パワレポ連動企画

低価格CPUクーラーのベストバイ

【冷却まわりの新鉄則、教えます(7)】

DOS/V POWER REPORT 9月号

 このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌9月号の特集記事「冷却周まわりの新たな鉄則、教えます~冷却・静音、これが答えだ!~」をほぼまるごと掲載する。

 第七回目の今回は、実売価格4千円未満の低価格CPUクーラーを8モデル紹介。冷却性能や動作音などを検証し、DOS/V POWER REPORTオススメのモデルを掲載する。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 9月号は絶賛発売中。9月号では今回の特集のほか、USBバスパワーで動作する冷却グッズや薄型CPUクーラーの紹介、6TBクラスの大容量HDD特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、100個の自作PC問題を載せた「PC自作力 2014年度夏期試験」が小冊子として付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。


- DOS/V POWER REPORT 2014年9月号 Special Edition -


実売4,000円未満のクーラーでPentiumのOCもCoreシリーズの定格も楽しめる!!

 倍率ロックが解除されているにもかかわらず手頃な価格のPentium G3258。安くてもOCしたCPUをしっかり冷やせるクーラーと組み合わせたい。実売4,000円未満のCPUクーラーから、高性能な製品を探し出そう。

安くOCできる「冷却性能」を重視、あわせて「静音性」も確保したい

Intel Pentium G3258を快適に使いたい

 Pentiumの発売20周年を記念してリリースされたPentium G3258は、実売価格が7,500円前後ながら、CPUの倍率ロックが解除されている。つまり、一発逆転のOCが手頃に楽しめるCPUで、この点には多くの方が注目していると思う。そこで今回は、OCしたPCを常用するための、低価格かつ高性能なCPUクーラーを探し出すことにした。

 さて、CPUクーラーのボリュームゾーンの一つは、3,000円~4,000円の低価格帯にある。もちろん、これよりかなり安い製品もあるにはあるが、今回の目標はあくまで常用のOCだ。激安のCPUクーラーは、定格運用を前提としたものが多く、コストを下げるためにヒートシンクのサイズやファンの径が小さく、冷却性能も振るわないものが多い。

ポイント1:冷却性能
CPUクーラーにまず求められるのは冷却性能だ。十分に冷やせなければ、安定動作はもちろん、OCにも対応できない。ヒートシンクの大きさ、ファンの大きさ、そのほかにも各種の工夫をチェックしていこう

 OCにもっとも必要な高い冷却性能を確保するために、大きなヒートシンクやファンを備えていて、なおかつ手頃なものを探すと、自然とこの価格帯に目が行く。Pentium G3258の半額程度で、さらなるCPU性能を引き出してくれると考えれば、この程度の追加投資は許容できるレベルだろう。

ポイント2:静音性
静音性も重視される要素の一つだ。もちろん冷却性能を備えた上でこれを実現するのが理想。密閉型ケースで音を閉じ込めるという方法もあるが、CPUクーラー自身の静音性が高いにこしたことはない

 静音性に関しては、きっちり冷やせた上で、そのマージンの範囲で成立する。静音性にもっとも影響するのは、ファンの口径や回転数で、口径の大きなファンは、小さなものよりも低回転で同じ風量を実現できる。低回転であればそれだけファンの風切り音を抑えられるという理屈だ。さらに、ファンのブレードに風切り音を抑える工夫を凝らしたものも多いので、そうした技術にも注目したい。

ポイント3:取り付けやすさ
清掃やグリスの塗り直しといった定期的なメンテナンスを考えると、取り付けやすさも気になる。やぐらを組むバックプレート式の製品も、スムーズに組めるもの、ネジを落としやすくイライラするものなど、差がある

 取り付けやすさについては、何十回も着脱を繰り返すわけでもないので割り切ることもできるが、メンテナンスの際に差が出てくる。この価格帯の製品であれば、マザーボード表面から装着する、リテールクーラーと同様のプッシュピン方式のものが主流。この方式は、簡単に取り付けられる半面、重いクーラーだと一方向からマザーボードにムリな力がかかってしまう。バックプレート方式は、マザーボードの表裏から挟んで固定するためプッシュピン方式よりも作業が手間だが、重いクーラーでも確実に固定できるという点で優れる。とはいえ、バックプレート式も一様ではなく、さまざまな形があって、取り付けやすさや確実性はそれぞれ異なる。

低価格クーラーを見極めるため、高級クーラーの設定を利用する

高級クーラー「COOLER MASTER V8 GTS」を使ってOC設定を見極める

 低価格なCPUクーラーを試す前に、まず高級なCPUクーラーをリファレンスとしてテストしてみた。高級CPUクーラーとして用いたのは、Cooler Master Technologyの「V8 GTS」。実売で1万3,000円前後という価格は、今回ターゲットにした4,000円未満の製品に対し約3倍とかなり高価だ。

 V8 GTSの構造は、ハイエンド空冷CPUクーラーで一般的なツインタワーを超えるトリプルタワーのヒートシンクに、14cm径ファンを2基、6mm径ヒートパイプを8本、そしてベース部分にはベイパーチャンバーを組み合わせている。その冷却性能は、TDPで250W相当とされ、53WのPentium G3258には明らかにオーバースペックだ。このように強力なCPUクーラーを用いて、Pentium G3258のOC設定を探り出してみた。

OC設定
CPU倍率は47倍、CPUコア電圧は1.4Vで安定動作

 さて、試行の末実現したOCの安定設定は、CPU倍率は47倍、コア電圧は1.4Vというもの。使用したマザーボードのチップセットはIntel Z97であるため、CPUコア電圧(Vcore)の設定に高クロック時のみ電圧を変更するAdaptiveモードを利用でき、負荷に応じて0.8~1.4Vまで変化させられる。実測では4.7GHz駆動時でおよそ1.434Vだった。

 今回は常用を想定して、CPUにかける負荷については、アプリケーションベンチマークであるPCMark 8のCreativeテストを1巡実行できることを目安とし、高負荷時のCPU温度や動作音もこのテスト中の最大値を用いることにした。

 V8 GTSを使ったベンチマークの結果は、定格(3.2GHz)の高負荷時のCPU温度が47℃で動作音が45.6dB、4.7GHz時のOC高負荷時のCPU温度が77℃で動作音が50.4dBとなった。定格では高負荷でも50℃以下、OC時でも80℃を下回っているのは、常用に申し分のない冷却性能と言えるだろう。ただし、より上位のCPUをターゲットにしたクーラーの性格上、動作音に関しては少々大きめなので、今回の常用PCではもう少し静かなものを期待したいところだ。

V8 GTSを利用した際のCPU温度と動作音
【ベンチマークPCの構成】
カテゴリー製品名
CPUIntel Pentium G3258(3.2GHz)
マザーボードASUSTeK Computer Z97-K(Intel Z97)
メモリCFD販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)
SSDPhilips & Lite-On Digital Solutions PX-128M3(Serial ATA 3.0、128GB、MLC)
電源ユニット恵安 BULL-MAX PLATINUM KT-AP550AXP(550W、80PLUS Platinum)
CPUクーラーCooler Master Technology V8 GTS(サイドフロー、14cm径×2)

オススメの低価格CPUクーラー

やぐら不要のシンプル設計
ARCTIC COOLING Freezer i11

ARCTIC COOLING Freezer i11
実売価格:4,000円前後、9cm角ファン、バックプレート取り付け

 3本のヒートパイプを両側から通したデザイン。9cm角ファンははめ込むだけの簡単な構造だ。やぐらのないシンプルなリテンション構造を採用しているため、本体固定作業と同時に裏面のバックプレートとの位置合わせもしなければならず、取り付けには若干のコツがいる。コアプレートはヒートパイプを直接接触させるタイプだが、接触面が小さい。ヒートシンクはやや大きめだ。

【主なスペック】
対応CPUソケット:LGA1150/1155/1156/2011、ファン:9cm角(500~2,000rpm、PWM)、サイズ(W×D×H):108×90×130mm、重量:480g

取り付けやすさをチェック!
クーラーの付けやすさファンの付けやすさメモリとの干渉採点
☆☆★☆2
コアプレートの面積はCPUのヒートスプレッダと比べてもやや小さめ。表面はまずまず平滑だが、隙間も見える
バックプレートにネジで4カ所を固定する。バックプレート側を両面テープなどで固定すると位置合わせがしやすい
ファンは1本目のメモリスロットにかぶさる格好。ただし、通常の高さのメモリであれば問題はない

リテール準拠の簡単取り付け
Cooler Master Technology Hyper TX3 EVO

Cooler Master Technology Hyper TX3 EVO
実売価格:3,600円前後、9cm角ファン、リテール準拠取り付け

 3本のヒートパイプを両側から通す構造で、9cm角のファンはスナップインのはめ込みタイプ、LGA1150に装着する際はリテール準拠のプッシュピン方式だ。コアプレートへの固定金具の装着には8本のネジを用いるが、全体的に見て組み立てはかなり簡単で作業時間も短くてすむ。一定の間隔を空けつつ配置された3本のヒートパイプは、ヒートスプレッダに直接接触させる方式を採用している。

【主なスペック】
対応CPUソケット:LGA775/1150/1155/1156/1366、Socket AM2/AM3/AM3+/FM1/FM2、ファン:9cm角(800~2,800rpm、PWM)、サイズ(W×D×H):92×79×136mm、重量:約386g

取り付けやすさをチェック!
クーラーの付けやすさファンの付けやすさメモリとの干渉採点
★★★☆4
コアプレートは面積も十分で平滑度も高い。しかし、ヒートパイプとベースとの間に若干の隙間が見える
金具をネジでコアプレートに固定すればリテールクーラー同様に装着できる。ただ、プッシュピン式なりのコツはいる
ヒートシンクは薄いものの、1番目のメモリスロットにファンがかぶさる格好。通常の高さのメモリであれば問題はない

手回しネジで簡単組み立て
Enermax Technology ETS-N30-TAA

Enermax Technology ETS-N30-TAA
実売価格:3,300円前後、9cm角ファン、バックプレート取り付け

 3本のヒートパイプを両側から通すオーソドックスな構造で、リテンションはバックプレート方式を採用している。コアプレート部の4本のネジ以外は手回しネジで力加減が分かりにくいが、力を込めてしっかりとねじ込もう。ファンははめ込み方式を採用しており、全体的に組み立ては簡単だ。ヒートパイプはヒートスプレッダに直接接触するが平滑度はあまりよくなく、グリスを多めに盛って対応したい

【主なスペック】
対応CPUソケット:LGA775/1150/1155/1156/1366、Socket AM2/AM3/AM3+/FM1/FM2/FM2+、ファン:9cm角(800~2,800rpm、PWM)、サイズ(W×D×H):92×79×134mm、重量:約365g(実測)

取り付けやすさをチェック!
クーラーの付けやすさファンの付けやすさメモリとの干渉採点
★☆★☆3
コアプレートは面積的に十分だが、ヒートパイプの両端は実質的に接触しない。隙間も大きめでやや不安が残る
先にバックプレートをネジで固定した上で、4本のネジで固定する。手回しネジなのでしっかりと力を込めよう
スリムなヒートシンクだが、1番目のメモリスロットに若干かぶさる。通常の高さのメモリならクリアランスは十分だ

低価格ながら高い加工精度
RAIJINTEK THEMIS

RAIJINTEK THEMIS
実売価格:3,000円前後、12cm角ファン、バックプレート取り付け

 3本のヒートパイプを両側から通す構造に、12cm角ファンを組み合わせた大きめの製品。コアプレートはヒートパイプをヒートスプレッダに直接接触させるタイプで平滑度も高く、指で触っても段差を感じないほど精巧だ。ファンの固定には針金状のクリップを用い、固定には多少のコツがいる。リテンション構造はバックプレート方式。上部構造を組んでから、そこにプレートを渡して最終的に固定する。

【主なスペック】
対応CPUソケット:LGA775/1150/1155/1156/1366/2011、Socket AM2/AM3/AM3+/FM1/FM2/FM2+、ファン:12cm角(1,000~1,500rpm、PWM)、サイズ(W×D×H):122×75×158mm、重量:約578g(実測)

取り付けやすさをチェック!
クーラーの付けやすさファンの付けやすさメモリとの干渉採点
★☆★★3
コアプレートの大きさは、ほぼLGA1150サイズ。ヒートパイプを直接接触させる方式でも十分な平滑度を実現
裏はバックプレート、表はやぐらを組んで装着する本格派だが、工数は多いものの難易度は高くない
1番目のメモリスロットにもかぶさらないスリムなヒートシンク。これなら背の高いメモリをフルに挿せる

スリムPCに最適なトップフロータイプ
REEVEN STEROPES RC-1206

REEVEN STEROPES RC-1206
実売価格:3,900円前後、12cm角ファン、独自リテンション取り付け

 今回紹介する中では唯一、背の高さを抑えたトップフロータイプ。ヒートパイプは5本で、うち3本を両側から通し、コアプレートはヒートパイプを内部に通す構造だ。固定方法は、各CPUソケットに合わせた金具を装着後、裏面から4本のネジで固定するタイプ。その際はファンを取り外す必要もない。工数も少なく、取り付けは簡単と言える。

【主なスペック】
対応CPUソケット:LGA775/1150/1155/1156/1366、Socket AM2/AM3/AM3+/FM1/FM2/FM2+、ファン:12cm角(500~2,000rpm、PWM)、サイズ(W×D×H):125×129×60mm、重量:470g

取り付けやすさをチェック!
クーラーの付けやすさファンの付けやすさメモリとの干渉採点
★★☆☆2
コアプレートの面積は、LGA1150 CPUのヒートスプレッダと比べるとやや大きめ。鏡面仕上げで平滑度も十分だ
マザーボードの裏面からネジ4本で固定する。位置合わせさえしっかりできれば取り付けは簡単だ
12cm角ファンを用いたトップフロータイプで、メモリスロット2本分ほどを覆う格好。高さには余裕がない

がっちりしたやぐらで高剛性
Thermaltake Technology NiC L32

Thermaltake Technology NiC L32
実売価格:3,300円前後、14cm径ファン、バックプレート取り付け

 ヒートパイプを両側から3本通す構造で、この価格帯の製品ではめずらしく14cm径ファンを採用しておりヒートシンクも大きい。ヒートスプレッダはヒートパイプを直接接触させるタイプで、わずかな隙間はあるものの中央部分は十分に平滑。固定に必要な工数は多く手間もかかるが、装着の安心感がある。14cm径ファンは専用タイプで汎用品ではない。

【主なスペック】
対応CPUソケット:LGA775/1150/1155/1156/1366/2011、Socket AM2/AM3/AM3+/FM1/FM2、ファン:14cm径(500~1,800rpm、PWM)、サイズ(W×D×H):150×65×160mm、重量:620g

取り付けやすさをチェック!
クーラーの付けやすさファンの付けやすさメモリとの干渉採点
★☆★★3
コアプレートはヒートパイプ両端に若干の隙間が見えるものの、全体的には平滑で面積もLGA1150向けには十分
マザーボード両面からの作業は必要になるが、がっちりした四角い枠のやぐらにネジで固定するため安心感がある
25mm厚ファンだがヒートシンクがスリムでメモリスロットにはかぶさらない。これなら背の高いメモリも装着可能だ

リテール準拠の大型クーラー
サイズ 兜2

サイズ 兜2
実売価格:3,400円前後、12cm角ファン、リテール準拠取り付け

 12cm角ファンを採用したトップフロータイプ。3分割されたヒートシンクは大きく、それぞれ2本、計6本と多めのヒートパイプを通している。ヒートパイプは片側のみだが、自重で曲がることを防止するための支柱も付く。固定方法はリテールクーラー準拠で、LGA2011もクリップを交換するだけでとにかく簡単に付けられる。構造的にはかなりオーソドックスだが、各部の作りがていねいだ。

【主なスペック】
対応CPUソケット:LGA775/1150/1155/1156/1366/2011、Socket AM2/AM3/AM3+/FM1/FM2、ファン:12cm 角(300~1,300rpm、PWM)、サイズ(W×D×H):132×140×130mm、重量:695g

取り付けやすさをチェック!
クーラーの付けやすさファンの付けやすさメモリとの干渉採点
★★★★4
鏡面加工されたコアプレートの表面は平滑度も高い。面積にも余裕があり、LGA115x系のみならずLGA2011にも十分だ
クリップを交換すれば、LGA115x系だけでなく、そのほかのCPUにもリテール準拠の方法で装着できる
2番目のメモリスロットまでかぶさる格好だが、クリアランスは十分。背の高いモジュールも装着可能だ

1クラス上のスペックを提供
サイズ 虎徹

サイズ 虎徹
実売価格:3,200円前後、12cm角ファン、バックプレート取り付け

 4本のヒートパイプを両側から通す構造。ヒートシンクもかなり大きく、スペック的に1クラス上の印象だ。12cm角ファンのブレードには溝が設けられ、これにより空気抵抗を減らしていると言う。バックプレート方式で表面にはやぐらを組み、プレートを通して固定する。本格的ではあるが、組み立てにくくはない。それぞれの部品は、工具でしっかりと固定できる安心感がある。

【主なスペック】
対応CPUソケット:LGA775/1150/1155/1156/1366/2011、Socket AM2/AM3/AM3+/FM1/FM2、ファン:12cm 角(400~1,400rpm、PWM)、サイズ(W×D×H):130×83×160mm、重量:480g

取り付けやすさをチェック!
クーラーの付けやすさファンの付けやすさメモリとの干渉採点
★☆★★3
コアプレートの面積はLGA1150 CPUに対し一回り大きめ。鏡面加工されており平滑度も高い
バックプレートにやぐらを組む本格的な構造。それぞれの部品は、すべて工具を用いて確実に固定できる
1番目のメモリスロットにはかぶさるものの、高さには十分な余裕がある。ある程度高さのあるメモリも装着可能だ

CPUクーラー 8製品の冷却性能をチェック

 今回の検証では、定格動作(3.2GHz)のアイドル時と高負荷時、および4.7GHzにOCした状態での高負荷時という3パターンのCPU温度を計測した。負荷に関しては、PCMark 8のCreativeテストを1巡させた(通常は3巡でスコアを算出するテスト)。PCMark 8は、シナリオに沿って実際のアプリケーションを順次実行していくベンチマークテストで、CPUにもGPUにも適度な負荷がかかる。実際の使用状況をシミュレートするには都合がよい。

 冷却性能に関しては、HWMonitor 1.25を用いてCPU温度(CPU TemperaturesのPackage)を計測し、これを評価することとした。結果は以下のグラフのようになっている。まず、アイドル時に関してはどれも30℃前後となり、冷えるものでは28℃、高いものでも32℃に収まった。定格での高負荷時のCPU温度は、製品ごとの差が大きくなったものの50℃前後で、定格運用であればもちろんどの製品も十分な冷却性能を発揮することが示された。よく冷えるものでは47℃に抑えられている一方で、背が低く、ヒートシンクが薄いREEVEN STEROPES RC-1206は56℃と、やや高めの温度だ。

 これを踏まえて、4.7GHz設定でのOC高負荷時を見ていくと、各製品、定格での高負荷時に30℃程度プラスされるようなイメージだ。多くの製品で80℃を超える値となり、危険域の85℃に達するものも見られる。9cm角ファンモデルや、背の低いSTEROPESRC-1206はそうした傾向が強い。80℃未満に抑えられた優秀な製品は、まずThermaltake TechnologyのNiC L32。14cm径ファンと大きめのヒートシンクが、77℃に抑えられたポイントだろう。そしてもう一つ77℃だった製品がサイズの虎徹。こちらは12cm角ファンだが、ヒートシンクに厚みがあり、ヒートパイプの本数も多め。両製品とも高級クーラーの代表として計測したV8 GTSと同水準であり、コストパフォーマンスの高さが光る。これらに続くのがRAIJINTEK THEMISやサイズ 兜2で、これらは12cm角ファンモデルで80℃だった。

CPU温度のグラフ

動作音をチェック

 まず、定格のアイドル時と高負荷時で見ると、どの製品も40dB以下に抑えられており、かなり静かだった。RAIJINTEK THEMISが多少、耳に付くかなといった程度。一方でOCの高負荷時になると、動作音の大小がはっきりしてくる。とくに耳障りだったのは9cm角ファンのモデル。ARCTIC COOLINGFreezer i11は40dB以下に収まったが、残る2製品は50dBを超えた。続いてTHEMISや、REEVEN STEROPES RC-1206が40dB台前半まで上昇。好成績なのはサイズの2製品。ファンの回転数が低めに設定されており、とくに虎徹は冷却性能を考え合わせてもとても優秀、兜2は冷却性はほどほどだが、とくに静音性を重視した設計と言える。

動作音のグラフ

評価の詳細

 冷却性能、動作音、取り付けやすさという冒頭で挙げた三つのポイントを数値化した。冷却性能と動作音は、定格時よりもOC時、アイドル時よりも高負荷時の結果を重視し、重み付けをして評価している。取り付けやすさは感覚なので多少の個人差もあるだろう。形状の複雑なREEVEN STEROPES RC-1206は、マザーボードに取り付ける向きを考えなくてはいけない手間も加味している。

冷却性能、動作音、取り付けやすさの3点を数値化、25点満点で評価している

総合評価

 各社、ヒートシンクの形状やヒートパイプのコーティング、ヒートパイプをCPUに直接接触させるなど工夫を凝らしているものの、冷却性能の基本はヒートシンクとファンの大きさ、ということが如実に現われた。上位ランクの製品であれば、4,000円未満のCPUクーラーでも、Pentium G3258をOC状態で常用できる性能を十分備えていると言える。

総合性能の高さならコレ!
冷却性能重視ならコレ!
静音性重視ならコレ!
【サイズ 虎徹】
12cm角ファンに厚みのあるヒートシンクを組み合わせ、冷却性能はもちろん静音性も高くバランスがよい
【Thermaltake NiC L32】
14cm径ファンで冷却性能はトップクラス。OC時の動作音もギリギリ40dB以内に収まっている
【サイズ 兜2】
OC高負荷時は80℃に達したが、ケース内のエアフローに気を配れば大丈夫。静かでメンテナンス性もよい

[Text by 石川ひさよし]



DOS/V POWER REPORT 9月号は7月29日(火)発売】

★巻頭特集「冷却周まわりの新たな鉄則、教えます~冷却・静音、これが答えだ!~」はもちろん、USBバスパワーで動作する冷却グッズや薄型CPUクーラーの紹介、6TBクラスの大容量HDD特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事を掲載

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(AKIBA PC Hotline!編集部)