週刊3Dプリンタニュース

「測量の日」記念で、立体地図作成の実演実施

~3Dデータ共有サイト「3Dモデラボ」が開設~

 今回の週刊3Dプリンタニュースは、測量の日を記念して行われたイベント「遊んで学んで地図と測量の世界」での3Dプリンタ実演の様子と、3Dデータ共有サイト「3Dモデラボ」開設のニュース、Genkeiの新型3Dプリンタキットのニュースをお届けする。

3Dプリンタで日本全国の立体地図が気軽に作れる

地図と測量の科学館の外観。国土地理院の構内にある
3Dプリンタの実演は、オリエンテーションルーム内で行われた。実演の内容は、国土地理院が提供している「地理院地図3D」の3Dデータを立体地図として出力するというものだ
実演に使われていた3Dプリンタは、XYZプリンティングのダヴィンチ1.0である。この3Dプリンタは国土地理院が所有するものだという
ダヴィンチ1.0での立体地図の出力例。筑波山周辺で、高さ方向を1.3倍にしてある

 6月1日、茨城県つくば市にある「地図と測量の科学館」で、「遊んで学んで地図と測量の世界」と題したイベントが開催された。地図と測量の科学館は、国土地理院が事業主体となって管理運営している、日本で初めての地図と測量の科学館である。地図と測量の科学館では、6月3日の測量の日を記念して、毎年その近辺の休日に特別イベントが開催される。今年の測量の日記念イベント「遊んで学んで地図と測量の世界」の目玉の一つとして、3Dプリンタを利用した立体地図作成の実演が行われたので、その様子を紹介する。

 地図と測量の科学館は、つくば市の国土地理院構内にあり、2階建ての建物と屋外の「地球ひろば」からなる。今回のイベントでは、「日本列島一筆書き」や「地図記号クイズラリー」、「都道府県クイズラリー」、「デジタル図化機」、「測量用航空機くにかぜの公開」など、参加・体験できる展示やデモが多数行われており、家族連れなどで賑わっていた。

 その中でも、注目を集めていたのが、3Dプリンタを使った立体地図作成の実演だ。地図と測量の科学館でのイベントで、3Dプリンタを使うのは今回が初めてとのことだが、3Dプリンタという言葉を知っている来場者もかなり多く、子どもたちもその動作を興味深く見つめていた。デモに使われていた3Dプリンタは、XYZプリンティングの「ダヴィンチ1.0」で、これは国土地理院が購入したものだという。担当者によると、最大造形サイズが200×200×200mmと大きく、動作も安定していて造形失敗がほとんどないということで、ダヴィンチ1.0を選んだということだ。実際にダヴィンチ1.0を使って出力した立体地図の他にも、フルカラー出力が可能な3Dプリンタを利用して出力した例なども展示されていた。

 この立体地図の元となる3Dデータは、先日、国土地理院が一般に公開した「地理院地図3D」のデータであり、今回の3Dプリンタによるデモは、地理院地図3Dのアピールにも最適だ。ダヴィンチ1.0は、パーソナル3Dプリンタの中でも低価格な部類だが、その精度などは十分満足しており、もう一台導入することを考えているという。

 通常は3Dプリンタでのデモは行っていないが、入場は無料なので、地図や測量に興味がある人は、一度行ってみてはいかがだろうか。貴重な資料がたくさん展示されており、小学生の夏休みの自由研究のネタにも使えそうだ。

さまざまな3Dプリンタを利用した立体地図出力例。ダヴィンチ1.0以外にもDS.1000や石膏粉末タイプの3Dプリンタでの出力例も展示されていた
ダヴィンチ1.0を使って出力したブラジルの立体地図。高さを約100倍に強調したもの。1/4ずつ出力したものを組み合わせている。この地図はテレビ放送でも使われた
左下は石膏粉末タイプのProJet x60シリーズで出力したもの。右下は、紙を積層するタイプのmcror irisで出力したもの。どちらもフルカラー出力が可能なことが特徴だ
オリエンテーションルームには、最近話題のUAVも展示されていた
UAVの飛行デモも行われており、注目を集めていた
測量用航空機「くにかぜ」の実物。くにかぜは、昭和35年から昭和58年まで運航されていた
測量用航空機「くにかぜ」シリーズの説明。現在は3代目となるくにかぜIIIが運航されている
くにかぜの内部に入って、コックピットや測量用機器の様子を見ることができる
屋外の地球ひろばには日本列島球体模型があり、地球の丸さや日本の広さなどを体感できる
2Fの常設展示室には、地図や測量に関する貴重な資料が展示されている
国土地理院の構内には巨大なVLBI観測用パラボラアンテナがある

アイティメディアが3Dデータ共有サイト「3Dモデラボ」を開設

3Dモデラボのトップ画面。現在の登録ユーザー数と3Dデータ数が一目で分かる
3Dデータは、9つのカテゴリーに分類されているので、目的のものを探しやすい

 3Dプリンタや3D表示対応HMDなどの技術が進み、一般にも普及が始まったことで、3Dデータへの需要が高まり、3Dデータ共有サイトが次々と開設されている。アイティメディア株式会社は、5月27日、「つながる、広がる、モノづくり」をコンセプトとした、3Dデータ投稿・共有サービス「3Dモデラボ」を開設した。

 3Dモデラボは、3Dデータの投稿・共有を通じ、コミュニケーションを作り出すサービスであり、会員登録することで、自分が作成した3Dデータを投稿・共有できる(登録は無料)。3Dデータは、「ホビー・おもちゃ」「ガジェット・スマホ」などの9つのカテゴリーに分類され、ユーザーは、他のユーザーが投稿した3Dデータを自由に鑑賞・ダウンロードできる。また、定期的に作品コンテストを開催し、新たな作品・クリエーターを広く募集する予定とのことだ。作品を介したSNS的な機能もあり、お気に入りのクリエーターを応援したり、個別の作品にコメントを付けることができることも特徴だ。

 また、メディア事業を得意とする同社ならではの取り組みとして、専門メディアとの連携を図り、3Dデータを作るための基礎知識や無償・廉価ツールの紹介、ハウツーなどの情報を手厚く提供していく計画である。

 なお、オープンを記念して、6月30日までに5件以上の3Dデータを投稿した人の中から抽選で30人にAmazonギフト券1000円分がプレゼントされるキャンペーンが実施されている。

Genkeiがデルタ型3Dプリンタ「Trino」組み立てキットを販売開始

Trinoは、フレームの色がブラック(左)とシルバー(右)の2色が用意されている
斜め上から見たところ。外観もスタイリッシュで美しい

 パーソナル3Dプリンタキット「atom 3D」などを販売しているGenkeiが、新型3Dプリンタ「Trino」組み立てキットの販売を開始した。

 Trinoも、atom 3Dと同じく、糸状のフィラメントを熱で溶かして積層する熱溶解積層(FDM)方式を採用した3Dプリンタであるが、ヘッドの駆動にリンク構造を採用したデルタ型やRostock型などと呼ばれている機構を採用していることが特徴だ。一般的なFDM方式の3Dプリンタでは、X軸方向とY軸方向、Z軸方向にそれぞれ独立したモーターが用意されており、一つの軸方向に移動する際は、一つのモーターが動くようになっている。3Dプリンタによっては、プラットフォームは一切動かず、ヘッドがX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に動くものや、ヘッドがX軸方向とY軸方向に動き、Z軸方向はプラットフォームが上下するものなどがあるが、各モーターが独立して動くことには変わりがない。

 それに対し、デルタ型は、3組のリンク構造で、上からヘッドをつるすような形になっており、ヘッドが動くときには常に複数のモーターが同時に動く仕組みになっている。こうした構造をパラレルリンクと呼び、精度が高いことが特徴だ。こうしたデルタ型機構は、産業用ロボットなどで使われてきたが、この構造に関する特許が切れたことで、この仕組みを採用したデルタ型3Dプリンタが登場してきたのだ。

 デルタ型3Dプリンタは、三角柱を基本とした形状であり、背の高い物体の出力に向いている。Trinoの本体サイズは、320×310×610mm(幅×奥行き×高さ)で、最大出力サイズはXY軸は直径170mmの円内、Z軸は250mmとなる。積層ピッチは0.3~0.025mmと細かく、プラットフォームの高さの自動調整機能も持つ。ヒーテッドベッドを標準搭載しており、使用可能な素材も、ABSやPLAをはじめ、ナイロン618やナイロン645、木材樹脂、PET、PVAなど幅広い。

 曲面パネルを三方向に展開した、美しいデザインもTrinoの魅力だ。フレームの色はブラックとシルバーの2色が用意されている。組み立てキットの価格は23万7600円(税込)。

(石井 英男)