パワレポ連動企画

新顔Mini-ITXケース対決その2 ~NCASE/NZXT編~

【PCパーツ無差別級対決(25)】

DOS/V POWER REPORT 2016年6月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2016年6月号」の総力特集「価格も新旧も関係なしの大激突! PCパーツ無差別級対決」を掲載する。

 第25回目は拡張性を兼ね備えたMini-ITXケースの紹介第2弾。サイズの小さいケースはパーツ毎の空き空間が少なく、これは組み立てはもちろん、完成後のメンテナンスのし易さにも影響してくる。Mini-ITXケースを選択するときはこの点にも注意しよう。

 本特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2016年6月号は全国書店、ネット通販にて4月28日(木)に発売。総力特集のほか、ARMプロセッサを搭載した電子基板をノートPCへ!「自分で作るRaspberry Piノート pi-top入門講座」、PCに足りない機能をガチャンと追加「空いているスロットを有効活用 春の内蔵拡張カードコレクション」」、使いやすさは健康にも影響する「PCまわりの使いにくさ、もう放置しない! 今すぐ欲しい環境改善グッズ」など、特別企画も満載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録小冊子は新旧のインターフェース規格を解説した「インターフェース図鑑+インターフェース拡張パーツカタログ」。懐かしいものから現在主流の規格、マザーボードには搭載されているのにデバイスが登場しないものまで一挙掲載だ。


-PCパーツ無差別級対決-
新顔Mini-ITXケース対決 part2 NCASE M1 Version 5 / NZXT Manta~PCケース編 その4~


第5部
PCケース編

 必要性の薄れた5インチベイを省略することで「自由」を手に入れたATXケースと、圧倒的な拡張性で利用範囲を広げたMini-ITXケースに注目。

Part2 新顔Mini-ITXケース対決

Mini-ITXの枠を超えた拡張性と可能性

■ATXの王道をダウンサイジング Fractal Design Define Nano S Window

■小型の本流 NCASE M1 Version 5

■本格的に拡張するなら NZXT Manta

 Mini-ITXと言えば、性能の低いサブマシンを作るためのフォームファクターと考えているユーザーはまだ多いだろう。

 しかし、もうそんな古い考えは捨て去るべきだ。最新チップセットを搭載するMini-ITX対応マザーボードが数多く登場しているし、チップセット自体の機能が強化されたことで、拡張カードを複数装備する必要性も減った。PCケース自体の拡張性や機能性も向上している。

 このセクションで取り上げた3製品は、いずれも大型CPUクーラーやビデオカードを組み込める上、パーツ選択の自由度が非常に高いMini-ITX対応PCケースだ。サイズが大きめのタイプは組み込み作業もしやすく、裏面配線を利用してケーブルを美しく整理することもできる。本格水冷システムを内蔵できるものもある。こうした小型ケースで、「本気のメインPC」を作ろう。

新顔Mini-ITXケース対決 その2
小型PCマニアよ本気で挑め! 高級Mini-ITXケースの決定版

NCASE
M1 Version 5

実売価格:29,000円前後

Specification
●規格:Mini-ITX●タイプ:冷却重視●裏面配線:-●カラー:シルバー、ブラック●付属電源:なし●ベイ:5インチスリム/2.5インチシャドー×1、3.5インチシャドー×2、3.5/2.5インチシャドー×1、2.5インチシャドー×1、2.5インチシャドー×2(2.5インチ×1→2増設ブラケット使用) ※増設ブラケット2組付属●対応するCPUクーラーの高さ:最大130mm●標準搭載ファン:-●追加搭載可能ファン:8/9cm角×1(背面)、12cm角×1(底面、3.5/2.5インチシャドー×1と排他)、12cm角×1(側面)、12cm角×1(側面、3.5インチシャドー×2と排他)●本体サイズ(W×D×H):160×328×240mm●重量:2.68kg

パーツ選びや組み込みに一工夫 実力者にこそオススメしたい

 手触りのよいアルミ製の天板や側板、前面パネルを採用する小型のPCケースだ。高さは24cm、奥行きは32.8cmと、机の上に置いても違和感のないサイズである。にもかかわらず、最大で長さ30.5cmのビデオカードや、工夫しだいで大型CPUクーラーを組み込めるという拡張性の高さが最大の魅力だ。

 フックで固定されている前面パネルや側板、前面パネルを外すと、ほぼフレームだけの状態になり、両側面や天板から自由に手を入れて作業できる。とはいえ、マザーボードと電源ユニットの隙間やケーブルを整理するスペースが狭いなど、小型PCケース特有の苦労はあるので、ほかのモデルと比べると組み込み難易度はかなり高い。

 また今回の検証では、CPUクーラーとしてサイズの「兜2」を使用したが、ファンとヒートシンクを個別に組み込まないと、電源の延長コネクタ部分に干渉した。またヒートシンクが側面の3.5インチシャドーベイにわ
ずかだが干渉する。

 パーツ選びや組み込み方法まで、さまざまなことを考える必要はあるが、自分の考えがピタリとはまったときの快感は並みではない。各部にメッシュ構造を採用しているおかげで、標準ファンなしでも冷却性能は高い。スタイリッシュで、パワフルな小型メインPCが組みたいなら最有力候補だ。 (竹内亮介)

フレームだけの状態になりケーブル接続は非常に楽
アルミ製の側板や天板、前面パネルはフックで軽く固定されているだけで、簡単に取り外せる。また3.5インチシャドーベイも外せるため、ほぼフレームだけの状態になる
机の上で便利な配置
高さを抑えた小型設計
フロントポートは、前面パネルの下部に装備する。机の上に置いて使う時に便利な位置だ。2基のUSB 3.0ポートとヘッドホン、マイク端子という構成
Qbee 03と比べると、高さは8.8cmも低い。ただし奥行きはM1のほうが8.8cm長い。机の上に置いて使うなら、わずかだが机が広く使えるQbee 03のほうが有利か
組み込んだときの注意点をチェック
天板や側板はメッシュ構造
薄型光学ドライブを搭載可能
ビデオカードに効く底面ファン
アルミ製の天板や側板は、細かい空気の通り道を設けたメッシュ構造を採用している。外気をしっかりと取り込んで、内部のパーツを冷却できる
容積の小さな小型のPCケースではめずらしく、前面に光学ドライブを搭載できる。ただしスロットインタイプの薄型モデルのみの対応だ
標準ではファンを装備しないので、冷却を重視するなら底面や側面にファンを増設したい。とくに底面ファンは、ビデオカードの冷却によい影響を与える

底面ファンを追加するとGPU温度は6℃低下した

 M1は天板や側板がメッシュで、底面も空気の通りがよいPCケースだ。そのため標準ではファンを搭載しないにもかかわらず、CPU温度は、今回試した3機種の中ではもっとも低かった。ただGPU温度は高いので、底面にEnermaxの12cm角ファン「T.B.Silence PWM UCTB12PUCTB12P」を追加すると、6℃も低下した。

【編集部の判定】

 一つの空間が複数のデバイスの設置スペースになっており、パーツを詰め込もうとすると、こちらを入れればあちらが入らずと、かなり上級者向けの仕様。

 しかし、徐々に拡張するような使い方ならハードルは決して高くない。

【検証環境】

CPU:Intel Core i5-6600K(3.5GHz)
マザーボード:ASUSTeK Z170I PRO GAMING(Intel Z170)
メモリ:Micron Crucial CT8G4DFD8213(PC4-17000 DDR4 SDRAM 4GB×2)
ビデオカード:MSI GeForce GTX 970 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX 970)
SSD:Micron Crucial MX200 SSD CT500MX200SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、500GB)
電源:SilverStone SFX ST45SF-G(450W、SFX、80PLUS Gold)
CPUクーラー:サイズ 兜2(トップフロー、12cm角ファン)
ケースファン:Enermax T.B.Silence PWM UCTB12PUCTB12P(12cm角)
OS:Windows 10 Pro 64bit版
室温:21.1℃
アイドル時:OS起動10分後の値
高負荷時:OCCT 4.4.2 POWER SUPPLYテストを10分間動作させたときの最大値
各部の温度:使用したソフトはHWMonitor 1.28で、CPUはCPU TemperaturesのPackage、GPUはGPU Temperaturesの値、ケースファンは「Fan Xpert 3」に接続してフル回転、および「標準」

新顔Mini-ITXケース対決 その3
驚異的な拡張性を秘める丸みを帯びたシルエット

NZXT
Manta

実売価格:26,000円前後

Specification
●規格:Mini-ITX●タイプ:冷却重視●裏面配線:対応●カラー:ブラック/レッド、オールブラック●付属電源:なし●ベイ:3.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×3●対応するCPUクーラーの高さ:最大160mm●標準搭載ファン:12cm角×2(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14cm角×2(前面、12cm角×2と排他)、14/12cm角×2(天板)●本体サイズ(W×D×H):245×450×426mm●重量:7.2kg

最大5基のファンを搭載可能 組み込み難易度も低い

 天板と両側板、前面パネルが外側に膨らんだ、丸っこい独特のシルエットを採用するPCケースだ。筐体はMini-ITXと言うよりはmicroATX対応のミニタワーケースに近いサイズで、ビデオカードは長さ36.3cmまで、CPUクーラーも高さ16cmまで対応するという圧倒的な拡張性が最大の特徴である。

 5インチベイは搭載しないが、その分パーツレイアウトの自由度は高い。天板や前面には28cmクラスの水冷ラジエータや、最大で5基ものファンを搭載できる。またマザーボードベースの裏面には合計8基のファンを取り付けられるハブがあり、マザーボード側のPWM対応のファンコネクタ1基に接続して回転数を制御できる。

 組み込み時は、ネジ止めされている両側板のほか、天板や前面パネルも外しておこう。とくに天板を外すと、天板のファンマウンタからマザーボード上部に手を入れられるようになり、EPS12V電源ケーブルやファンケーブルが接続しやすい。マザーボードベース裏面の一部がくぼんでおり、ここに太い電源ケーブルなどをまとめられる。とはいえ膨らみのある右側板のおかげで、多少ケーブルのまとめ方が雑でも問題はない。

 大型ではあるが、その分組み込み難易度は低く、パーツの選択の自由度も高いので、幅広くオススメできる。 (竹内亮介)

3基のファンを標準装備 回転数を制御可能
Mini-ITX対応PCケースで、標準で3基ものファンを搭載するモデルはめずらしい。マザーボードベースの裏側にあるハブで、合計8基までのファンをマザーボードのPWM対応ファンコネクタで制御できる
USB 3.0ポートを2基装備
サイズはミニタワークラス
写真ではちょっと分かりにくいが、フロントポートは天板手前の右側に装備する。本体を左側に設置すると使いやすい位置だ
一目見て分かるように、Mini-ITXと言うよりはmicroATX対応のミニタワーケースに近い。Qbee03よりも奥行きが21cm長く、高さは9.8cm高い
組み込んだときの注意点をチェック
暗い場所でも配線できる
防塵フィルタにも簡単アクセス
天板も簡単に外せる
バックパネルの上にLEDが組み込まれており、背面に装備するスイッチでON/OFFできる。かなり明るいので、暗い場所でも正確にケーブル接続を行なえる
前面パネルは、下部に手をかけて引っ張ると外せる。防塵フィルタも上部のフックを外して手前に倒すだけで外せるので、清掃は楽だ
膨らみのある天板は、上方向に引き上げることで簡単に外せる。マザーボードへの配線も行ないやすくなるので、組み立て時は外しておこう

最大回転時はかなりうるさい ファンコントローラを活用しよう

 前面に2基もの12cm角ファンを搭載していることもあり、最大回転時はかなりうるさいと感じられるレベル。ただ、PWMハブで搭載ファンをまとめて制御することで、静音化は可能だ。CPU温度は今回紹介している3機種の中では平均的だが、GPU温度はかなり高い。電源ユニットとビデオカードが近過ぎるせいだろう。

【編集部の判定】

 最大5基のケースファンを搭載可能な冷却力を活かして高性能なビデオカードを搭載したゲームPCを作りたい。

 ただし、GPU温度、動作音ともに標準状態では今一つ。ファンチューニングで実力を引き出そう。

【検証環境】

CPU:Intel Core i5-6600K(3.5GHz)
マザーボード:ASUSTeK Z170I PRO GAMING(Intel Z170)
メモリ:Micron Crucial CT8G4DFD8213(PC4-17000 DDR4 SDRAM 4GB×2)
ビデオカード:MSI GeForce GTX 970 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX 970)
SSD:Micron Crucial MX200 SSD CT500MX200SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、500GB)
電源:Corsair RM550x(550W、ATX、80PLUS Gold)
CPUクーラー:サイズ 兜2(トップフロー、12cm角ファン)
OS:Windows 10 Pro 64bit版
室温:21.1℃
アイドル時:OS起動10分後の値
高負荷時:OCCT 4.4.2 POWER SUPPLYテストを10分間動作させたときの最大値
各部の温度:使用したソフトはHWMonitor 1.28で、CPUはCPU TemperaturesのPackage、GPUはGPU Temperaturesの値、ケースファンは「Fan Xpert 3」に接続してフル回転、および「標準」

【問い合わせ先】

NZXT:Webサイトのフォームから(タイムリー:http://www.timely.ne.jp/)/http://www.nzxt.com/


[Text by 竹内亮介]


DOS/V POWER REPORT 2016年6月号は4月28日(木)発売】

★総力特集「価格も新旧も関係なしの大激突! PCパーツ無差別級対決」
★特別企画「自分で作るRaspberry Piノート pi-top入門講座」「空いているスロットを有効活用 春の内蔵拡張カードコレクション」「PCまわりの使いにくさ、もう放置しない! 今すぐ欲しい環境改善グッズ」
★連載「最新自作計画 ~最新AMD CPUで作るお手頃メインPC~」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」
★ 特別付録「インターフェース図鑑+インターフェース拡張パーツカタログ」(雑誌のみ別途付録、電子版では本誌巻末に収録)

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(AKIBA PC Hotline!編集部)