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あのASUSが「NAS」に進出!ASUSグループの新興NASメーカー「ASUSTOR」の自信のほどは?

Text by 平澤寿康

ASUSとADATAが投資した新興NASメーカー「ASUSTOR」。ASUSの読み方はエイスースだが、ASUSTORは「"アサスター"と呼んでます」(国内代理店のマスタードシード)とか。
HDDベイ2基の個人向けモデル「AS-202TE」。HDMI出力やサウンド出力も搭載。別売リモコンからも操作できる

 日本で「NAS」と言えば日本メーカーの製品が中心だが、ハイエンドユーザーの中には、高性能で自由度の高い海外メーカーのNASを利用している人も少なくない。そんな中、ある海外の新興NASメーカーが世界的に注目を集めている。そのメーカーは「ASUSTOR」。

 メーカー名からピンと来る人もいるかもしれないが、ASUSTORは、マザーボードやPC、タブレットなど日本でも非常になじみ深い、あのASUSグループに属する新興NASメーカーだ。2011年8月に設立された、非常に若いメーカーだが、他社の製品にはない独自機能を盛り込むことで、世界的に注目度が高まっている。

 そしてこのたび、ASUSTORは、マスタードシードと代理店契約を結び、日本市場にも本格的に参入を開始した。そこで今回、ASUSTORの営業部リーダーであるAllen Yen氏(以下、Allen氏)に、ASUSTORが目指すもの、そしてその製品の特徴をうかがってきた。

ASUSグループによる「NASのリーディングカンパニー」ウリは「経験豊富な人材による迅速な製品開発」

Allen Yen氏
ASUSTORの製品ラインナップ。「個人向け」「家庭向け」「パワーユーザー向け」「ビジネス向け」と既に12機種(2014年1月現在)ものラインナップが用意されている

――まずはじめに、ASUSTORについてお伺いします。ASUSTORは、NASのリーディングカンパニーを目指して設立されたそうですが、そもそもの設立の経緯を教えてください。

[Allen氏] ASUSTORは、ASUSとADATAの投資によって2011年8月1日に設立されました。社長はASUSの会長でもあるJonny Shih、CEOはShawn Shuといいます。

 もともとShawn Shuは、ASUSサーバーチームのセールスリーダーでした。その後2004年にSynologyに入社し業績を大きく伸ばしました。次に、2005年にQNAPに副社長として入社し、こちらでも業績を伸ばし、QNAPを世界的なNASメーカーとして成長させました。そういった業績もあって、Shawn ShuはNAS業界では非常に有名な存在です。

 今から2年前、Shawn ShuはにQNAPから退職することを決意しましたが、そのことを聞きつけたJhonny Shihが、「ASUSグループとして新しいNAS会社を立ち上げて欲しい。」と要請、その要請を受ける形でShawn Shuを中心としてASUSTORが設立されました。ASUSグループの中でもASUSTORはかなり特別な存在で、力を入れて運営されている会社です。

 2011年8月にASUSTORを設立した後、2012年6月のCOMPUTEX TAIPEIで初めて製品を発表しました。このわずか10ヶ月の間に、ハードウェアとソフトウェア双方を完成させて製品化にこぎ着けましたが、これはNAS業界としても非常に早いスピードといえます。ASUSTORには、ASUS、Synology、Infortrend、QNAPなどで経験を積んだエンジニアが多数所属しています。それらの会社と関係の深いShawn Shuを中心として立ち上げられたため、そのような多くのエンジニアが集まったのですが、そういったこともあって短期間で製品を市場に投入できました。

――NASのリーディングカンパニーを目指して設立されたということに加えて、ASUSが特別な存在として力を入れて取り組んでいるということから、NAS分野で大きなシェアを取りに行こうとしているように感じます。

[Allen氏] 確かにNASのリーディングカンパニーを目指して設立されましたが、「現在の市場を取りに行こうと考えている」というのはややニュアンスが違います。ASUSTORを設立した当初、Shawn Shuが考えたのは、SynologyやQNAPからシェアを奪うということではありませんでした。

 世界的なNAS市場の動向を見ると、最近の5年間は毎年100%を超える成長を見せています。ただ、SynologyやQNAP、アメリカのNETGEARなどの売り上げ成長率を見ると、100%に達していません。そこで、市場にはまだ新しいブランドが参入する余地がある、と考えました。既存メーカーにはない、お客様に対してより高い利益を与えるような高性能な製品を投入すれば、新規に参入しても十分にシェアを獲得できると考えたのです。

――個人的には、NAS市場には非常に強いメーカーが存在していたり、市場自体が成熟しているため、新規メーカーの参入は難しいのではないか、という印象を持っていましたが、そうではないのですね?

[Allen氏] 日本市場では、確かにその通りです。日本では、日本国内メーカー製で、HDDを内蔵するNASが販売されていて、そういった製品が市場シェアの大多数を占めています。それに対し日本以外の地域では、まだNASは未開拓の市場です。ASUSTORは、個人用途、家庭用途、ビジネス用途など多数の製品を発売しましたが、ワールドワイド市場で強い興味を持っていただきました。その理由は、既存製品との差別化が実現できたからだと考えています。

 しかし、日本においても、HDD容量の自由度や様々な機能、省エネルギー性など、我々のウリとする部分は必ず評価いただけると考えています。

ウリは高い自由度、100以上のアプリやUSB 3.0などで機能拡張「全機種Intelプラットフォーム」も特徴、高パフォーマンス

リモートデスクトップを利用している感覚で、WebブラウザからNASを操作できる。使用感はWeb上のLiveDemoで体験可能。
アプリの例。iTunes Serverやフォトギャラリー、メディアプレイヤーなどの定番はもちろん、Dropboxとの連携アプリやWordPress、Webカメラを繋げて使う監視カメラアプリ、、WebブラウザのChromeまで用意されている。
RubyやPerlといった開発ツールもインストール可能

―― 次に、ASUSTORの製品についてお伺いします。ASUSTORの製品は、個人向けSOHO向け、企業向けなど様々な製品が存在していますが、それら製品の基本となるコンセプトはどういったものでしょう。

[Allen氏] ASUSTORの製品の基本コンセプトは、ベースとなるファームウェアの基本設定があり、その上にアプリを搭載して機能拡張する、というものです。

 ASUSTORの製品で利用できるアプリは、「App Central」というサイトで無償配布していますが、そこから必要となるアプリをダウンロードして、ユーザーが自由に機能をカスタマイズできます。これによって、不要な機能がリソースを消費することがなくなり、NASのポテンシャルを最大限に引き出せるようになります。また、NAS本体にHDMI出力やオーディオ出力端子を用意するとともに、マルチメディアプレーヤー機能を盛り込みました。この機能はASUSTORが初めて実現したものです。

 これまでのNASは、単なる「ネットワーク接続の外付けHDD」としてしか考えられていませんでした。先ほどのマルチメディアプレーヤー機能は、差別化を実現するための手法のひとつですが、こういった差別化によって、ブランドの認知度を高め、注目を集めることに成功したと考えています。


本体前面にUSB 3.0ポートがある製品も多い

――メインメモリの増設など、ハードウェアの自由度の高さも特徴のように思います。

[Allen氏] その通りです。「AS 6シリーズ」という製品では、CPUに動作クロックが2.13GHzのデュアルコアAtomを採用しています。メインメモリは標準で1GB搭載していますが、1本メモリスロットが用意されていて、最大3GBまで増設可能です。さらに、eSATAポートが2つ、USB 3.0ポートが2つ、USB 2.0が4つ、Gigabit Ethernetが2つと、豊富な拡張ポートも備えています。ソフトウェアの自由度の高さと同じように、ハードウェアで自由度の高い設計を採用しているのも、他社製品との差別化のひとつです。

 ASUSグループには、「n+1ストラテジー」という重要な共通戦略があります。これは、製品に価格以上の価値を持たせるという趣旨の戦略ですが、ASUSTORもお客様にコストパフォーマンスに優れる製品を提供したいので、この戦略に基づいて製品を開発しています。


採用CPUはすべてx86系で統一されている

――「ローエンドのNASはARM」というメーカーも多い中、御社では全てIntelプラットフォームを採用していますが、なぜでしょうか?

[Allen氏] 現在のNASは、マルチメディア機能が多く盛り込まれていて、その処理を行うには比較的高い処理能力を必要としますが、IntelのCPUは処理能力が優れていて、そういった機能も余裕を持って実現できます。また、ASUSグループはIntelといい関係を築いていて、Intelから多くのサポートも受けています。そういったこともあってIntelプラットフォームを採用しています。

[Allen氏]アプリについてですが、App Centralで110を超えるアプリが提供されているということですが、ユーザーが自由にアプリを開発することも可能ですか。

 現在App Centralで提供しているアプリには、自社開発のものとサードパーティが開発したものがあります。そして、SDKもフリーで配布しています。SDKを利用すれば、自由にアプリを開発することも可能です。また、開発したアプリは、許可を取ればApp Centralで配布することもできます。

――ASUSTOR製品は様々な機能を備えていますが、最も重要な機能は何だと考えていますか?

[Allen氏] NASにとって最も重要となる機能は、データのバックアップ機能と考えています。

 ASUSTORのNASでは、FTPバックアップ、クラウドバックアップ、リモートシンクバックアップ、外部HDDへのバックアップなど、様々なバックアップ機能を備えています。しかも、全てのバックアップ機能が2重のバックアップに対応しています。これこそ、他社のNASに対する優位点と考えています。このような強力なバックアップ機能を備えているため、たとえばスーパーマーケット「カルフール」では、台湾の全店舗でASUSTORのNASが導入されています。

日本向けには「+α」の機能もアピールHDMIでTVと直結したり、NAS単体でFTPしたり……

もちろん日本語設定が用意されている
HDD増設だけでなく、NAS本体を移行するのも簡単とのこと

――次に、日本市場への取り組みについてお伺いします。さきほど「日本市場には強いメーカーがいる」というお話しでしたが、そうした中にも関わらず、日本語化や日本国内向けサポートの実現など、日本市場に注力されているように見えます。実際に日本市場に参入しての印象はいかがでしょうか。

[Allen氏] 日本のNAS市場は、かなり成熟していると思います。強いメーカーもいますので、確かに海外ブランドの参入は難しいと感じます。

 ただ、ニッチな市場はまだまだ存在しています。例えば、法人用途ではHDD搭載容量など高い自由度が求められます。日本でマスタードシードと代理店契約をしたのは、そういった要求に対応しようと考えたからです。また、日本はスマートフォンやタブレットが広く普及している市場だと考えています。そこで、一般ユーザーについてはスマートフォンやタブレットで利用する写真や音楽の保存に需要があると考えています。そういったニッチな部分での需要を開拓することで、日本市場でのシェアを高めたいと考えています。


AS-202TEなど、HDMI出力があるモデルもある

――日本のユーザーに特に注目してもらいたい機能などはありますか?

[Allen氏] 特にニッチな機能に注目してもらいたいです。例えば、ホームユーザーをターゲットとしている「AS 3シリーズ」には、省エネルギー、静音、LEDインジケーターの設定などが可能となっています。

 省エネルギー機能としては、時間を設定したスリープの移行が可能で、スリープからの復帰も3秒と高速です。省エネルギーに関しては、おそらく業界トップレベルだと考えます。静音性ですが、他社のNASでは小型の空冷ファンを高速で回転させるため、騒音の大きい製品が多いですが、ASUSTORの製品では大型の空冷ファンを低速で回転させますので、騒音も非常に少なくなっています。また、LEDインジケーターは、輝度を自由に変更したり、オフにすることも可能です。他社の製品では、LEDが明るく点灯してまぶしいと感じる製品もありますが、ASUSTORの製品ならそういったこともありません。

 また、HDMIでディスプレイに接続した場合に表示される「ポータル機能」も注目していただきたい機能です。これは2013年12月のアップデートで搭載されたものですが、様々な機能のアイコンを配置して、簡単に機能が呼び出せます。もちろん表示アイコンは自由に登録可能です。さらに、ワイヤレスマウスとキーボードをNASに接続することで、PC不要で操作が可能となります。

――企業向けとして注目の機能はありますか?

[Allen氏] 企業向けの機能の中で注目してもらいたいのは、「ミッションモード」という機能です。

 企業で利用されるNASでは、異なる拠点間でデータをバックアップすることがあります。しかし、そのバックアップ作業中に電力やネットワークが落ちた場合には、バックアップに失敗してしまいます。「ミッションモード」はこれに対策できる機能で、バックアップ作業やネットワークの状況を定期的にチェックして、バックアップに失敗した場合でも、自動的にバックアップをリトライできます。リトライを実行する間隔や、リトライを行う時間帯も自由に設定可能です。そして、何度もリトライに失敗する場合には、オフィスのインフラに重大なトラブルが発生していると判断し、その状況を通知する機能も用意されています。

 また、「FTPエクスプローラー」というアプリもあります。これは、2つのNAS間でのデータ転送を、NASのみで実行できるというものです。2つのNAS間でFTP転送を行うには、別途PCを接続してPCのFTPクライアントを利用して行うのが普通ですが、FTPエクスプローラーならPCを利用せず実行できます。転送作業にPCが要らないことはもちろん、PCを経由しないので、ネットワーク帯域の点でもメリットがあります。

――日本では、地デジの録画データをNASに保存し、ネットワーク内で複数の機器で活用する、という使い方をする場合が多いです。ただ、それにはDTCP-IPなど著作権保護機能への対応が不可欠となりますが、ASUSTORの製品でも対応は可能でしょうか。

[Allen氏] その件については、日本のユーザーからもすでに問い合わせをいただいています。日本メーカー製のNASでは、ほとんどがDTCP-IPに対応していますが、現時点ではASUSTORの製品はDTCP-IPには対応していません。ただし、この点については非常に重要だと考えてます。すでに調査も開始していまして、代理店契約をしたマスタードシードと共に努力して、近い将来にDTCP-IPに対応させたいと考えています。

[Allen氏]最後に、日本のユーザーへのコメントをお願いします。

 2013年は、ASUSTORは売り上げが非常に大きく伸びました。日本市場については、マスタードシードと代理店契約したことによって、2014年以降、大きく発展させたいと思っています。ASUSTORは、今後も新しい機能を随時追加して、すばらしい体験を提供していきますので、ぜひご期待ください。

[協力:マスタードシード/ASUSTOR]

(平澤 寿康)

ASUSTOR NAS