パワレポ連動企画

自作PCをよくするワザ、教えます(9) ~SSD編~

DOS/V POWER REPORT 12月号

 このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌12月号の特集記事「自作PCをよくするワザ、教えます」をほぼまるごと掲載する。

 第九回目の今回は、SSDに関する玄人ならではのワザを紹介する。これらのワザを使って、自作PCをもっと速く、もっと便利に使いこなしてほしい。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 12月号は、絶賛発売中。12月号では今回の特集のほか、最新UEFIの完全ガイド、ファイル送信サービス 10選、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、特別付録として「保存版 インターフェース図鑑 2014」と題した小冊子が付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。


- DOS/V POWER REPORT 2014年12月号 Special Edition -


自作PCをよくするワザ ~SSD編~

 システムドライブの定番となったSSDだが、その性能を引き出し、維持していくためには適切な設定とテクニックが欠かせない。ここでは、SSDを活用していく上で知っておきたいテクニックを紹介しよう。

【初級ワザ】Windowsバージョン別Trimへの対応状況と実行方法

 SSDの速度低下の抑制や延命が期待できるメンテナンス機能として有名なのが「Trim」である。Trimは、消去しても問題ない領域の論理アドレスをシステムからSSDに通知する機能で、Windows 7から対応が始まっている。SSDへの論理アドレスの通知は、ごみ箱からファイルやフォルダを削除したときや、パーティションのフォーマットを行なったときなどに実施される。

 Windows 8以降では、上記のケース以外にも定期的にTrimを実行する機能が追加されている。この機能は、HDDのデフラグを行なう「ドライブの最適化」に統合され、任意のタイミングで手動実行できるほか、既定値では週に一度、未使用領域の情報をSSDに通知するよう設定されている。

Windows 8.1でメンテナンス
Windows 8以降では、ドライブの最適化でSSDのメンテナンスを行なえる。この機能は毎週自動実行するように設定されている

 Windows 7はTrimにこそ対応しているものの、自動実行はサポートしていない。こうした環境でも、Intelの「Solid-State Drive Toolbox」のようにTrimのスケジュール実行に対応した専用ユーティリティを利用することで、同等の機能を実現できる。

 また、以前はRAID環境におけるTrimサポートは限定的だったが、現在はIntelの最新ドライバを利用する限り、SSDでRAID 0/1/5の環境を構築している場合でもTrimを利用することができる。

Trimへの対応と実行のタイミング

【初級ワザ】SSDメーカーの専用ユーティリティを活用する

 多くのSSDメーカーは、自社製品のユーザーに対して専用ユーティリティを無償配布しており、これを活用しない手はない。機能はメーカーによって異なるが、S.M.A.R.T.による寿命推測やファームウェアの更新、Trim送信、データを消去して性能を初期状態に戻すSecure Eraseなどのメンテナンス機能を搭載している場合が多い。メーカーによっては、高速化ツールが付属したり、クローニングソフトが付属したりする場合もある。

各社のSSD専用ユーティリティの主な機能

【初級ワザ】ユーザーフォルダをSSDからHDDに移動する

 SSDを利用しているユーザーの多くが、HDDをデータ保存用ドライブとして併用しているはずだ。その場合、「ピクチャー」や「ビデオ」などサイズの大きいファイルを保存しているユーザーフォルダをHDD側に移動しておきたい。これらはアクセス頻度が低いだけでなく、ファイルサイズが大きいため読み出し時にHDDの最大性能を得やすい。このため、小さなファイルと比較して速度的な不満が出にくい。

ユーザーフォルダの移動方法
HDD側にあらかじめフォルダを作成しておき、ダウンロードなどのユーザーフォルダのプロパティを開き、「場所」タブ→「移動」とクリックして作成しておいたフォルダを選択する

【中級ワザ】M.2 SSDを変換基板でPCI Express x4接続する

x4接続で真価を引き出す
Socket 3のPCI Express対応M.2 SSDをPCI Express 2.0 x4接続するための変換カード。写真はBplus Technologyの「M2P4A V1.0」(実売価格:8,500円前後

 Intel 9シリーズチップセットから正式対応したM.2スロットは、非搭載のマザーボードがあるだけでなく、搭載されていてもその多くがPCI Express 2.0 x2で接続されている。このため、PCI Express 2.0 x4対応のM.2 SSDは性能を発揮できない。

 追加の出費が必要になるが、PCI Express 2.0 x4接続に対応した変換カードを使えば、こうしたM.2 SSDの性能を最大限発揮させることができる。

CrystalDiskMark 3.0.3のベンチマーク結果

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4770K(3.5GHz)、マザーボード:ASUSTeK Z97-PRO(Intel Z97)、メモリ:Micron Technology Crucial BALLISTIX BLT2K8G3D1608ET3LX0(PC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB×2)、システムSSD:Micron Technology Crucial m4 CT128M4SSD2(Serial ATA 3.0、MLC、128GB)、検証用SSD:Samsung Electronics XP941 MZHPU512HCGL(M.2[PCI Express 2.0 x4]、MLC、512GB)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版

【中級ワザ】M.2 SSDでシステムを起動するには

OROM搭載なら利用環境を選ばない
Plextor M6eシリーズは、Option ROMを搭載しており、利用環境を選ばない点が特徴。OROM搭載なのでどのマザーボードからでもOS起動を行なえる

 PCI Express接続のM.2 SSDは、Option ROM(OROM)搭載の製品と非搭載の製品がある。前者は、M.2スロットを搭載したマザーボードに挿すだけで、またはM.2スロット - PCI Express変換基板を利用することで、基本的にOS起動を行なえる。一方、後者は基本的にIntel 9シリーズチップセット搭載マザーボード以外では起動できない。

 また、OROM非搭載のM.2 SSDからの起動は、レガシーブート/ UEFIブート両対応の製品と、UEFIブートのみ対応の製品がある。前者はどのようなOSでも起動できるが、後者はUEFIブートに対応したOSしか起動できない点に注意してほしい(UEFIブートに対応したOS:64bit版Windows 8.1/8/7/Vista SP1など。32bit版Windows 8.1/8はプリインストールモデルのみ対応)。

 DOS/V POWER REPORT編集部で調べたところ、レガシー/ UEFI両対応の代表がASRockとMSIで、後者の代表がGIGA-BYTEだった。後者の一部は、PCH側に接続されたM.2スロットに装着し、IntelのM.2 SSDサポート機能を利用しなければOSを起動できない。

M.2 SSD のシステム起動対応状況

【中級ワザ】SSDのファームウェアを更新する

 SSDは、不具合の修正や性能改善を目的としたファームウェアバージョンアップが実施される場合がある。このため、メーカーのWebサイトは定期的にチェックしておくのがオススメだ。また、メーカー製ユーティリティの多くは、新しいファームウェアの通知機能を搭載している。この機能を利用してファームウェアの更新を確認してもよい。

 ファームウェアバージョンアップの実施方法はメーカーによって異なるが、Windows上で実行するファームウェア更新専用ツールを利用する方法と、メーカー製統合ユーティリティの更新機能を利用する方法、ISOファイルをダウンロードして光学メディアやUSBメモリに書き込み、それから起動して行なう方法の3種類がある。下の画面はSamsung Electronics製SSDのファームウェアアップデート方法だが、やはりWindows上で実行できる前者二つのタイプが使いやすい。

Samsung Electronics製SSDのファームウェアアップデート方法

【上級ワザ】Z97/Z87限定! DSAと電源プランの変更でSSDを高速化

DSA使用条件
選択できる設定は3種類
手動設定では、省電力、バランス、高パフォーマンスから選択できる

 Intel Z97/Z87チップセットには、SSDのパフォーマンスを高める「Dynamic Storage Accelerator」(DSA)と呼ばれる機能が存在する。世代最上位チップセットのみに搭載されたもので、電源プランとアクセス状況に応じてSSDを高速化する機能だ。

 DSAは、UEFIセットアップで機能を有効にして(標準では無効化されている)、Intel製ドライバをインストールすることで利用できるようになる。詳細設定はIRSTの中にあり、省電力/バランス/高パフォーマンスの3種類の設定(ギア)を選ぶことができる。OSの電源プランを高パフォーマンス、DSAを最高性能の高パフォーマンスギアに設定した場合、電源プラン:バランス/ DSA:無効時と比較してシーケンシャル性能が約8.5%、ランダム性能が約28.5%向上している。

 項目を選ぶだけでSSDの性能を底上げできるので、利用してみる価値はあるだろう。

DSAを有効・無効にした際のベンチマーク結果とシステム全体の消費電力

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4770K(3.5GHz)、マザーボード:ASUSTeK Z97I-PLUS(Intel Z97)、メモリ:CFD販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-8G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2)、システムSSD /検証用SSD:Samsung Electronics 840 PRO MZ-7PD256B/IT(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)、電源:Sea Sonic Electronics Xseries SS-750KM3(750W、80PLUS Gold)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版、アイドル時:ベンチ終了3分後の値、高負荷時:TMPGEnc Video Mastering Works 5で3分間のAVCHD Progressive(1,920×1,080ドット/ 60fps)をiPhone 5s用動画(720×480ドット/ 30fps)にQSVを使ってエンコードした際の最大値、平均:検証開始から5分間の平均値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

【中級ワザ】万能ツール「TxBENCH」を使いこなす

 TxBENCHは、テクシム(http://www.texim.jp/)が無料で配布している多機能なベンチマークプログラムだ。

TxBENCH

 ドライブの搭載機能の詳細表示やS.M.A.R.T.による自己診断情報の表示、Secure Eraseの実行、Trim送信機能なども搭載し、SSD向けの汎用ユーティリティとしても利用できる。Windows 7では任意のタイミングでTrimを実行することはできないが、TxBENCHを使えば、手動でTrimを実行できるようになる。USB接続のドライブに対してSecureEraseやTrimの送信が行なえる点も便利だ。

 なお、Windows 8.1/8では、Serial ATA接続のSSDに対してSecure Eraseを実行できないが、本ソフトを使った場合USB接続すればSecure Eraseを行なえる。

詳細ベンチマーク
詳細ベンチマークは、計測項目の詳細な条件を設定できる。結果はすべてCSV形式のファイルに保存できる
4通りのデータ消去
データ消去ではSecure Eraseを実行できるほか、Trimを利用したデータの消去や、実データを記録するデータ消去を行なえる
対応する機能のランプが点灯
ドライブ情報タブでは、選択したドライブに搭載された機能の一覧を確認できる
Trimコマンドを任意に送信
ドライブ情報の「SSD最適化」では、選択したドライブに対してTrimによるメンテナンスを実施できる

[Text by 北川達也]



DOS/V POWER REPORT 12月号は10月29日(水)発売】

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(AKIBA PC Hotline!編集部)