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はまればSSD並?10TB HDDをPCゲームで使うと思いのほか快適だった、大作ゲームでHDD vs SSD

標準的なHDDとの違いや、Optaneメモリの効果もテスト text by 坂本はじめ

最速HDDとSSDでゲームロードの速度を比較
Ghost Recon Wildlandsなど最新ゲームも高速HDDなら快適に遊べる?

 近年のPCゲームはインストール容量が増加している。AAA級の大作タイトルともなれば、1タイトルで50GBを超えるようなものも存在し、ストレージデバイスの選択を悩ましいものにしている。

 性能は理想的だが容量単価が高いSSDと、性能は劣るが容量単価の安いHDD。性能と容量のどちらを妥協するかという選択を迫られることになる。先日本誌上で行った普及価格帯HDDと2.5インチSSDの比較レビューでは、多くのゲームで性能差は許容範囲に収まることが確認できた。

 普及価格帯のHDDで大きな差が出ないのであれば、より高速なHDDを使用することで、SSDとの差をさらに小さいものにできるはずだ。そこで、現行最速クラスのHDDを使用し、どこまでSSDに迫れるのかを今回は検証してみた。SSDに近い性能が出るのであれば、ゲーム用ストレージとしてかなり有力な選択肢になるだろうという目算だ。

最速クラスのHDD「Seagate BarraCuda Pro」の10TBモデルを用意ゲームでSSDにどこまで迫れる?

BarraCuda Proの10TBモデル「ST10000DM0004」

 今回使用するHDDは、Seagate BarraCuda Proシリーズの10TBモデル「ST10000DM0004」だ。

 優れたデータ転送速度と大容量を両立するデスクトップ向けの高性能HDDで、筐体内にヘリウムガスを充填した最新鋭のハイエンドモデルとなる。インターフェースは6Gbps SATA、ディスク回転数は7,200rpm、256MBのキャッシュを備えている。

 「CrystalDiskMark」の実行結果では、シーケンシャルアクセスで240MB/secを超える速度をたたき出しており、容量だけでなく性能面でも最上級のHDDであることは間違いない。

 ST10000DM0004の実売価格は税込5万円前後。スペックからは高価なHDDのように思えるが、1GBあたりのコストで言えば約5円程度で、普及価格帯のHDDよりはやや高い程度だ。SSDの1GB単価が30円前後であるのと比べると格安といえる。

本体裏面、ヘリウム充填モデルは独特なデザインになっている。
ロゴはBarraCudaシリーズで共通のようだ。
CrystalDiskInfoの実行画面。
CrystalDiskMarkの実行結果。シーケンシャルアクセスはリード・ライトとも240MB/secを超えている。

比較に使用するSSDはIntelのスタンダードモデル「SSDSC2KW480H6X1」

 SSDは前回のレビュー同様「Intel SSD 540s SSDSC2KW480H6X1」を使用した。

 シーケンシャルリード560MB/s・シーケンシャルライト500MB/sと、メインストリームの2.5インチSSDとしては十分なパフォーマンスを持っている。

Intel SSD 540s シリーズの480GBモデル「SSDSC2KW480H6X1」。SATA 6Gbps接続の2.5インチSSDで、シーケンシャルアクセス性能のピーク値はBarraCuda Proの倍以上だ。


●「BarraCuda Pro」と「BarraCuda」は何が違う?高性能HDDとスタンダードHDDの違い

 前回のレビューでは、Seagateのデスクトップ向けHDDのスタンダードモデル「BaraCuda」を使用したが、今回使用しているのは高性能モデル「BarraCuda Pro」だ。両者の間で何が違うのか、簡単に紹介しよう。

 「BaraCuda」と「BarraCuda Pro」はデスクトップ向けHDDとして展開されているが、製品ラインナップの容量構成などが異なる。ブランドの基本的な方向性として、容量単価を抑えたスタンダードな「BaraCuda」と、性能・大容量・耐久性を重視する「BarraCuda Pro」といった具合だ。

 一昔前であれば、スタンダードHDDと高性能HDDは価格差が大きかったが、現在では1~2割程度の価格差であることが多い。

BarraCuda ProとBarraCudaの比較
BarraCudaシリーズの最大容量モデルである4TB HDD「ST4000DM004」。最新鋭モデルだが回転数は5,900rpmと低いため、データ転送速度はBarraCuda Proよりも低い。

 BarraCuda Proには2~10TBの製品がラインナップされており、高い性能を得るためにディスク回転数はいずれも7,200rpmとなっている。また、年間通電時間8,760時間(=24時間365日)、年間作業負荷300TBを想定した高耐久設計が為されている。

 製品保証期間も5年間と長く、購入後2年間はSeagate指定のラボでのデータ復旧サービスが受けられる「Rescue Data Recovery Plan」も付帯している。単に高速なだけでなく、エンタープライズ向けHDDに匹敵する耐久性と、充実した保証が「BarraCuda Pro」の特徴だ。

 対するBarraCudaは、500GB~4TBの製品がラインナップされており、ディスク回転数は5,900~7,200rpmと速度よりもバランスを重視した設定となっている。製品保証期間は2年間で、全体的な仕様はコストパフォーマンスを高める方向にふってあるのが特徴だ。

 以下のベンチマーク結果は右がBarraCuda Proの10TBモデル「ST10000DM0004」、左がBarraCudaの4TBモデル「ST4000DM004」のもので、速度に関しては比較的大きい差があることがわかる。

ST10000DM0004の速度
ST4000DM004の速度

 なお、「ST10000DM0004」と「ST4000DM004」で、一般的な用途で使用した際、どの程度の性能差があるのかを確認するため、デジタル一眼レフカメラで撮影した合計17.6GBの写真と動画(写真データ(RAWファイル)×265枚 + 動画データ(平均4GB)×3本)を用意し、これをSSDからHDDにコピーするのに要する時間を比較してみた。

 結果はST4000DM004がコピー完了までに約130秒の時間を要したのに対し、ST10000DM0004は約78秒でデータの転送を完了した。この時、ST10000DM0004の平均データ転送レートは約232MB/secを記録しており、実際のファイルコピーでもCrystalDiskMarkの結果に近いパフォーマンスを発揮していることが確認できる。

 標準的なスタンダードタイプのHDDと高性能をウリとするHDDの違いは、主に速度と保証面のサービスだ。この部分の付加価値の違いが価格差になっている。ゲームに限らず一般的な用途でも高速性の恩恵が受けられるので、予算があればなるべく高速なモデルを選びたいところだ。

ゲームが起動時間は高速HDDがSSDに肉薄特に「Ghost Recon Wildlands」や「ニーア オートマタ」は差が小さく、HDDがSSDに迫るものに

 それでは検証に入ろう。

 今回の比較では、高性能HDDである「ST10000DM0004」(10TB)と、Intelの6GbpsSATA対応SSD「SSDSC2KW480H6X1」(480GB)を使って、HDDとSSDでゲームの起動時間とロード時間がどの程度変化するのかを検証する。

 テスト環境は、OSインストール用のストレージを別途用意し、両ドライブはゲームインストール専用ストレージとして運用した。

 使用したゲームは以下の8タイトルで、重量級のタイトルを多めに検証している。

ダークソウル3
ニーア オートマタ
バイオハザード7
Final Fantasy XIV
The Witcher 3:Wild Hunt
Fallout 4
Ghost Recon Wildlands
Watch Dogs 2

ゲーム起動時間

 まずはゲームの起動時間の比較だ。基本的にはSteamやUplayといったクライアントソフトで「プレイ開始」を選択してから、ゲームウインドウが立ち上がり、ユーザーが操作可能となるまでの時間を「起動時間」とした。今回は各ゲーム3回ずつ測定し、その平均値を比較している。

起動時間の比較

 性能で優れれるSSDがHDDより短い起動時間となってはいるのは確かだが、検証した8タイトル中3タイトルは1秒未満の差しかなく、最も差のついた「Ghost Recon Wildlands」でさえわずか4.45秒の差であった。

 今回の結果程度の差であれば、ストップウォッチで計測するなど、意識していなければ差を感じることはほぼ無いだろう。ゲームの起動時間に関しては、高速HDDは限りなくSSDに近いものと言える。

ロード時間

 続いてロード時間の比較だ。基本的にはゲームのセーブデータのロード開始からゲーム画面が描画されるまでの時間を測定しているが、セーブデータのロード中に「あらすじ」が表示されるThe Witcher 3: Wild Huntには適さない測定であるため、ゲーム中のファストトラベル(マップ転送機能)を利用した際に生じるロード時間を測定している。

ロード時間の比較

 ロード時間の検証では、ゲームタイトルによってはSSDとHDDに大きな差が出るものもあった。ゲーム中のロードは、、画面を描画するためのテクスチャなど、大きいデータをストレージから一気に読み出す必要があるため、ゲームの起動時よりもストレージ性能の影響を受けやすい傾向がある。

 もっとも大きな差がついたのはFallout 4のロード時間で、SSDが高速HDDより平均約13.14秒早くロードを完了している。Watch Dogs 2も比較的差が大きいタイトルで、SSDがHDDよりも平均11.04秒早くロードを完了した。

 ただし、大きな差ではあるのもの、Fallout 4ではこのような長時間のロードが発生する機会はゲームスタート時などに限られるので、1回目のロードが済んでしまえばストレージ間の性能差が気になるような場面は少ない。

 逆にSSDと高速HDD間で逆に差が小さいものとしては、Ghost Recon Wildlandsやニーア オートマタ、ダークソウル3などがあり、3秒程度の差に収まっている。この程度の差だと、明確にHDDが遅いと感じるようなことはなく、体感もSSDに近い。

 高速HDDを使用すればSSDとの差は今回程度で範囲で済むので、スタンダードなHDDに予算を若干プラスして高速HDDを選ぶのは十分にアリだ。


●Intel Optaneメモリの利用の仕方、HDDをメインストレージに使いたいユーザー向けのオプション

Intel Optane メモリは、小容量の3DXpointメモリ採用SSDをシステムストレージのキャッシュとして活用する技術だ。

 Seagateのデスクトップ向けHDDであるBarraCuda ProとBarraCudaは、いずれもIntelのキャッシュメモリ技術である「Optaneメモリ」が利用できる。

 BarraCuda ProはHDDとしては高いパフォーマンスを持っているものの、ランダムアクセス性能が快適性を左右するシステム用ストレージとしての利用ではSSDに適わないが、Optaneメモリを活用すればシステム用ストレージとしての快適性を大きく改善できる。

 ここでは、10TBの「ST10000DM0004」を使用してOptnaneメモリのセットアップ手順と、その効果を簡単に紹介しよう。

 なお、Optaneメモリを利用するには、第7世代CoreファミリCPUと、Intel 200シリーズチップセットを搭載したマザーボードやPC自作キットが必要だ。今回はASRock製マザーボードでの設定手順を紹介する。

1 UEFI BIOS上でSATAコントローラ(チップセット)の動作モードを切り替え、Intel Rapid Storage Technology(IRST)を有効化する。
2 Optaneメモリを搭載したM.2スロットをIntel Rapid Storage Technology(IRST)機能の管理下に設定しておく(Enabledに設定)。
3 Windowsを立ち上げ、Intel Optaneメモリ専用ソフトウェアからを機能を有効化する。手順は非常に簡単だ。
4 正しくセットアップが完了すると、画面のようにシステムが高速化された旨が表示される。
Opntae メモリ有効時のパフォーマンスはSSDに近いものとなる。

 今回は32GBのOptaneメモリ対応M.2モジュールを使用したが、構築後の最高速度はリード1,421MB/s・ライト297MB/sとSSD並の速度を発揮した。また、Fallout 4のゲーム中ロード時間もOptaneメモリの有無で比較してみたが、倍以上の速度差が確認できた。

 Optaneメモリは現状では起動ドライブにしか設定できない制約があるが、ストレージが多数搭載できない小型PC環境なので、大容量かつ高速なストレージを構築する必要がある場合などは、導入を検討してみても良いだろう。

Optane メモリの有無によるFallout 4のロード時間比較。ST10000DM0004単体から大幅に高速化されていることが分かる。

PCゲームにおいて高速HDDとSSDの差は若干程度のものが多数快適かつ大量のゲームがインストールできる高速HDDはPCゲームにお勧め

 実際使用してみると、ST10000DM0004は想像していたよりも高速で快適だった。ゲームに限らず一般用途でも性能を発揮してくれるだろう。

 1つのゲームをより快適にプレイするという点で、SSDがHDDよりも有利であることは確かだ。もちろん、今回の検証での差を妥協できるかどうかは個人個人の感覚によるが、数値的には若干SSDが早いといったものが多く、HDDで十分なケースは多い。

 Fallout 4やWatch Dogs 2をメインに遊んでいるユーザーには手放しでお勧めしにくい部分もあるが、PCゲームをなるべく快適に遊べる大容量のストレージが欲しいといった場合は、今回のような高性能HDDは有力な選択肢になる。

 さらに、ゲームをプレイするまでの待ち時間は起動やロードだけではない。数十GBもの容量があるゲームは、ダウンロードやインストールに要する時間も膨大だ。

 多数のゲームを所持していても、容量の少ないSSDにインストールしておけるゲームの本数は限られるため、プレイ頻度の低いゲームはアンインストールせざるを得ない。このような運用では、以前遊んでいたゲームをまたプレイしてみたいと思っても、再セットアップに数十分から数時間もの待ち時間が発生する。プレイしたいと思った時、すぐにプレイできることの恩恵は、所持しているゲームの数が多いほど大きくなる。この点がHDDをPCゲーム用に使用した際のメリットと言えるだろう。SSDにはないアドバンテージだ。

 また、ゲーム用として高速なSSDを使用しているユーザーであっても、手持ちのゲームをいつでもプレイ可能な状態でインストールしておくゲームの保管庫として、今回検証したST10000DM0004のような高性能かつ大容量のHDDを活用してみてはいかがだろうか。240MB/sオーバーのHDDは、ゲームによってはSSDに遜色ないパフォーマンスを発揮してくれるはずだ。

[制作協力:Seagate]

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