借りてみたらこうだった!

安価なSSDでもSATA最高クラスの速度が出る時代に、Plextorのバリューモデル「S3」をテスト

TLC NAND採用、2.5インチ形状とM.2形状の2タイプ text by 加藤勝明

今回テストしたPlextor社製最新SSD「S3」シリーズから、2.5インチ版「PX-512S3C」(上)とM.2版「PX-256S3G」(下)

 動画編集のように巨大なファイルをゴリゴリと読み書きするなら、PCI-Expressで接続するNVMe接続のSSDが最適だが、SATA接続のものに比べると数千~1万円程度割高。それほど強烈な読み書き性能は必要ないが、容量単価に優れるものが欲しいというニーズもまだまだあるだろう。

 そこで、そうしたニーズを満たすPlextor製SSDの新型バリューモデル「S3C」のレビューをお届けする。

 今日の低価格路線のSSDの主力は、MLCからTLC NANDへ移行しており、Plextor S3CシリーズもTLC採用モデルだ。TLCというと、性能的にはイマイチというユーザーが大多数だと思うが、最新のTLC採用モデルは思いのほか高速化されている。

 今回は2.5インチの512GBモデル「PX-512S3C」と、M.2(SATA)接続の256GBモデル「PX-256S3G」のサンプル版を借用したので、その性能をご覧頂こう。

まずは外観をチェック、コントローラはSillicon Motion製、NANDは14nmのTLC NANDを搭載

 では今回入手した2製品を外見からチェックする。

 2.5インチモデルは7mm厚、M.2モデルは2280モジュールというお馴染みの形状を採用している。コントローラは低価格SSDで採用例の多いSillicon Motion Technology製の「SM2258G」、NANDフラッシュメモリはSK Hynixの14nm TLCが使われていた。

 メーカーによると、製品版ではコントローラチップにSillicon Motion Technology製の「SM2254G」を採用しているという。SM2258GとSM2254Gはほぼ同じ性能のチップで、SM2258GをPlextor向けに若干カスタムしたチップがSM2254Gとのことだ。

 それでは、まずは2.5インチ版の「PX-512S3C」から紹介しよう。筐体サイズに対して内蔵されている基板はコンパクトだ。

2.5インチ SATA接続の「PX-512S3C」の表面。本製品には9.5mm厚ベイに合わせるためのスペーサーは付属しない。
こちらは裏面、7mm厚の本体にSATAコネクタというごくスタンダードなスタイル。
PX-512S3Cのドライブデータを「CrystalDiskInfo」で取得したところ、まだ新しいSSDのせいか、今回の検証環境ではS.M.A.R.T.経由で温度が読み取れなかった。これはM.2でも2.5inchモデル共通。
512GBモデルとはいえ、最近の大容量NANDフラッシュメモリを搭載のおかげで基板そのものは非常に小さい。
表裏にNANDフラッシュメモリは2基ずつ、合計4枚実装されている。
コントローラはSillicon Motion Technology製。サンプル版にはSM2258Gが搭載されているが、製品版はPlextor向けにカスタムされたSM2254Gが搭載される。
NANDフラッシュメモリはSK Hynix製14nm TLC。まだデータシートに登録されていないのか、詳細は不明だがこれが4基で合計512GBということから1024Gbitチップだということがわかる。
さらにキャッシュメモリとしてSamsung製のDDR3Lメモリ「K4B4G1646E」が搭載されていた。4Gbitチップが1基のみなので容量は512MBとなる。

 続いてM.2版の「PX-256S3G」。搭載チップの一部に違いはあるが、基本的には2.5インチ版と同等といえる構成になっている。

M.2 SATA接続の「PX-256S3G」のモジュール。チップ類は表面のみに実装されている。モジュールの長さは一般的な2280だ。コントローラー上のシールが上手く剥がせそうにないので型番の詳細は不明だが、2.5inchモデルと共通だろう。
NANDNフラッシュメモリは2.5inchモデルと同じ「H27Q1T8QAB4R BCF」と刻印されたもの。これが2枚なので容量は256GBという訳だ。
M.2モデルのキャッシュメモリもDDR3Lの512MBだが、こちらはSK Hynix製「H5TC4G63CFR」になっていた。

最大リードは560MB/s超、ライトも530MB/sと低価格SSDとしては申し分のない性能

 今回のベンチマーク環境は以下のような後世とした。テスト対象のSSDはデータドライブとして初期化し、検証を行っている。M.2モデルはCPUに近い側のM.2スロットに装着した。

【検証環境】
 CPU:Intel Core i7-7700K(4.2GHz、最大4.5GHz)
 マザーボード:ASRock Fatal1ty Z270 Gaming K6(Intel Z270)
 メモリ:Corsair CMU16GX4M2A2666C16R(DDR4-2666 8GB×2)
 グラフィック:ASUST ROG-STRIX-GTX1080Ti-O11G-GAMING(GeForce GTX 1080Ti)
 ストレージ(OS起動用):Intel SSDPEKKW512G7X1(NVMe M.2 SSD、512GB)
 電源ユニット:Silverstone ST85F-PT(850W、80PLUS Platinum)
 OS:Windows 10 Pro 64bit版(Creators Uptade)

 最初に定番「CrystalDiskMark」でどの程度の数値が出るかチェックする。テスト条件はデフォルトの「1GiB×5」を使用する。

「CrystalDiskMark」による読み書き性能。左がPX-512S3C、右がPX-256S3G

 シーケンシャルリードおよびライトはSATA SSDとしてはほぼ限界に近い値が出ている。その他のテストでもほぼ両者は同傾向にあるが、キューデプス32のランダム4Kリード&ライトに関してはPX-512S3Cの方が速くなっている。

 続いては「ATTO Disk Benchmark」を使ってみた。テスト条件はデフォルト値をそのまま使用している。

「ATTO Disk Benchmark」による読み書き性能。左がPX-512S3C、右がPX-256S3G。

 こちらもシーケンシャルリードは560MB/sec程度、ライトは530MB/sec程度と、CrystalDiskMarkの結果を裏付けるものとなった。

 最後に「HD Tune」を使ってもう少し性能の特性を探ってみよう。まずはリードとライトの性能だが、縦軸は性能(MB/sec)、横軸はデータ量となる。

「HDTune」によるリード速度の推移。左のPX-512S3Cは最小は速く中盤で若干ダレるが、400MB/s前後を維持。右のPX-256S3Gは70GB以降はストンと転送性能が落ちた。
こちらはライト速度の推移。どちらもキャッシュに収まる範囲はトップスピードが出るが、その後すぐ180MB/sec付近に下落。さらにPX-256S3G(右)は128GBあたりでさらにもう1段下落する。
「HDTune」によるリード時のアクセスタイムの分布。どちらも転送サイズ1MB(青い点)で2ms付近に集まる点は同じだ(左がPX-512S3Cで、右がPX-256S3G)。
こちらはライト時のアクセスタイムの分布。こちらも両者の分布に決定的は差はない(左がPX-512S3Cで、右がPX-256S3G)。
500MBのファイルを読み書きした際の転送速度の比較(左がPX-512S3Cで、右がPX-256S3G)。

コストパフォーマンスに優れたSSDを買うなら一考の価値あり

TLC NAND搭載SSDはもう主流といってよい。コスパ重視のSSDを探しているなら、Plextorの「S3C」シリーズはオススメだ。

 以上、ざっくりとではあるがPlextorの新SSD「S3」シリーズの検証は終了だ。

 2.5インチの「S3C」、M.2の「S3G」ともに、コントローラが同じで、搭載NANDフラッシュメモリも枚数以外は共通なため、性能的にはほぼ同等といえるものだった。特にシーケンシャルリードとライトはSATAの性能限界近くであるため、日常作業やゲームの導入先としては非常にお買い得感のある製品といえる。

 特に現在のPCゲームに関していえば、SSDを使用した時点でかなり高速化された状態になるので、高価なNVMe接続のものやRAID 0構成にしたところで読み込み待ち時間はそれほど変わらない。今回M.2と2.5インチモデルを試したが、Steamライブラリを丸ごと突っ込みたいという人はPX-512S3Cを、ゲームは程々(あるいは遊ばない)が手軽さ重視ならPX-256S3Gがオススメだ。

[制作協力:Plextor]