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鉄板PCの新指標に「POWERED BY ASUS」、ASUSの「安定したPC」へのこだわりを聞いてきた

ASUSが徹底してチューニング、信頼できるBTO PCを生むための新たな取り組み text by 石川ひさよし

「POWERED BY ASUS」のロゴマーク
COMPUTEXで展示されていた3-Way SLIかつ水冷のモンスターPC、これも「POWERED BY ASUS」のPCだ。

 読者の方々にとってASUSと言えば自作PC、とくにパーツの印象が強いだろう。そのASUSが手がける“鉄板の完成品PC”をユーザーに届けるソリューション「POWERED BY ASUS」をご存じだろうか。

 日本ではまだ馴染みが無いが、メーカーやショップがBTO PCやカスタムPCなどを製作する際に、安定性の向上やチューニング面でASUSが協力を行うサービスだ。COMPUTEX TAIPEI 2016の会場では「POWERED BY ASUS」の専用エリアが設けられ、代表例として水冷仕様のかなり尖ったモデルも展示されていた。

 「POWERED BY ASUS」とは具体的にどのような活動なのか、そのメリットはどのようなところにあるのか、COMPUTEX TAIPEI 2016の会場にて担当者の方にお聞きしてみた。

ASUS製パーツでかためた信頼性重視のPCは思いのほか好評だったショップの何気ない一言から始まった「POWERED BY ASUS」

「POWERED BY ASUS」の認証マーク。認証されたPCにはこのマークが入っている。
プロダクトマネージメント産業組込部 部長の福井 聡氏

――「POWERED BY ASUS」とはどのような活動なのでしょうか。

[福井氏]「POWERED BY ASUS」PCは、ASUS製品を採用するPCで、性能や信頼性を追求し、ゲーマーやクリエイターをはじめ、安定性の高いPCを提供するソリューションになります。

――「POWERED BY ASUS」は、いつ、どのようにスタートしたのでしょうか。

[福井氏]始まりは2年ほど前のヨーロッパにさかのぼります。とあるメーカーから、「ASUSは様々な製品を展開しているのだから、それを組み合わせたらよいPCができるのではないか」と提案をいただきまして、実際にやってみたところ好評だったため、こうした取り組みがスタートしました。

――日本でもスタートしているとのことですが、こちらはいつスタートしたのでしょうか。

[福井氏]「POWERED BY ASUS」PCの日本国内での販売は2015年末のことになります。ただし開発には10カ月近くをかけておりますので、2015年の早い時期から活動を開始しています。現在ではBTOパソコンメーカーやショップブランドPCを展開するショップなど、システムビルダー各社から「POWERED BY ASUS」PCが発売されております。

【POWERED BY ASUS 紹介動画】
ツクモの「POWERED BY ASUS」売り場。日本ではツクモをはじめ、複数ショップで「POWERED BY ASUS」のPCは販売されている。
マザーボード、ビデオカードのほか、光学ドライブなど様々なパーツがASUS製品となっている点も特徴だ。

絶対的な安定性へのこだわり、相性が解消するまで徹底してチューニング環境に合わせた作りこんだカスタムBIOSの提供も

COMPUTEX TAIPEI 2016で展示されていた「POWERED BY ASUS」製品群
水冷PCなどの製作もASUSが協力しており、安定性だけでなく、性能面でのチューニングにも協力しているという。
周辺機器なども含め、ASUS製品でまとめられたモデルも存在する。

――ASUS製品を採用するPCということですが、具体的にはどのようなパーツになるのでしょうか。

[福井氏]ASUSでは、マザーボード、グラフィックスカードのほか、光学ドライブやサウンドカードを始めとした様々なPCパーツを取り扱っております。そうしたパーツのなかから、さすがに1パーツだけでは「POWERED BY ASUS」と言えませんが、いくつかのパーツを組み合わせていただくことになります。

――ただ、ケースや電源、メモリといったパーツはASUSの製品にラインナップがありませんよね。

[福井氏]はい。ASUSのパーツとともに、そのほか電源やケースなどのパーツを組み合わせたプランをシステムビルダー様にご提案いただき、そこからが「POWERED BY ASUS」独自のチューニングが始まります。

――チューニングとはどのような作業になるのでしょうか。

[福井氏]パーツは、それこそ無限大の組み合わせがあります。ご提案いただくパーツの組み合わせもバラバラな状態ですので、それらの相性テストを行い、安定性についてASUSが検証していきます。なお、この作業に関してはシステムビルダー側のコスト負担は生じません。日本で流通する製品であれば、日本、台湾、中国の3カ所のエンジニアが協力して問題の解消にあたります。

ユーザーに確実に安定した環境を届けることを目指し、またそれを約束するという点が「POWERED BY ASUS」の最大のポイントでありこだわりになります。

――安定性という点ではどのようなチューニングが施されるのでしょうか。

[福井氏]「POWERED BY ASUS」では専用BIOSを組み込むものも多くあります。とくに相性が生じやすいのがメモリや電源で、これを安定させるためにはBIOSチューニングが欠かせません。ASUSは、マザーボード開発を通じて様々なパーツメーカーと太いコネクションがありますので、実際に製品を取り寄せテストを行い、BIOSのチューニング作業を進めていきます。日本であれば、メモリではSanMaxやMicron、電源であればCoolerMasterなどとは結びつきは強いといえるかもしれません。

実はこうした最適化作業によって、マザーボードのサポートリスト(QVL)も埋まっていきますので、その点で「POWERED BY ASUS」はパーツ単位でお買い求めいただく一般の自作PCユーザー様にもメリットのある活動だと思っております。

――では、少し個別のシチュエーションについてお話をお聞かせください。まず、最適化作業の途中で回避不可能な問題が生じたような場合はどのような対策を行うのでしょうか。

[福井氏]もちろん、システムビルダーから提案いただいたパーツリストに対し、検証で問題が生じたような場合はシステムビルダーとの間でパーツ選定等の調整をとることもあります。

――一般的なマザーボードではBIOSのアップデートのような作業で相性を解消していきます。BIOSにもチューニングが施された「POWERED BY ASUS」PCの場合、一般マザーボード用ではなく専用のBIOSが更新されるのでしょうか。

[福井氏]「POWERED BY ASUS」PCの場合、製品開発時点で入念な検証を行っていることもありまして、基本的にBIOSの更新などは想定しておりません。PCは安定性が確保された状態で提供されますので、購入されたそのままの状態でお使いいただくのがベストといえます。

――日本国内にもエンジニアは常駐されているのでしょうか。

[福井氏]もちろんです。「POWERED BY ASUS」はコンシューマー向けのほかSystem Integration(以下SI)向けにも展開しておりまして、そうした納期のシビアなお客様向けには国内のエンジニアの手によって数週間レベルで製品化が可能です。また、新CPUや新GPUを搭載するPCをローンチ直後に欲しいとおっしゃるコンシューマーのお客様に対しても、オンタイムで製品をご提供することができます。

自作PCパーツを大きく凌駕する超高耐久マザーを使ったモデルも登場する?

こちらはコンシューマー向けのマザーボード。これらはASUSの全マザーボードのうちでは一部に過ぎない。あまり目にする機会はないが、国別、地域別の専用モデルや、組み込み向けモデルなどが存在する。

――少しSI向けの製品や活動についてもお聞かせください。

[福井氏]日本のSIerは、信頼性をとくに重視されます。そして、入念なストレステストやバグ出しなどをなされます。それに応えるカスタマイズを行うのが「POWERED BY ASUS」の役割りです。

――SIer向けにはどのようなパーツが採用されるのでしょうか。

[福井氏]自作PC以上に耐久性が求められますので、特別な製品になることも多いです。

例えば、マザーボードであれば、CPU交換を想定しない用途であれば、CPUソケットのリテンションはレバーではなくネジで完全に固定してしまうタイプのモデルもあります。また、ホコリが積もることでショートし、それが故障につながるようなことも想定されますので、絶縁という観点から防水コートを施した製品などもございます。そのほかにも、信号のロスを減らすため配線の金メッキが厚いモデルや、メモリをしっかり固定するためのロック機能を備えたモデルなども存在します。

絶対的な安定性が求められる場合や、過酷な環境での使用を想定した場合など、使用されるシーンに合わせこうした超高耐久パーツが選択されることがあります。このレベルの耐久性を備えたPCパーツはコンシューマー向けには流通しておらず、自作PCでは到達できないレベルの超高耐久環境が提供可能な点もSIer向け「POWERED BY ASUS」の特徴といえます。

あまり知られていませんが、ASUSは全世界に向け、その地域のニーズに応じた様々なマザーボードを製造しております。そうした意味では、日本で知られている製品はごく一部でしかありません。

――そうしたSIer向けの製品をコンシューマー向けに展開するご予定はないのでしょうか。

[福井氏]メーカーやショップがそうしたモデルを希望すれば……といった話なので、具体的に特別なモデルが登場するとは言いきれないのですが、超高耐久仕様のパーツを使ったPCや、「POWERED BY ASUS」でしか手に入らないパーツを使ったPCが出てくる可能性はあるかもしれませんね。

安定したPCの指標となることを目指す「POWERED BY ASUS」日本で満足されるクオリティは世界でも通用する

まだモデル数は少ないが、10万円前後のエントリーモデルなども展開されている。

――「POWERED BY ASUS」の今後の活動や課題についてお聞かせください。

[福井氏]日本国内におけるPOWERED BY ASUSの取り組みはまだスタートしたばかりです。その点、まだまだ個人のお客様に浸透しているとは言えません。今後は安定性を前面に打ち出してく取り組みをスタートします。まずは安定性を体感していただくことが重要です。そして実績を重ね、PCに詳しい方が初心者の方からPC購入の相談をされた時に、「POWERED BY ASUSのPCが良いよ」とお勧めしてもらえるような状態を目指したいですね。

また、現在はまだゲーマー、クリエイターなどハイエンド志向の製品が中心というのも課題です。より多くのお客様にお届けするためには、ミドル~ローエンドの製品の拡充も必要だと感じております。そのほか、現在のトレンドであるVRヘッドセットへの対応や、ASUS製のディスプレイ製品を含めた展開など、取り組みを拡大していきたいと考えております。

――最後に、一言ございますか。

[福井氏]POWERED BY ASUSはワールドワイドでの取り組みですが、日本国内でも活動は非常に重要だと考えております。なぜなら、日本を満足させるクオリティであれば世界でも通用する、売れる製品であるといった考え方もあるからです。実際、組み込みPC分野において、ASUSのシェアは、今、大きく成長しております。コンシューマー向けでも、ユーザー様から信頼を得られるよう、頑張ってまいりたいと思います。

――ありがとうございました。

[制作協力:ASUS]