ノートPC延命計画!
旧型MacBook ProをSSDで高速化、HDD時とは別物の快適さに
SSDでイライラするもたつきを一気に解消 text by 石川ひさよし
(2015/7/6 00:03)
PCはパーツのサイクルが早く、1年もすれば旧式、3年で買い換えと言われるところ。しかし4年以上経ったモデルでも、愛着ある製品はもっともっと使い続けたいものだ。
そこで、SATA-HDD搭載ノートPCをSSDに換装し、ストレージの速度、レスポンスを向上させて愛機を延命しようというのが当コーナーの趣旨だ。今回はここまで紹介してきたWindows搭載ノートPCを一度離れ、MacBookの延命手法を紹介していこう。
Macは独自規格のパーツが搭載されている場合もあるが、SATAやDDR3 DIMMなど、標準規格を採用している部分に関しては一般的な自作PCパーツに換装することも可能だ。Mac OS搭載機器でも、基本的なアップグレード方法はWindows搭載機と大きな違いはない。
今回の延命ターゲットはクリエイター向けのMacBook Pro 15インチ(Early 2011)
今回のお題は「MacBook Pro (15-inch, Early 2011)」。MacBookシリーズとしてはプロ向けとされるパフォーマンス重視のモデルだ。型番は「MC721J/A」で、2011年の発売時には税込15万8,800円という価格設定だった。高価なだけに、スペック的にもまだまだ現役続行できるポテンシャルがある。
ではMC721J/Aの仕様を振り返ろう。まずCPUは「Core i7-2635QM」。Sandy Bridge世代の4コア/8スレッドCPUだ。動作周波数は定格2GHz、Turbo Boostで2.9GHzとなる。およそ想像がつくかもしれないが、4年前とはいえクアッドコアCPU搭載モデルとなると、CPUパフォーマンス面ではさほど不満が出ないだろう。
メモリは4GBのPC3-10600。DDR3-1333であるのでクロックは低いが、現行規格である。ただ、今となっては4GBだと少し少ない印象があるので、前回に引き続きどうせだから増強してみよう。
HDDはHGST製(当時)の「HTS5450B9A302」で、容量は500GB、回転数は5,400rpm、3Gbps SATA対応。2.5型HDDとしては標準モデルとなるので、およそ不満が出るとしたらココだ。それだけに、SSDへの換装は延命策として有望である。
そのほか、インターフェースは、ギガビットイーサネット、USB 2.0×2、そしてFireWire 800とThunderbolt。OSのバージョンは、10.6.7(Snow Leopard)だった。
換装用SSDにはCrucial MX200を、メモリにはCrucialの4GB×2枚キットを利用
今回使用するSSDは、Crucialのハイエンドモデル「MX200シリーズ」から、500GBモデルの「CT500MX200SSD1」を選択した。
元のHDDが500GBであるので、容量的には十分だ。ハイエンド向けSSDとしたのは、MacBook Proの性格からだ。メインストリーム向けSSDでも高速化は望めるが、できれば最高速を引き出したいという意図である。
また、今回も合わせてメモリの増強にチャレンジしたい。Macのメモリ交換と言うと、動作確認済みメモリがMac用として販売されているのだが、今回は通常のPC用メモリを使う。
前回同様、Crucial「CT2KIT51264BF160B」(PC3-12800、4GB×2)だ。もちろん、動作確認がないという点では、不安は残る。ただし、現在のMacは、パーツの構造的に見ればPCと同じだ。よほどクセのあるメモリでなければ大丈夫だろう。
データの移行はMac OSのユーティリティで丸ごとコピー
正直に話すと、筆者はMacに触れる機会はあったものの、HDD交換の経験はない。そんな筆者が試行錯誤したなかで、最も無難と思われるHDDからSSDへの換装方法は「HDDのデータを丸ごとSSDにコピーして換装する」手法だ。
Macのドライブ換装時のデータ移行は、Mac OSのバックアップ機能であるTimeMachineを用いる方法もある。TimeMachine運用環境が整っているならば、TimeMachineで使用している別ドライブからデータを復元するのがスマートだ。より新しいOS Xであれば、インターネットドライブ経由でのレストアも可能。
ただし、TimeMachineを普段使っていなかったり、TimeMachineに使う外付けドライブが無いといった場合には、丸ごとデータをコピーしてしまう方法が手っ取り早く確実だ。
MC721J/Aには汎用インターフェースとしてUSB 2.0とThunderbolt、FireWire 800が搭載されている。今回はSATA - Thunderbolt変換アダプタを介してみた。Thunderboltは10GBpsで、USB 2.0の480Mbpsよりも格段に高速だ。
ただし、SATA - Thunderbolt変換アダプタは、秋葉原でも一時期流通した後はあまり見かけない。筆者の場合は、米国から入手してみた。USB 2.0やFireWire 800にもSATA変換アダプタはあるので、お持ちの方はそちらを利用していただきたい。
コピーの具体的方法は、「ユーティリティ」から「ディスクユーティリティ」を開き、対象のSSDを選択した後、「復元」タブから「ソース」に元のHDDを、「復元先」に換装するSSDをドラッグして「復元」ボタンを押す。下のほうにプログレスバーが表示されるので、完了まで待てばよい。完了後はシステムを終了させ、ACアダプタを外したうえで、HDDを取り外しSSDに換装すればOKだ。
なお、BootCampでWindowsを利用していた場合のデータ移行だが、Mac OS + Windows OS環境で利用していた場合、Windows部分のデータ移行はWincloneなどの有償アプリなどを利用するのが最も簡単だ。
それ以外の方法であれば、Windowsのシステムイメージバックアップ機能を利用し、外付けHDDなどにOSのデータをコピー。Mac OS側の再セットアップを済ませた後にWindows用のパーティションを設定、Windows再インストール時に「イメージでシステムを回復」を選び、バックアップからデータを移行といった手順になる。なお、Macの本体にWindowsしかインストールしていない場合、データの移行方法はこれまで紹介したWindows機と全く変わりない。
では準備が整ったところでSSD換装作業に移ろう。
MacBook Proの分解は少し大変
MacBook Proの底面に、メモリやストレージ用のベイパネルなどはない。ツライチの美しいボディをしている。そのため、多少面倒な作業となる。
まず、底面パネル全体を外すため、周囲に沿って並ぶネジ全てを外していく。なお、ネジは小さく、精密ドライバの#0または#00あたりが必要となる。おそらく、ちょっとしたネジの頭の凹凸ですら目立たせたくないのだろう。
底面パネルを外す際の注意がいくつかある。まず、ドライバーを扱う際、先端がボディに触れないように注意しよう。美しいボディに引っかき傷ができてしまう。
次にネジ。ネジには長短2種類あり、長いものは規格認証マークを上にした状態で、上方右から3本だ。また、短いネジの一部は斜めにねじ込まれているため、装着の際にナメてしまわないよう注意しよう。
底面パネルを外すと、手前がバッテリー、中央にメモリスロット、左下にストレージベイ、そして上部は2基のファンなどが確認できる。
MC721J/Aの発売は4年前。一度もパネルを開けていないのであれば、そろそろホコリが溜まっている頃だろう。まずはエアダスターなどで掃除をしておくとよいだろう。
ではストレージベイに装着されたHDDを取り外そう。
まず、ドライブの周囲には黒い4本のネジが装着されているので、これを外すことから始める。次は、HDDに装着されたフィルム状のフラップを持ち、引き上げるかたちでベイからHDDを取り外す。
Serial ATAのインターフェース部分は薄いフィルム上のケーブルを採用しているので、ムリな力は禁物だ。HDDにはさらに4本の固定具が装着されている。この固定具の取り外しにはT6のヘクスローブドライバが必要になる。
こうしてHDDを取り外した後は、手順を逆にSSDへと換装していく。ここは難しくはないだろう。
メモリの交換に関しては、MacBook Proのメモリスロットが2段、まったく同じ位置に用意されているため、Windowsノートと比べて取り外しが若干面倒なものの、作業としては同じだ。
SODIMMを左右から固定するラッチを広げ、モジュールを引き起こして取り外し、新しいモジュールを斜めに挿し込んだら、モジュールを倒してラッチにしっかり固定させる。
あとは底面パネルを戻せば完了だ。ただ、これまでの換装作業も同様だが、パネルを戻す前に動作確認をしておこう。
MacBook Proの場合はパネルの再装着に手間がかかるので、何かあった時に再度パネルを外すより、この状態で問題を見つけておくのがよい。無事動作を確認できたら、パネルを再装着して完了だ。
SSD換装で起動時間は半分以下に短縮、Trim機能を有効化してパフォーマンスを引き出そう
今回のように、HDDからSSDにデータをコピーした場合、SSDのスピードは手に入れられても、実はTrim機能が無効となったままであることがある。
そこで「Trim Enabler」というフリーウェア(高機能な有償版もあり)によってTrim機能を有効にする。Trim Enablerをダウンロード→インストールし、同ソフトからTrim機能をオンとしたら、一度再起動が必要だったが、Trimの有効化が確認できた。
Trim機能は、長期運用時のパフォーマンスや寿命に関わってくる機能のため、SSDを使用する際はMac OSでも意識したい。
なお、今回のケースでは、Trimを有効化しただけではSSD本来の速度が出なかった。
Trimが有効化できてもTrimコマンドが即実行されたわけではないようで、いろいろとMac系のサイトを調べた結果、「しばらく放置する」というのがベストという結論に至った。実際、4~5時間ほど放置した前と後では全くパフォーマンスが異なる結果だった。
性能が発揮されたあとのパフォーマンスだが、どれだけ高速化されたのかベンチマークと起動時間をSSD換装前と換装後で比較してみた。
ベンチマークにはQuick Bench 4.0を用い、20~100MB時のスコアを計測してみた。HDDの際は、リードがおよそ90MB/secあたり、ライトは83MB/secあたりの結果だった。一方でSSDの結果は一目瞭然で、リードが523MB/sec、ライトも480MB/secあたりが出ている。5~6倍のスピードアップだ。
OS起動速度については、これまでのWindows機とはOSが異なるため、電源オンからデスクトップ表示までを計測した。
今回も、HDDからSSDに換装することで、起動に要する時間は半分以上に短縮できた。正直、HDDの際はかなりツラいと感じられるほど起動に待たされていたが、SSD換装後はまずまず速い。まずまずというのは、おそらくOSのバージョンが古いこともあるだろう。どうせなら、ここで最新OSまで引き上げたいところである。
同じMacBook Proとは思えないほど快適に、効果の大きいSSD換装
このように、HDD世代の製品ならMacであってもSSD化によるレスポンス改善が可能である。
Macも内部のパーツはPCと同じ。デザイン面での体験を重視するApple製品だけに、一般的なPCと比べると分解に手間取るところはあるが、大きく変わるものではない。特殊なドライバが必要になるため、ここは事前の用意が必要だが、記事中にメモしておいた規格番号を参考に、入手して欲しい。基本的にはホームセンターで入手可能だ。
さて、OSの起動速度で大幅な改善があったが、アプリケーションの起動もかなりサクサクだ。HDDの際はSafariの起動にも待たされ、ウェブサイトの表示にも待たされた印象だったが、SSDに換装した後は起動もサイト表示の素早く、同じMacBookとは思えないほど「イライラ」が解消された。
同時に、HDDのスピンアップの音が消え、気持ちパームレストの発熱も抑えられた印象だ。おそらく、若干の軽量化も実現しているし、バッテリーの持続時間も向上するだろう。このように、SSDのメリットは速度だけでなく多岐にわたる。全てを一気に改善したいなら「SSD換装」にチャレンジしてみるとよいだろう。
[制作協力:Crucial]