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DDR4メモリの“本当の性能”をあらゆる角度から徹底的に検証してみた

クロックやレイテンシ、チャネル数の違いや消費電力など、小ネタも併せて紹介 text by 坂本はじめ

Windows 10のキャッシュ機能を有効に使うなら8GB以上のメモリを搭載しよう

 テスト環境に利用したWindows 10は、起動した時点で1.4~1.6GB程度のメモリを使用している。PCに搭載したメモリの容量が4GBの場合、40%前後の領域が既に埋まっていることになる。

メモリ容量4GBで起動した際のタスクマネージャー。約4割が既に使用中で、利用可能な容量は残り2.2GBとなっている。

 リソースモニターで確認してみると、キャッシュ用に確保されている「スタンバイ」が800MB前後確保されており、完全に利用されていない領域は1.3GB程度となっている。スタンバイとして確保されている領域はキャッシュを破棄してアプリケーションが利用できるが、キャッシュによる高速化の恩恵は薄まってしまう。

4GBメモリでWindowsを起動した直後のリソースモニター

 メモリ容量を増やせば、スタンバイ領域を破棄することなくアプリケーションが利用できるメモリ領域は増加する。また、アプリケーションを実行していればスタンバイとしてキャッシュするデータの量を増やす事もでき、動作の高速化が狙える。Windows 10でより軽快な動作を狙うなら、最低でも8GB、出来れば16GB以上のメモリ容量が欲しいところだ。

普段使っているPCであれば、数GBのキャッシュを「スタンバイ」として保持することもある。

Photshopで画像の加工を行うなら16GB以上を目安にしよう

 かつてメモリ容量を必要とするアプリケーションの筆頭だったPhotshopは、64bit化された現在のCC 2017では大量のメモリをPhotshop用に割り当て可能となっており、メモリ容量を増やすほど大きなメモリ領域を利用可能となっている。

64bitに対応した現在のPhotshopは、数十GBのメモリ領域を利用できる。

 Photshopが実際にどの程度のメモリ容量を必要とするのかはユーザーの使い方によるところが大きいが、例えば一眼レフカメラで撮影したRAWファイルを10枚開いただけで約1.8GBのメモリ容量を使用した。

 開いたファイルの編集作業を行えばメモリの使用量はさらに増加することを考えれば、4GBや8GBのメモリ容量では心もとない。本格的にPhotshopを使うのであれば、メモリ容量の最低でも16GBは確保しておきたいところだ。

RAWファイルを10枚開いたPhotshopのメモリ使用量。

実はメモリ容量が多い方がファイルコピーも速い?写真データの転送時間を比較

 あまり広くは知られていないが、写真データなどを取り込む際にメモリ容量が多い方が高速となるケースがある。

 Windows 10はファイルのコピー&ペースト時にメモリをバッファとして活用するため、十分なメモリ容量を備えているとバッファをより効果的に活用してファイルコピーに要する時間を短縮できる可能性があるのだ。

 実際に外部メディアからPCのSSDにファイルコピーを実行した際に要した時間について、メモリ容量毎に測定した結果が以下のグラフだ。

RAWデータの転送時間比較(X299環境でテスト)

 XQDカードからのファイルコピーではメモリ容量の違いによる時間の変化が見られない一方、SDXCカードからのデータ転送ではメモリ容量が多くなるほど時間が短縮される傾向が見て取れる。なぜメディアごとに効果が有無が発生するのかは不明なのだが、写真などをメインに扱うユーザーは覚えておいて損は無い。

メモリの性能がCPU自体の性能にも影響するRyzen

 メモリクロックは、メモリ自体の性能を左右するほかに、メモリコントローラを内蔵するCPUの仕様によってはCPU自体の動作に影響を及ぼす場合がある。

 AMDのRyzenではアンコア部(メモリコントローラやCPUの内部バスであるInfinity Fabric)の動作クロックがメモリクロックと同期しており、これによってメモリクロックの向上がCPU内部クロックの向上につながっている。

DDR4-2133搭載時。右上のNB Frequencyがメモリクロックと同じ1,066MHz付近になっている。
DDR4-2666搭載時。NB FrequencyとDRAM Frequencyが同じクロックになっていることが確認できる。

 実際に性能差が出るのか、Ryzen 7 1800Xに各規格のメモリを搭載してCINEBENCH R15を実行した結果、僅かではあるがCPUスコアが上昇していることが確認できた。

 メモリクロックが他の部分へも影響するプラットフォームの場合、なるべく高速なメモリを選んだ方が有利だ。

CINEBENCH R15(X370環境でテスト)

基本的には大は小を兼ねるDDR4メモリ、性能重視ならDDR4-2666 16GBメモリ

 DDR4メモリの性能が実際にどう発揮されるのか様々なテストを行った今回のレビューだが、いかがだったろうか。

 JEDECの標準規格に準拠したメモリの場合、メモリクロックは大は小を兼ねる仕様となっているので、コスト的に問題がないのであればDDR4-2666メモリを選べば間違いない。性能最優先ならインターリーブも効く16GBメモリがベストだろう。

 DDR4-2666の定格動作品は登場して間もないこともあり、比較的高価ではあるものの、暗号処理のようにメモリアクセスがパフォーマンスに直結する処理で使用するならその効果を発揮してくれるはずだ。

 逆にオーバーウォッチやゴーストリコン ワイルドランズは、ビデオカードを使用した際にメモリの速度差による効果があまり見られなかったが、こうした場合はコスト最優先でDDR4-2400やDDR4-2133を選択するのも良いかもしれない。

 迷ってしまった際はDDR4-2666を選んでおけば失敗は無いが、今回の検証を踏まえて用途や目的に合わせてベストなメモリを選んでみて欲しい。

[制作協力:Crucial]