パワレポ連動企画
ビデオカード冷却・静音事情
【冷却まわりの新鉄則、教えます(3)】
(2014/7/30 12:05)
このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌9月号の特集記事「冷却周まわりの新たな鉄則、教えます~冷却・静音、これが答えだ!~」をほぼまるごと掲載する。
第三回目の今回は、昨今のビデオカードの冷却・静音事情を解説する。
なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 9月号は絶賛発売中。9月号では今回の特集のほか、USBバスパワーで動作する冷却グッズや薄型CPUクーラーの紹介、6TBクラスの大容量HDD特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、100個の自作PC問題を載せた「PC自作力 2014年度夏期試験」が小冊子として付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。
- DOS/V POWER REPORT 2014年9月号 Special Edition -
冷却強化で性能も向上!GPUクロックのブーストとは?
ブーストによる最大クロック状態を継続する秘訣は十分な冷却
冷却重要度:★★★、静音重要度:★☆☆
NVIDIAのGPUにはGeForce GTX 680以降、GPU Boostと呼ばれる自動オーバークロック機能が搭載されている。この機能は、Intel製CPUのTurbo Boostのように、GPUコアに負荷がかかるとクロックを定格以上に自動的に引き上げるというものだ。現行のKepler/Maxwell世代のGPUにはその改良版である「GPU Boost 2.0」が搭載されている。
GPU Boost 2.0の挙動はおよそ右の図のようなもの。まずGPUには「ベースクロック」と「ブーストクロック」の二つのクロックがあり、前者はCPUで言うところの“定格クロック”にあたり、通常の使用状況においては、高負荷時にこれ以下には下がらないクロックを示す。そして後者は、自動OCでどこまで上がるかを示すのものだが、実際にはこの値以上にクロックが上がることがある。ブーストクロックはブーストの目安に過ぎないのだ。
この知識を前提に本題に入ろう。現在のGeForce系のビデオカードのクロックは十分に冷えていればスペック以上のクロックで動作する可能性がある。しかしクーラーが小さかったり、PCケース内環境が劣悪だったりしてGPU温度が一定ラインを越える(80~83℃辺り)と、GPUのクロックは小きざみに上下しつつ、緩やかに落ちてゆく。
下のグラフは、安価でクーラーが小さな玄人志向の「GF-GTX760-E2GHD/OC/SHORT」と、やや高価だが高性能クーラーを搭載しているMSIの「N760GTX Twin Frozr 4S OC」に対し、30分間「トゥームレイダー」のベンチマークモードを実行したときのGPU温度とクロックの推移だ。前者はGPU温度が最高82℃と高く、開始約3分で最高ブーストクロックを維持できなくなっている。一方、後者はクーラーが大きい分最高温度は68℃にとどまり、さらにブーストクロックも最高値からまったく変動しなかった。厳密に言えば前者の最高クロックは後者よりわずかに高いのだが(1,162.7MHzに対し1,123.5MHz)、GPUの冷却力不足でそれを維持できないのだ。
つまりGeForce系ビデオカードのポテンシャルを最大限発揮させるには、GPUの冷却が最優先事項と言える。冷却をおろそかにすることは、本来出せるであろうポテンシャルを無造作に捨てているのと同義と言っても過言ではないのだ。
【Radeonファミリーではどうなのか?】
Radeon系ビデオカードのスペック表では、最高クロック(ブーストクロック)のみ表記されていることがほとんどだが、一部でベースクロックも記載されている。基本的に高負荷になるとほぼブーストクロックに張り付いたままで、深刻な冷却不足など悪条件下でのみクロックが低下する。
エントリークラスでは低消費電力=低発熱の新製品も
冷却重要度:★☆☆、静音重要度:★★★
静音性が何より大事という場合は、GeForce GT 730クラスのエントリークラスのGPUを搭載した低価格カードという選択肢もある。このクラスの製品は低発熱&低消費電力なのでファンレスでも問題なく運用できるのだ。GPU Boostのようなクロック変化機能は搭載していないので、冷却がギリギリでも性能が出ない、という心配もない。
こうしたローエンドカードを必要とするのは、LGA2011版Core i7や、Core 2 Duo/Quadなどの旧システムのようにオンボードGPUを内蔵しないプラットフォームを低予算で動かしたいときか、既存システムに多画面環境を構築したいときなどだろう。ゲームの描画性能は低いので、用途やビデオカードに求める性能を事前に精査しておこう。
【検証環境】
CPU:Intel Core i5-4690K(3.5GHz)、マザーボード:MSI Z97 GAMING 5(Intel Z97)、メモリ:Novax Technologies UMAX Cetus DCDDR3-8GB-1600(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:玄人志向 GF-GTX760-E2GHD/OC/SHORT(NVIDIA GeForce GTX 760)、MSI N760GTX Twin Frozr 4S OC(NVIDIA GeForce GTX 760)、SSD:Micron Technology Crucial MX100 CT512MX100SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、512GB)、PCケース:Corsair Components Obsidian 750D Full Tower ATX Case、電源:Cooler Master Technology V550 Semi-Modular(550W、80PLUS Gold)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:トゥームレイダーのベンチマークモードを実行、GPUクロックおよび温度計測:HWiNFO64
[Text by 加藤勝明]
【DOS/V POWER REPORT 9月号は7月29日(火)発売】
★巻頭特集「冷却周まわりの新たな鉄則、教えます~冷却・静音、これが答えだ!~」はもちろん、USBバスパワーで動作する冷却グッズや薄型CPUクーラーの紹介、6TBクラスの大容量HDD特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事を掲載
★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 紙版は小冊子「PC自作力 2014年度夏期試験」付き
★ 電子版は割安な税別926円、一部ショップでは税別700円の期間限定セールが7月29日(火)より実施予定
★ 電子版では小冊子の電子版も完全収録
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