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トータルバランスは「DUAL」が優位?ASUSのGeForce GTX 1070を徹底チェック!

「ROG STRIX」「DUAL」「TURBO」の各シリーズの違いは何? text by 坂本はじめ

 2016年は、AMDとNVIDIAの2大GPUメーカーから、製造プロセス/アーキテクチャともに刷新された最新鋭GPUが登場した年になった。

 電力効率/パフォーマンスともに向上した新世代GPUは、多くのユーザーにとってビデオカードの購入、あるいは買い替えを検討したくなる魅力的な製品だ。

 現在、新世代GPUを搭載したカードは、数多くのモデルが市場に投入されており、ゲームミング、スタンダードタイプ、コンパクトモデル、オーバークロック仕様、組込み向けなど、ニーズに合わせ様々なグレードの製品が販売されている。

 同一GPU搭載カードであれば、価格差1~3千前後のレンジで異なるグレードのモデルが横並びとなっていることも多く、本来上位に位置するモデルがスタンダードモデルよりも安価となっている場合もある。詳しいユーザーなら問題ないだろうが、高値のモデルが必ずしも高性能とはなっていない昨今、久々にビデオカードを購入するといったユーザーは、何を基準に選ぶべきなのか迷うこともあるのではないだろうか。

 そこで、今回はASUSのGeForce GTX 1070搭載カードを例に、同一GPU搭載カードでも性能に差は出るのか、グレードによって何が変わるのかといった部分を紹介する。自分に合ったカードを探す際の参考にしてもらえれば幸いだ。

新世代GPUのラインナップを再確認

 まずは、現在までに登場したAMDとNVIDIAの新世代GPUについて再確認しておこう。

 NVIDIAの新世代GPUは、Pascalアーキテクチャをベースに16nm FinFETプロセスで製造された「GeForce GTX 10 シリーズ」。ミドルレンジ向けのGP107/GP106コア、ハイエンド向けのGP104コア、ウルトラハイエンド向けのGP102コアをベースにした製品をラインナップしている。

NVIDIA GeForce GTX 10 シリーズ

 一方、 AMDの新世代GPUは、Polarisアーキテクチャをベースに14nm FinFETプロセスで製造された「Radeon RX 400 シリーズ」。パフォーマンス重視のPolaris 10コアと、低価格向けのPolaris 11コアをベースにした、ミドルレンジ製品を展開している。

AMD Radeon RX 400 シリーズ

 ASUSでは、リファレンスモデルしか供給されていないNVIDIA TITAN Xを除くNVIDIA GeForce GTX 10 シリーズ製品と、全てのAMD Radeon RX 400 シリーズ製品について、オリジナルデザインのビデオカードを製造している。

 同社オリジナル仕様のビデオカードでは、「ROG STRIX」「DUAL」「TURBO」という3つのシリーズが展開されている。シリーズの違いによって異なる特性を備えているため、新世代GPUを採用ASUS製ビデオカードを購入するにあたっては、この「シリーズの違い」がポイントになる。

 なお以下の画像は、現在国内で販売されているASUSオリジナルデザインのビデオカードだ。背景黒が「ROG STRIX」、白が「DUAL」、灰色が「TURBO」。グローバルではさらに多数のモデルが展開されているが、日本ではゲーミングモデルを中心に製品が展開されている。

GeForce GTX 1050 Ti搭載カード

「ROG STRIX」「DUAL」「TURBO」の3シリーズで展開されるASUS製ビデオカードそれぞれの特徴をチェック

 前述のとおり、新世代GPUを搭載するASUSオリジナル仕様のビデオカードは、「ROG STRIX」「DUAL」「TURBO」の3シリーズで製品を展開しており、各シリーズは異なる設計思想に基づいて開発されている。

 ここでは、3シリーズ全ての製品がラインナップされているGeForce GTX 1070モデルを例として、各シリーズごとの特徴を紹介していく。

 記事執筆時点では、GeForce GTX 1070搭載のROG STRIXとDUALが税込5万5千円前後のほぼ同価格帯で販売されており、TURBOが一段安価な税込5万円前後の価格で販売されている。

 特価品なども含めると、ROG STRIXが最安となることもあり、必ずしも高価=高性能という状況になっているわけではない。賢く買い物をするなら、グレード毎の違いを把握しておくことは重要だ。

R.O.G.ブランドを冠する豪華仕様のゲーミングモデル「ROG STRIX」

ROG STRIX シリーズ製品のROG STRIX-GTX1070-O8G-GAMING

 ROG STRIXシリーズは、ASUSがゲーマー向けブランドとして展開しているRepublic Of Gamers(R.O.G.)に属する製品シリーズで、ASUS製ビデオカード3シリーズの中でも上位ブランドとして位置付けられている。

 ビデオカード本体は豪華なハードウェア構成を特徴としており、ヒートパイプを直接GPUに接触させて冷却する「DirectCU クーラー」、約2倍の風圧を実現する独自形状のファンブレードとGPU温度に応じてファンを停止する機能を備えた「ウイングブレードゼロノイズファン」、ビデオカードの動作状況に応じたファン制御を可能とする「ASUS FanConnect」、オーバークロック仕様にも耐え得る独自設計の基板を備える。

 また、近年のゲーマー向け製品で流行しているLEDライティング機能として、発光色と発光パターンをユーザーがカスタマイズできる「Aura RGB Lighting」を搭載。ビデオカード本体のカラーリングをマットグレー&ブラックで統一しているため、LEDの発光カラーがアクセントカラーとして目立ちやすく、組み合わせるケースやマザーボードに合わせて外観をカスタムして楽しむこともできる。

 高い冷却性能とセミファンレス機能をもつGPUクーラーをはじめとする豪華なハードウェア構成に、自由度の高いLEDライティング機能によるインテリアとして魅力あるルックスなど、質と機能を詰め込んだのがROG STRIX シリーズのビデオカード製品なのである。

独自デザインの高性能GPUクーラー「DirectCU」
DirectCUは、ヒートパイプがGPUに直接接地するヒートシンクを採用する高性能GPUクーラー。セミファンレス機能に対応する「ウイングブレードゼロノイズファン」を採用し、ファンの搭載数によってDirectCU III(3基)やDirectCU II(2基)が存在する。
RGB LEDライティング機能「Aura RGB Lighting」
Aura RGB Lightingは、ビデオカード各部に搭載されたRGB LEDの発光色や発光パターンを任意に変更できるLEDライティング機能。
GPU基準でケースファンを制御できる「ASUS FanConnect」
ASUS FanConnectは、ビデオカードの基板上に実装されたPWM制御対応のファンコネクタ。ビデオカード側で接続されたケースファンを制御することが可能となるので、PCケースの吸排気ファンをGPU温度を基準に制御することもできる。

 今回用意したビデオカードは「ROG STRIX-GTX1070-O8G-GAMING」。GeForce GTX 1070をオーバークロックして搭載しており、GPUはベースクロック1,632MHz(+126MHz)、ブーストクロック1,835MHz(+152MHz)で動作する。カードサイズは約298mm×134mm×40mm(長さ×高さ×厚さ)、占有スロット数は2スロット。

 GPUクーラーは3基の冷却ファンを搭載したDirectCU IIIクーラーを搭載し、カード背面には金属製のバックプレートを搭載。基板は、6+1フェーズの電源回路を持つ285mm×130mmの大型基板を採用している。

 ROG STRIXシリーズの中でも上級GPU搭載製品なだけあって、ハードウェア構成は非常に充実している。占有スロット数は2スロットだが、カードの長さと高さが大きいため、PCケースが搭載できる拡張カードの最大サイズには注意したい。

ROG STRIX-GTX1070-O8G-GAMING本体。3基のファンを持つDirectCU IIIを搭載している。
ビデオカードの背面には金属製のバックプレートを搭載。
GPU-Zの実行画面。
ブラケット部。DVI-Dを1系統と、DisplayPortとHDMIを2系統ずつ備える。
補助電源コネクタは8ピン1系統。
占有スロット数は2スロット。
ROG STRIX-GTX1070-O8G-GAMINGの基板。サイズは285mm×130mm。
電源回路は6+1フェーズ。
GPUクーラーのヒートシンクは、熱伝導シートによってMOSFETの放熱も担っている。

質実剛健でオリジナルクーラーの良さも味わえるスタンダードモデルの「DUAL」

DUAL シリーズ製品のDUAL-GTX1070-O8G

 DUALシリーズは、2基の冷却ファンを搭載した高性能GPUクーラーを搭載しつつ、シンプルさや扱いやすさが重視されたスタンダードタイプのモデル。ラインナップの位置づけとしては、スタンダードかつ、コストパフォーマンス重視の層に向けたモデルとされている。

 デュアルファン構成のGPUクーラーは、ファンの風圧を2倍に高めた独自形状のファンブレードを持つ「ウイングブレードファン」を採用しており、ファンの回転数を低く抑えながらも高い冷却性能を発揮できる。ROG STRIX シリーズとは異なり、GPU温度に応じてファンを停止するセミファンレス機能は備えていない。

 DUAL シリーズはLEDライティング機能を備えていないが、ビデオカードでは珍しく白をベースカラーに採用している。白をアクセントカラーに採用するASUS製の中~上級スタンダードシリーズ・マザーボードとの相性が良い。

 ROG STRIX シリーズほどの豪華さや、LEDライティング機能はないが、スタンダードモデルとして質実剛健な設計と白いカラーリングが魅力の製品だ。好みにもよる部分だが、LEDやセミファンレス機能を必要としないユーザーにとっては、ユーティリティソフトで無効にする手間を省けるという点で、プラス評価にもなり得る。

2基の冷却ファンを搭載するGPUクーラーが特徴のDUAL シリーズ
ROG STRIX シリーズと同形状のファンブレードを持つ「ウイングブレードファン」。ただし、こちらはセミファンレス機能は備えていない。
ビデオカードには少ない白を基調としたカラーリングは、ASUSのスタンダードシリーズ・マザーボードとよくマッチする。

 GeForce GTX 1070搭載のDUAL シリーズ製品「DUAL-GTX1070-O8G」はオーバークロック仕様のビデオカードだ。GPUは、ベースクロック1,582MHz(+76MHz)、ブーストクロック1,797MHz(+114MHz)で動作する。カードサイズは約240mm×129mm×41mm(長さ×高さ×厚さ)、占有スロット数は3スロット(占有スペースは2.1スロット分)。

 GPUクーラーは、2本のヒートパイプを備えたヒートシンクを搭載。基板サイズは240mm×120mmという短めながら、6フェーズの電源回路を備えている。

 カード長は240mmと比較的短くまとめられているが、カードの高さがそれなりにある点と、2.1スロット分の厚みがあるGPUクーラーを搭載している関係で、拡張カード3スロット分のスペースを占有する点に注意したい。

DUAL-GTX1070-O8G本体。
ビデオカード背面。バックプレートは非搭載。
GPU-Zの実行画面。
ブラケット部。DVI-Dを1系統と、DisplayPortとHDMIを2系統ずつ備える。
補助電源コネクタは8ピン1系統。
GPUクーラーは2スロットサイズより若干大きく、実質的に3スロットを占有する格好となる。
DUAL-GTX1070-O8Gの基板。サイズは240mm×120mm。
電源回路は6フェーズ。
GPUクーラーのヒートシンクは2本のヒートパイプを搭載。ヒートパイプ付近に配置されたVRAMと熱伝導シートと接続している。

省スペースや耐久性が重視の環境に適した外排気型クーラー搭載の「TURBO」

TURBO シリーズ製品の「TURBO-GTX1070-8G」

 TURBO シリーズの特徴は、GPUクーラーに外排気型クーラーを採用した点にある。外排気式GPUクーラーは、ブロアファンによってケース内の空気を取り込み、ヒートシンクに送風して冷却し、ヒートシンクの熱を奪って温まった空気をブラケット部の排気口からケース外へと排気するというものだ。

 外排気式GPUクーラーの利点は、ビデオカードのみでGPUの熱をPCケースの外に排気できるという点。

 先に紹介したROG STRIXやDUALが搭載するGPUクーラーは、大口径ファンを複数搭載や大型ヒートシンクを採用しやすいため、外排気型GPUクーラーより高い冷却能力を持つ一方で、GPUの熱をケース内に放出する形になる。このため、GPUの熱をケースの外に排気するという役割は、PCケースに搭載されたケースファンが作り出すエアフローに依存する形になる。

 複数のケースファンを搭載した大型のPCケースであれば、ケース内に排熱するタイプのGPUクーラーでも問題ないが、換気能力の低いPCケースや、ケース内空間の狭い小型ケースでは、GPUの排熱を捌ききれずにケース内の空気温度が上昇してしまう。ケース内空気温度の上昇はGPUクーラーの冷却能力が低下を招き、高性能なGPUクーラーであっても十分な冷却が行えなくなってしまう。

 GPUの排熱をブラケット部から直接ケース外に排出することで、ケース内空気温度の上昇を防ぐTURBO シリーズは、換気能力が限定されるPCケースと組み合わせにおいて、最適なビデオカードとなり得るのである。

外排気式のGPUクーラーがTURBO シリーズの特徴。
カード後方に配置されたブロアファンで吸気する。
GPUクーラーのカバーを取り外したところ。ブロアファンが取り込んだ空気は、カバーによってブラケット部に向かって進み、途中でヒートシンクの熱を奪い、そのままケース外へと排気される。

 GeForce GTX 1070を搭載した「TURBO-GTX1070-8G」は、GPUの動作クロックはリファレンス仕様に準拠しており、ベースクロック1,506MHz、ブーストクロック1,683MHzで動作する。カードサイズは約267mm×111mm×38mm(長さ×高さ×厚さ)、占有スロット数は2スロット。

 GPUクーラーは、銅製のベース板とアルミニウム製の放熱フィンを組み合わせたヒートシンクと、長寿命設計のダブルボールベアリングを軸受に採用したブロワファン、ブラケット部の排気口へ空気を誘導する樹脂製の外装カバーで構成される。外装の上部にはASUSロゴLEDが搭載されており、動作時は白色に発光する。

 カードの長さは267mmと、DUAL シリーズのDUAL-GTX1070-O8Gより3cm近く長いが、高さは拡張カードとしては標準的なフルハイトカードの範囲に収まっている。TURBO シリーズの特性が期待される小型ケースへの組み込みに適した本体サイズであると言える。

TURBO-GTX1070-8G本体。シンプルなデザインのカバーが印象的な外排気式GPUクーラーを備える。
ビデオカード背面。バックプレートは非搭載。
GPU-Zの実行画面。
ブラケット部。DVI-Dを1系統と、DisplayPortとHDMIを2系統ずつ備える。
補助電源コネクタは8ピン1系統。
占有スロット数は2スロット。
TURBO-GTX1070-8Gの基板。サイズは267mm×111mm。
電源回路は7フェーズ。
GPUクーラーのヒートシンクと一体になっている金属板でVRAMやMOSFETの冷却を行っている。

ASUSの基板品質へのこだわり実装パーツは全シリーズ高耐久品を採用

 ビデオカード全体のデザインを決定づけるGPUクーラーなどにくらべ、基板は目立ちにくいパーツではあるが、寿命や安定性についての重要度は高い。基板への品質に一貫したこだわりを持っているASUSだからこそ、品質の差を気にすることなく、シリーズごとの特性に注目して製品を選ぶことができる訳である。

オリジナル仕様のビデオカードでは、部品の実装を自動化された機械で行うASUS AUTO-EXTREME技術で基板を製造している。
基板表面に実装するタイプの部品が中心となっており、基板を貫通してはんだ付けするパーツがほとんどない。また、部品実装時のはんだ付けでフラックスを使っていないため、部品付近にフラックスの残渣はみられない。
耐久性と品質を重視したASUS独自のカスタム品パーツを採用するSuper Alloy Power II。コイル鳴きの抑制や長寿命コンデンサの採用により、高い品質と耐久性を実現する。

 豪華で高機能なROG STRIX、質実剛健のDUAL、外排気仕様のTURBO。シリーズ毎に特性は異なっているASUS製品だが、ビデオカードの安定性や寿命を左右する基板については、品質重視というASUSの一貫した方針で設計・製造されている。

 新世代GPUを搭載するASUSオリジナル仕様のビデオカードの基板は、ASUS AUTO-EXTREME技術に基づいて製造されている。基板への部品実装を自動化することで製造品質を高いレベルで均一化し、フラックスレスのはんだ付け工程を導入することで、残留したフラックスによる腐食が発生しなくなった。

 また、実装部品においても品質を重視するASUSは、基板に実装するチョークコイルやコンデンサなどのパーツにASUSのカスタムパーツを使用している。Super Alloy Power IIと呼ばれるカスタムパーツ群は、コイル鳴きを抑制したSuper Alloy Power II Chokeや、耐用年数の長いSuper Alloy Power II Capacitorなど、ビデオカードの長寿命化と安定性に貢献している。

性能と冷却性は「ROG STRIX」が一段上、トータルバランスは「DUAL」が優位?ベンチマークテストで各シリーズの違いをチェック

 3種類のGeForce GTX 1070搭載ビデオカードで、ベンチマークテストやゲームでのパフォーマンスをチェックし、シリーズの違いによる差をみてみよう。

 ここでは、ROG STRIX-GTX1070-O8G-GAMINGを「ROG STRIX」、DUAL-GTX1070-O8Gは「DUAL」、TURBO-GTX1070-8Gを「TURBO」と、それぞれ略して呼称する。

 テスト時の室温は28℃で、ケースに収めない状態で検証を行った。テストに用いた検証機材は以下の通りとなっている。

・テスト環境
 CPU IntelCore i7-6700K
 マザーボード ASUSMAXIMUS VIII HERO
 メモリ DDR4-2133 8GB×2
 SSD OCZ Vector 180 (480GB)
 電源 玄人志向KRPW-TI700W/94+(700W/80PLUS TITANIUM)
 OS 日本マイクロソフトWindows 10 Pro(64bit)
 グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 372.90
 室温 28℃

3DMark Fire Strike/Fire Strike Ultra

 まずは定番ベンチマークテストの3DMarkから、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)の高負荷テスト「Fire Strike」と、4K解像度(3,840×2,160ドット)の超高負荷テスト「Fire Strike Ultra」の結果だ。

 GPUクロックの高いROG STRIXが、標準クロック仕様のTURBOに対して4~5%程度高いスコアを記録する一方で、同じくオーバークロックモデルのDUALは、TURBOとほとんど変わらないスコアとなっている。

ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIVベンチマークでも、フルHD解像度と4K解像度でテストを行った。

 ここでもROG STRIXがやや高めのスコアとなっているが、フルHD解像度ではTURBOに対して約3%差であるのに対し、4K解像度ではその差が約6%に開いている。これは、フルHD解像度の描画負荷はGeForce GTX 1070のパフォーマンスに対して軽いため、CPUなどがボトルネックとなってスコアが頭打ちとなっているためだろう。

オーバーウォッチ

 FPSゲームのオーバーウォッチでは、グラフィック設定を最も高品質なプリセットであるエピックに設定し、フルHD解像度と4K解像度でフレームレートを測定した。

 ROG STRIXがTURBOに対して6%前後高いフレームレートを記録する一方で、DUALとTURBOの差はほとんど生じていない。もともと搭載しているGPUが同じであり、各モデルごとに多少のクロック差はあるものの、パフォーマンスに極端な差がつくということは無いようだ。

システムの消費電力

 上のグラフは、各ビデオカードを搭載した際に測定した消費電力をまとめたもの。

 アイドル時の消費電力では、ROG STRIXが34W、DUALとTURBOが31Wで横並びという結果だった。一方、ベンチマーク実行時の最大消費電力については、ROG STRIXがアイドル時と同じ様に10~20Wほど他のモデルより高い消費電力を記録する一方、DUALはTURBOよりも若干低めの消費電力となっている。

 オーバークロックモデルのDUALが、標準クロック仕様のTURBOより消費電力が低いのは不思議に思えるかもしれない。この結果には、GPUの個体差やハードウェア構成の違いによる消費電力の差の影響も少なくないが、ベンチマークテストでもDUALとTURBOのパフォーマンス差がごく小さかったことからも分かるように、そもそも大きな消費電力差が生じるほど、GPUの動作クロックに差がなかったためでもあるだろう。

ベンチマーク実行中のGPUクロック

 ベンチマークテスト実行中のGPUクロックは、ROG STRIXが1,900~2,000MHz、DUALが1,750~1,800MHz、TURBOが1,700~1,750MHzとなっている。ベンチマークスコアでもROG STRIXが他のGPUより1段上のスコアを記録していたのは、このクロックの高さゆえだということが理解できる。

ベンチマーク実行中のGPU温度

 ベンチマーク中の最大GPU温度については、ROG STRIXが66℃、DUALは73℃、TURBOは79℃となっている。GPUクーラーの冷却能力を考えれば、順当な結果と言えるだろう。

 また、GPUユーティリティツールであるASUS GPU Tweak IIによれば、GPUクロックを自動的に引き上げるGPU Boost動作の基準となる温度ターゲットは。全モデルとも83℃に設定されており、これを下回っている。

ベンチマーク実行中のファン回転数

 冷却ファンの回転数は、ROG STRIXが1,700rpm前後、DUALが1,800rpm前後、TURBOは2,200rpm前後まで上昇している。

 ファンの数や形状が異なるため回転数だけで判断できる訳ではないが、ピーク時の動作音についてはROG STRIXとDUALが同程度、TURBOは他の2モデルより明確にファンノイズが大きい。

 周辺の気温に差がなければ、GPUクーラーの冷却能力はROG STRIX、DUAL、TURBOの順であり、ROG STRIXとDUALの差より、DUALとTURBOの冷却能力の差が大きいことがわかる。

グレードの違いを知って自分に最適なモデルを、使い方次第で大きく変わるビデオカードの魅力

 以上、ASUS製GeForce GTX 1070ビデオカードを例に検証を行ったわけだが、グレード毎に差が出る部分、逆に同一GPUであれば差が出ない部分などがわかってもらえたのでは無いだろうか。

 実際にASUSのGeForce GTX 1070搭載製品3モデルをテストしての感想としては、やはりROG STRIX シリーズの豪華なつくりと、充実した機能は魅力的だ。セミファンレス、LEDライティング、高い冷却性能を持つGPUクーラー、ユーティリティツールを活用してビデオカードをカスタマイズしたいユーザーにとって、機能満載のROG STRIXは大いに魅力があると言える。

 もちろん、DUAL シリーズとTURBO シリーズにもそれぞれの魅力がある。DUAL シリーズは、LEDライティングを排してシンプルさを追求することで、扱いやすくバランスの良いモデルなっている。TURBO シリーズは、使いどころ次第で最適解となり得る外排気式クーラーを備えている。Mini-ITX環境など、小型PCを組むなら有力な選択肢になるはずだ。

 今回取り上げたASUSの製品であれば、ユーザーの使い方、あるいは好み次第で、どの製品にも魅力を見出すことができる。ビデオカードを購入する際は、自身が構築するPCのパーツ構成や使い方を考慮したうえで、どういったグレードのモデルが最適なのか検討してみると良いだろう。

[制作協力:ASUS]