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必見!! 小型PC自作テクニック集

【必ず満足!小型PC自作最前線(12)】

DOS/V POWER REPORT 2015年6月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、今回より「2015年6月号」の総力特集「必ず満足!小型PC自作最前線」を掲載する。

 これまではパーツ選びのポイントを解説してきた。今回からは実際の組み立てにあたってのテクニックを紹介する。サイズの小さいmicroATXやMini-ITXでは、組み立てにもATXを扱うのとは異なるセオリーとテクニックが必要となる。ここではそれらを解説していく。

 本記事の終盤にてブータブルUSBメモリを作成し、OSのインストールを行う方法を紹介しているが、これについては以前紹介した「保存版 PC自作マニュアル 2015(13) Win 8.1インストール用ブータブルUSBメモリを作る 」に詳しい方法が記載されているので、そちらも合わせて参考にして欲しい。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年6月号は全国書店、ネット通販にて4月28日(火)に発売。60ページを超えるボリュームでお届けする総力特集「必ず満足!小型PC自作最前線」のほか、同じUSB3.0対応製品なのに性能が違う!「買って得するUSB 3.0メモリはコレだ!」、登場したのは数年前だけど、あっという間に一大勢力となったアイテムを紹介!「簡易水冷クーラーカタログ」、やっぱり体が資本!最新パーツだけでなく自分の健康にも投資するべき!!「つらい目・肩・腰に効く! PC向けデスクチェアを新調せよ」など、特別企画も満載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は、「新しいPC作ったら、OSも新しいものを使いたい!」という新しいもの好きにお勧めする「今スグ使える!Windows 10 Technical Preview かんたん解読書」。Windows 10 Technical Previewインストール方法や、機能について大解説。「夏の正式リリースまで待てない!」というせっかちな読者の面々には見逃せない一冊だ。


- 必ず満足!小型PC自作最前線 -
必見!! 小型PC自作テクニック集


コレを知れば困らない
必見!! 小型PC自作テクニック集

 小型PCの自作では、一般的な組み立てとは異なるセオリーとテクニックがある。ここでは、PCの自作に慣れた人でも陥りやすいトラブルとその対策を中心に、知っておきたいことを紹介する。

ケースをばらして下から組む込む

セオリー1:ケースは完全にバラしておく
前面、側面、背面、天板と外せるパネルは全部外しておいたほうが圧倒的に作業がしやすい。ベイも外せるタイプは外しておきたい

 小型PC、とくにMini-ITXケースでは、その内部スペースの狭さゆえに、一般的なPC自作のセオリーが通じない場面がある。

 その代表的なものの一つが、「ケースは完全にバラして作業する」ことだ。ATXや一般的なサイズのmicroATXのケースでは、両側面のパネルを外せば、パーツの組み込みで困ることはないが、Mini-ITXケースでは、マザーボードの設置からケーブルの接続まで、限られたスペースに手を入れて作業することになる。そのため、ケースは全部開けて作業をしたほうが、効率がよく、失敗も少ない。

セオリー2:下になるパーツから組み込む
内部が狭いMini-ITXケースでは、パーツを組み込む順序が重要だ。基本的に、下になるパーツから固定していく。上になるパーツから組み込むと、下のパーツに手や工具が届きにくくなるためだ

 もう一つが、「ケースの下側からパーツを組み込む」ことだ。Mini-ITXケースでは、パーツ同士の間が数ミリしかない、という場合もあるだけに、ケースの下側に来るパーツから固定していかないと、うまく収まらないことが多い。すべてのケースで当てはまるわけではないが、どのパーツから組み込む必要があるかは、マニュアルなどで事前にしっかり確認しておこう。

ケーブル類の接続はケースによって難易度が異なる

 ケーブル接続は、マザーボード側に先に挿し込むのが基本。パーツを組み込んでからだと、マザーボードのコネクタ類が隠れてしまうことが多いためだ。スイッチ類はもちろん、Serial ATAのケーブルも先に付けておいたほうが作業しやすい。

天板が開くとスムーズ

 ケーブル接続の難易度はケースによって大きく異なる。簡単なのは、側面と天板の両方が開くタイプ。どこからでも手を入れられるので、スムーズにケーブル類を接続できる。ケース選びでは、どこが開くかもポイントだ。

側面しか開かないと厳しい

 逆に厳しいのは、側面しか開かず、内部も狭いパターン。手を入れるのが難しいため、マザーボードをケースに入れる前にケーブルを接続するなど工夫が必要だ。コンパクトさを重視する場合は、配線の苦労は覚悟しておこう。

ショップの交換保証を活用する

購入したパーツの高さや奥行きが合わず実際には組み込めないというケースは、小型PCの自作ではありがちな失敗の一つだ

 Mini-ITXマザーボードとケースを使用した組み立てでは、CPUクーラー、ビデオカード、電源などの対応サイズを事前に確認していても、実際には組み込めない、なんとか組み込めてもパーツ同士が当たるといったことが起きやすい。そのため、購入時には不安が付き物だが、それを回避する「パーツ交換保証」サービスを行なっているショップが存在している。多くの場合は有料、交換は1回限りだが、リスク回避には非常に有効だ。交換の対象は、ショップで購入したパーツならどれでも、ということが多い。

 ただし、保証期間や送料の負担などは、ショップによって異なる。パーツや付属品を破損、紛失した場合は対象外だ。

対象が幅広いツクモの交換保証

 ツクモの交換保証は購入時に加入する(店舗、ネットショップとも対応)。加入料は価格が1万円未満のパーツで540円、それ以降は1万円ごとに540円ずつ加入料がアップする。高く感じるかもしれないが、組み込めないというトラブル以外にも、性能に不満があるといった内容でも交換が可能と保証対象が幅広い。保証期間は購入日より1カ月。

 このほか、PC DEPOTやPCワンズなどでもパーツの交換サービスを展開している

ケーブルの取り回しには注意を払おう

ケーブルがファンに接触
電源ケーブルがケースファンやCPUクーラーのファンに接触して回転を止めてしまう失敗は、内部が狭いケースほど起きやすい。ほんの少し触れているだけでも、ファンの回転は止まってしまうのでケーブルをまとめる作業は重要だ

 PCの自作において、ケーブルがCPUクーラーやケースのファンに引っかかり、回転できずに温度上昇といったトラブルにつながるのは、よくある失敗例の一つだ。とくに冷却力を高めるために、複数のケースファンを備えているケースではなおさらだ。ケース内部のケーブルはエアフローを確保する意味でもキレイに整理することは重要だが、Mini-ITXケースでは、ファンと干渉していないか確認するクセをつけよう。

 とくにストレージ用ベイが分離できるタイプは、ベイを戻すときにケーブルが引っ張られたり、押されたりしてケースファンに引っかかることが多い。

 ケーブルをまとめる方法は、シンプルだが結束バンドや面ファスナーが有効だ。どちらも100円ショップで購入できる。細いケーブルはフレームに沿わせて結束バンドで固定、ATX24ピンの電源ケーブルなど太いものは面ファスナーで固定し、使っていないベイの隙間などにうまく逃がそう。ちょっとした工夫でケーブルは簡単にまとめられる。

ケーブルをまとめて対処
左の写真がケーブルをまとめる前。ベイがジャマをして各種の電源ケーブルが収まり切らず、ケース外に出ている。右の写真がケーブルをまとめた後。ベイの隙間や面ファスナーなどの活用でスッキリした
フレームにある隙間に結束バンドを通し、ケーブルを固定する。フレームに沿わすように固定できるので内部を広くできる
まとめられるケーブルは面ファスナーで束ねて、使っていないベイの隙間を活用して収めていく

延長ケーブル分岐ケーブルを活用

 Mini-ITXケースなど、内部スペースの狭い小型PCでは、ケーブルの接続に苦労する。とくに大型のCPUクーラーを使用するときは、手を入れるのが難しい。それを解決してくれるのが、延長ケーブルだ。なかでもCPUソケットの近くにあるATX/EPS12Vコネクタは、接続が難しくなりやすいので、延長ケーブルをあらかじめマザーボード側に挿し込んでおくと、組み立てが楽になる。

ATX/EPS12Vは延長すると作業が楽に
アイネックス
EPS12V用電源延長ケーブル PX-004B
実売価格:900円前後
あらかじめマザーボードに接続
マザーボードをPCケースに組み込むとき、あらかじめATX/EPS12Vコネクタに延長ケーブルを挿しておく
スペースのある場所で接続できる
延長ケーブルをケース内部の広い場所に引っ張り出せば、電源ユニットのATX/EPS12Vコネクタとの接続が楽になる
ケースファンには分岐か変換で対応
アイネックス
ファン用二股電源ケーブル WA-084A
実売価格:300円前後
※2015年4月から後継機種「CA-084」が販売中。実売価格は350円前後
アイネックス
ファン用電源変換ケーブル CA-09SAB
実売価格:400円前後
ファン用電源コネクタを二つに
ファン用電源コネクタを二つに分岐。回転数の検出は一つのみだが、マザーボードからの回転数制御は両方に反映される
Serial ATAの電源を活用
Serial ATA用電源コネクタを3ピンのファン用コネクタに変換する。Serial ATA用電源コネクタが余っているときに便利

 また、小型のマザーボードはファン用電源コネクタが少なく、複数のケースファンを備えるケースとの組み合わせでは、不足することがある。この問題は分岐ケーブルや変換ケーブルで解決しよう。手軽なのは、マザーボードのファン用電源コネクタを二つに分岐するケーブルだ。小型PCでは取り付け可能なストレージの数が少ないので、余りがちなSerial ATA電源コネクタをファン用電源コネクタに変換するケーブルを使うのもよい。

 あえて短いケーブルを使うことでよぶんなケーブル長を減らすのもテクニックの一つだ。

あえて短いケーブルに交換する
アイネックス
ラッチ付 シリアルATAラウンドケーブル 片下L型コネクタ(20cm) SATR-3102LBK
実売価格:800円前後
短くて曲がりやすい
マザーボードに付属するSerial ATAケーブルの長さは約50cmだが、市販のケーブルならば、より曲がりやすく、短いものを選べる利点がある
よぶんな長さがなくなる
マザーボードのSerial ATAコネクタとストレージの位置が近い場合は、短いSerial ATAケーブルのほうがケーブルがゴチャゴチャせずきれいにまとまる

ほかにもある便利なケーブル

Serial ATA用電源コネクタを3分岐するケーブル。コネクタ間のケーブルが短いので、縦にストレージが並ぶケースでの接続に便利
Serial ATA用電源コネクタを、最近ではファンコントローラでの利用が多いペリフェラルコネクタに変換する

小型PCこそソフトウェア制御のファンコントロールを使え!

 小型PCは内部スペースの狭さからパーツが密集しやすい。その中で冷却力を確保するためにファンの回転数が高くなり、騒音は大きくなりがちだ。一方で、省電力化が進んだ最近のパーツは、負荷が小さい状態では、そこまで熱の処理を気にしなくてもよい。

手軽に使えて精度も高い「Fan Xpert 3」
ASUSTeKの「Fan Xpert 3」の設定画面。プリセットを選ぶだけで、あとは温度に合わせて、自動的にCPUクーラーやケースファンの回転数を調整する。手軽なだけではなく、精度も高い

 となると静音化においてはファンコントロールの重要性が増してくる。そして、ぜひ活用したいのが、ソフトウェアで制御するマザーボードのファンコントロール機能だ。UEFIの設定画面やWindows上で動作する専用のユーティリティで制御できる。なかでもASUSTeKの「Fan Xpert 3」は強力だ。専用のユーティリティで「サイレント」や「標準」など、あらかじめ用意されているプリセットを選ぶだけで、温度に合わせて自動的にファンの回転数を制御する。ファンコントローラーを組みにくい小型PCこそ使いたい機能だ。

「Fan Xpert 3」の効果
【検証環境】CPU:Intel Core i5-4590S(3GHz)、マザーボード:ASUSTeK Z97I-PLUS(Intel Z97)、メモリ:CFD販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、グラフィックス機能:Corei5-4590S内蔵(Intel HD Graphics 4600)、SSD:OCZ Storage Solutions ARC 100 ARC100-25SAT3-240G(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、ケース:アビー AS Enclosure RS07、OS:Windows 8.1 Pro Update 64bit版、室温:20.8℃、暗騒音:31.2dB、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 POWER SUPPLYを10分間動作させたときの最大値、CPU温度:HWMonitor 1.27のCPU TemperaturesのPackageの値、動作音測定距離:ケース正面から20cm、騒音計:カスタム SL-1370

 標準設定でも高負荷にならない限りは、ほとんどファンの音が聞こえないほど静かになる。サイレント設定ではより静かになるが、高負荷時のCPU温度はやや高め。3Dゲームのプレイなど、長時間負荷がかかる場合は標準設定のほうが安心だ。

OSインストール時の光学ドライブは……

光学ドライブを一時的に接続
OSのインストールディスクがあり、内蔵の光学ドライブを持っている場合は、OSのインストール時だけ、写真のようにむき出しで接続するという手段がある

 小型PCのケースは光学ドライブを搭載できないことが多く、OSのイントールメディアがDVDの場合、困ってしまう。簡単な解決方法は、USB接続の外付け光学ドライブを用意することだが、もし内蔵型の光学ドライブを持っている場合は、OSのインストールのときだけケースの側面パネルを外し、むき出しの状態で接続するという手もある。見た目はあまりよくないが、OSをインストールするときだけなので問題はない。

専用ツールで簡単に作成
USBメモリからOSインストール
光学ドライブがない場合は、インストール用のUSBメモリを作るという方法がある。作成用のツールはMicrosoftのWebサイト(http://windows.microsoft.com/ja-jp/windows-8/create-resetrefresh-media)からダウンロードが可能だ
あとはUSBメモリを小型PCに接続してUSBメモリから起動し、OSをインストールするだけ。なお、作成するには、4GB以上の実容量を持ったUSBメモリが必要なので注意しておこう

 Windowsインストール用のUSBメモリを作る方法もある。MicrosoftのWebサイトの「Windows 8.1用のインストールメディア作成ページ」からツールをダウンロードすることで作成が可能。作成したUSBメモリは、Windows 8/8.1 DPS版やWindows 8アップグレード版など、さまざまなバージョンのプロダクトキーで使用できるのが便利だ。


【問い合わせ先】

アイネックス:042-467-7676 / http://www.ainex.jp/

[Text by 芹澤正芳]


DOS/V POWER REPORT 2015年6月号は2015年4月28日(火)発売】

★総力特集「必ず満足!小型PC自作最前線」
★特別企画「買って得するUSB 3.0メモリはコレだ!」「簡易水冷クーラーカタログ」「PC向けデスクチェアを新調せよ」
★連載「最新自作計画」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 特別付録小冊子「今スグ使える!Windows 10 Technical Previewかんたん解読書」(紙版のみ別途付録、電子版では本誌末尾に収録)
★ 毎月700円(税込)で最新号が読める 直販電子版 月額プランも受付中
http://book.impress.co.jp/teiki/dvpr/2015-04-22-1155.php

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(AKIBA PC Hotline!編集部)