パワレポ連動企画

小型マザーボード最新事情 ~Mini-ITXマザー4製品の使い勝手を検証~

[小型PC徹底紹介(9)]

DOS/V POWER REPORT 6月号

 自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新6月号の特集記事、「小型PCの正解はどっち? Mini-ITX vs microATX」をまるごと掲載する当企画の9回目は、小型マザーボードの最新事情を紹介。

 microATX/Mini-ITXマザーボードを選ぶ際のポイントを解説するほか、レイアウトが異なる4種類のMini-ITXマザーボードの使い勝手を検証する。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 6月号は現在発売中。40ページにもわたる今特集に加え、「Windows XPからの正しい引っ越し手順」の特集などが組まれているほか、Windows 8.1対応ストアアプリ対応辞典が特別付録小冊子として用意されている。


- DOS/V POWER REPORT 2014年6月号 Special Edition -


小型マザーボード最新事情
-ATXの常識が通用するmicroATX、通用しないMini-ITX-

 ここではmicroATX、Mini-ITXマザーボードの最新事情、また、それぞれの規格(フォームファクター)の違いについて解説しよう。とくにMini-ITXマザーはATXマザーの常識が通用しないことが多く、注意が必要だ。

microATX、Mini-ITXともに幅広いモデルが揃う
ゲーミングモデルや全部入りモデルも登場

ATXでトレンドの特化型マザーは
microATX、Mini-ITXでも手に入る
機能を満載したオーバークロッカー向けのMini-ITXマザーボードが登場
ASUSTeKのMAXIMUS VI IMPACTは、ドーターカード式のVRMや拡張カードを採用することでATXに劣らない機能を実現している
軍用グレードの部品を採用した高耐久マザーボードもある
ASUSTeKのGRYPHON Z87のように、コンデンサなどに軍用レベルの高級品を採用するなど、耐久性を追求したモデルも登場している

 少し前までは、microATXやMini-ITXマザーボードはATXマザーと比べると製品バリエーションが少なく、機能的にも劣るものばかりであった。しかし、現在ではゲーミングモデルや、ATXマザーに劣らないオーバークロック機能を持つモデルなども登場、選択の幅は格段に広がっている。小型マザーボードだから何かの機能をガマンしなければならないということはない。

microATX、Mini-ITXマザーはどこに気を付けて選ぶべき?

 microATXマザーボードは、ATXマザーボードの拡張スロット3本分のスペースを削ることで小型化したものであり、その拡張スロットの数を除けば、搭載されている機能などにさほど違いはなく、ATXマザーボードと同じ感覚で選ぶことができる。

 対してMini-ITXマザーボードはそういうわけにはいかない。と言うのは、そのコンパクトさゆえに、各種機能をATXやmicroATXマザー同様に搭載するのは難しく、機能やレイアウトが製品によって大きく異なるからだ。コンパクトなPCケースで使用することが多いMini-ITXでは、とくにレイアウトの違いは重要。使用するケースとの相性を事前に確認しておこう。

各フォームファクターの違い
【ATXマザーボード】
基本サイズは305×244mm。CPUソケットやチップセット、メモリスロットなどの配置は、同じCPUに対応するマザーボードであればほぼ変わらない
【microATXマザーボード】
基本サイズは244×244mm。ATXフォームファクターの拡張スロット3本分のスペースを削ることで小型化したもので、CPUソケットやチップセット、メモリスロットなどの配置はATXマザーに準じている
【Mini-ITXマザーボード】
基本サイズは170×170mm。CPUソケットやチップセット、メモリスロットなどの配置は、同じCPUに対応するマザーボードであっても大きく異なる。使用するPCケースやCPUクーラーなどによっては各種スロットやコネクタの位置が原因で使えないことがあるので、製品を選ぶ際にはよくレイアウトを確認する必要がある

Mini-ITXマザーのレイアウトは主に4パターン

 Mini-ITXマザーのレイアウトには、大きく分けると、「ATXマザーボード準拠のもの」、「ATXマザーボード準拠だがCPUソケットが右寄りに搭載されているもの」、「チップセット、Serial ATAポートをCPUソケットの右側に搭載するもの」、「メモリスロットが拡張スロットの反対側に平行に搭載されているもの」の4種類がある。

 以下で、レイアウトによって使い勝手がどう変わるのかを検証していく。検証用機材には、CPUクーラーにMini-ITXマザーで使用できる最大級のもの、PCケースにSFX電源対応の小型キューブタイプのものと、起こり得る問題点をなるべく多くあぶり出すべく、少し極端なものを使用してみることにした。

【検証用機材】
CPUクーラーに12cm角ファンを搭載したサイズのBIG SHURIKEN 2 リビジョンBを使用。実売価格は4,500円前後
PCケースにはSilverStoneの小型キューブタイプケースSugo SST-SG06S-LITEを使用。実売価格は6,000円前後

1.ATXマザーボード準拠のレイアウト

【ASUSTeK Computer H87I-PLUS】実売価格:13,000円前後
チップセットにIntel H87を搭載したLGA1150マザーボード。ATX準拠のレイアウトのため、ATXマザーに慣れていると一見使いやすそうに思えるが、Mini-ITX環境ではどうなのかチェックしてみたい。

大型CPUクーラーを使った場合にどんな問題が出るか?

 CPUソケットが基板の端に寄っているため、今回使用したCPUクーラーは装着する向きによってはボードをはみ出してしまった。搭載するケースにもよるが12cmクラスのファンを搭載したトップフロータイプのCPUクーラーには適さないレイアウトと言ってよいだろう。反対に、拡張スロット側はスペースに余裕があるのでビデオカードの装着は問題ない。

【主要な機能で使えなくなるものはない】
Serial ATAポートも問題なく使え、ビデオカードもムリなく装着できるなど、主要機能が犠牲になることはなかった
【ピンヘッダの活用に難が生じる場合も……】
一部のピンヘッダの活用が難しくなる場合もある。とくにUSB 3.0ピンヘッダはケーブルが曲がりづらいので位置が重要
【メモリは高さが重要】
12cm角ファン採用の大型CPUクーラーだとメモリスロット上にヒートシンクの一部がかかるので、メモリの高さに注意が必要だ

ケース装着時のケーブルの取り回しはどうか?

 Serial ATAポートが一般的なPCケースにおけるドライブベイ側にあるので、Serial ATAケーブルの取り回しは良好。電源ケーブルは、ATX24ピンコネクタ、ATX12Vコネクタともにボード端にあるため接続しやすかった。

【ケーブルの取り回しは良好】
Serial ATA ポート、ATX24ピンコネクタが標準的なケースのドライブベイ側にあるため、左の写真のようにケーブルの取り回しは楽。右の写真のように接続も行ないやすかった

大型クーラーとの相性は△、ケーブルの取り回しは○

 大型のCPUクーラーとの組み合わせでは、USB 3.0のピンヘッダの使用が難しくなってしまった。それ以外は問題がなかっただけに残念。ケーブルの取り回しは良好で、レイアウト的にはよくできていると感じた。


2.ATXマザーボード準拠だがCPUソケットが右寄りに搭載されているレイアウト

【ASRock Z87E-ITX】実売価格:18,000円前後
チップセットにIntel Z87を採用したLGA1150マザーボード。基本はATX準拠のレイアウトながらCPUソケットが右寄りに設置されているのが特徴。大型CPUクーラーの使用の可否などが気になるところだ。

大型CPUクーラーを使った場合にどんな問題が出るか?

 CPUソケットが基板の端に寄っているため、今回使用したCPUクーラーは装着する向きによってはボードをはみ出してしまった。搭載するケースにもよるが12cmクラスのファンを搭載したトップフロータイプのCPUクーラーには適さないレイアウトと言ってよいだろう。反対に、拡張スロット側はスペースに余裕があるのでビデオカードの装着は問題ない。

【大型CPUクーラーの装着は難しい】
12cm角ファン搭載CPUクーラーの場合、装着向きによってはボードを大きくはみ出してしまう。装着できた向きでもギリギリだった
【ビデオカードの装着は○】
拡張スロット側には空きがあるのでビデオカードは余裕で装着できる
【メモリは高さに注意】
CPUクーラーの一部がメモリスロットの上に来るのでメモリの高さには注意が必要となる

ケース装着時のケーブルの取り回しはどうか?

 Serial ATAポートや電源コネクタ類は下と左(拡張スロット側)にまとめられているため、ケーブルの取り回しは比較的楽に行なえる。唯一、EPS12Vコネクタは中央にあるため、CPUクーラーの下になり接続しづらかった。

【ケーブルの取り回しはおおむね良好】
各種ケーブル類の取り回しは良好。Serial ATA ケーブルも、ポートが標準的なケースのドライブベイ寄りにあるため取り回しやすい

大型クーラーとの相性は×、ケーブルの取り回しは○

 今回使用したケースでは使えたが、12cm角ファンを装備するトップフロー型のCP Uクーラーの装着は難しいと考えたほうがよい。ケーブルの取り回しはATX準拠モデルよりも、一方に固まっている分行ないやすかった。


3.チップセット、Serial ATAポートをCPUソケットの右側に搭載するレイアウト

【GIGABYTE GA-Z87N-WIFI(rev. 2.0)】実売価格:15,000円前後
Z87を搭載したLGA1150マザー。チップセットとSerial ATAポートがCPUソケットの右側に搭載されているなど、Mini-ITXならではのレイアウトが採用されている。ATXとはまったく違うモデルの使用感はどうだろうか。

大型CPUクーラーを使った場合にどんな問題が出るか?

 CPUソケットが拡張スロット寄りのため、12cm角ファンを搭載したCPUクーラーを使用した場合、PCI Express x16スロットが使えなくなってしまった。拡張スロットが必要な人は、CPUクーラーの選択を慎重に行なう必要があるレイアウトと言える。また、ほかのモデル同様、メモリの高さには注意が必要だ。

【ビデオカードが使えなくなった】
12cm角ファン搭載CPUクーラーだと一部がPCI Express x16スロットを覆うので、ビデオカードが使えなくなる
【メモリの高さにも注意が必要】
12cm角ファン搭載CPUクーラーだと一部がメモリスロット上に来るので、メモリの高さに注意する必要がある
【ATX12Vコネクタの装着も難しくなる】
ATX12Vケーブルの接続は、コネクタがCPUクーラーの下に来るため、マザーボードをケースに装着する前に行なう必要があった

ケース装着時のケーブルの取り回しはどうか?

 電源コネクタ類が右端にあるため、今回使用したケースのように右サイドからアクセスできるタイプのケースでないとケーブルの接続が難しい。また、標準的なケースでは、ドライブベイとSerialATAポートが離れているため、ケーブルの取り回しも悪くなる。

【右サイドからアクセスできるケースでないと厳しい】
今回使用したケースは写真のように右サイドからアクセスできたのでとくに困ることはなかったが、右サイドが開かないケースだと各種ケーブルの接続は厳しくなると思われる

大型クーラーとの相性は×、ケーブルの取り回しは△

 大型CPUクーラーとビデオカードを併用したい人には向いていないレイアウトと言ってよい。また各種コネクタが右端に寄っているため、右サイドパネルが開く構造のケースでないとケーブルの接続に難が出る。


4.メモリスロットが拡張スロットの反対側に平行に搭載されているレイアウト

【ASRock FM2A88X-ITX+】実売価格:11,000円前後
AMD A88Xチップセットを採用したSocketFM2+マザー。メモリスロットが拡張スロットの反対側に平行に搭載されているのが特徴。CPUソケットとメモリスロットが近く、CPUクーラーとの干渉が気になるところだ。

大型CPUクーラーを使った場合にどんな問題が出るか?

 CPUソケットが基板の中心にあるので、12cm角ファンを搭載した大型CPUクーラーでもバランスよく収まり、ボード端3辺に搭載された各種コネクタへのアクセスが制限されることはなかった。ただし、メモリスロットが完全にCPUクーラーの下になるため、メモリの高さには注意する必要がある。

【大型CPUクーラーがバランスよく収まる】
見てのとおりマザーボードのほぼ中心にCPUクーラーが固定され、搭載するケースを選ばない
【ビデオカードも余裕で使用できる】
12cm角ファン搭載CPUクーラーでも拡張スロットとの間に十分な空間がある。ビデオカードも余裕で使用できる
【メモリは高さが重要】
2本のメモリスロットをCPUクーラーの一部が覆うので、このクーラーの場合、3.8cm以上の高さのメモリは使用不能だった

ケース装着時のケーブルの取り回しはどうか?

 メモリスロットが右端にあるため、下に搭載されたSerial ATAポートやUSB 3.0ピンヘッダなどへのアクセスは良好。ケーブルの取り回しも行ないやすい。右端の電源コネクタはケースによっては難が出る可能性アリ。

【ケーブルの取り回しは行ないやすい】
今回使用したケースでは、Serial ATAポートやUSB 3.0ピンヘッダのまわりに余裕ができるため、ケーブルを楽に取り回すことができた

大型クーラーとの相性は○、ケーブルの取り回しは○

 今回検証したものの中では大型CPUクーラーの装着に一番適していた。メモリの高さには注意が必要だが、それ以外に問題となる点はない。ケーブルの取り回しもメモリにジャマされないため、楽に行なうことができる。

[Text by 滝 伸次]



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(AKIBA PC Hotline!編集部)