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今最強のゲーミングPCを組むならCore i9-10900K、VALORANTで最高500fpsオーバー

GIGABYTEのZ490 AORUS Masterで10コアCPUの限界性能を引出せ! text by 加藤勝明

 テレワークの広まりによってPCゲーマーが増えているなか、インテルから“世界最速のゲーミングプロセッサ”を謳う「Core i9-10900K」が発売された。世界最速のゲーミングCPUが発売されたとあれば、最強のゲーミングPCを組むしかない!

 では、最強のゲーミングPCを組むのに何が必要かといえば、当然最強のCPUとGPUだ。ということで、今回はCore i9-10900KとハイエンドZ490マザーボード、GeForce RTX 2080 Tiを用意し、2020年上半期で最強のゲーミングPCを目指して組んでみた。組む際のポイントと、実際のパフォーマンスをお見せしよう。

最強パーツたちを紹介

 それではCore i9-10900Kを中心としたハイパワーゲーミングPCのパーツ構成の一例を紹介する。

最大5.3GHzで動作する最強ゲーミングCPUIntel Core i9-10900K

 今回自作するモチベーションのうち、かなりのウエイトを占めているのがインテルが先日発売したCore i9-10900K。インテルのメインストリームCPUとしては初の10コア/20スレッドモデルだが、動作クロックも最大2コアまで5.3GHz、全コア動作なら4.9GHzで動作する。

 5.3GHz動作はCore i9が持つ“優秀なコア”に処理が落ちてこないとなかなかお目にかかれない値だが、全コア4.9GHz動作はかなり安定して見ることができる。最近のゲームはマルチスレッド処理が進んでいるため、コア数の多いCPUというのも心強い。

 ただし14nmプロセスでクロック増とコア数増を果たしたため、発熱量はそれなりに増えている。ゲームで長時間高負荷をかけることを前提にするなら、冷却力の高いCPUクーラーと、高負荷に耐える良質なマザーボードの2つが必要不可欠だ。

Core i9-10900K

AORUS最上位のZ490搭載ATXマザーボードGIGABYTE Z490 AORUS MASTER

Z490 AORUS MASTER

 第10世代Coreプロセッサは、CPU裏面の電極配置がこれまでと異なる「LGA1200」を採用しているため、Core i9-10900Kで自作をする場合は400シリーズチップセットを搭載したマザーボードが必要になる。今回は倍率アンロックなK付きのCPUを使うのだから、マザーボード側もオーバークロック対応の「Z490」搭載マザーボードを選ぶのが定石だ。

 とくに10コアのCore i9-10900Kに関しては、性能をフルに引き出す上で今まで以上にマザーボードが重要になっている。マザーボードの電源周が、性能を発揮できるかどうかがを左右するのだ。

 各マザーボードメーカーともZ490搭載の上位モデルは気合いの入った製品を出しているのでどれも甲乙付けがたいが、今回はGIGABYTE製「Z490 AORUS MASTER」を推したい。同社のZ490マザーボードのうち、ATXフォームファクタに収まる大きさの製品の中では最上位(上位モデルの「Z490 AORUS XTREME」はより大型のE-ATX)の製品だ。

 Z490 AORUS MASTERの魅力の多くは、大電力を消費するCore i9-10900Kを全力で回すための備えの厚さにある。

 まず電源周りは、フェーズ毎に90Aの電力供給が可能な回路を合計14フェーズ、最大で1,260Aの供給が可能だ。

 電源回路の多フェーズ化をする際は、純粋にMOSFETの数を増やす設計と、フェーズダブラーを使う設計の2通りがあるが、Z490 AORUS MASTERは後者を採用している。ダブラーを採用することで、従来のMOSFETを並列に並べる設計に比べて電力効率の向上と低発熱化が期待できる。

 並列化とダブラーを利用した高効率化はどちらが良いとは言い切れない(結局のところ設計に依存する)が、パフォーマンスを引き出しつつも温度を抑え、結果として長寿命となるような設計を採用したと言えるだろう。

Z490マザーボードはどのメーカーもフェーズを盛ってきているが、Z490 AORUS MASTERは14フェーズの回路を実装している
Z490 AORUS MASTERの製品ページより抜粋。上がGIGABYTEの電源設計、下が従来の電源設計
CPUソケットの真裏には、タンタルポリマコンデンサのアレイを配置。CPUの負荷が急激に上がると電圧も急上昇するが、このコンデンサアレイは電圧のオーバーシュートを軽減し、過渡応答と安定性を向上させる
従来のMOSFETを並列に並べるやり方よりも、ダブラーを使う方が約3%の省電力化が期待できるという。消費電力が大きくなるハイパワーCPUをフル稼働させるなら、この3%は馬鹿にできない
CPUへ供給する電圧が急上昇すると瞬間的に電圧がオーバーシュートすることがあるが、GIGABYTEはCPUソケット裏のコンデンサのアレイを改良することで、電圧のピークが22%低くなったと主張している

 回路設計の工夫で電源回路を低発熱化しているものの、TDP125W(OCすればもっと増える)のCPUを全⼒で⽀えれば、それなりの発熱は避けられない。とくに、今回のi9-10900Kは電源回路周りへの要求も厳しいため、その実力を引き出すためには、電源回路をしっかり冷却することも重要なポイントとなってくる。

 同社のマザーボードは先代(Z390)の頃からVRM部のヒートシンクに細かいフィン構造を採用している。だがZ490 AORUS MASTERではそれをさらに発展させた「Fins-Array II」と呼ばれる構造になった。

 以前のフィンは単なる1枚の板を何枚も連ねる構造なのに対し、Fins-Array IIではフィンにルーバー(通気口)構造を設けてある。ルーバーの部分を通る際に空気の渦が生まれ、この渦が熱交換率を高めるというものだ。

フィンの側面に設けられたルーバーは、気流がここを通過する際に渦を発生させるためのもの。この渦が熱交換率を向上させる

 新しいマザーボードは装備もグレードアップしている。まずネットワーク系装備はインテル製の2.5 Gigabit Ethernet「I225-V(Foxville)」と、同じくインテル製のWi-Fi 6(802.11ax)「AX201」を搭載。

 さらにオーディオ周りもフロントとリアで別のコーデックチップを載せているほか、DTS:X Ultraに対応。総じて前世代よりも1ランク上の装備になっている。

IOシールドが一体化しているのは今時のマザーボードのお約束。2.5 GbE LANは普通の1000BASE-Tハブやルーターと互換性があるので、無理に2.5 GbE対応品で揃える必要はない
オーディオ回路はRealtek ALC1200-VB+ES9218P DAC(リア)とRealtek ALC1200-VB+ES9018K2M DAC(フロント)の2系統。コンデンサは「WIMAコンデンサ」を採用している
M.2スロットは3本。現時点ではPCI-Express Gen3までの対応だが、最上段のスロットは次世代CPUのGen4も見据えた設計になっているという
M.2 SSDの冷却は昨今のマザーボードでは大きなテーマ。Z490 AORUS MASTERは大型ヒートシンクの2分割構造を採用している
メタル素材で補強されたメモリスロット。GIGABYTE製品には珍しい片ラッチ式が採用されている。回路的にはDDR4-5000まで対応しているという

360mmラジエーターで強力に冷やす簡易水冷CPUクーラーNZXT Kraken X72

 Core i9-10900Kを全力で回すと相当な熱が発生する。とくに今時のインテル系マザーボードではPower LimitをCPUの定格(125W)ではなく無制限(実際には4,096W前後)にすることで、ギリギリまでパワーを絞り出すチューニングがデファクトスタンダードとなっている。

 ゆえにCore i9-10900Kを全力で回すのであれば、空冷よりも水冷の方が扱いやすい。280mmラジエーターのAIO水冷以上が好ましいが、どうせ組み込むなら360mmラジエーターのAIO水冷にしてしまおう。ラジエーターが大きい分、温度上昇もより緩やかになる。温度が抑えられればその分パワーも長く絞り出せるのだ。

 今回はちょうど手元に人気のNZXT製AIO水冷クーラー「Kraken X72」があったので使用したが、見た目をさらに重視するなら、水冷ヘッド部分に液晶が組み込まれた「Kraken Z73」もオススメだ。

大型ヒートシンク搭載のDDR4-3600メモリCorsair CMT64GX4M4Z3600C18

 Core i9-10900Kの対応メモリはDDR4-2933が定格だが、2933のモジュールは割高。むしろDDR4-3200や3600の方が安いことも珍しくない。

 Core i9-10900KでDDR4-3600を使うのは厳密にいえばメモリのオーバークロックに当たるので自己責任だが、今回はマザーボード側もDDR4-5000まで対応しているので、やや上を見てDDR4-3600のモジュールを選ぶことにした。

 問題は容量だが、大半のゲームでは16GBあれば事足りるが、OBS等を使ってリアルタイム録画&ストリーミング配信といった用途を考えると、もう少々あった方が安心だ。64GBあれば盤石だが3万円前後の価格差があるため、32GB構成とした。

「CMT64GX4M4Z3600C18」

OCで最速クラスのGeForce RTX 2080 TiカードGIGABYTE GV-N208TAORUS X-11GC

「GV-N208TAORUS X-11GC」

 最高のゲーミングPCを組みたいのであれば、ビデオカードも最高のものを選びたい。

 ちょうどWindows 10もMay 2020 UpdateでDirectX Raytracing(DXR)Tier 1.1になったことだし、DXRに対応したGeForce RTX 2080 Tiを使うのが現時点でのベストだろう。これなら競技性の高いFPS/TPSでも画質をあまり気にせず高フレームレートで楽しめる。

 とくにGIGABYTEの「GV-N208TAORUS X-11GC」では、映像出力端子の構成がHDMI 3系統+DisplayPort 3系統+USB Type-C 1系統と、一般的なRTX 2080 Tiカードよりも多いのも注目だ。

 ただし一部ポートは排他になっているため、同時に使えるのは合計4系統までとなる。

ハイエンドパーツは光るのが当たり前の時代だが、GV-N208TAORUS X-11GCはポイントを押さえて発光させるので中々カッコ良い。ファンブレード先端のイルミネーションはファンが回転するときだけ点灯する
マザーボードとビデオカードのメーカーを揃えた理由は、イルミネーションを1つのユーティリティーで統合管理できるからだ

TLC NAND採用の大容量高速ストレージWestern Digital WDS100T3X0C

 ゲーミングPCのストレージは容量と速度のバランスだ。最近のゲームは1本100GB超も珍しくないので、500GB以上ないと心許ない。1TBあればまあ安心できるだろう。

 速度はSATA SSDであれば全く問題はないが、せっかくマザーボードにM.2 SSD用のスロットが3本あるのだから、これを使った方がよりスッキリと組める。

 そこで今回は、PCI-Express Gen3接続のNVMe SSDの1TBモデルをチョイス。このパフォーマンスがあれば、システムのボトルネックにはなりにくいし、ゲームのプレイ動画編集に挑戦したい時でも快適な速度を提供してくれる。

「WDS100T3X0C」

80PLUS GOLD認証取得の大容量電源Corsair RM1000x

 Core i9-10900K+RTX 2080 Tiの構成でも定格運用であれば750Wもあれば足りる。ただしZ490マザーボードはCPU用の電源コネクタ(8ピンまたは4ピン)を複数搭載しているものが多く、今回使ったZ490 AORUS MASTERは8ピン×2という強力な構成となる。

 2系統あっても両方接続する必要はないが、フルロードで回すことを考えればCPU用の8ピンを2系統出せる電源ユニットをチョイスしたい。

 今回はキリの良いところで、80PLUS GOLD認証を取得したCorsair製1,000W ATX電源「RM1000x」を選択した。

「RM1000x」

冷却重視でガラスサイドパネル採用のPCケースCoolerMaster MasterBox CM694

 PCケースはATX対応品であれば好み優先で良いが、今回は発熱量の大きなCPUとビデオカードを使うため、冷却重視のケースをチョイス。今回選択したCoolerMasterの「MasterBox CM694」は、昨今のRGB LEDゴテゴテケースとは真逆の、オーソドックスな設計になっている。

 フロントパネル裏に3.5インチシャドウベイを6基組み込めるが、フロントからの吸気を重視してベイは取り外して運用することにした。フロントのUSB Type-Cコネクタはないが、フロントのオーディオ端子が4極プラグ対応なので、スマホ用の有線ヘッドセットがそのまま接続できるのは便利。

応答速度0.5msの240HzフルHD液晶ディスプレイGIGABYTE KD25F

 ゲーミングPCの本体がいくら良いハイスペックでも、液晶ディスプレイが並の品なら性能の半分以上はドブに捨てていると思った方が良い。

 Core i9-10900K+RTX 2080 Tiの構成なら、1秒間に140回以上(ゲームの重さによる)描きかえることも難しくないが、安価な液晶のリフレッシュレートは60Hz、つまり1秒間に60回の画面を描きかえることしかできない。仮にPC側が1秒間に120コマ(120fps)描きかえられるとしても、液晶のリフレッシュレートが60Hzなら映像データの半分は捨てていることになる。

 リフレッシュレートが高ければ、その分高フレームレートでゲームを見る事ができるため、ギリギリの撃ち合いでもより正確に状況を判断することができるようになる。

 今回はマザーボードやビデオカードと同じGIGABYTE製のリフレッシュレート240Hz対応ディスプレイ「KD25F」をチョイスした。

GIGABYTE KD25F

VALORANTが平均500fpsで遊べる!ベンチマークとゲームで性能をテスト

 ここからはCore i9-10900Kを中心にしたハイパワーゲーミングPC構成が実際どの程度のパフォーマンスを発揮するか検証してみよう。

 今回のセットアップでは、OSはWindows 10の最新版(May 2020 Update)を導入し、メモリはXMPを有効にしてDDR4-3600として運用している(折角良いマザーボードと良いメモリを使っているのだから、定格で使うのはもったいない!)。

 まずはCPUの馬力を見るために「CINEBENCH R20」を回してみる。

「CINEBENCH R20」のスコア

 10コア/20スレッドが全コア4.9GHz動作するCPUだけにマルチスレッド性能は高いが、シングルスレッドのスコアの高さも十分確保されている。とくにゲームではシングルスレッド性能が効くタイトルも多いので、この性能は心強い。

 定番の「3DMark」も回してみよう。RTX 2080 TiはDXRにも対応しているので、レイトレーシングの描画性能を見る“Port Royal”も回してみた。

「3DMark」のスコア

 今回はとくに比較対象を設けなかったので、この位のスコアが出るPCだ、と述べるだけにとどめたい。

Rainbow Six Siegeは平均280fps、CoD:MWでも平均170fps超え7タイトルでパフォーマンスチェック

 では実ゲームを中心にどの程度フレームレートが出るのか検証をしてみよう。

4K最高画質でも最低60fpsを確保できる「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマーク」

 まずは「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」の公式ベンチを使う。画質は“最高品質”とし、ベンチ終了後のレポートに記されているフレームレートと、その時のスコアを比較してみる。

 先のパーツ構成ではリフレッシュレート240Hzの高速ゲーミング液晶を使ったが、ここでは解像度を上げたときのパフォーマンスを見るために、4K液晶環境で計測している。

「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」ベンチマークのスコア
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」ベンチマークにおけるフレームレート

 スコアで見ると今ひとつピンと来ないが、フレームレートで見るとフルHDなら平均180fps以上、4Kでも平均80fps程度は出せる。

 ベンチ中fpsが最も落ち込むのは序盤の大剣を振り回すシーンと、中盤の戦闘で津波が出るシーンの2カ所だが、解像度がフルHDどころかWQHDでも60fpsを割り込まない点に注目したい。

「Rainbow Six Siege」ではフルHDで平均280fpsを達成

 続いては「Rainbow Six Siege」で試してみよう。APIはメニーコアCPUを活かしやすいVulkanとし、画質は“最高”をベースにレンダースケールを100%に設定した。ゲーム内ベンチマーク機能を利用して計測している。

「Rainbow Six Siege」Vulkan使用時のフレームレート

 先のパーツ構成例で紹介したフルHDゲーミング液晶「KD25F」のリフレッシュレートは240Hzだが、上の結果を見ると最低fpsは微妙に240fpsを割り込んでしまうものの、平均fpsで見ればリフレッシュレートより上を叩き出している。

 このPCのパフォーマンスであれば、KD25Fの性能をフルに活かしたゲームが楽しめるだろう。

4Kでも平均123fpsの「Apex Legends」

 続いては「Apex Legends」だ。画質は各項目を最高設定とし、射撃練習場における一定のコースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。

「Apex Legends」のフレームレート

 このゲームの場合、フレームレートは144fpsで頭打ちになるため、PCスペックの高さにしてはかなりオーバーキルな感じも否定できない。パワーが余りすぎてフルHDとWQHDのフレームレートがほとんど変わらないほどだ。

 最低fpsは115fps程度まで落ちるが、これは画質を下げてもほとんど変化しない。試しにフルHDで各画質設定を“低”または“オフ”にして試しても、平均fpsと最低fpsが上がる事はなかった。ゲームの仕様の限界といった感じだ。

驚異の平均500fps超え「VALORANT」

 ひたすらFPS系ばかりの検証で恐縮だが、本稿の締め切り直前にサービスインした注目のFPS「VALORANT」ではどうだろうか?

 画質は最高設定とし、射撃練習場の端から端まで数往復した時のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。

「VALORANT」のフレームレート

 プレイするのにハイスペックなPCが必要ないよう設計されたゲームだけに、Core i9-10900K+RTX 2080 Tiの構成だと最高画質設定でも平均500fpsを軽く超える。KD25Fのようなリフレッシュレート240Hzの液晶を活かすにはちょうどいいゲームといえる。

レイトレーシング有効でも100fps超えの「Call of Duty: Modern Warfare」

 折角RTX 2080 Tiを搭載したのだから、それをより活かせるゲームでも検証してみよう。

 「Call of Duty: Modern Warfare」はレイトレーシングを使い影をリアルに表現することができるゲームだ。画質は最高設定(ただしモーションブラー系はオフ)とし、レイトレーシング無効時と有効時のフレームレートをチェックしよう。

 テストはキャンペーン「ピカデリー」をプレイした時のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。

「Call of Duty: Modern Warfare」レイトレーシング無効時のフレームレート
「Call of Duty: Modern Warfare」レイトレーシング有効時のフレームレート

 レイトレーシングを有効にするとフレームレートも落ちるが、それでもフルHD時なら平均130fpsを超え、さらに最低fpsも100fps以上出せている。

 リフレッシュレート240Hzに合わせるなら画質は中程度に下げレイトレーシング無効が好ましいが、もう少しお買い得感のあるリフレッシュレート144Hzのゲーミング液晶なら、最高画質のままでも液晶のをフルに使える描画が楽しめるはずだ。

「Borderlands 3」では画質“バッドアス”でも100fps超え

 FPS系ばかりが続いたが、やや重めなタイトルとして「Borderlands 3」でも試してみよう。

 APIはDirectX 12とし、画質は一番上の“バッドアス”を選択。ゲーム内ベンチマーク機能を利用して計測している。

「Borderlands 3」Direct 12使用時のフレームレート(最低fpsはログを集計して算出)

 このクラスのゲームになると一番重い画質だとフルHD時で平均110fpsを超えるのが関の山。高リフレッシュレートのスペックを使い切るには画質を“中”設定(もしくはもっと下の画質)にすべきだろう。

 ちなみにフルHDで画質“中”で測定したところ、平均196fpsという結果が出た。

10コアがスペックを発揮した「モンスターハンターワールド:アイスボーン」

 ついFPSばかり連発してしまったが、重量級アクションゲームの代表例として「モンスターハンターワールド:アイスボーン」を試してみた。

 APIはDirectX 12、画質は“最高”とし、集会エリア内の一定のコースを移動した時のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。

 さらにこのゲームでは現状RTX 20シリーズのみが対応する「DLSS」を有効にしたときのフレームレートも計測してみた。ただしDLSSが使えるのは縦の解像度が1,440ドット以上の時である点に注意したい。

「モンスターハンターワールド:アイスボーン」DirectX 12使用時のフレームレート

 MHWはDirectX 12を使用するとメニーコアCPUを上手く使うようになるが、6コア6スレッドではゲームだけでCPUが飽和する。MHWを余裕を持って遊ぶにはCore i9-10900Kはうってつけの選択と言えるだろう。

 解像度を上げるとフレームレートが下がるのは避けられないが、MHWではDLSSを併用することで画面の解像度を上げても負荷は1段下の解像度相当のフレームレートが得られる(低解像度からAIを利用して高解像度化するのがDLSSなので当然だが)所に注目だ。

Core i9-10900Kでゲームの同時配信&録画はどの程度イケる?

 ここまではゲームだけを遊んだ場合のパフォーマンスについて見てきたが、今のゲームはプレイシーンを他人と共有して楽しむという側面がある。つまりゲームをTwitchやYouTubeにストリーミングする、あるいは録画して編集したものをアップロードするという楽しみ方だ。

 Windows 10のGame BarやGeForceのShadowPlayのような録画&ストリーミング機能が付いているが、より高度で凝った操作ができる録画&ストリーミング専用ツールを使った時のパフォーマンスも見てみたいものだ。

 そこで今回は「OBS Studio」をゲームの裏で走らせ、ゲーム画面の録画をCPUエンコードで実行させる。

 録画はx264 fast、ビットレート30Mbpsで実行させたが、この状態でストリーミング用のエンコードをさせるとCPUの負荷が辛い。そこでストリーミング用のエンコードはGPU(NVEnc)に任せ、ビットレート8Mbpsで実行させる設定とした。

 ちなみに、ストリーミングサービスはTwitchを利用している。

今回使ったOBS Studioの設定。ストリーミングはRTX 2080 Tiに組み込まれたNVEncを利用し、CPUに負荷をかけずに実施する。CBR 8Mbps、Max Quality設定だ
録画はストリーミング用と違いCPU(x264)で処理させる。ストリーミングよりもビットレートを高くするためだ。今回はx264 fast、highプロファイルで30Mbps設定とした
ストリーミングと録画はフルHD、60fps設定としている

 まずはOBS Studioの処理を経由することで、CPU占有率がどの程度違うかをご覧いただこう。ここでは「Borderlands 3」と「モンスターハンターワールド:アイスボーン」を使用した。画質設定は前述のベンチマーク時と同じものを使っている。

「Borderlands 3」での検証風景。ソロで「マリワンテイクダウン」をクリアするまでの模様をストリーミング&録画した。連鎖攻撃や範囲攻撃を多用し、多くのキャラを一度に相手するプレイスタイルをとった
Borderlands 3だけを実行した時のCPU占有率。後半4コアに処理が集中しているが、これは検証に用いたCore i9-10900Kの優秀なコアと一致している
OBS Studioでストリーミング&録画を同時実行させながらBorderlands 3を遊んだ時のCPU占有率。全コアが80%近くまで使われていることが分かるが、一応余力は残せている状態だ
「モンスターハンターワールド:アイスボーン」の検証風景。集会エリア内をぐるぐる駆け回りながら録画とストリーミングを実施した
モンスターハンターワールド:アイスボーンのCPU占有率はかなり高い。DirectX 12をつかっているせいもあるが、各コア70%以上は使われている
ストリーミングと録画を同時実行させながらモンスターハンターワールド:アイスボーンを遊んだ時のCPU占有率。全コアがフル稼働しているのが分かる。さすがにCore i9-10900Kでもコア数が不足気味になってきた

 ではOBS Studioでストリーミング&録画処理を同時実行させた時と、ゲーム単体時ではフレームレートにどの程度の差が生まれるのだろうか?ベンチマークで比較してみた。

 検証条件は前述のベンチマークと同じものを使用している。解像度を上げるとGPUがボトルネックになりやすくなるので、解像度は1920×1080ドットのみとした。

「Borderlands 3」DirectX 12使用、1920×1080ドット時のフレームレート
「モンスターハンターワールド:アイスボーン」DirectX 12使用、1920×1080ドット時のフレームレート

 CPU負荷が激増するのでフレームレートもガタ落ちかと思ったが、平均fpsベースで最大20fps程度落ちただけだった。20fps下落はえらく大きい気がするが、今回のPC構成はスペックを盛っているため、ゲームとOBS Studioでストリーミング&録画を同時実行させても余裕の平均120fps以上で楽しめるのは強い。

 モンスターハンターワールド:アイスボーンはCPUの余裕がギリギリすぎて心配になるが、今回の検証範囲内ではエンコードスキップ(CPU処理が追い付かずコマ落ち状態で出力されること)も発生しない。モンスター複数と戦闘する場合はもう少し負荷も上がると思われるため、あくまで目安と捉えていただきたい。

Borderlands 3でひと暴れした後のOBS Studioの統計ウインドウ。「エンコードのラグが原因でスキップされたフレーム数」が限りなくゼロに近いことが望ましい。Borderlands 3においては極めて優秀な結果を出せている
モンスターハンターワールド:アイスボーンの検証終了時の統計ウインドウ。CPU占有率がギリギリなので、スキップされたフレーム数は28となったが、全体のフレーム数と比較すると1%にも満たない
参考までに「VALORANT」とOBS Studioを合わせた時のフレームレートも比較してみた。CPU占有率がやたら低いゲームなので、OBSで録画してもほとんど影響がないのが面白い

独自ヒートシンクで高負荷でもVRM MOSをしっかり冷却定格運用なら電源は800Wが目安

 第10世代Coreプロセッサのハイエンド、Core i9-10900Kを使う上での懸念事項は消費電力と発熱だ。

 14nmプロセスルールが続投になったのに加え、コア数が10コアに増加、さらに動作クロックも最大5.3GHzに引き上げられているため、消費電力と発熱問題が出てくるであろうことは明らかだ。

 そこで消費電力測定として、「OCCT Pro 6.0.0」のOCCTテストを30分以上実行し、その時のCPUパッケージ温度や消費電力等を測定した。BIOSはデフォルト設定で運用しているため、Turbo Boost Power Max、いわゆる“PL1”は無制限(4095W)設定となっている。

 検証時の室温は約26℃、温度などの追跡は「HWiNFO」を、消費電力測定はラトックシステム「REX-BTWATTCH1」を使用した。

システム全体の消費電力

 Core i9-10900Kの全コアを稼働させた時の消費電力は約330W。14nmプロセスのCPUなのでそれなりに消費電力は増えているが、驚愕するほどは大きくない。定格運用であれば電源ユニットの出力は800Wもあれば十分余裕をもって運用することができるだろう。

 次のグラフはOCCT実行中のCPUパッケージ温度とVRM MOS温度、そして10コアの平均実効クロック(Average Effective Clock)の推移をまとめたものだ。

OCCT実行中のCPUパッケージ温度、VRM MOS温度、Average Effective Clockの推移

 このグラフを見るとクロックは10コア全てが4.9GHzで休み無く稼働し続けていても、CPUパッケージ温度は70℃をベースラインに、瞬間的に90℃まで上がる時もある、ということが分かる。

 VRM MOS温度に関しては処理開始から10分ぐらいの間でゆっくりと温度が上昇し、最終的に66℃あたりで安定している。Core i9-10900Kをフルで回してもVRM MOS温度がこの程度にとどめているということは、Fins-Array IIがかなり上手く機能していると考えられる。Z490 AORUS MASTERはCore i9-10900Kの性能をフルに引き出せているといえる。

 このテストを実施した時のマザーボード各部の表面温度をサーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」で撮影してみた。この時は側面のガラスパネルは外しているため、パネルを装着した時の温度とは若干違う可能性がある点はご留意いただきたい。

アイドル時の状態。VRMの隣にあるチョークコイルの表面温度は47℃
OCCTを30分実行した後の温度分布。チョークコイルの表面温度は約70℃に到達した

高フレームレート環境を作るならCore i9-10900K + GIGABYTEハイエンドZ490マザー

 以上でCore i9-10900KをコアにしたゲーミングPC構成の検証は終了だ。

 14nmプロセスであること、そしてコアの中途半端な数や消費電力の多さにおいて、Core i9-10900Kは“万人にウケるCPU”とは言い切り難いが、ことゲーム用途に限っては第1線で戦える高い実力を備えている。画質設定を気にせず高フレームレートのゲーミング環境が欲しい人にはとくにオススメだ。

 しかしそうは言ってもCore i9-10900Kを全力で回すには良質なマザーボードが必要なことは確かだ。各メーカーもその辺はしっかり設計で対策しているが、今回Z490 AORUS MASTERを使って、このCPUをフルロード運用するには、電源部分の設計がリッチで十分冷えるマザーボードが必要だと強く感じた。今回の第10世代Coreプロセッサの性能をきっちり引き出すなら、Z490 AOURS MASTERのような高級マザーボードを選ぶべきと言えるレベルだ。

 これからCore i9-10900Kで組もうと考えている方にとって、本稿が参考になれば幸いだ。

[制作協力:GIGABYTE Technology]