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MSI本気の薄型ビジネスノート「PS42 8RB」をレビュー、ゲーミングPCのノウハウで仕事効率を向上!

約12.5万円で4コアCPUに8GBメモリ、dGPUや256GB SSDも搭載した高コスパモデル text by 石川 ひさよし

 MSIから銀色の新型ノートパソコン「PS42 8RB」が登場した。4コア/8スレッドCPUにディスクリートGPUも搭載したハイスペック寄りの製品だ。

 MSIのノートと言えばゲーミングノートだが、この製品は軽量・薄型のビジネス向け。

 ちょっと意表を突くラインナップだが、そこはMSIがゲーミングノートで培った技術が盛り込まれているとのこと。また、ビジネス向けだけあって、持ち運ぶ用途も考慮した薄型/軽量という部分にもこだわった設計になっている。また、最小構成時で税込約12.5万円から購入できるので、スペックから見ると割安感もある。

 ゲーミングメーカーが目指すビジネスPCとはどのようなものなのか、レビューを通じてPS42 8RBがフィットするビジネスシーンが見えてくるかもしれない。

モバイルも視野に入る軽量薄型ながら最新世代の4コアCPUを搭載性能はゲーミングノート譲り

MSIの軽量・薄型ビジネスノート「PS42 8RB」

 冒頭で意表を突くとは書いたが、実はMSIは長らくビジネスノートを手がけている。ここ数年はゲーミングモデルに特化していたこともあり、目立たない時期などもあったが、実績は十分にある。

 また、PS42 8RBはゲーミングノートで培った技術が還元されていると書いたが、その最も分かりやすいところがパフォーマンスと冷却性能だろう。

 今回レビューするPS42 8RBは明らかにパフォーマンス志向で、CPUは第8世代Coreプロセッサーを採用し、4コア8スレッドを実現している。

 通常、このクラスのビジネス向けノートPCは、消費電力やバッテリー容量、クーラー性能などの兼ね合いから、2コアCPUが採用されることが多い。この点、PS42 8RBは4コアCPUと搭載しているので、絶対的なパフォーマンスは優位だ。

 PS42 8RBはCPUやOSの違いなどで複数モデルがラインナップされており、今回レビューするのはCore i7-8550Uを搭載し、Windows 10 Home/日本語配列キーボードを採用する「PS42 8RB-005JP」だ。また、Amazonでは英語配列キーボードを採用し、Core i5-8250/Windows 10 Homeを搭載した「PS42 8RB-026JP」が販売されている。

PS42 8RB-005JPのCPUは4コア8スレッドで第8世代Coreシリーズの「Core i7-8550U」を採用。
CINEBENCH R15のスコアはCPUが544cb、CPU(SingleCore)も164cbと十分な性能を示している。ビジネスノートは2コア4スレッドCPUが主流なので、性能的なアドバンテージは大きい。

 4コア8スレッドのCPUに、ディスクリートGPUも搭載するスペックを、15.9mmの厚みで実現しているのは、それこそMSIがゲーミングノートで培った冷却技術が鍵である。

 MSIが採用しているのは、ゲーミングノートラインナップでもよく耳にする「Cooler Boost」のバージョン3。この薄いボディ内で、CPUとGPUにそれぞれヒートパイプと冷却用のファンを組み込んだ設計だ。

本体背面、左右に吸気口が設けられている。
クーラーは太いヒートパイプを組み合わせたもので、ヒートパイプは黒色のものが採用されている。

 薄型ファンが2基あるが、動作音としてはこのサイズのノートPCとしては標準の範囲。しかも、NVIDIA Optimusに対応しており、ディスクリートGPUを作業に応じて自動的にオン/オフ、CPUの統合GPU(iGPU)に切り替えることもできるため、iGPU使用時でCPU負荷も少ない軽作業時ならほとんど無音で作業ができる。

ビジネス機なのにdGPU搭載、GeForce MX150で軽いゲームもOK

 GPUの方は、ゲームが快適というほどではないが、GeForce MX150(GDDR5 2GB)を搭載している。レスポンスの良さを実現すると同時に、グラフィックスでメインメモリを圧迫せずに済む。

 標準では負荷や電力状況に応じてCPU内蔵GPUとGeForce MX150を自動で切り替える設定となっており、設定を変更すればGeForce MX150を常時ONの状態で使うこともできる。

 GeForce MX150 GPUを搭載することで、グラフィックスパフォーマンスはCPU内蔵GPUよりも大幅に向上している。これを分かりやすく数値化できるのがグラフィックスベンチマークだ。3DMarkで見るとFire Strikeでは統合GPU時に1,000ポイントのところ、GeForce MX150に切り替えると3,256ポイントと、一気に3倍以上のスコアに向上する。

GPUは統合GPU(左)とGeForce MX150(右)を搭載
3DMark - Fire Strikeのスコア。左は統合GPU時、右のGeForce MX150時は一気に3倍以上のスコアに向上する

 ゲームでも、例えばドラゴンクエストXの場合、1,920×1,080ドット、最高品質で楽しめるパフォーマンスだ。同ベンチマークでは、先の設定で統合GPUなら3,804ポイントと、これでもなんとか楽しめるスコアであるが、GeForce MX150なら10,921ポイントのすごく快適という評価に向上する。実際、ところどころ映像のスムーズさが欠けていた統合GPUに対し、GeForce MX150に切り替えればどのようなシーンもズムーズに描画される。

ドラゴンクエストX ベンチマークソフト。左が統合GPU時、右がGeForce MX150時

 ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、統合GPUの場合、解像度を1,280×720ドットまで落とし、画質を標準品質(ノートPC)に落としてやや快適(3,332ポイント)、1,920×1,080ドットでは設定変更を推奨されるようにまともに楽しめないが、GeForce MX150なら1,920×1080ドットの標準品質(ノートPC)で非常に快適(7,932ポイント)、最高品質に引き上げても快適(3,529ポイント)が得られた。

ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークの統合GPU時のスコア。正直、統合GPUでは荷が重すぎてまともにゲームできない
GeForce MX150時のスコア。標準品質(ノートPC)はもちろん、1,920×1,080ドット、最高品質でも楽しめるレベルに向上する

実はビジネスアプリでも活用されるGPU、ExcelやPowerPointが快適に

 ゲームでの例を紹介したが、ビジネスでこうした強力なGPUが活躍するシーンを紹介しよう。

 まず背景として、昨今ではゲーム以外、3D以外でGPUを演算に用いるアプリケーションも増えてきている。動画編集や写真補正のようなジャンルが早くからGPUを活用しているが、もっと広範囲でGPUの恩恵にあやかれるのがExcelやPowerPointなど、オフィススイート。

 関数処理の多いExcelファイルで計算結果の表示が遅いと感じていたり、PowerPointでスライドの切り替えがモタつくと感じていた場合、GeForce MX150を搭載する本製品に乗り換えればそうした処理が高速化される。

 もちろん、数世代前からCPU内蔵のGPUでもアクセラレーションが効いているが、より強力なGeForce MX150ならもっとアクセラレーションされる。

ExcelやPowerPointではデフォルトでグラフィックアクセラレータがオンになっており、オプションとしては「無効化」が用意されている。つまり、今お使いのもので満足なレスポンスが得られないとなれば、(ストレージが足かせとなっている場合もあるが……)より強力なGPUを搭載したノートに買い換えることで解消される可能性がある
Adobe PhotoshopのようなソフトでもGPUは活用されている。環境設定を見ると、グラフィックプロセッサーにGeForce MX150が認識されている。
TMPGEnc Video Mastering Works 6でもGPUが認識され、NVIDIA CUDAを有効化するオプションが表示される。

狭額縁パネルで14型液晶を13.3型クラスのボディに搭載文字も読みやすい大画面をコンパクトに、本体重量1.19kgで持ち運びやすさも両立

 もう一つの特徴は13.3型ボディに14型液晶パネルを搭載したコンパクトかつ実用的な画面サイズの実現だ。これは3辺狭額縁デザインの液晶パネルで実現している。

 最近では同様に狭額縁パネルを用いた14型ノートが登場しているが、よく考えて見て欲しい。それらは15万円超~20万円前後のハイエンドノートに集中している。一方でPS42 8RBは構成にもよるが、125,000円前後から購入可能であり、それらと比べると手頃感がある。

3辺狭額縁パネルで13.3型サイズながら14型パネルを搭載。0.7型の違いだがインチ換算なのでひと回り大きく感じられる
IPSレベルタイプとのことでIPSとは異なるようだが、45°の角度から見ても色味の変化なく良好だ

 パネル解像度は1,920×1,080ドット。ひと昔前のビジネスノートにありがちだった1,366×768ドットや1,280×720ドットに比べると高精細で、画面内に表示できる情報量も多い。

 一方、40代を過ぎると老眼が始まり、1,920×1,080ドットでは文字が小さくなってしまうと恐れるユーザーも多いが、ここは本製品が14型とひと回り大きなことが助けになる。

 Windowsで標準となったスケーリング機能も利用できるので、若い方なら100%、老眼が出はじめても125~150%スケールでちょうどいい文字サイズになるだろう。

Windows標準でのテキストサイズ。左は100%、右は150%スケールの表示
画面サイズのイメージ。左は100%、右は150%スケールの表示
フルHD時、100%スケールでの情報量(左)と150%スケールでの情報量(右)

 サイズは公称32.2(W)×22.2(D)×15.9(H)mm。A4紙よりも少し大きい程度になる。13.3型よりも厳密には少し大きいが、狭額縁14型としては標準サイズ、15.6型よりはひと回り小さい。設置スペースが小さい分、デスクスペースを有効に活用できる。

 重量は公称1.19kg(バッテリー込み)で、持ち運びも苦にならない。最近ではフリーアドレスオフィスも増えているが、そうした出勤時にラックからPCを出し、自分のスペースで設置するような場合には、本製品のコンパクトさ、軽量さがメリットになるだろう。

実測では1.2kg少々だが、秤の精度・誤差もあるので本体重量は1.19kgあたりで間違いなさそうだ。
ACアダプタはこのクラスのノートで標準的なサイズで出力65W。ACアダプタから先、ジャックまでのケーブルは180cm近くありかなり長い。

USB Type-AもType-Cもともに2個ずつ、実用性重視のインターフェースキーボードはバックライト搭載

 外観デザインはまだ少しゲーミングノートの名残りが強いかもしれない。液晶天板にはアルミ素材にヘアライン加工を施し、ここは明るいが落ち着いた印象を与えてくれる。ビジネスはブラックのイメージが強いが、おそらくブラックだったらMSIのゲーミングノートそのままなので、GS65あたりがこのニーズをカバーするだろう。

 一方で、ロゴはお馴染みのゲーミングドラゴンのエンブレム。ゲーミングノートの赤いバッヂとは異なりグレーの落ち着いたものになるが、ドラゴンエンブレムはビジネスモデルにしては個性が強いかもしれない。

ヘアライン加工を施した落ち着きある液晶天板にドラゴンのエンブレム
液晶天板は180°、フラットの状態まで開くことができる

 キーボード面は液晶ヒンジ寄りに広く吸気のためと思われるパンチング穴を設け、その中央に電源ボタンを配置している。ここはMSIの「PRESTIGE」シリーズの伝統デザインでもある。バックライトも搭載しており、LEDの色は白色だ。

液晶パネル寄りに吸気口のようなデザインがあり、机の上に置くとキーボードが近く感じる

 配列自体はそこまでクセが強いわけではないが、一部のキー幅は詰まっており、エンターの右に1列、キーを設けているため多少の慣れが必要かもしれない。

左の全角/半角キーや右Shiftと「ろ」や「」キーなどが幅の狭いものになっている。「Fn」が右にあるのも独特かもしれない

 前述した吸気口がヒンジ寄りにあるため、パームレストの面積は多少圧迫されているが、タッチパッドのサイズはそれなりに確保されている。クリックボタンもパッドに統合されているため、最大限の面積を確保することに役立っている。

 加えて指紋認証センサー(Windows Hello対応)もタッチパッドに統合されているのがおもしろい。パームレストはそこそこのスペースがあるのでそこに設けてもよかったのではと思うが、タッチパッドに統合されているメリットとして、登録する指を選べば認証の際にホームポジションから大きく手を動かす必要がない。

タッチパッドは面積的にはやや小さめ。その左上に指紋認証センサーを統合している

 左右側面のデザインは、手前が薄くヒンジ寄りに厚みを増すいわゆるクサビ型デザインだ。ただし、ゲーミングノートを含めさまざまなノートPCに触れている者として見ると特徴が薄いと感じた。もっとも、ビジネスノートであればそこに個性は必要ないかもしれない。実用性のほうが重要だ。

左側面にDCジャック、HDMI、USB Type-C、オーディオ端子を、右側面にUSB Type-A×2、USB Type-C×1、カードリーダー、セキュリティロックスロットを配置

 その実用性を左右するインターフェースだが、右側面にUSB 3.0 Type-A×2、USB 3.0 Type-C×1、メモリカードリーダー(SDXC対応)、セキュリティロックを、左側面には電源ジャック、HDMI(4K30Hz対応)×1、USB 3.0 Type-C×1、オーディオジャックを備えている。昨今、デザインを優先しポート数を減らしているモバイルノートに比べれば、本製品がどれだけ実用寄りか分かるだろう。

 唯一、USB Type-Aが右のみなのが右利き向けの印象だが、左側面にもType-Cがあるため、左利きの方はハブや変換アダプタを介してマウスなどの周辺機器をつなぐとよいだろう。

ゆとりある容量のメモリとSSDメモリは最大16GBのSO-DIMMに対応、ストレージはSATA接続のM.2 SSD 256GB

 メインメモリは標準で8GB、最大で16GB搭載可能としている。この種のノートでは、基板にメモリを実装することも増えているが、本製品はSO-DIMMを採用しているため交換という形で16GBに引き上げることができる。メモリはDDR4-2400で、SO-DIMMでも現在では標準的な速度であるため入手性もよい。

 ただし、PS42 8RBは一般ユーザーが分解できない構造になっているため、メモリを増やしたい場合は購入時にカスタム注文した方がよいだろう。

シングルチャネルなのが少々惜しいが、容量は8GBと標準構成では十分な容量が確保されている。

 ストレージはM.2スロットに6Gbps SATA接続で256GBのSSDを搭載している。ビジネスノートでは未だコスト重視のHDDも見られるが、本製品はSSDを搭載しつつも比較的安価でありながら、容量、速度ともに十分なものを採用している。

SanDisk X600のM.2、6Gbps SATA接続SSDを搭載。パフォーマンスは以下のとおりで、シーケンシャルは500MB/sを超え、Q8T8ならランダムも300MB/s台と、SATA接続モデルとしては高速な部類と言える。
【CrystalDiskMark 6.0.0のスコア】
リードライト
Sequential(Q32T1)552.517MB/s516.874MB/s
Random 4K(Q8T8)398.813MB/s307.911MB/s
Random 4K(Q32T1)233.899MB/s161.362MB/s
Random 4K(Q1T1)28.562MB/s48.693MB/s
Random 4K(Q8T8)97,366.5IOPS75,173.6IOPS
Random 4K(Q32T1)57,104.2IOPS39,395.0IOPS
Random 4K(Q1T1)6,973.1IOPS11,887.9IOPS

 最後にPCMark 10によるトータルパフォーマンスを紹介しておこう。

 PCMark 10 Extended Scoreは3,490ポイント。内訳はEssentialsが6,924、Productivityが6,409、Digital Content Creationが3,415、Gamingが2,647だ。とくに注目したいのがDigital Content Creationのスコア。Photo Editing ScoreやRendering and Visualization ScoreがGPUによって底上げされ、統合GPUを搭載するノートPCよりも生産性の高いことを示している。Productivityも6,000ポイント台に乗せて、オフィス内での生産性もバッチリだ。

左が統合GPU時のスコアでいわゆるスタンダードなビジネスノートのものと思えばよい。右はGeForce MX150時のスコア。Digital Content Creationスコアがアップしている。一部にGeForce MX150のほうが低いテストもあるが、標準では自動でどちらのGPUを利用するのか判断される

軽量+大画面*高スペックで作業も快適、ビジネス用途で高コスパな一台

 PS42 8RBは、ゲーミングノートPCで名を馳せたMSIが、そのポジションからビジネス寄りにアプローチした製品だ。価格ばかりが考慮されがちなビジネスノートとは一線を画す製品となっている。

 PS42 8RBはビジネス向けノートPCなので、その点で評価すべきはコストパフォーマンスだろう。安価=コストパフォーマンスが高いと思われがちだが、「この価格にしてこのパフォーマンス!」となるのが正しい。この正しい視点からコストパフォーマンスを計算すれば、PS42 8RBはなかなかよいところに付けていると言える。

 PS42 8RBは、10万円を少々超えてしまうものの、最新世代のCore i7にGeForce MX150を組み合わせ、SSDに十分な容量のメモリ、これらをパッケージ化したうえで、プラスしてコンパクトで軽量なボディに14型の大画面を実現している。

 性能の低いCPUやアクセス速度の遅い2.5インチHDD、あればよい程度のGPUでは、処理を行う際に待ち時間が生じてしまう。しかし、無駄な待ち時間を減らすことがば余裕が生まれる。こうした性能と快適なボディ&画面でなによりストレスから開放されれば、業務効率はもっと向上するはずだ。

[制作協力:MSI]