パワレポ連動企画

Pentium 20周年モデル「Pentium G3258」のOCテクニック

~Celeron 300Aは再来したのか?~

DOS/V POWER REPORT 8月号

 このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌8月号の特集記事「Devil's Canyon & Pentium Anniversary EditionでOCを遊ぶ」をほぼまるごと掲載する。

 第三回目の今回は、Pentium Anniversary Editionこと「Pentium G3258」を実際にオーバークロックし、パフォーマンスを検証する。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 8月号は絶賛発売中。8月号では今特集のほか、パワレポ執筆陣が推薦する「この夏買いたい8大PCパーツベストレセクション300」やBay Trail-D/Kabini対応Socマザーボード大図鑑、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、CPUクーラー&ケースファン大全が付録として付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。


- DOS/V POWER REPORT 2014年8月号 Special Edition -


遊べる環境が整った“今”がOCを体験する絶好のチャンス!

 先にOCの成果から報告しよう。Pentium G3258は、空冷の4.7GHzで、各種ベンチマークテストを完走できることを確認した。実売8,000円前後で買える3.2GHzのCPUとしては申し分ない成果であり、近年にないインパクトと言えるだろう。

B85でもH81でもOCが可能、低価格帯OCの事実上の解禁

Pentium 20周年モデル「Pentium G3258」

 実売8,000円前後、そして本来3.2GHz駆動のCPUが、UEFIセットアップで設定を変更することにより、空冷環境でも4.7GHz駆動する……これはなかなかの衝撃だ。近年OCは競技的に盛り上がる一方で、一般ユーザーにとってはコスト的にも技術的にもハードルが高くなっていたので、再び一般ユーザーにも遊べるOCが戻ってきたという印象だ。

 もう一つ朗報がある。マザーボードメーカーの独自対応により、H97やH87、さらにB85、H81といったローエンドチップセットのマザーボードでも、Pentium G3258の倍率変更OCを行なえることが判明した。つまり、実売で1万円以下、なかには数千円で販売されているような格安マザーボードでも、OCが楽しめるというわけだ。

OC対応マザーボードの一例

1.4Vで4.7GHz動作を達成、最大47%の性能向上

UEFI設定

 Pentium G3258は、スペック上「Turbo Boost非対応」とされており、定格ではTurboBoostが動作しないが、倍率の上方変更はCore i7-4790Kと同じくTurbo Boostの機能を利用する。厳密に言えば「Turbo Boost対応だが定格では標準も最大も3.2GHzが上限に設定されている」という認識が正しい。

 Turbo Boostのリミッター解除をはじめ、VRM、iVRの設定も基本的には同様で、設定例は右の表のとおり。今回はCPUコアの電圧を1.4V、動作周波数を4.7GHzに上げた状態で、各種ベンチマークテストの完走を確認。定格の3.2GHzからは実に1.5GHz、比率にして約46.9%という大幅アップだ。

 OC時のパフォーマンスアップ率も非常によく、Sandra 2014の4項目平均で約47.1%ときっちり動作周波数の向上分だけ伸びている。CINEBENCH R15ではCPUで約41.4%、CPU(シングルコア)で約40.7%と、周波数の伸び率に近い大幅なスコアアップを記録している。そして、CPU(シングルコア)ではCore i3-4340を大きく超え、Core i7-4790Kの定格に匹敵するスコアをマークしている。PCシステム全体の性能を計測するPCMark 8(Home Accelerated 3.0)のスコアもOCで約13.2%アップしている。

CINEBENCH、3DMark、Sandra 2014、PC Mark 8のベンチマーク結果。

外部ビデオカード環境では実ゲームでもOCメリットあり

 3DMarkでは、OCしてもCombined Scoreがわずかに伸びるのみにとどまった。テスト後に動作周波数を確認してみると定格の3.2GHzに戻っており、再起動するまでOCを行なうことができなかった。ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア ベンチマークキャラクター編でも同様の症状が発生した。UEFIセットアップの設定やOSの電源プラン変更も含め、いろいろと設定を変えてみたが、今回のテストでは解決する方法を見付けられなかった。試用したCPUはいずれも試作品であり、このバージョン特有の問題である可能性もある。

 一方、ビデオカードを利用した環境ではそういう問題は起こらず、バトルフィールド 4のフレームレートは約10.3%向上し、Core i3-4340に迫っている。3Dゲームの性能はビデオカードで決まると言われるものの、あまりにCPU性能が低いとボトルネックになってビデオカードの足を引っ張る。それをOCすることでかなりカバーできている。

 TMPGEnc Video Mastering Works 5では、AVCHD(1,920×1,080ドット/ 60p)動画を携帯電話向けのMP4ファイル(640×480ドット/ 30p)へ変換する時間を計測した。OC時で22%ほど短縮できるのを確認できたが、Core i3-4340には少しおよばず。

 Super PI Modは、東京大学金田研究室による「スーパーπ」のスコアを小数点第3桁まで表示できるようにしたもので、OC時ではCore i3-4340をぶっちぎるスコアをマークしている。実のところ、これはCore i3-4340に勝てそうだからテストしたのだが、現在のCPUアーキテクチャにはまったく最適化されていない古いアプリケーションの一例として参考にしてほしい。

各種ベンチマーク結果
CPU温度とシステム全体の消費電力

 定格とOC時の消費電力と温度は右のグラフに掲載したとおりだ。やはりPentiumは2コアのモデルだけあってCore i7-4790Kなどより余裕がある。ただ、Core i3-4340の1.5倍以上もあるOC時の電力を見ると、効率という面では割に合わない。電力効率、省電力という要素にコストを惜しまないユーザーならば、Core i3がお勧めだ。

低コスト環境でのOC検証、H81でも4.7GHz動作OK

 OCのセオリーとして、VRM品質のよいマザーボードや冷却能力の高いCPUクーラーを使うべきだというものがある。実際、OCはCPUやマザーボードのVRMに大きな負担がかかり、発熱も増大するので間違ってはいないが、実際のところはどうなのだろうか。とくにPentium G3258のような低価格CPUの場合は、コストパフォーマンスという要素を重視する方も多いだろうし、クアッドコアのCore i7-4790Kなどと比べればOCしても負担は大きくないはずである。というわけで、実際にCPUクーラーやマザーボードを変えて試してみた。

 マザーボードは激安製品含めて2枚試したが、結果はどちらもOKだった。若干CPU温度は上昇したが、4.7GHzで動作し、OCCT(CPU:LINPACK)の過酷なテストもクリアした。繰り返しのテストや長期常用では分からないが、一時的にOCを楽しむだけならば低価格マザーでも問題はなさそうである。

マザーボードのグレードによるOC動作の違い

 CPUクーラーはどうだろうか。マザーボードはZ97-DELUXE(NFC&WLC)を使い、Core i3付属の純正クーラーと、比較的安価なサイズの虎徹を追加で試してみた。予想されたことではあるが、純正クーラーではさすがにOCはムリだった。4.7GHz/1.4V環境ではOCCTの実行開始後1分30秒ほどで100℃を超えて計測不能となり、動作周波数の低下が見られた。リミッターのたぐいはすべて無効にしているのだが、最悪の危険を回避するため、最後の最後で効く保護機能があるようだ。虎徹は、実売3,000円前後のリーズナブルなクーラーながらかなり健闘しており、4.7GHz/1.4Vの状態でも問題なく動作した。SilverArrow IB-E Extremeほど大掛かりでなくても、かなりのレベルまでPentium G3258のOCが楽しめそうである

クーラーのグレードによる温度やOC動作の違い

300Aの再来とは言えないが新しい可能性を秘めたCPU

 幅広いユーザーが低コストでOCを楽しめるCPUと言えば、かつてのCeleron 300Aを連想する方もいるだろう。しかし、当時はCeleronも主力モデル(Pentium III/Pentium II)もシングルコアであって、周波数以外の要素にはそれほど差がなかったし、OSやアプリケーションに対してCPUパワーが十分でなく、OCの成果がPCの操作感に直接的に反映されていた。300Aに関してはそういう実益の部分も大きかっただけに、当時のインパクトに匹敵というわけにはいかない。

 それでも、Pentium G3258は近年まれにみる大きな魅力を備えたCPUであることは間違いない。そもそも、当時のことを知らないユーザーには関係ない話だし、15年以上も前の幻影をトレースするだけではつまらない。マザーボードを含めてPCのパーツは大きく進化したし、インターネット環境、コミュニケーション環境も当時とは比較にならないほど発達しており、別の楽しみ方もできるはずだ。

 なお、4.7GHz/1.4Vというのは、あくまでも今回の検証での成果であり、さらにOCできる余地はあるはずだ。腕に覚えがある方はさらに上を目指していただきたい。また、OCをしたことがない方も、興味があればぜひチャレンジしてほしい。

【まとめ】

OCで3.2GHzから4.7GHzへ、性能も大幅アップ
低コストのパーツを使っても十分OCが楽しめる


【検証環境】

マザーボード:ASUSTeK Z97-DELUXE(NFC& WLC)(Intel Z97)、メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-16G28CVLP-16K-Q(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)、内蔵グラフィックス機能:各CPUに内蔵、ビデオカード:MSI N780GTX Lightning(NVIDIA GeForce GTX 780、3DMarkおよびバトルフィールド4実行時に使用)、SSD:OCZ Vector 150 VTR150-25SAT3-240G(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:Enermax REVOLUTION87+ ERV750AWT-G(750W、80PLUS Gold)、CPUクーラー:Thermalright SilverArrow IB-E Extreme、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:CINEBENCH R15実行時の最大値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO、室温:26℃、CPU温度:HWMonitor 1.25のCPU Temperature のPackageの値

[Text by 鈴木雅暢]



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(AKIBA PC Hotline!編集部)