実践!今時PCの活用法

写真も音楽もマルチSSDで快適に、ベイ6基、しかも小型なPCを作ってみた

静音性も重視した趣味用ハイスペックPCを作成 text by 坂本はじめ

 Windows 10に、Intel最新のメインストリーム・プラットフォームであるLGA1151。最新の自作PC環境が出そろった2015年秋、そろそろPCの新調をと考えているユーザーもおられることだろう。

 高性能なスマートフォンやタブレットが普及したこともあり、PCはここ数年は買い替える必要が見つからないといった声も聞かれるが、PCでしか出来ないことや、PCの方が快適な分野もまだまだ多い。SSDやDDR4メモリもだいぶ安価になっており、新たにPCを組むには良いタイミングともいえる状況になっている。

 そこで、今回から数回にわたり、「実践!今時PCの活用法」と題して最新PCパーツの性能を活かし、用途別に特化した自作PCの作例を紹介していきたい。「2015年の今だから組めるPC」をコンセプトにしているので、PCの購入や買い換え、アップグレードを検討しているユーザーは参考にしてもらえれば幸いだ。

 今回のテーマは、写真の閲覧・編集や音楽鑑賞を楽しめるコンパクトなPC。リビングや書斎での使用など、シーンを選ばず利用可能で、設置場所も簡単に移動させられるハイスペックな構成のPCを作成した。

データ用ストレージとして使える価格帯まで下がってきたSSD速度と静粛性を最大限活用

 「写真の閲覧・編集や音楽鑑賞を楽しめるコンパクトPC」を実現するために、まずは「データ用も含めストレージは全てSSDにする」という方針を定めた。

 SSDといえば速度や静粛性でHDDを圧倒するものの、容量単価が高価なため、データドライブ用に使うにはコスト面で難しかった。しかし、2015年現在ではGB単価も大きく下落し、1TBクラスであればSSDも一般ユーザーが手が出せる価格帯にまで値下がりしてきている。

 そこで、今回はSSDをデータ用ストレージとして用いることで、写真の編集・閲覧時のパフォーマンス向上と、音楽鑑賞時の動作ノイズ削減を図ろうという訳だ。

 以上の経緯から、写真の閲覧・編集や音楽鑑賞を楽しむことができ、データ用ストレージにSSDを活用するPCとして筆者が考えた構成が以下のものだ。

  モデル 価格(税込)
CPU Intel Core i7-6700K 49,000円前後
マザーボード ASRock Fatal1ty Z170 Gaming-ITX/ac 30,500円前後
メモリ Crucial CT2K8G4DFD8213(8GB×2) 15,000円前後
システムストレージ Crucial CT250BX100SSD1(250GB) 11,500円前後
データストレージ Crucial Crucial CT1000MX200SSD1(1TB) 48,000円前後(※今回は×2台使用)
ケース SilverStone SST-CS01B-HS 22,000円前後
電源 SilverStone SST-SX500-LG 15,000円前後
CPUクーラー CRYORIG C7 5.500円前後
OS 日本マイクロソフト Windows 10 Pro 25,000円前後
    合計27万円前後

 システム用のストレージにはCrucialのコストパフォーマンス重視の7mm厚2.5インチSSD「BX100」の250GBモデルを採用。データ用ストレージには、同じくCrucialのハイパフォーマンス志向の7mm厚2.5インチSSD「MX200」の1TBモデル2台を採用した。ちなみに、2TBの容量があればCDアルバムを3千枚前後保存することが可能で、ゆとりのある容量といえるだろう。

 CrucialのBX100とMX200は、いずれもMicronのMLC NANDフラッシュを採用したSSD。スペック上、転送速度はMX200の方が高速な他、総書き込みバイト数(TBW)がBX100の72TBに対し、MX200の1TBは320TBと非常に大きくなっている。写真や音楽データを保存するデータ用ストレージとして使うにあたって、MX200シリーズのTBW値は大きな魅力だ。

データドライブ用に使用するCrucial MX200 1TBモデル「CT1000MX200SSD1」。最大読み出し555MB/sec、最大書き込み500MB/sec、接続インターフェースは6Gbps SATA。
CT1000MX200SSD1のCrystalDiskMarkスコア。概ね公称値に近い数値を記録している。OS上で認識される容量は約931GBだった。
システム用に使用するCrucial BX100 250GBモデル「CT250BX100SSD1」。最大読み出し535MB/sec、最大書き込み370MB/sec、接続インターフェースは6Gbps SATA。
CT250BX100SSD1のCrystalDiskMarkスコア。OSインストール後の状態ながら、公称値からの速度低下は無く、読み出しの数値は公称値以上を記録している。

ホットスワップベイを6基備えるMini-ITXケースで将来的な拡張性も確保高解像度の写真処理に対応するため4K出力対応のMini-ITXマザーボードをチョイス

 今回の構成において、SSD以外で特にこだわったのが「PCケース」と「マザーボード」だ。

 PCケースのSilverStone Case Storage SST-CS01B-HSは、もともとNASやストレージサーバー向けに設計されたMini-ITX専用PCケースで、2.5インチHDD/SSD用のホットスワップベイを6基も備える変わり種だ。

 その設計がSSDをデータ用ストレージとして活用するという用途に合致したことも、今回このケースを選んだ大きな理由なのだが、もう一つの大きな理由が、高品位に仕上げられた外装の美しさだ。肉厚のアルミニウムの外装に施されたマットブラックのアルマイト処理は大変美しく仕上げられており、とても見栄えが良い。

 樹脂製のPCケースには無い高級感のある外装を纏ったSST-CS01B-HSなら、卓上はもちろん、リビングなどにおいても、インテリアの一つとして機能するだろう。せっかくコンパクトでどこにでも置けるPCを組むのだ、見栄えにもこだわっておきたい。また、このケースは持ち運びしやすい構造となっている点もポイントだ。

SilverStone Case Storage SST-CS01B-HS。幅210.5mm、奥行き210mm、高さ322mmの四角柱形にMini-ITXケース。
ケース後方から。高品位なアルマイト処理による質感の良さが魅力的。
ケース上部の2.5インチホットスワップベイ×6基。
ケース上部。マザーボードのバックパネルインターフェースや、6基のホットスワップベイ、ケース側のUSB3.0ポート×2基にアクセスできる。
ケース内部。ケース底面に配置された120mmファンにより、下から上へ抜けるエアフローが構築されている。
今回採用したSilverStoneの電源ユニット「SST-SX500-LG」。SFX規格の奥行きを拡張した独自規格SFX-Lに準拠したセミファンレス電源で、SFX系の電源では珍しい静音をウリとするモデルだ。

 6基の2.5インチホットスワップベイというユニークな特徴を持つSST-CS01B-HSだが、一般的なMini-ITXマザーボードの多くは、実装面積の制約から2〜4本のSATAコネクタしか備えておらず、SST-CS01B-HSのホットスワップベイをフル活用するにはRAIDカードなどの増設が必要となる。

 ところが、今回マザーボードに採用したASRock Fatal1ty Z170 Gaming-ITX/acは、6基の6Gbps SATAポートを備えており、SST-CS01B-HSのホットスワップベイをフルに活用することができる。将来、SSDの空き容量が少なくなってきた際に、SSDの増設を容易に行えるという点もポイントになるだろう。

 プロゲーマーのFatal1ty氏の名を冠したゲーミングマザーボードではあるが、6基のSATAポートの他にも、最大4,096×2,304ドット@60Hzの画面出力が可能なDisplayPort 1.2や、無線LAN機能を備えるなど、170mm四方のMini-ITXフォームファクターに多くの機能を詰め込めるだけ詰め込んでおり、あらゆる用途に対応できる一枚となっている。

ASRock Fatal1ty Z170 Gaming-ITX/ac。Intel Z170 チップセット搭載のMini-ITXマザーボード。
SATAポートを合計で6基搭載。いずれもIntel Z170 チップセット提供の6Gbps SATAポート。
ディスプレイ出力ポートは計3基。DisplayPort 1.2を搭載したことで、市場に出回っているほとんどのPC向け4Kディスプレイに対応できる。

 この相性抜群なケースとマザーボードの組み合わに、Intel最新のメインストリーム向けCPUであるSkylake-Sの最上位モデル「Intel Core i7-6700K」を搭載。メモリは写真の編集作業で不足することがないよう、8GBモジュール2枚の16GB構成とした。

パフォーマンスをチェック、写真編集時のレスポンスの良さを体感ファン回転数も調整して静音化

 今回作成したPCだが、静かな場所などでの使用も想定し、まずは静音動作仕様にセッティングした。

 マザーボードのFatal1ty Z170 Gaming-ITX/acは、ゲーム向けモデルということもあり、冷却性能が重視され、標準ではファンの回転数が若干高めになるよう設定されている。

 そこで、ASRockのユーティリティソフト「F-Stream」が備えるファンコントロール機能「FAN-Tastic Tuning」を利用して、以下のようなチューニングを行った。これにより、CPU負荷が低い状況ではノイズがほとんど気にならないほどの静粛性が得られた。写真やオーディオ用に使用するならこうしたところにも気を使いたい。

CPUクーラーのファンコントロール設定。動作音を抑えるなら、ファンの回転数は1,000rpm台前半に抑えたい。
ケース底面120mmファンのコントロール設定。回転数が800rpmを下回る程度まで絞れば、ほぼ動作音は気にならなくなる。
今回使用したCPUクーラーのCRYORIG C7。小型ながらしっかりとした冷却性能を持った製品だ。

 続いて、今回構築したPCの実パフォーマンスをチェックしてみよう。

 まずは定番ベンチマークテスト、CINEBENCH R15の実行結果だ。CPUのマルチスレッド処理能力を示す「CPU」の項目で900cb近いスコアをたたき出し、4.0GHz動作の4コア8スレッドCPUとしての実力を遺憾なく発揮できていることが確認できる。

CINEBENCH R15のスコア。「CPU」のスコアが高いほどCPUの処理能力が高いことを示している。
Intel Core i7-6700K。Skylake-Sの最上位に位置する4コア8スレッドCPU。
最新鋭のCPUを使っても長時間の処理を必要とするH.265形式へのエンコード処理を実行しても、CPUの発熱はきちんと処理できていた。

 Mini-ITX専用の小型筐体の多くは、ケース内空間の狭さから高性能なCPUを組み込むと、その発熱を処理するのが難しくなってしまうものだが、筐体底面に120mmファンを配置し、ケース内を下から上へと抜けるエアフローを持つSST-CS01B-HSの特性と、Intelの純正CPUクーラー並みの大きさで高い冷却性能を実現するCRYORIG C7の組み合わせは、TDP 91WのCore i7-6700Kの発熱をうまく処理できている。

CPU温度の測定結果。(HWMonitor 1.28のCPUコア温度にて計測、室温26℃)

 CPUのベンチマークではその実力をしっかり発揮できていることが確認できた今回のPC。

 コンセプトの一つである写真の編集・閲覧に用いた場合はどうなのかと言えば、高性能なCPUによる処理時間の短縮に加え、データ用ストレージにSSDを用いたことにより、RAW現像ソフトなどで、サムネイルの表示やプレビュー画像の作成など、ちょっとした待ち時間が短縮され、レスポンスの良さを体感できる。

 SSDによって短縮される個々の待ち時間は僅かなものだが、作業中の待ち時間短縮は体感的には大きなもので、テンポよく作業できるように感じられた。数値にしてしまうとわかりにくいが、ファイルを開くのに一瞬待つといった時間が解消されるのは快適だ。

4K + フルHDのマルチディスプレイ環境でのRAW現像ソフト使用風景。3画面出力をサポートすることで、4K出力に2画面分の出力を必要とするタイプのディスプレイでも、1台のサブディスプレイを追加できる。

 また、今回は4Kディスプレイに接続して現像した画像のチェックなどを行ったが、フルHDの4倍の表示領域をPC用モニタのサイズに凝縮した4Kディスプレイの緻密な描画により、一眼レフカメラなどの高画素デジタルカメラで撮影した写真をより美しく感じられた。PCで写真を楽しむなら、高解像度ディスプレイには大きな価値がある。

 マザーボードに用いたFatal1ty Z170 Gaming-ITX/acは、現在販売されているPC向け4Kディスプレイのほぼすべてに対応するDisplayPort 1.2に加え、2基のHDMIポートもサポートしており、最大で3画面の同時出力が可能となっている。これにより、4Kディスプレイにサブディスプレイを加えたマルチディスプレイ環境を、ビデオカードなしで構築することが可能だ。

 今時のPCで写真の加工などを行うのであれば、4K出力可能な端子を備えているかといったところは意識したい。

RAW現像中のCPU使用率。処理の進捗によりCPU使用率の増減はあるが、Core i7-6700Kの8スレッドを活用して処理を行っていることが分かる。
メインメモリのCrucial CT2K8G4DFD8213。DDR4-2133動作の8GBモジュールで、今回はこれを2枚用意した。
複数枚の画像を開いた時のメモリ使用量。CPU内蔵GPUはメインメモリを利用するため、本格的に写真や画像の編集を行うなら、最初から16GB以上のメモリを搭載しておきたい。

 もう一方の用途である音楽鑑賞に関してはどうかと言うと、SSDをデータストレージとして用いた恩恵は、静粛性と言う面で音楽に集中できる環境づくりに役立った。

 HDDのシーク音のような不規則な騒音を発する要素が無く、PCでは振動源となるHDDが筐体内に無いというのは大きい。

 音楽再生程度のCPU負荷であれば冷却系のファン回転数を低く保つことも可能で、動作音を低く抑えられると同時に、不規則なファン回転音なども発生しないため、PCの動作音を気にせず音楽を集中して楽しむことができた。

Fatal1ty Z170 Gaming-ITX/acのサウンド機能周辺。ニチコン製のオーディオ用コンデンサが採用されている。
Texas Instrumentsのヘッドホン用オペアンプNE5532。

 また、最近のゲーミングマザーボードはクオリティを高めたオンボードサウンド機能を搭載するのがトレンド。Fatal1ty Z170 Gaming-ITX/acも独自設計のサウンド機能が搭載されており、オンボードでありながらクリアなサウンドを楽しむことが可能だ。

 ひと昔前であれば、音楽を楽しむならサウンドカードが必須という状況だったが、それも変わりつつある。

 Fatal1ty Z170 Gaming-ITX/aのバックパネルインターフェースは、ヘッドホン出力用にTexas Instrumentsのヘッドホン用オペアンプNE5532を搭載しており、インピーダンス600Ωクラスのヘッドホンも利用できる。

ケース上部にマザーボードのバックパネルインターフェイスが位置するため、ケース内の延長ケーブルを介することなくヘッドフォンジャックが簡単に利用できる。
オンボードのサウンド機能は24bit/192kHzの出力に対応しており、追加のパーツを用意することなくハイレゾ楽曲を楽しむことができる。

レスポンスの良さが魅力のSSDデータストレージマシン、ファイルアクセス時の待ち時間はほぼ無し

 写真の閲覧・編集や音楽鑑賞を楽しめるコンパクトPCを目指して構築した今回のSSDデータストレージマシン。実際に使用してみて、データ用ストレージにSSDを用いたことによるファイル読み出しの高速化が、想像していた以上に体感的な快適性の向上につながっていたのが印象的だった。

 このPCでは、データ保存領域として2基の1TB SSDを用意したが、SST-CS01B-HSが持つ6基のホットスワップベイのうち3基が未使用であり、これを活用すればSSDデータストレージの容量をさらに増やすこともできる。SSDをデータ用ストレージとして本格的するのに、これほど適した構成もそうは無いだろう。

 大容量SSDによる高速なファイルアクセスと、最新鋭CPUが実現するハイパフォーマンスとマルチディスプレイ構築能力。最新世代PCパーツの実力を感じられるコンパクトPCとして、今回のSSDデータストレージマシンを提案したい。

[制作協力:Crucial]

(坂本はじめ)