パワレポ連動企画

GeForce GTX 1080/1070の登場で番付が大きく変動したハイエンドビデオカード

【PCパーツサマーセレクション500(9)】

DOS/V POWER REPORT 2016年8月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2016年8月号」の総力特集「今買いたいモノ、目一杯集めました!PCパーツサマーセレクション500」を掲載する。

 第9回目ではビデオカードを解説する。GeForce GTX 1080と1070の登場で盛り上がったのも記憶に新しいが、実際どの程度の性能差があるのか気になるところだ。そこで今回は各社のGTX 1080、1070を集め、前世代のTX 980 Ti、GTX970を交えて行った性能比較を中心に紹介していく。なお、今回の記事の執筆時(DOS/V POWER REPORT 2016年8月号の発売前)はAMDの新ビデオカード「Radeon RX 480」はまだ発売されていなかったため、さわり程度の扱いとなっている点はご容赦いただきたい。

 本特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2016年8月号は全国書店、ネット通販にて6月29日(水)に発売。特別企画は、ついに身近にやってきた仮想現実「何が楽しいの? 何が必要なの? 新世代VRが自宅にやってきた!!」、小型コンピュータを有効活用「マイクラウドストレージを極小ボードで作る! Raspberry PiでownCloud」、ネットで借りてポストに返す便利なサービス「夏休み前に改めて使い勝手を検証 オンラインDVDレンタルサービス」の三本を掲載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は豪華二本立て。無料なのは7月29日まで!「Windows 10無償アップグレード駆け込みブック」と、最新ワードに対応した「最新パソコン 略語辞典2016」だ。


-PCパーツサマーセレクション500-
ビデオカード編 ~Pascal登場で番付が大きく変動~


Pascal登場で番付が大きく変動 ビデオカード編

 HTC「Vive」などのVRグラスの出荷が始まったことで、ビデオカードもVR時代にふさわしい性能や機能が求められるようになってきた。

 2016年6月時点での、ビデオカードの最新情勢を整理してみよう。

ワットパフォーマンス改善とVRへの適合性が重要に

 2016年のGPUはワットパフォーマンス改善のほかに、VR性能の向上が大きなテーマだ。ワットパフォーマンスは、28nm台から14~16nm FinFETプロセスへの移行に加え、メモリ圧縮技術の改善で帯域の節約や省電力化を狙う。

 VR性能は、NVIDIAがPascalアーキテクチャでVR向けの新機能(下参照)を組み込んだことで、非同期シェーダーの性能のよさをアピールするAMDとの姿勢の差(VR専用機能のNVIDIA vs. 演算効率のよさのAMD)が明らかになった。

ついに登場したGeForce GTX 1080/1070はココがスゴい!!

GIGA-BYTE TECHNOLOGY
GeForce GTX 1080 G1 Gaming

 GTX 1080/1070は新アーキテクチャ「Pascal」をベースに16nm FinFETプロセスで製造されるGPUだ。

 GDDR5X(GTX 1080のみ)と新しいメモリ圧縮技術、GPU Boost 3.0などの新要素があるが、重要なのは一つの3Dシーンを最大16視点から眺めた映像を1回で生成できる「同時マルチプロジェクション」だ。これは左右の目それぞれに視差を付けた映像が必要になるVR グラスの処理を、大幅に効率化できる。さらに、超高fps時(200fps前後)でもテアリングを完全に抑え込む新同期技術「FastSync」などを備える。

ハイエンドなのに8ピン×1
GTX 980 TiやTITAN Xが消費電力250W級なのに対し、GTX 1080は180W。そのため補助電源は8ピン×1と扱いやすくなった
違う視点からの映像を一気に生成
VRグラスにはレンズの歪みを考慮した映像(右)に加工して出力するが、歪みに合わせた四つの視点の映像を1回の処理で合成する機能を備える
GTX 650以上で利用可能な新機能
スクリーンショット機能「Ansel」は、カメラ位置を操って好きなアングルから撮影することを可能にする(ゲーム側の対応が必要)
新旧GeForce上位モデルのスペック

ベンチマークで見るGeForce GTX 1080/1070の実力

 ASUSTeK/GIGA-BYTE/MSIオリジナルのOCモデルのパフォーマンスを検証する。

 今回テストしたOCモデルはいずれもFounders Edition(FE)を超えたが、3D Markのスコア上昇率にして最大6%の伸び。GTX 1080/1070はもともと高クロック動作であるため、OC効果はGTX 900シリーズより低めだ。GTX 1070は、SP数こそGTX 980 Tiより3割強少ないが、性能はOC版のGTX 980 Tiに迫る。本ページ下の消費電力とあわせて見れば、ワットパフォーマンスの高さが分かるはずだ。

各ベンチマークのスコア

OCモデルの消費電力と温度推移

 今回テストしたOCモデルは高クロックの分FEより性能が高く、さらに冷却力も高いためGPUクロックが変動しにくい。

 ただ消費電力はFEに比べ激増する傾向が見られた。OCと消費電力は連動するため当然の話だが、ワットパフォーマンス重視ならFEを選ぶべきだ。このクラスのGPUを使うのに消費電力を気にするのはヤボな話だが……。

OCモデルは8ピン+6ピンが多い
GTX 1080/1070はスペック上、補助電源は8ピン×1だが、OCモデルは8ピン+6ピンの構成が多い。冷却力は高いが、消費電力が大きい傾向にある
システム全体の消費電力
GPU温度の推移

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-6700K(4GHz)
マザーボード:ASUSTeK Z170-A(Intel Z170)
メモリ:Micron Crucial BLS2K8G4D240FSA(PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×2)
SSD:Intel SSD 750 SSDPEDM W400G4X1(PCI Express 3.0 x4、MLC、400GB)
電源:Corsair RM650(650W、80PLUS Gold)
OS:Windows 10 Pro 64bit版
アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:3DMark v2.0.2067のFire Strike デモ実行中の同一シーンでの最大値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO
ライズ・オブ・トゥームレイダー:プリセットの“最高”を選択後にアンチエイリアスを“FXAA”に設定し、内蔵ベンチマークモードを使いフレームレートを測定
ディビジョン:プリセットを“ウルトラ”に設定後、内蔵ベンチマークを起動し、ベンチマークシーケンス全体のフレームレートを「Fraps」で測定

ローエンド~中堅ビデオカードの選び方

ASUSTeK Computer
STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING

 GTX 1080の人気はすごいが、実際に数が出るのはミドルレンジ以下の製品だ。2万円~3万円程度のミドルレンジなら「オーバーウォッチ」や「DOOM」といった“並み”の重さのゲーム、1万円台前半のローエンド製品なら「World of Warships」などの軽めのゲームで高画質プレイが可能になる。

 ただ、GT 730のような実売数千円クラスのローエンド製品にゲーム性能はまったく期待できない。この手の製品は、ゲームよりもマルチディスプレイ環境を構築したいときに使うべき。ゲームが目的の一つであるなら、予算をやりくりしてでも1万円以上の製品を選ぼう。

 ビデオカードのゲーム以外での価値という点では動画をGPUパワーで60fpsに補完するAMDの「Fluid Motion Video」は実用的でおもしろい。搭載しているGPUがR7 360シリーズ、あるいはR9 380以上でないと公式対応しないなど、GPU型番による制約がある点に気を付けよう。

ゲームベンチマーク
Fluid Motion Video(FMV)は「Radeon設定」で機能を有効化し、PowerDVDなどの再生アプリを通じて利用する。FMV非対応のHD 7000系やR7 370系GPUの場合「Bluesky Frame Rate Converter」とWindows 8以降の組み合わせでFMVに近い効果を得ることもできる
単に多画面出力をしたいだけならGT 730クラスのカードがオススメだが、出力端子が使いにくい仕様の製品がある。そういう場合は4系統のDVI出力を持つ玄人志向「GF-QUAD-DISP/4DVI/LP」など特化モデルを選ぶのがよい

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-6700K(4GHz)
マザーボード:ASUSTeK Z170-A(Intel Z170)
メモリ:Micron Crucial BLS2K8G4D240FSA(PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×2)
SSD:Intel SSD 750 SSDPEDM W400G4X1(PCI Express 3.0 x4、MLC、400GB)
ビデオカード:ASUSTeK STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5(NVIDIA GeForce GTX 960)、ASUSTeK STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING(NVIDIA GeForce GTX 950)、ASUSTeK GTX750TI-PH-2GD5(NVIDIA GeForce GTX 750 Ti)、玄人志向 GF-GT730-LE1GHD/D5(NVIDIA GeForce GT 730)、ASUSTeK STRIX-R9380-DC2OC-2GD5-GAMING(AMD Radeon R9 380)、玄人志向 RD-R7-360E-E2GB-JP(AMD Radeon R7 360E)、ASUSTeK ROG STRIX-GTX1070-O8G-GAMING(NVIDIA GeForce GTX 1070)
電源:Corsair RM650(650W、80PLUS Gold)
OS:Windows 10 Pro 64bit版
オーバーウォッチ:Hanamuraでの対戦時におけるフレームレートを「Fraps」で計測
World of Warships:ランダム戦におけるフレームレートを「Fraps」で計測

【AMDはRadeon RX 480で巻き返しを狙う】

RX 480搭載カード2枚をCrossFireX構成にすることで、GTX 1080を超えるという仰天の発表も。AMDのWebサイトではPolarisの技術解説が行なわれている。気になる人はチェックしてみよう

 ついにRadeonも14nm FinFETプロセスの「Polaris10」ベースの製品を発表した。第1弾となる「Radeon RX 480」は、4GBないし8GBのGDDR5メモリで200ドル~250ドル程度と予告されている。ワットパフォーマンスの改善にも力を入れており、TDPは150Wと低い。Radeon系になかったHDMI 2.0aも追加される。

 さらに、より低価格なミドルレンジ「RX 470」、「RX 460」も予告された。このクラスでもVRコンテンツを動かす性能があるとされており、今後VRを舞台にしたGPU戦争が展開されることだろう。


[Text by 加藤勝明、芹澤正芳]


DOS/V POWER REPORT 2016年8月号は6月29日(水)発売】

★第1特集「今買いたいモノ、目一杯集めました! 『PCパーツサマーセレクション500』」
★特別企画「何が楽しいの? 何が必要なの? 『新世代VRが自宅にやってきた!!』」「マイクラウドストレージを極小ボードで作る! 『Raspberry PiでownCloud』」「夏休み前に改めて使い勝手を検証 『オンラインDVDレンタルサービス』」
★連載「最新自作計画 ~アンダー5万で作る格安マシン 2016年夏版~」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」
★ 特別付録1「Windows 10無償アップグレード駆け込みブック」、特別付録2「最新パソコン略語辞典 2016」(雑誌のみ別途付録、電子版では本誌巻末に収録)
★ 雑誌を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 毎月700円(税込)で最新号が読める 直販電子版 月額プランも受付中
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