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DDR4はDDR3より本当に高性能?意外と知られていない「メモリの実性能」

内蔵GPUや暗号化の実行速度、消費電力などをチェック text by 坂本はじめ

 現在、PC向けのメモリにはDDR3とDDR4の2つの規格が存在している。主流はDDR4メモリに移りつつあるが、DDR3メモリを搭載したPCも数多く存在する。

 この2つの規格のメモリを比べた場合、本当に性能差はあるのか、DDR4はすべての面でDDR3を上回るものなのかなど、実際にどのような違いがあるのかはあまり検証されていない。

 そこで、今回はDDR4とDDR3で実際に使用した際に違いは出るのか、速度や使える環境にどのような違いがあるのかなど、環境を揃えて様々な観点でテストを実施してみた。

 DDR3メモリを増設するか悩んでいるユーザーやDDR4メモリ環境へ移行を検討しているユーザー、DDR4メモリとDDR3メモリの違いをより詳しく知りたいユーザーの参考になれば幸いだ。

DDR4は大容量環境を簡単に作れるのがメリット、Mini-ITXでも32GB搭載可能DDR3との価格差も縮小

 はじめに、DDR4メモリの明確なメリットを紹介しておこう。

 メモリ容量という要素において、DDR4はDDR3に対して明確なアドバンテージを持っている。メモリは不足すれば致命的なパフォーマンス低下が避けられないだけに、十分な余裕を持っておきたい部分だ。

 現在のDDR4メモリは、1チップで1GBの容量を実現する8Gbitチップが主流で、これを片面に8枚実装した8GBモジュールや、両面に計16枚実装した16GBモジュールが一般的となっている。また、多くのマザーボードが16GBモジュールをサポートしており、導入しやすいというのも特徴だ。

 対して、DDR3メモリでは4Gbitのメモリチップが主流で、8Gbitのメモリチップを搭載した製品は高価だった。また、16GBモジュールをサポートするプラットフォームがサーバーやワークステーション向けなどに限られていたこともあり、使える環境が限定され、広く流通することもなかった。

MicronのD9TBHは容量8Gbit (=1GB)のDDR4メモリチップ。これをメモリ基板の片面に8枚実装すれば8GBモジュールとなり、両面で合計16枚実装すれば16GBモジュールとなる。
16GBモジュールが一般化したDDR4なら、2枚で32GBのメモリ容量を実現できる。

 DDR4メモリであれば、DDR3メモリ時代には難しかった16GBモジュールを使って大容量メモリ環境を簡単に構築できる。コンシューマー向けでもメモリスロットが8本あるマザーボードでは128GBの環境を構築可能であり、逆にMini-ITXマザーボードのようにメモリスロットの限られた環境でも2枚で32GBのメモリ容量を確保できる。

 大容量メモリを手軽に搭載可能になった点が、DDR4が持つDDR3に対してのわかりやすいアドバンテージだ。また、DDR3とDDR4の価格差も小さくなりつつあるので、コストの面でも導入しやすい。大容量メモリが必要なのであれば、それだけでDDR4環境に移行するメリットがあるといえるだろう。

 それでは実際の検証に入ろう、今回のレビューでは以下のテストや調査を行った。

コンボマザーでDDR4 vs DDR3、実使用時に性能差は出る?Crucial製メモリで実際の速度を比較

Crucial製のDDR4メモリ(写真上)とDDR3メモリ。切り欠きの位置が異なっていることが分かる

 メモリの規格であるDDR4とDDR3の間には電気的な互換性はなく、メモリスロットの形状も異なる。このため、メモリモジュールの規格はマザーボードが備えるメモリスロットの規格に合致するものを選ぶ必要がある。

 以下は現在のプラットフォームがどのメモリに対応しているのかの簡単な表だ。

主要プラットフォームの対応メモリ

 IntelとAMDとも主要プラットフォームの対応メモリはいずれもDDR4。DDR3規格のメモリをサポートしているのはIntelのメインストリームプラットフォームであるLGA1151のみで、それも公式にサポートしているのは低電圧メモリであるDDR3Lに限定されている。

 最新の主要プラットフォームはほぼDDR4規格への移行が完了しており、将来性を考慮すると、DDR3メモリを新たに購入して新規にPCを組むことはあまりお勧めできない。

 今回、DDR4とDDR3の比較を行うにあたり、なるべく同じ条件での比較を行うためメモリコンボマザーを用意した。使用したのはLGA1151対応のIntel H110搭載マザーボード「ASRock H110M COMBO-G」。DDR4とDDR3の両規格に対応した珍しいマザーボードで、各規格に対応したメモリスロットを2本ずつ備えている。このマザーボードを使用することで、メモリ以外のパーツはすべて同じ条件での比較が可能だ。

ASRock H110M COMBO-G。Intel H110 チップセットを搭載したmicroATXマザーボード
赤いカラーのDDR4メモリスロットと、黒いカラーのDDR3メモリスロットを各2本ずつ備えている

 その他のテスト機材や、実際に使用したメモリは以下の通り。メモリはすべてCrucial製のものを使用している。

テスト機材一覧
使用したメモリ一覧
DDR3-1600規格の8GBメモリ「Crucial CT102464BA160B」。4Gbitチップを16枚実装したデュアルランク仕様
DDR3L-1600規格の8GBメモリ「Crucial CT102464BD160B」。4Gbitチップを16枚実装したデュアルランク仕様
DDR4-2133規格の8GBメモリ「Crucial CT8G4DFS8213」。8Gbitチップを8枚実装したシングルランク仕様
DDR4-2133規格の8GBメモリ「Crucial CT8G4DFD8213」。4Gbitチップを16枚実装したデュアルランク仕様
DDR4-2400規格の8GBメモリ「Crucial CT8G4DFS824A」。8Gbitチップを8枚実装したシングルランク仕様
DDR4-2400規格の16GBメモリ「Crucial CT16G4DFD824A」。8Gbitチップを16枚実装したデュアルランク仕様

着々と高速化しているDDR4、スペック値ほどDDR3と差がでるのか実際の性能をチェック

 DDR4はDDR3の後継規格であり、規格上ではより広いメモリ帯域幅を実現している。

 今回テストに用いたIntel Core i7-7700Kがサポートするメモリスピードは、DDR4規格では「DDR4-2400(PC4-19200)」、DDR3規格では「DDR3L-1600(PC3-12800)」となっている。規格上のデータ転送速度はそれぞれ19.2GB/secと12.8GB/secで、デュアルチャネルに対応するIntel Core i7-7700Kのメモリ帯域は、DDR4なら最大38.4GB/sec、DDR3は最大25.6GB/secとなる。

メモリスピードとメモリ帯域

 規格の上では1.5倍の速度差があるDDR4-2400とDDR3L-1600だが、実際にどの程度メモリが高速化したのか、ベンチマークソフトで測定した結果が以下のグラフだ。なお、参考までにDDR4-2133メモリの測定結果も追加している。

メモリーの帯域 - SiSoftware Sandra Platinum v24.30

 平均で20.00GB/secのメモリ帯域であったDDR3L-1600に対し、DDR4-2133は22.57GB/sec、DDR4-2400は25.00GB/secという結果だった。DDR3L-1600とDDR4-2400のメモリ帯域の差は約1.21倍で、規格上の理論値ほどではないものの、20%以上メモリ帯域幅が拡大していることが確認できた。

暗号化処理はDDR4が高速、帯域幅が活きる分野はDDR4が優位

 ベンチマークの速度はDDR4が高速だが、実際に使用した際に差は出るのだろうか。メモリアクセスが多い用途として暗号化処理の速度の例を紹介しよう。DDR4が高速ならば、CPU - メモリ間で頻繁にアクセスが行われる用途での性能差が出てくるはずだ。

暗号処理 - SiSoftware Sandra Platinum v24.30

 処理速度はDDR3L-1600が9.88GB/s、DDR3-2400が11.58GB/sと2割弱ほどDDR4-2400が高速となった。

 CPUとメインメモリ間の帯域幅の拡大はPCのパフォーマンスを底上げする。暗号化処理のように大量のメモリアクセスが発生する処理では、メモリ帯域幅が処理速度に大きく影響するのだ。

ゲームによってはDDR4メモリが有利な場面も、実ゲームで速度を比較

 暗号化処理のように大量のメモリアクセスが発生する処理では、メモリ帯域幅が処理速度に大きく影響するが、性能が発揮されればより多くのユーザーが恩恵を受けられるゲームではどうだろうか。

 ベンチマークソフト「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」と、「オーバーウォッチ」を使用し、DDR4とDDR3でパフォーマンスに差が出るのか検証してみた。このテストを実行するにあたり、ビデオカードのGeForce GTX 1080をテスト環境に追加している。

ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク (ベンチマークスコア)
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク (平均フレームレート)
オーバーウォッチ

 ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、スコアで約6.1%、平均フレームレートで約4.9%、それぞれDDR4-2400が優れたパフォーマンスを発揮した。

 一方、オーバーウォッチで測定したフレームレートでは、メモリの違いによるフレームレートの違いは僅か0.2%となっており、有意な差のない結果となった。ゲームでDDR3とDDR4の違いがパフォーマンスに反映されるかどうかは、ゲームタイトル次第となるようだ。

CPU内蔵GPUでゲームをするならDDR4、DDR4-2400ならDDR3比で10%高速に

 ゲームでDDR4メモリがDDR3に比べて高パフォーマンスであることは分かってもらえたと思うが、もう一つDDR4メモリが性能を発揮する場面を紹介しよう。

 Intel Core i7-7700Kは、CPUに「Intel HD Graphics 630」というGPUを統合しており、ビデオカードなしでも画面出力を可能としている。これらのCPU統合GPUの多くはメインメモリの一部をVRAMとして利用するため、メインメモリの帯域がGPU性能に影響する。

 そこで、DDR3L-1600とDDR4-2400では、内蔵GPUを使った場合の3D描画性能がどの程度変化するのかをテストしたのが以下の結果だ。

ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク (ベンチマークスコア)
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク (平均フレームレート)

 DDR4-2400のベンチマークスコアは2,740で、DDR3L-1600の2,470を約10.9%上回った。メモリ帯域の差がかなりはっきりとパフォーマンスに反映されており、より広いメモリ帯域を実現するDDR4の方が内蔵GPUの性能をより引き出せていることが確認できる。

 ゲームに限らず、CPU内蔵GPUを使用する場合は、積極的にDDR4メモリを選ぶのが良いだろう。

低消費電力ならDDR3L-1600かDDR4-2133、動作クロックによっても変わる消費電力

 一般的に、半導体製品は動作電圧を下げれば消費電力も減少するため、DDR4はDDR3よりも低い消費電力での動作が期待できる。

メモリ規格と標準動作電圧

 ただし、半導体製品は高クロックで動作するほど消費電力が増加するため、DDR3より高クロックで動作するDDR4は消費電力が増加する要素も抱えている。

 消費電力が低下する要素と増加する要素を併せ持ったDDR4は、DDR3よりも低消費電力なのか。同じ容量のメモリを搭載した時、システムが消費する電力を比較してみた。

システムの全体の消費電力

 DDR3L-1600 8GB×2枚搭載時の消費電力が、アイドル時に14.7W、メモリー帯域測定テスト実行時63.5Wだったのに対し、DDR4-2400 16GB×2枚ではそれぞれ16.1Wと65.6Wで、DDR4の方が1.4~2.1W程度消費電力が高いという結果となった。

 チップが片面実装のシングルランク(グラフ内はSR表記)参考データとし測定したが、DDR4-2133 8GB×2枚はアイドル時14.6W、帯域テスト実行時63.4Wで、DDR3L-1600より僅かに低い結果となっている。

 性能差を考慮するとDDR4の方が電力効率が良いとも言えるが、わずかでも消費電力を抑えたいならDDR3Lが優位といえる状況だ。また、DDR4は高クロックとなるとシステム全体の消費電力があがることにも注意したい。

 なお、DDR4-2400の消費電力が高くなっている要因を調べてみたが、CPU側の動作電圧が引き上げられていることが原因として考えられる。

 今回の検証では電圧周りの設定はマザーボードの標準設定のままだが、DDR4-2400時のみCPUのコア以外(メモリコントローラやPCI Expressなどのアンコア部分)に供給するVCCSA電圧が1.05Vから1.20Vに引き上げられており、消費電力の増加の一因となっている可能性が高い。同じDDR4でもDDR4-2133とDDR4-2400で挙動が異なる部分なので、何か理由があるのだろう。

DDR4-2133メモリ搭載時のVCCSA電圧は1.05V。
DDR4-2400メモリ搭載時。VCCSA電圧は1.20V、PCH電圧も1.1Vに昇圧されていた。

チップ両面実装メモリの消費電力性能はDDR3Lが若干優位、DDR4-2400はパフォーマンス寄りのセッティング?

 容量を揃えてテストした結果では、DDR4-2133とDDR3L-1600がほぼ同じ消費電力という結果になり、性能差を考慮するとDDR4-2133の方が電力効率が良いと言える結果だったが、搭載チップの枚数をそろえた場合はどうだろうか。

 DDR4もメモリチップを16枚実装したモジュールを用意し、メモリチップをフル実装したメモリモジュールで消費電力を比較してみた。

システムの全体の消費電力

 16枚のメモリチップを備えたメモリモジュールどうしで比較した結果、CPUのVCCSA電圧が1.05Vで同じDDR3L-1600(8GB×2枚 デュアルランク)とDDR4-2133(8GB×2枚 デュアルランク)の比較でも、DDR4-2133の方が若干高い消費電力を記録している。DDR4-2400(16GB×2枚 デュアルランク)についてはDDR3L-1600より1.9~3.4W高い数値だった。DDR3Lは低消費電力化をメインターゲットにした規格だけあって、アドバンテージがあるのだろう。

 DDR4-2400など高クロックで動作するDDR4メモリを搭載した場合、メモリ電圧の低下による電力削減効果よりも、メモリ自体の高クロック動作や、CPU側の処理増加や電圧増加によって増加する電力の方が大きいようだ。

 チップ当たりの消費電力からは離れてしまうが、片面チップのシングルランク品と、両面チップのデュアルランク品で消費電力が変わるのかも紹介しておこう。以下がその違いだが、チップが倍の枚数になる割にはそれほど消費電力は増えない。ちなみに、シングルランクとデュアルランクでは消費電力以外にも特性が変わってくるので、そのあたりの違いは次回のレビューで紹介する予定だ。

DDR4-2133メモリのシングルランク品とデュアルランク品の消費電力比較

大容量メモリ買うならDDR4が高コスパ、低容量はDDR3が割安

 最後に販売価格の違いを見てみよう。

 DDR4製品とDDR3製品は、それぞれどの程度の価格で販売されているのか、Crucialブランドで1枚の容量が4~16GBのメモリモジュール2枚組の価格を確認してみた。価格は2017年8月末時点のものだ。

2017年8月末時点のCrucial製メモリの価格

 4GBや8GBモジュールについては、DDR3に比べDDR4の方がやや容量単価が高めだが、16GBモジュールについては明確にDDR4の方が安価だ。画像編集や映像編集など、大容量メモリが必要な用途ではDDR4メモリを積極的に選ぶべきだろう。

速度や容量面で有利なDDR4、今からメモリを買うならDDR4環境に乗り換え

 今回はDDR3とDDR4の違いを改めて見てみたわけだが、DDR3の後継規格であるDDR4は、速度や容量の面でDDR3よりもおおむね優れたパフォーマンスや特性を持っていることがわかってもらえただろう。

 消費電力の面では、DDR3Lが若干優位といえるが、差はわずかなので、0.1W単位で電力を気にするような超低消費電力PCなどを組まない限り気にする必要は無いだろう。DDR4で消費電力を抑えたい場合はDDR4-2133を利用するという手もある。

 また、既に主要なプラットフォームはDDR4への移行を完了しており、DDR4とDDR3が同価格帯で販売されている今、新規に選択するならDDR4一択だ。

 今回使用したようなDDR3対応のSkylake-S/Kaby Lake-S対応のLGA1151マザーボードも存在するが、選択肢は限られており、DDR3Lメモリが手元に大量にあるなど、特別な理由が無い限りはDDR4対応マザーボードを選択した方がよい。DDR3メモリ環境を使用していて増設が必要な場合などは、CPUやストレージ周りのトータルパフォーマンスも向上するDDR4環境への移行を検討しても良い頃合いと言えるだろう。

 なお、DDR4メモリ間の違いに関しては、次回のレビューで詳しく検証する予定だ。チップが片面実装のシングルランクと両面実装のデュアルランクでなにが変わってくるのか、DDR4-2133やDDR4-2666など規格で変わる部分はあるのかなど、DDR4メモリに特化したレビューをお届けしよう。

[制作協力:Crucial]