パワレポ連動企画
“冷却の常識”を徹底検証
【冷却まわりの新鉄則、教えます(13)】
(2014/8/18 12:05)
このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌9月号の特集記事「冷却周まわりの新たな鉄則、教えます~冷却・静音、これが答えだ!~」をほぼまるごと掲載する。
第十三回目の今回は、6つの「冷却の常識」とされてきた手法を徹底検証、実際の効果がどれほどあるのかを確かめている。
なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 9月号は絶賛発売中。9月号では今回の特集のほか、USBバスパワーで動作する冷却グッズや薄型CPUクーラーの紹介、6TBクラスの大容量HDD特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、100個の自作PC問題を載せた「PC自作力 2014年度夏期試験」が小冊子として付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。
- DOS/V POWER REPORT 2014年9月号 Special Edition -
それって本当? “冷却の常識”を徹底検証
経験によるイメージや思い込みで、実は間違った冷却対策を施していないだろうか。ここではこれまで「常識」とされてきた冷却の手法について、検証作業を通じて実際の効果を確かめてみたい。
検証1:ケーブルを整理しないとエアフローに影響が出る
最近は、マザーボードの裏側に各種ケーブルを配線することで、マザーボードやパーツの周囲をスッキリと整理できる「裏面配線」を行なえるPCケースが多い。熱源の周辺や風の通り道に障害物がなくなるので、冷却効果も高まるという印象があるが、実際はどうだろうか。
結果は下のグラフに示したとおりだが、高負荷時のCPU温度が1℃低下した程度で、GPU温度やマザーボード温度に影響はない。実質的にはほぼ誤差と言ってもよい状況だ。通気口を完全に覆い隠すような状況ならともかく、底面やマザーボード上にケーブルが散乱する程度では、冷却性能への影響はない。
検証2:HDDの冷却を考えると、前面ファンって重要だよね
HDDはとくに温度の上昇が故障リスクに直結しているので、いかに適切な冷却を行なうかが重要。と、今まで考えられてきた。しかし、最近のHDDは昔と違って低発熱なので、以前ほど前面ファンの重要性は高くないのではないか?
結果は、HDD 1台ではまったく変化が見られなかった。テストに使用したWD Greenが、もともと低回転で低発熱ということもあるのだろう。しかし、2台組み込んだ場合は、前面ファンの効果が確認できた。複数台、または高回転モデルを使うなら、前面ファンによる冷却を意識するのがよさそうだ。
検証3:前面吸気・後方排気の真実、どのケースでもその常識は通じますか?
ここでは、エアフローのセオリーである前面吸気・後方排気が正しいかを確認するとともに、前面吸気、後方排気時におけるその吸気量と排気量と温度の関係について検証してみたい。
結果を見ると、意外にもすべてのファンを排気方向に設定した“全排気”の値がよかった。高負荷時にはG P Uのみ全吸気に劣るが、ほかのすべての部分はもっとも冷えている。今回使用したケースのCM690 IIIはメッシュ構造を多用しているので、メッシュ部から十分な吸気を行なえたのだろう。
よく見かけるパターン①と②との違いも気になるが、①のほうが若干よい傾向にあるだけで、大きな差はない。CM690 IIIのメッシュ構造により、いずれの状態でも吸気と排気が不足しない状態であるためと思われる。密閉度の高いケースであれば、また違った結果になる可能性がある。
検証4:ダストフィルタを付けると冷却性能が低下しそうだから外してます
PCケース内部にホコリが入り込むことを防ぐダストフィルタ。PCケースによっては標準で搭載しているが、冷却性能を重視するユーザーはこれを外すこともあると言う。
テストの結果、フィルタを付けた際には若干風速は落ちることを確認できたものの、温度にはほぼ影響しない上、動作音が低下するというメリットもあった。目立ったデメリットはなかったので、安心して使えそうだ。
検証5:底面配置における電源の向きの違いで差は出るの?
10年くらい前までのPCケースでは、電源ユニットを天板近くに設置するのが一般的だったが、現在は底面にファンを下向きにして設置するスタイルが主流。エアフローを考えると、電源ユニットが搭載するファンの分だけ排気の量が減っていることになる。しかし、電源自体が熱源でもあるので、ファンは電源ユニットで発生した排熱の処理に専念でき、効率がよくなるという考えもできる。
実際に検証してみたところ、ファンを上向きにしたほうがGPU温度が低くなった。これはビデオカードの排熱を電源ユニットのファンから排出できたからと考えられる。しかし、高負荷時で約2℃と、差は大きくない。正直なところ、どちらがベストとまで言い切れないが、上向きも試してみる価値はある。
検証6:大きくて低回転と小さくて高回転はどちらが高性能?
大口径ファン1基 vs. 小口径ファン2基
冷却性能重視のPCケースには、風量が大きな20/18cmクラスの大口径ファンを標準で搭載したり追加したりできるものもある。風量は基本的にファンの口径や回転数に比例して増えるので、大型のファンを搭載するPCケースは冷却性能が高いと考えられている。しかし、大口径ファンは搭載できなくても、14/12cm角ファンを多数搭載できるというケースは、ファンの数を増やすことで冷却性能を向上させることができるはず。では、どちらがよいのか?
結果は、冷却、静音性の両面で20cm径ファン1基の圧勝。12cm角ファンを2基組み込んだ場合でも歯が立たない状況だ。大口径ファンは風量が多いだけでなく、風が届く面積も広いことがこの結果に関係しているのだろう。ただし、大口径ファンを搭載できるPCケースは、種類が圧倒的に少ない。ユーザー好みの製品がない場合には、選択に悩まされそうだ。
【検証環境】
CPU:Intel Core i7-4770K(3.5GHz)、マザーボード:ASUSTeK GRYPHON Z97(Intel Z97)、メモリ:CFD 販売 CFD ELIXER W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、システムSSD:Intel Solid-State Drive 730 SSDSC2BP240G4R5(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、HDD:Western Digital WD Green WD30EZRX(Serial ATA 3.0、5,400rpm、3TB)、ビデオカード:MSI N770GTX Twin Frozr 4S OC( NVIDIA GeForce GTX 770)、電源:Super Flower SF-650P14PE(650W、80PLUS Platinum)、PCケース:Cooler Master CM690 III、追加ケースファン:12cm 角ファン(最大1,200rpm)、ケースファンフィルタ:アイネックス CFF-120Z、騒音計:カスタム SL-1370、風速計:サンコー ミニデジタル風速計、室温:25℃、暗騒音:30.5dB、動作音測定距離:ケース正面より15cm、アイドル時:起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.0のPOWER SUPPLYテストを10分間実行したときの最大値(検証2のみCrystalDiskMark 3.0.3b実行中の最大値)、各部の温度:使用したソフトはHWMonitor 1.25で、CPUはCPU TemperaturesのPackage、マザーボードはMotherboard TemperaturesのMainboard、GPU はVideocard Temperatures、HDD はHDD Temperatures の値(2台搭載時は上側のHDD の温度)、風速:風速計をファンから約2cm の距離に置いて計測
[Text by 竹内亮介]
【DOS/V POWER REPORT 9月号は7月29日(火)発売】
★巻頭特集「冷却周まわりの新たな鉄則、教えます~冷却・静音、これが答えだ!~」はもちろん、USBバスパワーで動作する冷却グッズや薄型CPUクーラーの紹介、6TBクラスの大容量HDD特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事を掲載
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