実践!今時PCの活用法

長く使う骨太ゲームPCの作り方指南、電源とマザーにはお金をかけろ!

ゲーム機超えの快適さ+アップグレードで長く戦えるPC text by 坂本はじめ

「実践!今時PCの活用法」第二回となる今回のテーマはズバリ、ゲーミングPCだ。

 マルチプラットフォームで展開されるゲームタイトルにおいて、Windows PCは、最新鋭のコンシューマゲーム機を凌ぐ美麗なグラフィックでゲームを楽しめるプラットフォームだ。ただし、最新ゲーム機を超えるゲーム体験を得るには、PCにも相応のスペックが求められる。

 今回は、将来的なアップグレードも視野にいれつつ、ミドルレンジクラスの製品を使ったゲーミングPCを作成した。選択するパーツを上位にするだけで、超ハイエンド構成にも早変わりする今回のPC。これからゲーミングPCの自作を考えている読者諸兄には、ぜひ参考にしていただきたい。

実践!今時PCの活用法 :バックナンバー
第一回
写真も音楽もマルチSSDで快適に、ベイ6基、しかも小型なPCを作ってみた

家庭用ゲーム機超えの快適さを基準にパーツを選定2015年のゲームが遊べるPCをCore i5×GTX 950で作成

 ゲームを快適にプレイする上で最も重要とも言えるのが、ゲーム画面の描画を担当するGPU。近年はCPUにGPUを統合した製品が登場しているが、本格的にPCでゲームを楽しむなら、GPUに専用のVRAMを搭載したビデオカードを用意すべきだ。

 また、今回のパーツ選定で視野にいれる「アップグレード」とは、単に上位グレードの製品へ交換するというだけでなく、次世代製品への交換も想定したものだ。ゲーミングPCにおいて最も重要なパーツであるGPUの進化は早いが、他のパーツ構成をしっかり構築しておけば、GPUの進化を追いかけるだけでも、長くゲーミングPCとして使うことができる。

 以上の観点から、今回選定したパーツをまとめたものが以下のリストだ。

 モデル価格(税込)
CPUIntel Core i5-64002万5千円前後
マザーボードASUS MAXIMUS VIII HERO3万5千円前後
メモリCrucial BLT8G4D26AFTA(DDR4-2666 8GB) ×2枚1万9千円前後(2枚合計)
ビデオカードASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING2万6千円
システムストレージCrucial CT500MX200SSD1(500GB)2万2千円前後
ケースNZXT S3401万3千円前後
電源ディラック DIR-TCAXP-8002万円前後
CPUクーラーNZXT Kraken X612万2千円前後
OS日本マイクロソフト Windows 10 HOME1万4千円前後
  合計19万6千円前後

 ゲーミングPCのビデオカードには、ASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMINGを選択。GPU温度に応じてファンの回転を停止するセミファンレス機能を備えたGPUクーラーを搭載し、GeForce GTX 950は通常よりも高い動作クロックにチューニングされている。静粛性と1段上のパフォーマンスを兼ね備えた製品だ。

 CPUはSkylakeアーキテクチャを採用する4コア4スレッドCPU「Core i5-6400」。かつてはマルチコアCPUの恩恵が少ないと言われていたPCゲームだが、近年のゲームタイトルではマルチコアCPUへの対応が進んでおり、多くのゲームタイトルを快適にプレイするためには、このクラスのCPUは搭載しておきたい。

ASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING。動作クロックは1,024MHz(Boostクロック1,188MHz)から、1,140MHz(Boostクロック1,329MHz)へとオーバークロックしている。
CPUのCore i5-6400。Skylakeアーキテクチャ採用の4コア4スレッドCPUで、動作クロックは2.7GHz(ターボ時最大3.3GHz)。

 メモリとストレージには、それぞれCrucialのDDR4-2666メモリ「BLT8G4D26AFTA」と500GB SSD「CT500MX200SSD1」を採用。高クロックメモリにはパフォーマンスの底上げを、SSDにはロード時間短縮やレスポンスの向上を期待しての選択だ。特に、大容量化の著しい最近のPCゲームを快適にプレイするなら、十分な速度と容量を持ったSSDは外せない。

Crucial「BLT8G4D26AFTA」は、DDR4の標準電圧である1.2VでDDR4-2666動作を実現した8GBモジュール。今回はこれを2枚搭載している。
DDR4-2666での動作にはメモリの設定が必要だが、今回はメモリとマザーボードがともにメモリプロファイル「XMP」をサポートしているため、UEFIからXMPを読み込むだけでメモリの設定は完了する。
Crucial CT500MX200SSD1。容量500GBのSATA 6Gbps SSD。最大読み出し555MB/s、最大書き込み500MB/s。
最近のPCゲームは、1本あたり数十GBものインストール領域を要求するものが珍しくない。いつでもプレイできるようにしておくためには、十分なストレージ容量が求められる。

 アップグレードを想定するという点で、余裕を持たせておきたいのが電源ユニット。今回選択したDIRACのDIR-TCAXP-800は、総容量800Wで、1系統66Aが供給できる12V出力を備えた80PLUS PLATINUM認証電源。ハイエンドGPUへのアップグレードにも十分耐えられる出力を備え、高負荷=電力消費の大きいPCゲームプレイ中の消費電力を抑制できる高効率が魅力だ。

 また、CPUクーラーに強力な冷却性能を持つ280mmラジエーター採用のオールインワン水冷ユニットKraken X61を採用することで、発熱の大きい上位CPUへのアップグレードに対応できる冷却能力と、ゲームプレイ中もファンを高速で回転数させることなくCPUの発熱に対処できる冷却能力を確保した。

 大きな負荷のかかるゲーム中でも、ファンの回転数を上げることなく十分な冷却が可能であり、結果として騒音に悩まされることなく長時間ゲームに集中できる。280mmラジエーターの協力な冷却能力は上位CPUや次世代CPUへのアップグレード時にも活躍してくれるだろう。

DIRACの800W電源ユニット「DIR-TCAXP-800」。1系統で大電力を供給できる12V出力と、80PLUS PLATINUM認証を取得した高効率差が魅力。
NZXTのオールインワン水冷ユニット「Kraken X61」。140mm×2連の280mmラジエーターを備えたオールインワン水冷。

見た目もCPUもクールにきめる水冷ゲーミングPC長く使うからこそカラーリングにもこだわったパーツ選びを

 今回の構成では、PCケースにNZXT S340を採用した。ATXマザーボードに対応するミドルタワーケースながら、光学ドライブ用5インチベイを廃止するなど、割り切った仕様とすることで小型化を図ったゲーマー向けPCケースで、開口部の広いアクリル製のサイドウインドを備えている。

NZXT S340。筐体の90%がスチール製で、ソリッド感のあるルックスが魅力だ。
フロントパネルインターフェース

 中が見えるPCケースを採用する以上、やはり見た目もクールに決めておきたいのが自作PC。今回選択したパーツは、マザーボードに採用したASUS MAXIMUS VIII HEROの黒灰+赤というカラーリングに合わせて選択している。

 見た目はPCの性能を向上させるものではないが、ゲーミングPCとして長く付き合っていくことになる相棒だ。見た目にもこだわりを持って作ることで、愛着もわくというものだろう。

Intel Z170チップセット搭載マザーボードのASUS MAXIMUS VIII HERO。従来のROGシリーズの黒+赤から、黒灰+赤にカラーリングが変更された。もちろん見た目だけではなく、長期間使用するベース機材として、耐久性と拡張性にも期待しての選択だ。
NZXT Kraken X61は、専用のユーティリティソフト「CAM」を用いることで、水冷ヘッドに組み込まれたLEDのカラーを自由に調整できる。赤色に設定すれば、今回のPCにマッチする黒赤水冷ユニットの完成だ。
黒基板にダークグレーのヒートスプレッダを備えたCrucial BLT8G4D26AFTAは、今回の構成にピッタリなカラーリングだ。
黒灰のベースカラーに赤色LEDがアクセントカラーとして映えるPCに仕上がった。

家庭用ゲーム機以上の高画質を実現、ミドルクラスのゲームなら60fpsオーバー環境を整えれば、GTX 950はMOBAゲームを有利にプレイすることも可能

 さて、ゲーミングPCとして肝心のパフォーマンスはどうなのか。2015年9月に発売されたメタルギアシリーズ最新作「メタルギアソリッド V ファントムペイン」でその実力をチェックしてみよう。

 メタルギアソリッド V ファントムペインのグラフィック設定には、PC専用の高画質設定として「Extra HIGH」が用意されており、これを適用することでコンシューマゲーム機を凌ぐ映像でゲームを楽しむことができる。GeForce GTX 950を搭載した今回のPCでは、1,980×1,080ドットのいわゆるフルHD解像度で、すべての設定をExtra Highにすると、フレームレートが60fpsを割り込んでしまう。60fpsをキープするためには多少の調整が必要だ。

 描画設定を設定しながら最適な設定を探すというのも、PCならではのゲームの楽しみ方ではあるのだが、それにはある程度描画設定についての知識が必要になる。そこで活用したいのが、NVIDIAが提供しているGeForce Experienceの最適化だ。

GeForce Experienceの設定画面。最適化ボタンを押して設定を適用することで、NVIDIAが推奨する描画設定が適用される。
最適化を実行した際の設定。Extra Highに設定されている項目が複数確認できる。

 GeForce Experienceでは、ディスプレイ解像度を含めたPCの構成をもとに、各ゲームタイトルに最適な設定を適用する機能を提供している。これを利用することで、描画設定についての知識が無くても、PCのパフォーマンスに応じた描画設定を簡単に適用することができる。

GeForce Experienceでの最適設定でのプレイ画面。フレームレートは60fpsに張り付いており、プレイは快適そのもの。

 また、GeForce GTX 950は、eスポーツとして人気の高いMOBA(Mutiplayer Online Battle Arena)への最適化が図られたGPUであり、100Hz以上のリフレッシュレートに対応するモニターと組み合わせることで、操作が画面に描画されるまでの遅延を短縮する設定をGeForce Experienceの最適化により適用可能となる。

 GeForce Experienceで適用される設定は、DirectXの描画パイプラインを1段減らすことで描画レスポンスを短縮するというもの。このチューニングは本来、PCの描画に対する詳しい知識とテストを要するものだが、GeForce GTX 950では、製造元であるNVIDIAが事前に検証した最適な設定を適用するようGeForce Experienceをチューンされている。これにより、3D描画のセッティングに詳しくなくても、レスポンスのよい画面描画でMOBAタイトルをプレイできるという訳だ。

 今回のPCであれば、Dota 2やLeague of Legendsといった人気のMOBAタイトルを、100fpsを大きく超えるフレームレートで動作させる実力を備えている。GeForce Experienceの機能を活用すれば、MOBAタイトルを思う存分楽しむことができるだろう。

MOBAタイトルのひとつ「League of Legends」では、描画設定をVery Highに設定しても200fps前後のフレームレートでプレイできた。今回のPCに100Hz以上で駆動するモニターを組み合わせれば、MOBAを最高の環境で楽しむことができそうだ。

 このように、GeForce GTX 950を組み込んだ今回のPCは、パフォーマンス的にPCゲームを存分に楽しめるだけでなく、GeForce Experienceの存在により、描画設定についての知識がなくとも最適な描画設定ができるPCとなっている。

実際にアップグレードしてみた、上位のCPU&GPUへ載せ替え

 将来的に次世代パーツへのアップグレードを想定している今回のPCだが、まだ登場していない次世代製品を今試すことはできない。

 そこで、現行のハイエンドパーツであるGeForce GTX 980 Tiと、Core i7-6700Kへのアップグレードをそれぞれ試してみた。

 GeForce GTX 980 Tiにアップグレードした場合、最高描画設定での60fps維持が困難だったメタルギアソリッド V ファントムペインは、最高描画設定のまま画面解像度をフルHD以上に設定可能となり、電源容量などが不足することも無かった。

 GPUのみをGeForce GTX 980 Tiにアップグレードした場合、フルHD解像度で最高描画設定の60fps維持が困難だったメタルギアソリッド V ファントムペインが、最高描画設定でも60fpsが維持されるようになり、さらに画面解像度をフルHD以上に上げることもできた。ハイエンドGPUが持つ性能を引き出せることはもちろん、十分な容量の電源を搭載しているため、動作の安定性にも問題はない。

最高画質かつDynamic Super Resolutionで内部解像度を2,715×1,527ドットに引き上げても、60fpsが維持できる性能を発揮。

 CPUのアップグレードでもベンチマークソフトで26~70%の性能向上が確認できた。消費電力や発熱の増大する上位製品を搭載しても問題なく動作する。

Core i5-6400搭載時のCINEBENCH R15スコア。
Core i7-6700K搭載時のCINEBENCH R15スコア。

 LGA1151プラットフォームを採用した今回のPCは、PCI Express 3.0、M.2、DDR4などの最新規格をサポートしており、今後登場するであろう高性能なメモリやSSDへのアップグレードも可能。足回りを支えるパーツのアップグレードパスを確保できるという意味で、最新鋭プラットフォームを採用するメリットは大きい。

PCIe接続のSSDの投入も予定されており、SATAであれば1TBなどのより大容量のモデルが現在入手できる。
DDR4-3000のような高速モデルや、16GBモジュールも今後登場予定だ。

現行ゲームが遊べて、アップグレードで長期間使えるゲーミングPC

 今回製作したゲーミングPCは、ミドルレンジクラスのパーツを中心に現行のPCゲームをプレイできる実力を備えつつ、ハイエンドパーツへのアップグレードでその恩恵を得られるPCに仕上がった。

 ゲーミングPCを自作する際、重要なのは「今遊びたいゲームが満足に動作すること」。そこに多少のコストを追加して、将来性の期待できる最新鋭のプラットフォームに、拡張性、容量、耐久性に優れたマザーボードと電源ユニットを組み合わせれば、最重要パーツのビデオカードをはじめ、CPU、メモリ、SSDなど、性能を左右するパーツを次世代製品に乗り継ぎながら長期間運用できるゲーミングPCが完成する。

 どのようなゲーミングPCでも、進化の早いPCゲーミングを長期間に渡ってプレイしていくためには、性能を左右する次世代パーツへのアップグレードは避けて通れない。長く使えるゲーミングPCを望むなら、次世代製品へのアップグレードを前提に余裕を持たせた、今回のようなゲーミングPCを提案する。

[制作協力:Crucial]

(坂本はじめ)