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チケット入手の競争率は5倍、「アダルトVRエキスポ2016」が開催

プレイに没頭できる体感型の展示が人気 text by 関根 慎一

会場に来ていたセクシー女優の小西まりえちゃん(左)と舞園ひなちゃん(右)

 8月27日、都内某所にて、成人向けVRイベント「アダルトVRエキスポ 2016」が開催された。

 VR向けのハードウェア、ソフトウェア、コンテンツの制作、販売、提供を行なっている企業や団体、個人が集まり、成人向けVRコンテンツを中心に体験できる展示イベント。主催は日本アダルトVR推進機構。6月の第1回以来、2度目の開催となるが、今回は事前に抽選でのチケット販売を行ない、開催場所も非公開としている。

混乱を避けるためチケットは抽選販売にイベント会場などは参加者のみに知らされるクローズドな形式に変更

アダルトVRエキスポ2016のサイトより

 こうしたクローズドな開催形態となった背景には、前回の「アダルトVRフェスタ01」での混乱があった。このときは開催場所を公表にしていたが、一般入場が開始される前の早い段階からキャパシティを大きく超える一般来場者が詰めかけてしまい、会場となったビルからは長蛇の列が形成されてしまった。結果、警察の指導により列は解散、イベントも中止の憂き目に遭っている。

 今回は開催1週間前に一般来場希望者を募り、応募者の中から抽選を行うことで来場者を限定。大量の来場者による開催地周辺の混乱防止を図っていた。しかし、開催前日にあたる8月26日、元々の開催地としていた日本橋の錦商会館周辺地域住民からの要望を受け、急遽会場を今回の開催地に変更。この際に会場の場所は非公開とされ、イベントの運営も一定時間毎の入れ替え制となったほか、イベント出展者と来場者をはじめとした関係者にのみ会場を通知された。

 開催日の一般入場は14時から行われ、90分おきに約80人が入場する形式が取られた。これが計4回繰り返されたので、入場者はおよそ320人前後とみられる。会場で話を聞いたイベントスタッフによれば、来場希望者の応募数は受付開始から1週間で約1,500件ということなので、当選倍率は5倍前後。また、会場を訪れていた来場者の中には、台湾や韓国、中国といったアジア圏の人々が結構な割合でみられた。

展示は体感型が人気、アダルトVRの実体験スペースには行列も

 会場の構成は、前回のようなワンフロア型ではなく、ビル内の複数の階層にまたがって配置される分散型。縦に長いビル(スタジオ)を会場としていたこともあって、1フロアにつき2~3の出展者がブースを構えていた。なお、開催前は3Dアダルトゲームメーカー、イリュージョンの出展も告知されていたが、会場にそれらしきブースは無かった。

 前回に続き今回も注目を集めていたVRJCCのブースでは、コミックマーケットC90で頒布された「なないちゃんとあそぼ!」を前回に引き続いて展示。ブースにはベッドが備え付けられたスペースが割り当てられており、各種関連デバイスなども完備。衆人環視の中ではあるが、アダルトVRの世界に没入し、プレイに没頭できる環境が整っていた。

 本作をプレイするにあたっては、VRゴーグルだけでなく、位置トラッキング用のセンサーの設置とVRコンテンツが十分に動くスペックのPC、体位変更および前後/上下運動を検知するためのスマートフォン、そして"空気嫁"かそれに類するアダルトグッズもあるとベストなのだが、なかなかそこまで揃えるのは難しいこともあって、VR向けアダルトコンテンツを体験できる機会は貴重である。そのためか、取材者向けの時間帯であっても、体験スペースには長めの列が形成されていた。

注目タイトル「なないちゃんとあそぼ!」のパッケージ
擬似的にプレイ画面を干渉できるVR動画も用意している。写真はスマホで動画を楽しむためのVRゴーグル
実際にプレイしている様子.
外部モニタには、体験者の見ている映像が出力されている

 スピーカーや音響関連ハード/ソフトウェアの設計開発事業を展開するNula株式会社のスペースでは、コンテンツの音声をそのまま利用してホールを振動させる「オナティクス」を展示していた。

 再生機器から出力したコンテンツの音声をアンプによって増幅し、音声と連動した振動をホールに伝える仕組み。画面内のプレイが盛り上がると、“聞こえる音声の激しさが増す”のもある種のコンテンツの定番だが、そこを上手く利用したアイディアが秀逸な一品である。音が出るコンテンツならなんでもおかずにできる可能性を切り拓いた点は大変思い切りの良い発想であり好感が持てる。

上部にオナティクスを装着したホール。あらゆるコンテンツの音源が増幅され振動となる

 株式会社ワークマンが開発しているアダルト向け3Dタイトル「カスタムメイド3D2」のスペースでは、HTC Viveを用いたルームスケールVRの体験プレイを行なっていた。

 高頻度のアップデートと複数のアペンドやプラグインのリリースが特徴の一つとなっている同作だが、いち早くOculus RiftやHTC ViveといったVRゴーグルに対応した点も注目すべきポイントだ。こちらもキャラクターの造形が非常によくできており(キャラクターをエディットできるのである意味当然だが)、かなりの人気を集めていた。

 体験プレイでは主に着せ替え部分の要素を試せた。コントローラーでキャラクターの特定部位に触れると振動するフィードバックが用意されており、初めてアダルトVRに触れる体験者からは歓声が上がっている様子が見られた。

カスタムメイド3D2のVRプレイを体験する女性。男性向けコンテンツが中心の展示だが、女性の来場者も多く見かけた
HTC ViveのルームスケールVRを使っている

 これらのほかに会場で気になった展示品も紹介しておこう。

コンテンツと連動するホール「Cyclone X10」。動画に合わせて自分で動作の緩急を設定できるWindows Media Player用プラグインも用意している
前回に引き続き、セクシー女優を様々な角度から見られるビデオシステムのデモも実施していた
全天球カメラ「Insta 360 Nano」。スマートフォンに装着してライブビュー撮影ができる
単体でも動作する
スマホVR用ゴーグル「Freefly VR」
4つの支点を持ち調整の融通が利きやすい
顔に直接当たる部分はよくあるスポンジではなくレザー製。耐久性を売りにしている
中国MojingのシンプルなVRゴーグル「暴風魔鏡」。強そうなネーミングだ
前面にスマートフォンをはめこむだけの簡単セットアップ
女体をリアルに再現した大型のホール「リアルボディ」。骨格パーツを内蔵しており、ホールに触れた際には人体に近い感触が得られる
6kgという重量もあいまって、持ち上げると乳幼児を抱いているか、もしくは誰かを介護をしている気分になる一品。展示では体型違いの3種類が用意されていた。価格は各2万5,000円前後
DRM付きデジタル配信プラットフォーム「ImagineVR」では、複数のアダルトVRコンテンツを体験できた
体当たりで巨人の性器を破壊して人類を救う趣旨のとんでもないバカゲー
北海道で"下品で最低"をテーマにした展覧会を実施している「GEHISAI」の展示の一つ。新品のエロ本を熟成させて道端に落ちている感じに加工したもの
DMMが取り組んでいる海外クラウドファンディング展開支援サービス「DMM Starter」。海外サービスのレギュレーションさえクリアしていれば、アダルトカテゴリーでも問題なく資金を募れるという

ひとまずイベントは無事に終了、次回は抽選なしで開催できるかも?

(おそらく)満面の笑みで取材に応じる日本アダルトVR推進機構の吉田健人さん
シンプルな形状の「Men's SOM Hand type」

 直前の会場移転など様々な出来事に見舞われながら迎えた「アダルトVRエキスポ」は、前回よりも出展者が増え、より多様なアダルトVRの可能性を提示したイベントとなった。入場可能な人数をあらかじめ制限することによって初回のような大きな混乱もなく、イベント自体もひとまずつつがなく終了したようである。

 アダルトVRエキスポの今後の展開については、既に次回開催地の選定を始めているという。運営スタッフに話を聞いたところ、次回開催地のキャパシティ次第では、今回実施したような抽選制にならない可能性も示唆していた。

 とはいえアダルトコンテンツや、それに紐づくデバイスに対する社会的な受容性に期待するのは難しく、今回の取材でも、"アダルト+VR"というテーマでのイベント開催については、まだまだノウハウを蓄積する段階であると感じた。

 運営面ではこのほか、入場入れ替え制の弊害も目立った。展示スペースの制限や出展者のリソースからくる試用機数の少なさによって時間がタイトになり、またひとつの展示を体験するのにかかる所用時間も長くなりがちなことから、すべての展示を回るのを諦めてしまう来場者もいたようだ。こうした問題は参加人数の多いイベントには付き物だが、様々な制約を受け入れて、粛々とイベントを楽しむあたりは、さすがに来場者の紳士力の高さを感じさせられた。

 展示物としては、PCに接続するスマホVRが多い印象を受けた。普及が進み、誰もが持つデバイスといっても過言ではなくなったスマートフォンで、手軽にVRコンテンツを楽しめるプラットフォームとして、スマホ向けVRゴーグルは前途有望なツールといえるだろう。

 体験してみると、確かにVRの没入感は驚くべきものだ。だが装着者が実際に触れているデバイスや性具は、電動ホールが映像と連動して緩急をつけた動きが可能な程度であり、コンテンツと深く結びついているとは言えない。アダルトコンテンツのみならず、視覚、聴覚に続いてVRの普及に必要な次の課題は、触覚の再現であろう。

 現状、次回の開催は決定しているようだが、具体的な情報は何も出ていない。今回の抽選が約5倍の競争率だったところから見ても、アダルトVRを体験したくてもできない状況に置かれている人は多いはず。次回開催に関する続報が出たら、適宜お知らせしていきたい。

 なお、本イベントの展示内容は、電ファミニコゲーマーによってニコ生でもレポートされており(年齢認証あり)、無期限でタイムシフト試聴が可能なので、興味がある方はご覧になってみてはいかがだろうか。


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