パワレポ連動企画

【Haswell Refresh徹底紹介(4)】M.2の実力は?

~PCI Expressネイティブ接続SSDの時代へ~

DOS/V POWER REPORT 7月号

 自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新7月号の特集記事、「Haswell Refresh&Intel 9シリーズマザーボードを攻略せよ!」をまるごと掲載する当企画の4回目は、新ストレージインターフェース「M.2」の実力を検証。

 M.2の仕様解説や、ベンチマークテストの結果などを掲載する。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 7月号は現在発売中。7月号の内容は、約40ページにわたる今特集のほか、Windows 8.1 Updateの改良点や旧OSからのアップデートの解説、自作ユーザーのかゆいところに手が届く「逸品ケーブル図鑑」、髙橋敏也の改造バカ一台などが掲載。また、PC自作Q&A事典 2014とGIGABYTE POWER REPORTが付録として付いてくるなど、盛り沢山だ。


- DOS/V POWER REPORT 2014年7月号 Special Edition -


新ストレージインターフェース「M.2」の実力は?
PCI Expressネイティブ接続SSDの時代へ

 9シリーズチップセット最大の注目点は、新ストレージインターフェース「M.2」のサポートだ。Serial ATA 3.0を大きく上回る速度を持つ半面、汎用性の高さからこれまでとは異なる点も多数あるので注意が必要だ。

SSD高速化のカギはPCI Express接続、注目はM.2インターフェース

【M.2】
PCI Express接続と従来のSerial ATA接続の両方をサポートするM.2スロット。接続されたデバイスが、PCI Express、Serial ATAのどちらを利用するかは自動判別される
【SATA Express】
SATA Expressコネクタ(写真下段)は、従来のSerial ATAと同形状のコネクタが二つと制御信号用のコネクタ一つがワンセットで構成されている。PCI Expressデバイスの接続に加えて、Serial ATA形状のコネクタに従来のSerial ATAデバイスを接続することが可能だ

 現状、Serial ATA 3.0は、SSDの性能向上の足かせとなっている。そこで期待されているのが、PCI Expressをデータ転送バスに採用することで高速化を図る手法である。Intel 9シリーズチップセットは、SATA Revision 3.2で規格化された新インターフェース「M.2」に正式対応し、加えてこのチップセットを採用するマザーボードは、もう一つの新インターフェース規格「SATA Express」にも対応する製品が多い。そして、M.2とSATA Expressは、いずれも内部的にPCI ExpressとSerial ATAの両方の信号を使った接続をサポートしている。

各ストレージインターフェースの仕様

 M.2は、カード型の機器のダイレクト接続を想定したインターフェースだ。PCI ExpressとSerial ATA接続をサポートすると書いたが、規格としてはUSB 3.0やBluetoothなどもサポートしている。ただし、M.2スロット側で実際にどの信号が使えるかは実装により異なる。注目のPCI Express接続の場合は、1.0、2.0、3.0をサポートし、最大4レーンでの接続に対応する。最大データ転送速度は、PCI Express 2.0 x4接続の場合で20Gbps、3.0 x4接続なら32Gbpsで、Serial ATA 3.0の6Gbpsよりも大幅に速い。

M.2には、KeyA、KeyB、KeyE、KeyMの4種類の形状があり、それぞれ利用できる信号が異なる。前者は、PCI Express x2接続とSerial ATA接続、後者はPCI Express x4接続とSerial ATA接続をサポートする。KeyBはSocket 2、KeyMはSocket 3とも呼ばれる
M.2のSocket 3(上)、Socket 2(下)は、切り欠きの位置が異なっている。9シリーズ世代のマザーボードは、現状すべてSocket 3を採用している

 M.2では、スロットの形状も複数規定されている。現状、PC用マザーボードで見かける形状としてはSocket 2(KeyBとも呼ばれる)とSocket 3(KeyMとも)の2種類がある。Socket 2はSerial ATAとPCI Express x2接続、Socket 3ではSerial ATAとPCI Express x4接続をサポートする。

 筆者が調べた限りでは、各社の9シリーズマザーボードのM.2スロットは、すべてSocket 3をだった。一方、機器側の形状は、Socket 2/3のどちらか一方の接続に対応するシングルスロットモジュールとSocket 2/3の両方で利用できるデュアルスロットモジュールがある。

SATA Expressは従来型の2.5/3.5インチドライブ向け規格

 SATA Expressは、従来型の3.5/2.5インチドライブ向けの規格だ。PCI Expressに関しては2.0および3.0をサポートし、最大2レーンでの接続に対応する。Intel 9シリーズチップセット搭載マザーボードに搭載されたSATA Expressのコネクタは、従来のSerial ATAと同形状のコネクタが二つと制御信号用のコネクタ一つがワンセットで構成されている。Serial ATAコネクタ部は、従来のSerial ATA機器を接続できる。

 PCI Express接続のSSDを接続する場合は、Serial ATA形状コネクタあたりPCI Express 1レーン分の信号を転送する仕組みで、上記のSATA ExpressコネクタワンセットでPCI Express 2レーン分の信号を転送できる。一方、機器側のコネクタは、SASで採用されているSFF-8680をベースとしたもので、従来のSerial ATA接続のHDDやSSDのコネクタとは互換性がない。将来的に2.5インチや3.5インチ形状のSATA Express対応SSDが登場した場合は、専用の新しいケーブルが必要になる。

M.2/SATA Expressデバイスの接続経路

M.2、SATA Express対応の内部PCI Express接続のSSDは、従来のSerial ATAコントローラを介さずにCPUと接続するため、PCI Expressネイティブ接続のSSDとも呼ばれる。PCI Expressネイティブ接続のSSDは、機器の制御用インターフェースにAHCIまたはNVM Express(NVMe)を使用する。AHCIは、従来のSerial ATAの互換モード。NVMeは、NANDメモリなどの不揮発メモリに最適化された専用モードで、PCI Expressネイティブ接続のSSDでは、プロトコルが効率化され、レイテンシが減少するというメリットもある。さらに、レイテンシの減少との相乗効果でランダムアクセス性能が大幅に向上するとアナウンスされている。現状のPCI Expressネイティブ接続のSSDは、AHCIのみの対応だが、年内にはNVMe対応SSDも登場する予定だ。

3つのM.2 SSDを検証

 現在、秋葉原などで購入可能なM.2 SSDを3製品用意し、実際に検証する。

SAMSUNG XP941 MZHPU512HCGL(実売価格:85,000円前後)
「PCI Express 2.0 x4接続のM.2 SSD」

M.2(PCI Express 2.0 x4接続)/512GB

 SAMSUNGのXP941は、PCI Express2.0 x4ネイティブ接続のSSD。コントローラは、同社のSerial ATA接続のSSD同様に自社開発のトリプルコアを搭載した高性能品だ。自社製造のToggle DDR対応のMLC NANDメモリを採用している。起動用のOption ROMを搭載しないため、古いマザーではOS起動を行なえない点には注意が必要だ。米国amazon.comで購入できるほか、日本でもごく少数の販売が予告された。

PLSD Plextor M6e PCI Express SSD PX-AG256M6e(実売価格:39,000円前後)
「Option ROM搭載で環境を選ばない」

M.2(PCI Express 2.0 x2接続)/256GB

 PX-AG256M6eは、OS起動用のOption ROMを搭載したPCI Express 2.0 x2ネイティブ接続のSSD。制御系はAHCIのみをサポートしている。コントローラは、Marvell製の88SS9183を採用し、東芝製Toggle DDR対応MCL NANDメモリを採用している。リテール版はPCI Expressスロット変換アダプタが付属しているが、付属していないバルク版も流通している。

Intel SSD 530 SSDSCKGW180A401(実売価格:18,000円前後)
「安心のSerial ATA接続を活かす」

M.2(Serial ATA 3.0接続)/ 180GB

 M.2形状のSerial ATA接続のSSD。コントローラはIntel型番だがLSI Sandforce SF2281と同一。Serial ATA接続をサポートしたM.2スロットで利用でき、mSATA的な使い方が想定される製品だ。

OSは起動するのか?
-XP941では起動しないマザーが存在、M6eはすべて起動

 従来型の一般的なSSDやHDDは、UEFIに搭載されたOption ROM(OROM)を利用してOSの起動を行なっているが、このOROMは、Serial ATAデバイス用として開発されているため、もともとはPCI Express接続のSSDからのOS起動をサポートしていない。PLDSのPlextor M6eではその対策として、ドライブ側に独自のOROMを搭載することで、9シリーズのみならず、8シリーズ環境でもOS起動を可能にしている。注目は、OROMを持たない従来型のSSDの起動だ。ここでは、ASRock、ASUSTeK、GIGABYTE、MSI、各社のマザーボードでOROM非搭載のSAMSUNG XP941からOS起動が行なえるかどうかの検証結果をレポートする。

M.2SSDのシステム起動対応状況
【ブートドライブ選択に表示された】
内部PCI Express接続のSSDをOS起動ドライブとして利用できる場合は、ブートローダーの設定で選択できる。選択できない場合は、起動ドライブとして利用できない
【UEFIセットアップでも認識】
ASRock Z97 Extreme6では、M.2やUltra M.2スロットに内部PCI Express接続のSSDを接続するとUEFIセットアップでドライブの型番などが表示される

 結果、XP941をWindows 8.1の起動ドライブとして利用できたのは、ASRock、MSIの2製品のみで、M.2→PCI Express変換アダプタを利用して、PCI Express x16スロットに装着した場合も問題はなかった(※1)。

 一方、ASUSTeKとGIGABYTEの製品は、Windows 8.1上でデータドライブとしては利用できるものの起動ドライブとしては利用できなかった。なお、OROMを搭載した内部PCI Express接続のM6eや内部Serial ATA接続のIntel 530でも同様の検証を行なったが、すべての組み合わせで問題なく起動した。

 OROM非搭載のPCI Express SSDからのOS起動は、UEFIのアップデートで対応できる可能性がある。今後のASUSTeKとGIGA-BYTEには、アップデートによる対応に期待したい。

 ※1 本稿作成後、直接M.2 SSDからシステム起動できない環境でも、ユーザーがドライバを組み込むことにより起動を可能にする方法があることが分かりました。後日、WebもしくはDOS/V POWER REPORT本誌において追加検証結果を掲載する予定です。

【Option ROM付きのM6eは環境を選ばない】
Plextor M6eは、独自のOption ROMを内蔵しており、起動時にOROMの画面が一瞬表示され、ドライブの認識とイニシャライズが実行される。この構成であれば、9シリーズマザーでも、8シリーズマザーでも起動が可能だ
【PCI Express変換基板を使うと……】
M.2スロットでOS起動が行なえるマザーでは、M.2→PCI Express変換基板を利用してSSDを接続しても問題なく、OS起動が行なえた。UltraM.2スロットのような仕組がなくとも、CPU側のPCI Expressに直結して利用できるということだ
【8シリーズマザーでは起動せず】
Intel 8シリーズチップセット搭載マザーボードでは、XP941はUEFIのブートローダーの設定画面で選択できず、OS起動用として利用できなかった

PCI Express x4接続で最大速度1GB/sオーバー

x2接続でもSerial ATAより速い

CrystalDiskMark 3.0.3(1,000MB、5回)の結果
PCMark 8 v2.0.228-Storage Testの結果

 内部PCI Express接続のSSDを利用する最大のメリットは、Serial ATAの最大転送速度6Gbpsの制限から開放されることによる性能向上だ。ベンチマーク結果を見ると、最大速度はCrystalDiskMark 3.0.3の結果からはPCI Express接続による性能向上が明確に見て取れる。

 PCI Express 2.0 x4接続対応のSAMSUNG XP941の最大読み出し速度は、PCI Express 2.0 x2接続のM.2スロットの場合で770MB/s超、PCI Express x4接続の場合では1,000MB/s超の速度を記録。書き込み速度もそれぞれ、750MB/s前後、920MB/s前後を記録。Serial ATA接続の最新SSDであるPLDS Plextor M6Sとは比較にならない速度だ。PCI Express 2.0 x2接続のPlextor M6eも、M6Sより速い。最大読み出し速度は750MB/s前後、記録速度も580MB/s前後と、Serial ATA接続の製品を凌駕する。

 おもしろいのは、 実使用感を測るPCMark 8の総合値のStorage Scoreでは、PCI Express接続製品はSerial ATA接続のM6Sよりも若干よい程度だが、ストレージ自体の性能を計測するStorage Bandwidthは100MB/s以上速いという点。ストレージの速度が向上した結果、少々の速度差では体感に直結しにくくなっているということかもしれない。

【検証環境】

<Z97環境>CPU:Intel Core i5-4590(3.3GHz)、マザーボード:ASRock Z97 Extreme6、メモリ:Micron Technology Crucial Ballistix Tactical LP BLT2K8G3D1608ET3LX0(PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2)、内蔵グラフィックス機能:Intel Core i5-4590内蔵(HD Graphics 4600)

< Z87環境>CPU:Intel Core i5-4670K(3.4GHz)、マザーボード:ASUSTeK GRYPHON Z87、メモリ:ADATA XPG Gaming AX3U1600GC4G9-2G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、内蔵グラフィックス機能:Intel Core i5-4670K内蔵(Intel HDGraphics 4600)<共通環境> OS:Windows 8.1 Enterprise 64bit版、M.2→ PCI Express x4変換アダプタ:玄人志向 M.2-PCIe

[Text by 北川達也]



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(AKIBA PC Hotline!編集部)