eスポーツWatch

中/米/韓の選手に聞く「モバイルeスポーツVainglory」
~新生eスポーツの可能性を探る~

text by スイニャン

 前回はモバイルゲームVainglory初の公式リーグである「International Premier League」の会場の模様をお伝えした。

 今回はそこに参加しているチームのうち3つの海外チームに行ってきたインタビューの模様をお届けする。モバイルでeスポーツを行っている各国の選手たちはいったいどんな選手たちなのか、以下よりご覧いただきたい。

中国の男女混合チーム「Hunters」中国正式ローンチ前に始動

Queen選手(ローム)
Wands選手(ジャングル)
GodFather選手(レーン)

――まず中国でのVaingloryの人気はいかがですか。

[Queen選手]最近徐々に人気が高まってきているところですね。

 プレイ人口も増え始めているので今後さらに人気が出ると確信しています。実は中国語版はまだ配信されていなくて、現在は英語版でプレイしているんです。英語版にも関わらず中国でもプレイしている人が結構いて、私たち3人もそれぞれの友達から勧められてVaingloryをプレイし始めました。

 近日予定されている中国語版が配信され始めたら絶対に人気が出ると思います。

――Vaingloryの魅力はどんな点でしょうか。

[GodFather選手]マウスやキーボードを使わず直接指でタッチできるというところが気に入っています。自分が直接ヒーローを動かしていると感じられることが一番の魅力ではないでしょうか。

[Queen選手]私は友達と一緒に楽しく遊べるという点と、画面がとてもきれいな点が魅力だと思います。

[Wands選手]僕が以前プレイしていたいくつかのゲームの制作者たちが協力し合ってつくったゲームであると聞き、その点に惹かれました。

――Queen選手は唯一の女性選手ですが、選手になったきっかけは何ですか。

[Queen選手]チームのメンバーとはVaingloryを通じて知り合ったんですが、二人が本当に上手いので私がそばでサポートしたいなと思うようになり、(私がサポートするかたちで)チームを結成したんです。

 でも、選手に女性がいれば知名度も上がるし、関心を持ってくれる人も増えると考え、チームを宣伝する狙いも込めて自分が選手として活動することにしました。

――では普段はどのように練習していますか。

[Queen選手]私たちのチームはちょっと特別かもしれませんが、戦略戦術というものがありません。その代わり時間さえあれば3人で一緒にゲームをやり続けます。個人練習ではなくいつも3人一緒に練習しています。

[GodFather選手]僕たちは去年からVaingloryをプレイしているので、他のチームと比べて熟練度も高いし、スキルをどのように使えば良いかといったこともよく理解しているのです。

――母国を離れて韓国までやってきて世界大会に出場した感想を聞かせてください。

[Wands選手]中国にいるときとは違って世界大会に参加すると各国のトッププレイヤーたちと対戦できるのがとても良いと感じました。

[GodFather選手]そういった実力者たちとの戦いを通じて自分たちもさらに成長できるということが一番良い点だと思います。

[Queen選手]私は韓国で開かれる大会に来られてとても嬉しく思っています。

 実は韓国にはこれまでも何度か来たことがあって、美味しいものを食べたりショッピングしたりできるのもとても楽しいです(笑)

 前回のインビテーショナルで私たちは日本のチームに負けましたが、日本はゲーム大国なだけあってeスポーツでも力を発揮してきたなと感じました。

――日本代表チームDivine Brothers(以下DB)の印象についてもう少し詳しく聞かせてもらえますか。

[Queen選手]DBはゲームの楽しみ方を分かっているチームだと思います。それに実力も非常に高いですね。

 大会のときは彼らと同じ控室を使っていたんですが、お互いに色々な話をした中で感じたのは日本人はとても礼儀正しいということでした。戦術戦略についてもあれこれ話しましたが本当にしっかりした良いチームだと思いました。

[GodFather選手]技術的な面で非常に優れていると思います。それとDBの3人は共にゲームをしてきた期間が長いからか団結力があると感じました。特に言葉を交わさなくとも1人が動けば2人がそれについて行くといったような息の合ったチームだと思います。

[Wands選手]二人に全部言われてしまいました(笑)。僕も同じ考えです。

――では最後に今後の目標と日本のVaingloryファンへメッセージをお願いします。

[Wands選手]僕は日本のユーザーの皆さんの実力がどんどん向上することを願っています。そしていつかまた機会があったら世界大会で日本のチームと対戦できたらいいなと思っています。

[GodFather選手]これからも一生懸命頑張りますのでもっと僕たちに注目してもらえたら嬉しいです。

[Queen選手]今後の目標はスキルの活用能力を向上させることと、ゲーム上でもっと成長できるように頑張ることです。日本のみなさんには、是非私たちのことを好きになってもらいたいですね。

Vainglory 発祥の地・北米の人気セミプロチーム「GankStars」

gabevizzle選手(ローム)
CullTheMeek選手(ジャングル)
IraqiZorro選手(レーン)

――北米でのVaingloryの人気はいかがですか。

[IraqiZorro選手]北米地域ではVaingloryは有名で、人気上昇中のゲームです。

 去年Vaingloryが配信され始めたばかりのころは、それほどでもなかったんですが、このゲームがどれだけ良いゲームか、ということが知られるようになってから人気が上がり始めました。

――なぜPCではなくモバイルのVaingloryでeスポーツプレイヤーとして活動するようになったのですか。

[gabevizzle選手]最初はスマホで気楽に始めたんですが、プレイすればするほど競争心が生まれて大会に出たいと思うようになりました。

 PCでプレイするゲームはキーボードの配置なども覚えなければなりませんが、モバイルゲームは指先だけでプレイできるので簡単だなと思いました。

[IraqiZorro選手]僕もgabevizzleと同じように最初はただ面白いからプレイしていたんですが、モバイルで行うMOBAというものに可能性を見い出したのでeスポーツプレイヤーを続けています。

 昔からPCがゲームに最適なマシンだと言われてきましたが、スマホを使っている人のほうがはるかに多いですよね。より気軽に接することのできるスマホだからこそ、モバイル産業が今後大きくなると考えています。

[CullTheMeek選手]PCゲームがeスポーツの中心であることは間違いないのですが、Vaingloryというゲーム自体が家だけでなく、どこでもプレイできるゲームなので限られた場所でしかプレイできないPCより可能性のあるジャンルだと思います。

――母国を離れて韓国までやってきましたが、周りの方々の反応はいかがですか。

[gabevizzle選手]僕の両親は最初、あまり良い反応を示していませんでした。でもインビテーショナルで訪韓するにあたってゲームの開発者と会い、父は一緒に韓国へ来て大会を観戦しました。実際に見たところ規模も大きくこれからeスポーツとして盛り上がろうとしていることが分かったようで、今は両親や彼女も積極的にサポートしてくれています。

[IraqiZorro選手]僕の場合は一人で海外旅行をしたことなどもあったからか、周りの人たちもそれほど気にしていなかったようです(笑)

 僕の両親は大会もよく見てくれるしオンラインのチャットなどでもよく話すので、両親が今の僕の原動力になっていると言えると思います。

[CullTheMeek選手]最初は僕の両親はあまりサポートをしてくれませんでした。

 それに僕はこれまで一度もアメリカの外に出たことがなかったので、かなり心配されましたね。でも実際に大会に出たのを見て、eスポーツにおけるVaingloryの可能性を感じたらしく、今は非常によくサポートしてくれるようになりました。

――日本代表チームDBの印象はどうでしたか。

[gabevizzle選手]前回大会では僕たちとの直接対決はなかったのですが、練習試合を通じて個人的にDBはとてもレベルの高いチームであると認識しています。

 StanSmith選手がチームを脱退した後もDejiwo選手とSLASHmooN選手が頑張っているのを見てとても嬉しく思っていますし、今後また国際大会に姿を見せてくれることを願っています。

[IraqiZorro選手]インビテーショナル準優勝後、StanSmith選手がDBを抜けたあとも良い成績を収め続けているという点でとても素晴らしいチームだと思っています。

 個人的にはSLASHmooN選手がすごく良い選手だなと思って見てました。僕はDBが今も日本のトップチームだと認識しています。日本の試合もよく見るんですが、最近の日本の大会でもDBが優勝したのを見ました。僕としても今後DBがまた世界大会に出場してくれたらいいなと思っています。

[CullTheMeek選手]DBはインビテーショナルのときも素晴らしい実力を見せていましたが、これからもその実力を維持していけば、いつかまた国際大会に参加してくれるだろうと期待しています。

――では普段どのように練習していますか。

[IraqiZorro選手]アメリカにいたときは全員別々の地域に住んでいたので練習を一緒にしたこともほとんどなかったし、スカイプでちょっと話す程度でそもそも練習をそれほど重視していなかったんです。

 でも韓国へ来て合宿生活を始めてからは練習スケジュールもきちんと決め、練習に臨む姿勢もだいぶ変わり、練習を重視するようになりました。韓国では欧州チームのUnknown-Oと一緒に合宿生活をしていて練習試合をたくさんやっています。

――ところでCullTheMeek選手はなぜ膝の上にタブレットを置いてプレイしているのですか。

[CullTheMeek選手]いつも家では机ではなくソファーに座りながらプレイしていたんです。それで膝の上に置くスタイルが定着しました。他の選手はどうか分かりませんが、少なくとも僕は膝の上に置いてプレイするのが楽なので机でプレイするよりはるかに実力も発揮できるんです。

――チームにはスポンサーもついているそうですが、今後の活動予定は何かありますか。

[IraqiZorro選手]現在僕たちのチームにはMobcrushというモバイルゲーム専門の配信サイトがスポンサーについてくれており、非常に感謝しています。

 今後の活動予定としては、新しく北米リーグが始まるのでリーグ進出を目指すつもりです。もし進出できなかったとしてもVaingloryシーンでトップチームとして君臨し続けられるよう頑張りたいです。

――では最後に日本のVaingloryファンへメッセージをお願いします。

[CullTheMeek選手]日本のVaingloryファンの皆さん、Vaingloryに興味を持ってくれて本当に嬉しいです。これからもゲームを続けていけば認知度も高くなると思うので、末長くこのゲームを続けてもらえたらと思います。

[IraqiZorro選手]アメリカのみならず日本にもVaingloryのファンがいるというのは本当に嬉しいし感謝しています。CullTheMeekが言ったようにゲームを続けていけば市場も大きくなるのでプレイを続けてほしいです。

[gabevizzle選手]Vaingloryのファンはもちろん、僕たちのファンも日本にいたら嬉しいなと思います。そして先に二人が言ったように僕も皆さんにゲームを続けてもらいたいし、誰でも気軽にできるゲームなのでもっとたくさんの人に興味を持ってもらえたらなと思います。

世界大会優勝を果たした韓国の強豪チーム「Invincible Armada」

Ruin選手(ローム)
Wine選手(ジャングル)
Sangho選手(レーン)

――韓国でのVaingloryの人気はいかがですか。

[Wine選手]韓国はAndroid利用者が多いため、7月頭にAndroid版が配信されるまでは、それほど多くの人がプレイしているわけではありませんでした。でもAndroid版が配信されてからプレイヤーがかなり増えたと思うので、これからもっと爆発的に増えるのではないかと予想しています。

――ではVaingloryの魅力はどんな点でしょうか。

[Wine選手]良い意味でモバイルゲームらしくないところですね。

 タッチデバイスで行う操作がキーボードやマウスを超えることはできないと言う人もいますが、この大会に出ている選手たちを見ると「キーボードやマウスで操作しているんじゃないか?」と思うほど想像以上の精巧な操作を見せているんです。選手たちのフィジカル能力のひとつひとつが重要なゲームなので、そこが魅力だと思います。

――世界大会に出場した感想を聞かせてください。また、周りの反応はどうでしたか。

[Ruin選手]最初は緊張しましたが今はそれを楽しんでいます。スリルのようなものを感じていますね。今はまるで中毒のように「早く大会で戦いたい」という気持ちで楽しく試合に臨んでいます。

[Wine選手]周りの人たちは、スマホやタブレットでeスポーツを行うことに対して疑問を抱いていたようです。でも、決勝戦を観戦しに来てくれた僕の父もそうだったんですが、生で観戦した人たちには「これがeスポーツとして成立している」と分かってもらえるようです。

[Sangho選手]実は僕は公務員試験を受けてからこのゲームを始めました。

 試験の成績は良くないものでしたが、逆にゲームの成績は非常に良かったんです。周りの人たちもゲームができるのは若いうちだけだからやってみろと言ってくれていて、僕自身とても楽しく意欲もあるので頑張ってみようと思いました。

――では普段はどのように練習していますか。

[Wine選手]今回の大会に向けて練習を始めてからは、朝日が昇る前に寝たことがありません。昼間は各自の生活があるので睡眠時間を削って練習しています。

 だいたい夜の10時~11時ぐらいに帰宅して、風呂に入ったあと簡単に夜食を食べてからチーム練習を始めるんですが、そうするとあっという間に明け方の5時とかになってるんですよね。

[Ruin選手]朝日が昇ると「ああ、今日も寝る時間がやってきたか」という感じで寝るんです(笑)。僕は今までRPGなどでは2~3時間プレイするとすぐ飽きてしまって長時間座っていられなかったんです。でも、Vaingloryはモバイルゲームにも関わらず6時間は基本ですね。時を忘れるほど飽きずにプレイしています。

 もし、僕たちの身体が疲れを感じず寝なくても大丈夫だとしたら、3人とも時間の限りプレイしていられると思います(笑) いつも寝るために練習を終わらせていますね、「明日仕事だから寝なきゃな」という感じで。

――決勝戦で日本代表チームDBと対戦しましたが、印象はどうでしたか。

[Wine選手]僕は普段からStanSmith選手と仲良しなんです。以前はネット上で話すだけでしたが、前回大会で実際に会って一緒に酒も飲んで友達になりました。見た目も格好いいですし、ゲームも上手くてタレント性もありますよね。

 実は前に非公式大会でDBと対戦して負けたことがあったので、次こそはという気持ちもあったんですが、DBならたとえ負けても恥ずかしくない相手だと思ったので決勝戦で対戦できて本当に良かったです。

 2試合とも序盤は僕たちが押されていて何とか逆転できた試合だったんですが、だからこそ価値ある勝利だったと思います。

[Ruin選手]一度戦ったことがある相手なだけに、安心な面もありつつ、気をつけなければならないという気持ちもありました。しかも僕たちは決勝戦で全員がポジションを変えて臨んだので最初の試合が一番緊張しましたね。

 でも1戦目で勝ったとたん自信が沸いてきたんです。そして優勝してからStanSmith選手の涙を見ました。僕はとてもやりきれない気持ちになりましたが、その後一緒に酒を飲みながら彼をなだめました(笑) 一番記憶に残る試合でしたね。

[Sangho選手]StanSmith選手は確か僕と同じぐらいの歳だったと思うんですが、本当に仲が良いんです。お互いの国の言葉でふざけて悪い言葉を言い合いながら笑い合っているような仲なんですが、いざ決勝戦の相手が日本チームとなったとたん、光復節(終戦記念日)の前日ということもあってか韓国の世論は「日韓戦」という堅苦しい雰囲気になってしまって悲しかったです。きちんと「eスポーツ」として捉えてもらいたかったですね。

 僕としては勝ち負けにかかわらず共にゲームができたことが楽しかったし、このような機会を与えてくれたOGNに感謝しています。世界各地のチームと戦えてとても良い思い出になりました。

――今後の目標や活動予定がありましたら教えてください。

[Wine選手]僕たちは遠い将来のことよりも目の前にある試合のことだけを考えていますが、あえて先の目標を言うなら、「これから開かれるであろうさまざまな大会に参加して良い成績を収めたい」ということですね。

 それから僕は個人配信をやっていますが、今後はTwitch TVと契約したのでそちらで行う予定です。僕は英語や日本語が上手いわけではないので韓国人視聴者を相手に放送することにはなりますが、ゲームだけではない楽しい放送を目指しています。

――では最後に日本のVaingloryファンへメッセージをお願いします。

[Wine選手]東アジアサーバーでプレイすると日本人と韓国人が半々ぐらいいて、日本人ユーザーと一緒にプレイすることも多いです。

 日本人はこれまでLoLのようなMOBAはあまりやらなかったので一般の韓国人は今でも「MOBAの上手い日本人なんているのか」と聞いてきたりするんですが、それはDBが決勝戦まで勝ち上がってきたことで証明しましたよね。

 今後もDBのような日本の強豪チームが国際大会に出場して、ともに活躍できたらと思います。それまで僕たちも今の地位を維持できるよう努力しますので日本の皆さんも…(日本語で)「ガンバレ!」

[Ruin選手]僕も同じ考えですね。MOBAというかeスポーツ自体、韓国や中国が得意としているという認識だったんですが、僕も東アジアサーバーでプレイしたときに一番よく見かけた外国人プレイヤーが日本人でした。

 最初は正直日本人ユーザーはあまり上手くなかったんですが、最近はまったく違います。レベルの高い日本人ユーザーが本当にたくさんいます。そしてDBを見て「日本人ってこんなに上手いのか」とある意味ショックを受けました。初めてのモバイルeスポーツなので、ともに頑張っていけたらと思います。

[Sangho選手]確かインビテーショナルで戦った日が7月14日だったと記憶していますが、実は7月8日から12日まで大阪旅行に行っていたんです。日本のみなさんにとても親切にしていただいてとても感動しました。これからもVaingloryやそれ以外でも、日本人とたくさん交流していきたいです。

(スイニャン)