に関節や骨を追加することができる。

 そのスケルトンをベースに、骨の周りの肉を太くしたり、細くしたりすることで、モデリングを行なっていく。ある程度の形ができたら、今度は、彫刻刀を使って削ったり、逆に粘土を足していくようなイメージで、ディテールを作り込んでいく。モデリングが完了したら、ブラシ機能を使って色を塗っていく。完成したクリーチャーは、カメラで撮影した画像と合成したり、影などをつけてレンダリングできる。

 123D Sculptと同様、完成したクリーチャーは、クラウド上にアップロードできるし、その後、PCのWebブラウザでアクセス、STL形式やOBJ形式でダウンロードできる。特化している分、「3Dプリンタでクリーチャーを造形したい」という人にお勧めだ。

関節の向きも自由に変更できる
形ができたら、ブラシ機能を使って色を塗ったり、ステッカーを貼ったりする

写真を撮って3Dモデルを自動作成する「123D Catch」スマホを3Dスキャナーに?

Webアプリ版「123D Catch」のスタート画面。「Start a New Project」をクリックすることで、新しいプロジェクトが開く
デジカメで撮影した写真を読み込ませる。枚数は6枚から70枚とされているが、角度(周囲だけでなく上下も)を変えた写真をできるだけ多く読み込ませるほうが成功しやすい
クラウドに写真のアップロードが行なわれ、クラウド上で3Dモデル化が行なわれる
ペンギンのぬいぐるみを撮影した写真から自動作成された3Dモデル。この例では54枚の写真を撮影した
Export STLを選べば、STL形式でのローカルへのダウンロードが可能
作成されたSTLデータをMakerWareに読み込ませたところ

 最後に紹介するアプリが、123D Catchである。123D Catchは、複数の写真から自動的に3Dモデルを作成してくれるアプリであり、Windows版とiOS版、Webアプリ版が用意されている。

 iOS版は、iPadだけでなくiPhoneでも動作し、内蔵カメラで撮影した写真を使って、3Dモデルを作成することができるため、非常に手軽に使える。iOS版については、以前の週刊3Dプリンタニュースで紹介したので、そちらをご覧いただきたい。今回は、アプリのインストールが不要なWebアプリ版を紹介する。

 Webアプリ版の123D Catchの使い方は簡単だ。まず、新しいプロジェクトを開き、3Dモデル化したい被写体を角度を変えて撮影した写真を読み込ませる。写真の数は、6枚から70枚とされているが、少しずつ角度を変えて、できるだけ多くの写真を読み込ませた方が、失敗が少ない。被写体を中心において、その周囲を回りながら撮影するのがポイントだ。1周で終わりではなく、今度は上下の角度を変えて、再びぐるりと周りながら撮影するとよい。写真を読み込ませると、自動的にクラウドに写真データがアップロードされ、クラウド上で3Dモデル化の処理が行なわれる。

 3Dモデルへの変換には多少時間がかかるが、しばらく待てば3Dモデル化が完了する。サムネイル画面で、3Dモデルをクリックすることで、3Dモデルがブラウザ上に表示される。3Dモデルは、マウス操作で回転や拡大縮小、移動などが自由に行なえる。また、左上のアイコンをクリックして、Export STLを選択すれば、STL形式での3Dデータのダウンロードが可能だ。ただし、写真から自動作成した3Dモデルを直接3Dプリンタで造形しようとしても、データに不具合があってうまく造形できないことが多い。3Dプリンタで造形するなら、STLデータチェック/修正ソフトなどを利用して、データの修正を行なう必要がある。

 123Dファミリーの残りのアプリは、「123D Make」と「123D Circuit」であるが、前者は3Dモデルを紙などで作れるように2Dにスライスするアプリで、後者は電子回路の設計やシミュレーションを行なうアプリであり、3Dプリンタとはあまり関係がないので、ここでは省略する。


iPadに装着するパーソナル3Dスキャナが発表3D Systems「iSense 3D Scanner」

 3D Systemsは、1月上旬にラスベガスで開催された2004 International CESにおいて、さまざまな3Dプリンタや3Dプリンタ関連の新製品を発表した。今回は、その中から、パーソナル3Dスキャナの新製品「iSense 3D Scanner」を紹介する。

 iSense 3D Scannerは、iPadに装着して利用するパーソナル3Dスキャナであり、昨年11月に発表された「Sense 3D Scanner」をベースにした製品だ。iSense 3D Scannerは、非常にコンパクトで、iPadの裏側に貼り付けて利用する。iPadを持って、スキャンしたい対象物の周りを回るだけで、3Dスキャンが行なえる。スキャン精度などの詳しい情報はまだ発表されていないが、Sense 3D Scannerと同程度であると予想される。Sense 3D Scannerについては、過去の週刊3Dプリンタニュースで紹介しているので、そちらをご覧頂きたい。業務用3Dスキャナほどの精度はないだろうが、簡単に物体や部屋の様子などを3Dスキャンして3Dデータに変換できるのは面白そうだ。iSense 3D Scannerの発売は2014年第2四半期の予定で、価格は499ドルである。

【iSense 3D Scannerのデモ動画】

(石井 英男)