週刊3Dプリンタニュース
「仮想3D空間作成ソフト」と、経産省による現状報告
(3D-GAN 2014春のセミナーレポート・後編)
~ローランドDGがパーソナル3Dプリンタを秋に発売~
(2014/6/11 12:54)
今回の週刊3Dプリンタニュースは、4月25日に開催された「3D-GAN 2014春のセミナー」レポートの後編として、「仮想3D空間の作成ソフト」と「経済産業省の考える3Dプリンタの未来」の2題を。
そして、業界ネタとして「ローランドDG社が3Dプリンタ市場に参入する」というニュースを取り上げたい。
試作から本格的ものづくり装置へと進化する3Dプリンタ
4月25日(金)に、一般社団法人「3Dデータを活用する会」(3D-GAN)主催の「3D-GAN 2014春のセミナー」が開催された。
前回は、国土交通省国土地理院空間情報部企画調査課の高桑紀之氏による講演の内容を紹介したが、今回は後編として、株式会社AHS代表取締役の尾形友秀氏による講演と、経済産業省製造産業局参事官室総括係長の高木聡氏による講演の内容を紹介する。
株式会社AHS代表取締役の尾形友秀氏は「『3Dスペースコンフィギュレーター』の紹介」と題した講演を行った。
AHSは、PC用ソフトウェア・ハードウェアの企画や輸入、開発、販売を行っている会社であり、今回のテーマである3Dスペースコンフィギュレーターは、フランスのシリアスファクトリー社が開発したソフトウェアである。その名の通り、3D空間をプランニングするソフトであり、リアルタイム3Dでその仮想空間をシミュレートし、その中を自由に歩き回ることができる。
例えば、オフィスの引っ越しなどで、椅子や机をどう配置するかを検討する場合や、新しく開店する店舗の内装、什器などのシミュレーションをする場合などに便利だ。講演では、実際に3Dスペースコンフィギュレーターのデモが行われたほか、シリアスファクトリーの姉妹製品である、製品そのものをシミュレーションする「3Dプロダクトコンフィギュレーター」や仮想空間の中の人間と対面トレーニングを行える「バーチャルトレーニングスイート」、仮想空間でイベントを行える「3Dバーチャルトレードショー」の紹介も行われた。
経済産業省製造産業局参事管室総括係長の高木聡氏は「『経産省新ものづくり研究会』について」と題して、講演を行った。
高木氏は、3Dプリンタに代表される付加製造技術を、切削加工、塑性加工に続く第3のものづくり方法と位置づけ、デジタル製造技術の発展の流れの中で捉えることが重要だとした。また、今3Dプリンタが注目を集めている理由は、3Dプリンタが進化し、価格が一気に低下し、使用できる材料が多様化したこと、米国をはじめ各国が積極的に取り組んでいること、「メーカーズ」への注目度の高まりが挙げられるとした。
高木氏によると、3Dプリンタによって生まれる付加価値は、「精密なものづくりによる高付加価値化」、「ものづくりの裾野拡大」の2つの方向性があるという。前者については、「試作・設計の迅速化」や「生産性の向上」、「材料の無駄が出ないことによる省資源性」、「形状や内部構造の複雑性、材料の自由による高機能化」、「人体や自然物などとの親和性」、「少量生産品のコスト合理性」が挙げられ、3Dプリンタは試作の道具から本格的ものづくり装置へと進化しており、国際的には、RP(Rapid Prototyping)ではなくAM(Additive Manufacturing)になりつつあるとのことだ。裾野の拡大については、3Dプリンタは周辺設備が不要なため、手軽にデータを実体化でき、即興性を持った「アイデアの実体化」が可能である。
また、3Dプリンタは、趣味でのものづくり程度にとどまり、産業としての発展可能性は小さいのではないかという疑問には、製品ライフサイクルの短命化やソーシャルメディアの発達といった3Dプリンタでのものづくりに対する追い風があり、市場としても有望であるとした。
付加製造技術は、今後大きく発展し、経済波及効果は大きいと予測されているが、日本は欧米に比べて立ち遅れていることが問題だと指摘した。3Dプリンタの発展は、日本のものづくりの脅威になるのではなく、従来のものづくりのノウハウを活かす視点が重要であり、今後は、政府の役割も重要になるとした。具体的には、ファイナンスを味方につけたり、限界地域、中小町工場の活力といったシナリオと繋げることが、政府の役割として考えられるという。
ローランドDGが2014年秋に同社初のパーソナル3Dプリンタを発売
ローランド ディー.ジー.株式会社(以下、ローランドDG)は、小型3次元積層造形機(3Dプリンタ)と小型3次元切削加工機を開発中であり、2014年秋に発売予定であることを表明した。ローランドDGは、以前からさまざまな3次元切削加工機を開発・販売しており、2011年11月には、超小型3次元切削加工機「iModela iM-01」を発売していた。
ローランドDGが3Dプリンタを開発するのは、これが初めてであり、造形方式としては光造形方式を採用する。詳しい仕様や価格などは、現時点では明らかにされていないが、3Dプリンタは個人をターゲットとしているが、小型3次元切削加工機は個人向けではないとのことだ。前回の週刊3Dプリンタニュースで紹介したオートデスクの3Dプリンタも、光造形方式を採用しており、今年後半から来年は、光造形方式を採用したパーソナル3Dプリンタが増えてきそうだ。
ローランドDGが開発中の3Dプリンタと小型3次元切削加工機は、2014年秋頃の同時発売を目指しているが、発売に先駆け市場リサーチを目的として、開発中のサンプル機を関連の展示会で展示する予定だという。
- ローランド ディー.ジー.株式会社
- http://www.rolanddg.co.jp/
- ニュースリリース
- http://www.rolanddg.co.jp/news/nr140514.html