借りてみたらこうだった!
「背面タッチパッドがあるWindowsタブレット」を試してみた
~細部操作はタッチパッドで~
text by 石川ひさよし
2015年12月2日 16:48
タブレットというと「画面にタッチ」で操作するのが一般的……というか当たり前だが、この「画面にタッチ」に加えて、本体裏面にタッチパッドを搭載、「細かい操作はこれで行える」というなかなかユニークなWindowsタブレット「CLIDE W10A」がテックウインドから登場した。
画面へのタッチでは細かい操作は難しく、デスクトップアプリを使うことも多いWindowsタブレットではストレスになることも多いが、この製品であれば、それをタッチパッドで解消できる……かもしれない。
今回、タッチパッドの使い心地を中心にレポートしてみたので、気になる方は是非参考にして欲しい。
本体裏面にタッチパッド「も」備えるタブレット
CLIDE W10Aは、10.1型液晶パネルを採用するタブレットだ。Windowsタブレットに火をつけたのは8型タブレットだが、昨今はそれよりも少し大きなサイズの製品が注目を集めつつある。解像度は1,920×1,200ドット、パネルの駆動方式はIPSなので視野角も広い。静電容量方式の10点タッチ入力などは、現在のタブレットPCのトレンドに従っている。
製品には、日本語キーボードも付属する。装着すればノートPCスタイルへ、そしてタブレットカバーとしても利用できる、これも昨今主流となっているタブレット用キーボードだ。この時点でタッチとキーボードという2つの入力方法が可能だが、CLIDE W10Aにはもうひとつ独特な入力方法が用意されている。
それが本機最大の特徴「背面タッチパッド」だ。タブレットの背面、左寄りの位置にその名の通りタッチパッドとして機能する領域が用意されている。これが第3の入力方法だ。
この「背面タッチパッド」だが、基本的なポイントとして「一般的なノートPCが備えるパームレスト部のタッチパッドと違う操作感がある」のは押さえておきたい。
もちろん、パーツとしては同じもの(のハズ)なので、感度などは特に違いを感じないが、そもそも「背面にある」ため、タッチパッドの範囲も自分の指もとも見えない。特に前者は、はじめて使うと面食らうだろう。
実はこれ、「ある工夫」で大きく改善できるのだが、その「工夫」をしない場合、持ち方を工夫したり感覚を研ぎ澄ましたりして「タッチパッドの範囲」と「自分の指の位置感覚」を把握する必要があり、使いこなすには慣れを要する。
慣れれば通常のタッチパッドに近い操作までは可能と思うが、「慣れを要する」のはなかなか厳しいと感じる人もいるだろう。
工夫をすれば快適に……
そこで行った工夫は2点。
1つ目は目視できない背面タッチパッドの領域を分かりやすくする工夫だ。背面タッチパッドには線が引かれており、指先に神経を集中させれば感じ取れるが、普段何気なく操作しているような時にこれに気づくことは難しい。
そこで、メンディングテープを背面タッチパッドの周囲に貼ってみた。メンディングテープも薄いが、それでも製品標準の枠線と比べればよりハッキリと境界を感じられるようになる。これはかなり有効で、2本指でのスクロール操作など、境界線が判らないとやりにくい操作も自信をもってできるようになる。
2つ目は、背面タッチパッドをより積極的に活用する工夫だ。背面タッチパッドのさらなる活用を考えると、マウスジェスチャーソフトと相性がよいという結論に至った。
マウスジェスチャーは、少ないマウスカーソルの移動量で様々なアクションが実行できる。そのため、背面タッチパッドでも正面タッチパッドとさほど変わらぬ感覚で操作ができる。導入してみたのは「StrokesPlus」。Windows 10にも対応しており、カスタマイズにも強いマウスジェスチャーソフトだ。
タッチパッドで使用するコツは、設定でコマンド受付けを左クリックに指定したうえで、操作はダブルタップからジェスチャーを開始すること。ブラウザの進む・戻るやタブを閉じるような操作に関連付けておけば、両手持ち操作でもかなり快適に、スピーディーにブラウジングできるようになった。こうした工夫を加えていけば、通常のタブレット+αの操作性が実現できるのがCLIDE W10Aだ。
「画面タッチ」と「背面タッチパッド」の併用がポイント
さて、こうした背面タッチパッドが、Windowsタブレットでどのように役立つだろうか。
テックウインドが提示している活用シーンは、「精度が難しいタッチ操作を補うもの」「対面利用の際にタッチ操作で画面を隠さず操作できる」「プレゼンなど拡張画面の操作に背面タッチパッドが利用できる」というものだ。これらを順に見ていこう。
まず、画面タッチの補助としてのタッチパッドという点ではかなり有効だ。
Windows 8以降、画面のスケーリング機能によって、画面タッチ操作はかなり向上した。さらに、CLIDE W10Aは10.1型パネルなので、8型の高解像度モデルと比べればかなり快適だ。しかし、それでもスケーリングは150%に設定されている。これを100%にした場合は、さすがにタッチ操作が難しくなる。例えばウェブサイトなどで、リンクが連なる場合、隣接したリンクを開いてしまうことも多くなる。こうした場合、背面タッチパッドでマウスカーソルを利用するとかなり便利。
また、対面操作は、おそらく「立った状態での対面操作」で有効と言うことだろう。机に平置きして複数人で覗き込む場合なら、画面タッチのほうが便利だからだ。
立った状態の場合で画面タッチをしようとすると、両手でホールドした状態から片手へと持ち方を変え、空いた片手で操作することになる。複数人で覗き込む場合、この切り替えが煩わしく感じることもある。背面タッチパッドがあれば、両手でホールドした状態で、持ち替えという大きなアクションなしに操作ができる。
このように、対面販売などの特定の用途では有効と思われる背面タッチパッドだが、一般的な用途においてはマストな機能とは言いづらい。ただし、補助的な入力方法としては、意外とアリだ。
専用キーボードによる2-in-1スタイルも
CLIDE W10Aに付属するキーボードは、いわゆるタブレットカバー、タブレットスタンドとしても機能する簡易的なキーボードだ。本体との接続は、独自の端子によって行うので、Bluetoothのペアリング操作やキーボードの充電といったことが不要で、ドッキングすればすぐに使える。
キーボードの配列は日本語だがやや特殊。Enterがバー型で「」やバックスラッシュの配置が通常とは異なり、US配列をベースにやや強引に日本語配列化したようなイメージだ。これが影響してか、ごく初期の出荷分では、初期化後、キーボードが英語配列として認識されてしまう場合があったそう。これについては「現在販売されている製品は、全て対策済み」だそう。また、実は評価機もこれに該当したが、同社が配布しているレジストリバッチを実行することで解決した。
タブレットカバーとしても機能するキーボードであるため、キーストロークは浅く、キーボードとしての快適さは最低限といったところ。とはいえ、この種のカバー機能付きキーボードで比較すれば及第点と言える。背面カバー側は折りたたむことでタブレット側を自立させることができる。各所にはマグネットがあり、鞄に仕舞い込んだ時も収まりがよい。
USB Type-Aあり、HDMIがなぜかmini端子などユニークなインターフェース
では入力方法を離れ、CLIDE W10Aのそのほかの基本的なスペックに目を向けていこう。
まずはインターフェースから。先に紹介したキーボード接続用の端子は底面にある。ほかのインターフェースは上部左上と左側面に集約されている。上部左上は、電源ボタンとボリューム用の±ボタンだ。左側面は、上から順にオーディオジャック、ACアダプタ用のDCジャック、USB 2.0(Type-A)、mini HDMI、micro USB 2.0、カバー付きのmicro SDXCカードスロットといった接続類が集まっている。
特徴的なのはまずUSB 2.0 Type-A端子。ここに通常、PCで用いるUSB機器が変換アダプタなしに接続できる。一般的な用途であればUSBメモリやUSBプリンタなど、業務用途であれば各種のスキャナー・リーダー、PCリンク機能のある計器などが接続できる。
もうひとつはmini HDMIだろう。プレゼンテーションなどの用途でプロジェクタなどに出力できるわけだが、タブレットで一般的なmicro HDMIにしなかった理由はよく分からない。mini HDMIは、自作PCで言えば旧型のGeForce系ビデオカードで用いられていたものの、そのほかではまず目にしない。あとは、デジタル一眼レフカメラで用いられている例があるくらいだ。おそらく変換ケーブルや変換アダプタが必須となる。
充電には専用のACアダプタを必要とする。ACアダプタ自体も若干大きめだ。とはいえ、micro USB 2.0端子にUSB充電アダプタからケーブルを繋いだところ、充電ランプが点灯した。ACアダプタの出力が5V×2Aとされているので、昨今のUSB充電アダプタでは確かに足りている。ただしマニュアルに記載のない行為なのでリスクは大きい。
バッテリー容量は6,000mAhとされていて、駆動時間は公称4時間(HD動画再生時)。BBenchでの実測値は5時間29分。タブレットとして見るとそこまで長くはなく、やはり長時間の持ち歩きを考えると、一緒にACアダプタも持ち歩いたほうがよいかもしれない。
重量は約610g。10型クラスのWindowsタブレットとしては若干重めだろうか。サイズは257×171×7.5mm。10.1型としては標準的なサイズと言えるだろう。
ハードウェアはBay Trail Atomの標準スペック。GPS付き
内部ハードウェアスペックを見ていこう。
まずCPUはAtom Z3735F。4コアで定格1.33GHz、バーストクロックが1.83GHz。Atomは低価格タブレットの定番だが、最新のCherry Trailではなく一つ古いBay Trail世代である。
メモリはDDR3Lを2GB搭載している。メモリはCPUの制約内での上限ではあるが、昨今のトレンドからすると4GB欲しいところだ。しかし、軽いアプリケーションを数個動かすだけであれば十分なので、これは使い方次第と言えるだろう。
ストレージは64GB搭載している。記載はないがeMMCだろう。microSDXCカードスロットも搭載しているので、ここにメモリカードを追加すれば最大128GBまで拡張することができる。
無線機能は、IEEE802.11a/b/g/nおよびBluetooth 4.0に対応する。802.11acに非対応なのは残念だが、802.11aに対応しているところはポイントだろう。センサーは、加速度センサーおよびGPS。GPSに対応しているのは、3G/LTE非対応製品としては珍しく、この点で地図アプリなどを使う用途では重宝しそうだ。
パフォーマンスは、CPUがAtom Z3735Fということで、おおよそ予想がつくだろう。Windowsエクスペリエンスインデックス値はCPUが6.1、メモリが5.5、グラフィックスが4、ゲーム用グラフィックスが6.1、そしてディスクが6.45だった。
3D性能は、ドラゴンクエストX ベンチマークソフトの640×480ドット、低品質グラフィックス設定でテストしても評価が「重い」となるくらいなので、3Dゲーム用としては難しい。ゲームを楽しむとしても2Dの、ブラウザゲームが中心になるだろう。
「背面タッチパッド」に固執しなくてもOK。ユニークな製品なのでそこにフィットすれば◎
CLIDE W10Aのポイントは「背面タッチパッド」である。これがとくに効果を発揮するのはやはり対面販売や訪問販売、検針などの「現場」で使うタブレットであるが、ほかにもタブレットのイン側カメラを使ったビデオチャット中の操作や、まだ手が小さくホールドが弱い子供が操作する際、それをサポートする大人が操作に介入する際のインターフェースとしても、便利であるのではないだろうか。
とはいえ、もちろんここに縛られる必要はない。タッチパネルとタッチパッド、双方をシーンに合わせて使い分けできることがポイントだ。キーボード(+マウス)を加えれば3通りの入力方法があるわけで、入力のちょっとしたイライラを解消できる点でプラスだ。そのほかの通常時は、タッチ操作とキーボード入力の2つで、ごく普通のタブレットとして使えばそれでよい気がする。
ほかの部分を見ても、USB 2.0 Type-A端子などユニークな機能を搭載しつつ高解像度で欲張りなスペックだ。また、価格も想定売価で3万2,800円前後と手ごろな価格帯に収まっているので、むしろ割安に感じられるかもしれない。似たり寄ったりになりがちなタブレットのなか、面白い製品を求めていた方にはちょうどよいかもしれない。
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