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GPUクロックは2GHz超え、PCゲーム向け最高性能を狙うZOTACのGeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeをテスト
オーバーウォッチやニーア オートマタなど人気PCゲームでテスト、エコに使う設定方法も紹介 text by 坂本はじめ
2017年4月25日 08:03
NVIDIAのウルトラハイエンドGPUとして登場したGeForce GTX 1080 Tiは、登場当時20万円近い価格で販売されていた最上位モデルのNVIDIA TITAN Xを凌ぐゲーミング性能を持つGPUとして注目を集め、現在でもゲーマーにとっての最上級GPUとなっている。
今回は、そのGeForce GTX 1080 Tiを搭載した、ZOTACオリジナル設計のビデオカード「GeForce GTX 1080 Ti AMP Extreme」を紹介する。
テストはベンチマークのほか、オーバーウォッチやニーア オートマタなど、人気PCゲームを4K解像度で遊べるのかもチェックしてみた。また、ウルトラハイエンドカードをエコに使う方法も紹介するので、ゲームに合わせビデオカードの購入やアップグレードを検討しているユーザーは参考にして欲しい。
現行最高峰の性能、ウルトラハイエンドGPUのスーパーオーバークロックモデル
ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extreme (ZT-P10810C-10P)は、NVIDIAのウルトラハイエンドGPUであるGeForce GTX 1080 Tiを搭載したビデオカード。
ZOTACブランドの製品で最上級のオーバークロックモデルに与えられる「AMP Extreme」の名を冠したこのビデオカードは、GeForce GTX 1080 Tiのベースクロックを1,480MHzから1,645MHzにオーバークロックしており、ブーストクロックは1,582MHzから1,759MHzに向上している。
また、VRAMとして搭載する11GBのGDDR5Xメモリについても、動作速度が11Gtpsから11.2Gtpsへと高速化している。
製品名 | ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extreme | GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition |
---|---|---|
GPUベースクロック | 1,645MHz | 1,480MHz |
ブーストクロック | 1,759MHz | 1,582MHz |
メモリスピード | 11.2Gtps | 11Gtps |
最高峰GPUの熱を強力な冷却性能で押さえ込む「IceStorm」クーラー
ウルトラハイエンドGPUの大幅なオーバークロック動作を支える重要な要素が、ZOTACオリジナル仕様のGPUクーラー「IceStorm」だ。
3基の冷却ファンを備えた2.5スロット占有の大型GPUクーラーであるIceStormは、大型のヒートシンクを採用することで極めて優れた冷却性能を実現している。オーバークロックによって増大するGPUの発熱を抑え込めるだけの冷却性能を持ったGPUクーラーの存在が、スーパーオーバークロック仕様の実現に多いに貢献している。
ただ、これほど大型のGPUクーラーともなれば、必然的に重量も大きくなる。あまりに重たいGPUクーラーは、ビデオカード全体を歪めてしまう恐れがあるのだが、GPUクーラーのカバー部分に金属フレームを採用し、肉厚の金属製バックプレートを搭載することで、ビデオカード全体を補強する「Metallic ExoArmor」により、基板の歪みを許さない頑強さを備えている。
また、低負荷時でGPUの動作温度が低い時にファンが停止する「FREEZE」機能も備えている。
電源部分を大きく強化したオリジナル基板、コイル鳴きも無し
ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeが採用するオリジナルデザインの基板では、リファレンス仕様では8ピン+6ピン構成の補助電源コネクタを8ピン2系統に変更することで、ビデオカードに供給可能な電力を300Wから375Wに増強している。
さらに、補助電源コネクタ等から供給された12Vの電圧をGPU用に変換する電源回路には、16+2フェーズという強力なマルチフェーズ回路を搭載した。GeForce GTX 1080 Ti Founders Editionが7フェーズなので、この点は大きく強化されている。
GPUに安定して大電力を供給可能な電源回路と、そこに電力を供給するラインを確保したことで、オーバークロックで増加するGPUの電力消費にも余裕を持って対応できる設計となっている。多少個体差の影響がある要素ではあるが、今回テストした個体では、高フレームレート動作時でも目立ったコイル鳴きは発生せず、実用面でのクオリティも非常に高いオリジナル基板となっている。
定番ベンチマークテストで実力をチェック、リファレンスを順当に上回るパフォーマンス
優れたハードウェア構成でスーパーオーバークロック仕様を実現したZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extreme。そのパフォーマンスがどれ程のものなのか、NVIDIAリファレンスモデルである「GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition」とベンチマークテストで比較してみた。
・テスト環境
CPU IntelCore i7-7700K
メモリ DDR4-2400 8GB×2
ストレージ PlextorM8PeG 256GB
電源ユニット 玄人志向KRPW-TI700W/94+
OS 日本マイクロソフトWindows 10 Pro 64bit
室温 25℃
3DMarkのDirectX12テスト「Time Spy」では、ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeが、総合スコアで6%、Graphics Scoreでは8%高いスコアを記録した。DirectX 11テストの「Fire Strike」では、総合スコアの差は約4%となっているが、これはスコアが頭打ちになっているためで、4k解像度でレンダリングする「Fire Strike Ultra」ではスコア差が約8%に拡大している。
DirectX 11の最高描画品質でテストした「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」でも、フルHD解像度ではスコアが頭打ちになっており、ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeのリードは約3%だが、WQHDでは約6%、4kでは8%の差をつけている。
GPUの実クロックは2GHz越え、まさにスーパーオーバークロック
4k解像度で実行したファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークのログを確認してみると、ベンチマーク実行中のZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeは、GPUクロックが2GHz(2,000MHz)付近に張り付いていることが分かった。
公称のブースト時のGPUクロックが1,759MHzなので、カタログスペックを大幅に上回る値で動作しており、まさにスーパーオーバークロックモデルといったところだ。
GeForce GTX 1080 Ti Founders EditionではGPU温度の上昇などが影響して、テスト中のGPUクロックは1,700~1,800MHz前後でブレているが、ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP ExtremeではGPUクーラーのIceStormがGPU温度を70℃以下に抑え込んでおり、一貫したパフォーマンスを実現している。長時間のゲームプレイでも、安定して優れたパフォーマンスを発揮することが期待できる。
ベンチマーク実行中のピーク消費電力の測定結果をみると、ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP ExtremeはGeForce GTX 1080 Ti Founders Editionより最大で92W高い消費電力を記録しており、オーバークロックによってGPUの消費電力が大きく増加していることが分かる。
無論、消費電力は低いに越したことはないが、ゲームにおいて最も重要なのはパフォーマンスだ。これだけ消費電力が増加している状況であっても、安定した動作を実現できるZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeのハードウェアの優秀さに注目したい。
4K解像度でPCゲームが遊べる、最新タイトルで高いパフォーマンスを発揮
続いて、実際のゲームでのパフォーマンスをチェックしていく。今回テストしたのは、「オーバーウォッチ」、「ダークソウル3」、「ニーア オートマタ」、「ゴーストリコン ワイルドランズ」の4本だ。
オーバーウォッチ ~ 高リフレッシュレートモニタとの組み合わせにも期待大
オンラインFPSゲームであるオーバーウォッチは、最大で300fpsまでの高フレームレート動作に対応したゲームタイトルだ。今回は、最高描画品質設定の「Epic」でレンダー・スケールを100%に固定して、フルHDから4kまでの3画面解像度でフレームレートを測定した。
ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeは、GeForce GTX 1080 Ti Founders Editionより5~9%高いフレームレートを記録している。フルHDでは240fpsを上回っており、最高描画品質設定であっても、現行最速クラスの高リフレッシュレートモニタにも対応できるほどのパフォーマンスを発揮している。
ダークソウル3 ~ 4k解像度で等倍録画中でも60fpsの維持が可能
第2弾DLCや完全版が発売され、シリーズ集大成として完成したフロムソフトウェアのアクションRPG「ダークソウル3」。そのPC版は、最大フレームレートが60fpsに制限されており、快適なプレイにはぜひとも60fpsを常時維持できる性能が欲しいところだ。
GeForce GTX 1080 Tiのパフォーマンスは、リファレンスモデルのGeForce GTX 1080 Ti Founders Editionでも4k解像度かつ最高描画品質設定で、ほぼ60fpsを維持することができる。ただし、これはパフォーマンスの限界に近い動作であり、GeForce Experienceの録画機能を利用した場合にわずかなパフォーマンス低下によって、60fpsを維持できなくなってしまう。
これに対し、ベンチマークテストでGeForce GTX 1080 Ti Founders Editionより1割弱高いパフォーマンスを発揮したZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeでは、GeForce Experienceの録画機能を利用していても、常時60fpsの維持が可能だった。
ニーア オートマタ ~ WQHDまではHIGHプリセットで60fpsを維持可能
スクウェア・エニックスのニーアシリーズ最新作となるアクションRPG「ニーア オートマタ」。このタイトルも、最大フレームレートが60fpsに制限されているタイトルだ。
ニーアオートマタでは、描画品質のプリセットにLOW、MEDIUM、HIGHの3種類が用意されている。これらのプリセットを利用して検証したところ、GeForce GTX 1080 TiはWQHD解像度までであれば、描画品質にHIGHを選択した場合でも60fpsの維持が可能だった。
GeForce GTX 1080 Ti Founders EditionとZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeでパフォーマンスに差が生じるのは4k解像度からで、ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeが8~12%程度高いフレームレートを記録している。60fpsに届いていないという点では同等だが、優れたハードウェア構成によりパフォーマンスの一貫性が確保されているZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeは、セーブの仕様により、プレイ時間が長くなりがちな本作に適した製品であると言えるだろう。
ゴーストリコン ワイルドランズ~ ウルトラ設定はフルHDまで、4Kなら画質は「非常に高い」狙い
ゴーストリコン ワイルドランズは、ボリビアを舞台に麻薬組織と特殊部隊「ゴースト」の戦いを描く、UBIのTPSゲームだ。本タイトルには、描画設定をテストするためのベンチマークモードが用意されている。
今回は、描画品質のプリセットから、最高設定の「ウルトラ」と、2番目に高い「非常に高い」を選択し、複数の画面解像度でベンチマークを実行してみた。ベンチマーク結果のフレームレートは平均値であるため、この数値は維持したいフレームレート+10fps程度の余裕をみて評価したい。
ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeは、GeForce GTX 1080 Ti Founders Editionより4~8%高いスコアを記録している。60fpsの維持が期待できるのは、フルHD時は最高設定のウルトラ、WQHDは非常に高いまでとなっている。4kで60fpsを望むなら、「非常に高い」をベースに描画設定を下方調整することになるだろう。
実は“エコ”なハイエンドカードとしても使える!Power Targetの調整で省電力なGeForce GTX 1080 Tiに
このクラスのビデオカードにとって最優先事項はゲームでのパフォーマンスだ。その点において、ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeが高い実力を持っていることは、ここまでのテスト結果からみて間違いない。
しかし、スーパーオーバークロック仕様による性能向上の代償として、GeForce GTX 1080 Ti Founders Editionより100W近く増加した消費電力が気になるというユーザーも少なくないだろう。消費電力が低いにこしたことはない。そんな要望に応える手段が、Power Targetによるチューニングだ。
Power Targetとは、Pascalアーキテクチャ採用GPUの自動オーバークロック機能であるGPU Boostの動作基準となる数値の一つで、GPUが消費する電力に基づいてブーストの効きをを調子するものだ。Power Targetはボードの消費電力基準値に対して、どれだけの割合いを上限値とするかという形で調整する。また、消費電力を基準にGPU Boostの動作を調整する機能のため、設定を変更しても安定性を損なうことが無いのも大きなポイントだ。
ZOTACのGPUユーティリティである「FireStorm」では、「Power」の項目を調整することでPower Targetを50~120%の範囲で調整することができる。今回は、Power Targetを50~100%の範囲で調整し、3DMark Fire Strike Ultraのスコアと消費電力がどのように変化するのかを確認してみた。
Power Targetを標準の100%から最低の50%まで引き下げた場合、ベンチマークスコアが約83%に低下した一方で、消費電力は約55%にまで低下している。
これはつまり、ベンチマークスコアの低下率より消費電力の低下率の方が大きいということであり、Power Targetを下げるほど、ビデオカードの電力効率が改善していることを意味している。実際、ベンチマークスコアを消費電力で割った「電力効率」のグラフではPower Targetを下げることで電力効率が改善し、80%以下の設定ではFounders Editionよりも高い数値となっている。
また、GeForce GTX 1080 Ti Founders Editionのスコアと消費電力を100%として見た場合、Power Targetを70%まで引き下げたZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeが、GeForce GTX 1080 Ti Founders Editionよりも低い消費電力で高いスコアを記録していることも確認できる。
電力効率の善し悪しは、基板の設計や実装パーツなどに左右される部分であり、今回の結果は、ZOTACが設計するオリジナルデザイン基板のクオリティの高さを裏付ける結果といえるだろう。
このようにPower Targetを活用すれば、オーバークロックモデルのウィークポイントである消費電力を抑え込むこともできるのだ。
最高クラスの性能と頑強なハードウェアが魅力のスーパーオーバークロックモデル
ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeは大幅なオーバークロック仕様ながら、優れたハードウェア構成によりその高い性能を継続的に発揮できる優秀なビデオカードだ。
ピーク値の性能だけが高い製品も存在するが、ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti AMP Extremeはピーク時の性能を維持したまま長時間の運用が可能だ。そのパフォーマンスは、ゲームをより高精細で高画質な描画で楽しみたいユーザーにとって、今選択できる最高のビデオカードの一つである。
オーバークロックのデメリットである発熱と消費電力の増大についても、優れたGPUクーラーが発熱を完全に抑え込み、Power Targetによる消費電力の削減と電力効率の改善が容易なこのカードでは大きな問題とはならない。高性能なカードとしても高電力高率なカードとしてもユーザーの好みに合わせ使い方を選ぶことができる。
2.5スロットを占有する大きさにさえ注意を払って選択すれば、現行最高峰のビデオカードとして高い満足感を得ることができるだろう。
[制作協力:ZOTAC]