パワレポ連動企画

Broadwellの性能を徹底解剖2 -内蔵GPU性能の検証編-

【勢力図一変!? 最新CPUはこう使え!(3)】

DOS/V POWER REPORT 2015年8月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2015年8月号」の第一特集「Broadwellが来た! Godavariも来た!! 勢力図一変!? 最新CPUはこう使え!」を掲載する。

 今回は、Intelから登場した新CPU「Broadwell」徹底検証の2回目、前モデルよりも大幅に強化されたGPUの検証だ。3D性能だけでなく、画像や動画編集についても比較しているので、その方面に興味がある読者の面々も是非参考にしていただきたい。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年8月号は全国書店、ネット通販にて6月29日(月)に発売。新CPUを一挙に紹介する第一特集のほか、冷却も静音もバランスが大事!シチュエーション別に検証をする第二特集「自作ユーザー志向別 冷却・静音チューンナップ指南」、老若男女誰でも使える、安くてすごい小型のPC!「超小型ARMコンピュータ Raspberry Pi最前線」、余ったドライブをUSB 3.1で有効活用!「USB 3.1対応製品登場で新展開! 最新外付けドライブケース 40選」、見逃した番組も好きなときに観られる。そう、インターネットならね。「絶対加入しておきたい動画配信サービス」など、特別企画も満載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は豪華二本立て。最新の略語まで一冊でカバー、明日からバリバリ使える知識満載の「最新 パソコン略語辞典 2015」と、知っていても普通の会話では使えないスラング満載の「30代以上のためのネットスラング辞典」 。なんでや!阪神関係ないやろ!


- Broadwellの性能を徹底解剖2 -内蔵GPU性能の検証編- -


強化点の確認から使いこなしのヒントまで
Broadwellの性能を徹底解剖する

 LGA1150版のBroadwellとはどんなCPUなのか。14nmプロセスルール、高性能GPUの導入で、性能や消費電力の傾向がどのように変わったのか、ここではその辺りを三つのパートに分け、詳細に検証していこう。

 CPUコアなどの説明をした第1回目の解説は、こちらを参照のこと。

Part2 内蔵GPU性能の検証

eDRAM搭載でも高速メモリは有効か

Iris Pro Graphics 6200のポイント

 次はLGA1150版Broadwellの目玉である内蔵GPU「Iris Pro Graphics 6200」の性能を検証していこう。

 内蔵GPUではGPU自体の性能が向上しても、グラフィックスメモリとしてメインメモリを共有して使う関係からメモリ帯域がボトルネックになるという課題があるが、Iris Pro Graphics 6200では、EU(Execution Unit)の大幅増と同時に、小容量ながら高速なキャッシュとして128MBのeDRAMを搭載することでボトルネックの低減を図っている。どのくらいの効果があるのか注目されるところだ。

 まずは3Dゲーム性能から見てみよう。3DMarkのFire StrikeとSkyDiver、そしてファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークの結果を掲載した。Fire Strikeは本来ハイエンドGPU向けだが、CPU性能の影響が少ないため純粋な描画性能を比較するのに適している。SkyDiverはDirectX 11ベースの内蔵GPU向けテストで、どちらかと言えば、内蔵GPUシステムでプレイする実ゲームに近い。ファイナルファンタジーXIVは実ゲームベースのテストであり、負荷が比較的軽いDirectX 9と、高画質だが描画負荷が高いDirectX 11の両方で実行している(1,920×1,080ドット、標準品質[デスクトップPC])。

 結果はいずれもよく、HD Graphics 4600搭載のCore i7-4790Kに比べて、1.7 ~ 2.1倍と圧倒するスコアをマーク。3DMarkでは描画負荷が高いほうが、ファイナルファンタジーXIVでは描画負荷が低いほうがより差が大きかった。Core i5-5675Cも、Core i7-5775Cと同水準のスコアをマークしている。高性能な内蔵GPUで知られるA10-7870Kとの比較も興味深い。3DMarkの総合スコア(FireStrikeおよびSkyDiver)ではほぼ互角だが、Graphicsスコアではまだ1割ほどおよばず、純粋な描画性能では少し差があると見ることもできる。ただ、実ゲームのファイナルファンタジーXIVではA10-7870Kを明らかに上回っており、CPU性能も含めたプレイの快適度では上を行っている。

3DMarkとファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークの結果

 内蔵GPU性能が高いAMDのAPUは、利用するメモリで性能が大きく左右されることが知られているが、Iris Pro Graphics 6200はどうだろうか。それぞれメモリ速度を変えて違いを見た。

 結果は、DDR3-2133を利用することで若干の高速化が確認できた。eDRAMはあっても完全にボトルネックを解消するまでには到っていないということではあるが、それでも差は小さく、eDRAMの搭載が実に適切な解決策であると判断できる。また、A10-7870Kでは構造的にメモリのボトルネックが大きく、高速メモリを利用するほどスコアが上がることも改めて確認できた。

メモリ速度による3DMarkのスコアの変化

OpenGL性能も優秀

 これまではDirectXベースのテストを見てきたが、OpenGLベースの性能も見てみよう。OpenGLは、主にクリエイティブツールやCADなどのエンジニアリングツールに使われている3DグラフィックスAPIだ。CINEBENCH R15では、なぜかCore i7-5775CよりCore i5-5675Cのほうがはっきりよいスコアが出たものの、5775Cでも4790Kの2倍、A10-7870Kにも30%近い大差を付けている。

CINEBENCH R15 OpenGLの結果

 SPECviewperf 12の結果を見てみよう。これは実際の3DCG/CADアプリケーションのビューボードを描画してパフォーマンスを計測する内容だ。今回はCATIA、Creo、Maya、SolidWorks(sw)の四つに絞って実行した。結果は、4970Kではとても表示に耐えなかったMayaで大きくスコアが向上したほか、CATIA、Creoでも61%、SolidWorksでも30%と大きな改善が見られ、A10-7870Kともほぼ互角のスコアをマークしている。OpenGL性能もDirectXベース同様に向上していることが確認できたと言える。

SPECviewperf 12の結果

OpenCLによるGPGPUも高速に

 GPGPU関連では、OpenCL 2.0、SVM(Shared Virtual Memory)サポートも大きなトピックだ。CPUコアとGPUコアが仮想メモリ空間を共有し、スマートに連係したヘテロジニアス・マルチプロセッシング(異なる種類のプロセッサコアによるマルチプロセッシング)が可能になっている。GPUそのものの性能向上に加えて、よりスムーズな連係が可能になったことで、OpenCLに対応したアプリケーションの実行性能は、大幅に高速化することが期待できる。

GPUで処理を高速化
GPUの使用率を設定可能
Photoshop CC 2015は、GPUアクセラレーションによる高速処理/高速描画が利用できる。環境設定のパフォーマンス設定画面にGPU関連の設定項目が用意されている
GPUの詳細設定画面。GPUの使用率を設定できる。通常は積極的に利用する「詳細」。「OpenCL」は標準で利用する設定になっている

 OpenCLに関しては、AMDのKaveriが登場するタイミングでPCMark 8が大幅なアップデートで対応したが、市販アプリケーションでもPhotoshop CC、Premiere Pro CCなどがGPUの利用手段として導入しており、フィルタ処理やレンダリング、プレビューなどの処理にGPU(GPGPU)を使って高速化できる。

 PCMark 8では、OpenCLアクセラレートの有無を選択して実行できるので、Home、Creative両方を実行してみた。OpenCLアクセラレートを有効(Accelerated)にすると、利用できる機能は自動的に利用される。結果はご覧のとおりだ。Core i7-5775Cは、アクセラレート無効(Conventional)でも4790Kを5%前後上回っている。テストにはGPGPU以外にライトなゲームなど純粋なGPU性能を使う項目も含むため、それが効いたのだろう。OpenCLアクセラレート有効時にはさらに差が広がり、Homeで12%、Creativeでは18%と大きな差を付けている。

PCMark 8 v2.4.304の結果

 Photoshop CC 2015では、四つのレイヤーで構成した6,000×3,000ドットのファイルに対して、レベル補正、ぶれの低減、スマートシャープ、レイヤーの歪み補正、照明効果フィルタなどを含むアクションを実行し、実行時間を計測した。結果は、Core i7-5775Cのほうが28%速く処理を終えることができた。さすがにCUDAで処理するハイエンドビデオカードとの組み合わせにはおよばなかったが、従来の内蔵GPU環境とは一線を画していると言ってよい。

Photoshop CC 2015の結果

 Premiere Pro CC 2015では、4Kのビデオクリップ7本をトランジションエフェクトで連結したプロジェクトをBlu-ray品質のM4Vファイル(H.264 Blu-ray/1080p)に書き出す時間を計測した。Core i7-4790Kでは20分以上もかかる処理だったが、5775Cは、その約3分の2、13分半で完了した。

Premiere Pro CC 2015の結果

規模が倍増したQSV回路も効果を実証

 ハードウェアエンコーダのQSV(QuickSync Video)や動画高画質機能などは、EUとは別の独立した回路で実装されているが、Iris Pro Graphics 6200は、その規模も2倍に増えている。回路自体の機能も向上しており、QSVは画質、速度ともに向上しているとされる。今回はひとまず速度について検証を行なった。CyberLinkのMediaEspresso 7を使い、約30分の4K動画(MP4)と、約30分のフルHD動画(M4V)を1,280×720ドット(MP4)に変換して、所要時間を比較した。Core i7-5775Cは、Core i7-4790Kに比べて、4Kファイルは約6割、フルHDファイルは約3分の2の時間で変換を完了。QSVの高速化は確かに確認できた。

MediaEspresso 7の結果

・DirectXベースの3D描画性能は大幅アップ
・OpenGL対応グラフィックスアプリも高速に
・OpenCL対応アプリでも大幅な高速化を果たした


【検証環境】

CPU:マザーボード:ASUSTeK Z97-PRO(Intel Z97)、ASUSTeK A88X-GAMER(AMD A88X)、メモリ:Corsair DOMINATOR PLATINUM CMD32GX3M4A2400C10(PC3-19200 DDR3 SDRAM 8GB×4 ※2枚のみ使用)、SSD:Samsung 840 PRO MZ-7PD256B/IT(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)、電源:Sea Sonic Xseries XP2 SS-660XP2(660W、80PLUS Platinum)、CPU クーラー:サイズ 虎徹、OS:Windows 8.1 Pro Update 64bit 版


[Text by 鈴木雅暢]


DOS/V POWER REPORT 2015年8月号は2015年6月29日(月)発売】

★第1特集「勢力図一変!? 最新CPUはこう使え!」
★第2特集「自作ユーザー志向別 冷却・静音チューンナップ指南」
★特別企画「超小型ARMコンピュータ Raspberry Pi最前線」「最新外付けドライブケース 40選」「絶対加入しておきたい動画配信サービス」
★連載「最新自作計画」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
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http://book.impress.co.jp/teiki/dvpr/2015-06-22-1648.php

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(AKIBA PC Hotline!編集部)