パワレポ連動企画

メモリのスペシャリストに聞くDDR4最新事情

【ド本命登場!Skylake K(9)】

DOS/V POWER REPORT 2015年10月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2015年10月号」の第一特集「システム一新でヌルサク環境をこの手に! ド本命登場!Skylake K」を掲載する。

 第9回目では、高品質メモリーの製造に定評のあるセンチュリーマイクロを訪ね、DDR4メモリの最新事情についてメモリのスペシャリストに話を聞いた。その模様をインタビュー形式でお送りする。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年10月号は全国書店、ネット通販にて8月29日(土)に発売。大本命の新CPUを解説した第一特集のほか、HDDを飲み込む勢いの最新デバイスを紹介する第二特集「NVMe対応モデルが超速い!500GBオーバーの大容量モデルが超安い! とにかく今、SSDが欲しい!!」、新世代メモリを採用した高性能ビデオカード「Radeon R9 Fury X&Furyの実力に迫る!」、興味はあるけど、どうすればいいのか分からないというあなたに実際の乗り換え手順をご紹介!「安くて!速くて!自由に選べる!初めての格安SIM」、光る!回る!!ただのファンでも製品ごとに結構違う「個性いろいろ、選ぶ楽しみ 特選ケースファンギャラリー22」など、特別企画も満載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は「最新ビデオカードカタログ 2015」 AMD Radeon&NVIDIA GeForce搭載の現行製品が勢揃い!


-メモリのスペシャリストに聞くDDR4最新事情-


メモリのスペシャリストに聞く
DDR4最新事情

センチュリーマイクロ株式会社
セールス・マーケティング
中沼雄介 氏
 鉄板と評されるセンチュリーマイクロ製メモリモジュールの高品質、高信頼性を支える若手スタッフ。技術に対する造詣も深く、秘密の資料を持参し、同社製モジュールの品質の高さを熱く語っていただいた。

 Skylakeプラットフォームでは、メインメモリにDDR4 SDRAMをサポートする。ウルトラハイエンドのLGA2011-v3で採用されてから約1年が経ったが、メインストリームへの導入を控えて市場の動きも活性化しつつある。同時に、技術面でも新しい動きがあるようだ。

 メモリの鉄板ブランドとして知られるセンチュリーマイクロを訪ね、メモリのスペシャリストに最新のDDR4事情を聞いた。

DDR4 DIMMでは、DDR3 DIMMに比べて、端子は240ピンから288ピンに増え、基板は1.27mmから1.4mmへと厚みが増している。端子部分に緩やかな傾斜を付けた「step-and-ramp」と呼ばれる形状も特徴だ

――DDR4 DIMMでは端子部分にカーブが付いていますが、なぜこのようになっているのでしょうか? JEDECには「挿入時の衝撃や力を和らげる」という説明があるのですが、今一つピンと来ません。

中沼氏:デスクトップ向けのメモリモジュールはソケットに並ぶバネ状のピンを基板で押し広げて密着させる構造です。DDR4 DIMMはDDR3 DIMMよりも基板が厚くなり、ピンも48ピン増えて288ピンですから、仮に従来のままですと288ピンで一気に押し広げることになり、力が必要です。このようなカーブを付ければ真ん中部分から段階的にピンに入り、挿入時の力を分散させることができます。実際にDDR4を装着してみると、DDR3に比べてスムーズに入ると思います。

――そういう仕組ですか。ところでJEDECのリファレンス基板が変わったそうですね。

JEDECの仕様書(4_20_26_AnnexBR25)。TL0(端子からダンピング抵抗までの長さ)などが記載されているが、赤枠の旧基板と青枠の新基板では、長さが大きく違うことが分かる

中沼氏:はい。Unbuffered DIMM(ECCなし)ですと、JEDECの仕様書で「4_20_26_AnnexBR25」に新旧基板の仕様が記載されています。「B1」と記載されているものが、新基板です。DIMM 1本あたりにデータ用の信号線が64本あるわけですが、このデータ線が非常に短いのが最大の特徴です。パターン配線が短くなれば、線間遅延(スキュー)も、静電容量も小さくできますので、これから周波数が上がっていっても、良好なスイッチング特性が実現できるのではないかと思います。仕様書に信号線の長さの記載がありますが、最大で15mm近く短くなっています。

――確かにずいぶん短くなっています。

中沼氏:実際に新旧のモジュールを見てもらうと、チップが端子にグッと近く配置されていることが分かると思います。新基板ではデータ線を短くするために、ダンピング抵抗(端子近くにある抵抗)は、旧基板では4連のものを使っていたのを、新基板ではより小さいセパレート式のものを使っており、パターンの冗長な部分が削減され、隣接する信号線同士の干渉を避けられるようになっています。新基板にはチップの上にかなり大きなコンデンサが実装されていますが、これも良好なスイッチング特性の実現に貢献しています。新旧ではまったく別物と言ってよいくらいに進化しています。

センチュリーマイクロの新旧PC4-17000モジュール(新基板はプロトタイプ)。一見して新基板(下)のほうがメモリチップが端子に近く配置されていることが分かる
新基板(左)では端子とDRAMチップの間のダンピング抵抗が非常に小さく、DRAMチップ上部にあるチップコンデンサも大きくなっている

――となると、オーバークロックもしやすくなるのではないかと期待してしまいますが。

中沼氏:メーカーの立場からははっきりしたことは言えませんが、当社がプロトタイプを提供した取引先によれば、軽く試してみただけでもDDR4-3000以上での動作が確認できたという話です。

――JEDECの仕様では、DDR4-3200まで記載がありますが、今後の高速規格の製品化の見通しは?

中沼氏:先日、ネイティブのDDR4-2400 SDRAMチップを搭載したPC4-19200モジュールの発売をアナウンスさせていただきましたが、それがこの新基板を採用しています。今後の見通しについては、あくまで個人的な見解ですが、ダイが次世代になれば、今後予定されている速度(DDR4-3200)までスムーズに行けるのではないかと見ています。たとえば、SK hynixでは、現行はMダイ(29nmプロセスルール)ですが、Aダイ(25nm)の開発が進んでおり、これにより大きく進化するのではないかと期待しています。

――新旧基板で設計や製造難易度の違いは?

センチュリーマイクロ製メモリモジュールの新基板のプロット図の一部。旧基板はデータ線を1層にまとめて配線するようになっているが、新基板は2層に分けて配線するため、この部分でも信号線間の干渉が少なく、良好なスイッチング特性が得られると言う

中沼氏:新基板は仕様的にとにかく細かいところを頑張って詰めているものですが、設計的にはとくに難しいところはありません。ただ、製造面では、やはり高い精度が求められるようにはなっていますね。DRAMチップの間隔が狭くなったことで、間に実装するチップコンデンサは非常に小さくなりましたし、先ほど触れたセパレート式の抵抗もやはり小さいですから。少しのズレも不良の原因ですし、ハンダも載りにくいですので、工場には高い精度が求められます。

――少し時系列が戻りますが、DDR3 DIMMからDDR4 DIMMになって、設計や製造面で変わったことはありますか?

中沼氏:そうですね。製造面では少し難しいところもあります。というのも、DDR4 DIMMでは板厚がDDR3 DIMMの1.27mmから1.4mmまで厚くなっており、これはマザーボード(1.6mm)に近い数値です。そのため、おそらく従来と同じ手法で製造しては歩留まりは低下するのではないかと思います。

――基板が厚いとどのような難しさがあるのでしょう?

中沼氏:基板は厚いほうが多層化ができるメリットはあり、これは将来的な高速化も見据えてのものだと思います。ただ、スルーホール(多層基板間の配線を電気的に接続するための貫通穴)を貫通させてパターンを接続しなければならないため、厚くなれば厚くなるほど、スルーホールのメッキ品質を保つことが難しくなります。実は、当社ではDDR3 DIMMとDDR4 DIMMでは基板の製造方法を変えていまして、手間はかかるのですが、スルーホールの信頼性を維持することを最優先に考えています。具体的には、エッチングの手法を「テンティング法」から「ハンダ剥離法」へと変えています。こちらはフィルムではなく、ハンダをレジストに使うため、細いパターンも成形できますし、スルーホールの信頼性も格段に上がっています。

――センチュリーマイクロのDDR4メモリはここが違うぞというところがあれば、教えてください。

JEDECの仕様書(4_20_26_AnnexBR25)の最終ページには、基板構成に関するガイドラインが掲載されている。赤枠がレイヤー、黄枠がインピーダンス整合、青枠が層の厚さを示している

中沼氏:もっともこだわっているのは、特性インピーダンスの整合性です。これが悪いとノイズとなる反射波が発生し、動作異常(いわゆる相性含む)や故障の原因になるため、特性インピーダンスの整合性は信頼性の面できわめて重要な要素と考えています。JEDECもリファレンスのガイドラインを用意しており、望ましいインピーダンス整合と、基板を構成するガラス層、銅箔層、それぞれの厚みなどを規定しています。低コスト化のためにこのリファレンスよりもさらに簡略化しているメーカーもあると聞きます(たとえば本来は違う厚さの基板を同じ厚みにしてしまえばコスト削減できる)が、仮にこのガイドラインに忠実に製造したとしても、インピーダンス整合が取れるとは限りません。

 (ここで秘密の資料を取り出す)これは公開はできませんが、当社の設計データです。リファレンスとは基板もパターンもかなり異なるものになっているのが分かると思います。これは、長年の付き合いがある工場にご協力いただきながら、設備のクセ、特徴などまで踏まえて、補正を重ねて徹底して追い込んだ結果、基板の厚みは1,000分の1mm単位までこだわって実現できたものです。仮に、海外の工場だとしたらここまで細かいやり取りを重ねることができるかどうか……。やはり、日本製造ならではの特性のよさが出せているという点が、当社のセールスポイントだと自負しております。結果的に基板のコストはかなり高くつきますが、信頼性、品質面に関しては絶対の自信を持っています。

センチュリーマイクロ株式会社

センチュリーマイクロ株式会社HP
http://www.century-micro.co.jp/

 メモリモジュールの専業メーカーとして30年以上の歴史を持つ。設計と検査だけでなく製造も国内工場で行なうことにこだわっており、高度な品質と信頼性が要求される産業用メモリで実績を積み重ねている。

 その品質、信頼性の高さはDIY市場でも知られており、鉄板ブランドとして強く支持されている。


[Text by 鈴木雅暢]


DOS/V POWER REPORT 2015年10月号は2015年8月29日(土)発売】

★第1特集「システム一新でヌルサク環境をこの手に! ド本命登場!Skylake K」
★第2特集「NVMe対応モデルが超速い!500GBオーバーの大容量モデルが超安い! とにかく今、SSDが欲しい!!」
★特別企画「新世代メモリ“HBM”採用で次のステージへ Radeon R9 Fury X&Furyの実力に迫る!」「安くて!速くて!自由に選べる!初めての格安SIM」「個性いろいろ、選ぶ楽しみ 特選ケースファンギャラリー22」
★連載「最新自作計画」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
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http://book.impress.co.jp/teiki/dvpr/2015-08-22-0000.php

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(AKIBA PC Hotline!編集部)