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期待のゲーム用API「Mantle」をテスト、性能は最大1.8倍、APUだけでも1.1倍

「BF4+フルHD」もAPU単独でなんとかプレイOKに?

AMD Catalyst 14.1 Beta Driver for Windows

 AMDがゲーム向け性能強化の一環として注力する独自ドライバ「Mantle」だが、ようやくベータ版の対応ドライバ「Catalyst 14.1 Beta(V1.6)」が公開、対応ゲーム(Battlefield 4)と合わせて出揃った。

 Mantleは「(DirectXに比べ)最大45%性能が向上する」とアナウンスされていることもあり、対応ドライバを心待ちにしているユーザーも多かったと思う。そこで今回、A10-7850KとRadeon R9 290Xを利用した対応環境を用意、ざっくりと性能をテストしてみた。

 色々検証しがいのありそうなMantleだが、今回は、その端緒として読んでいただければ幸いだ。

テストに使用したデモ機(提供:リンクスインターナショナル

CPU AMDA10-7850K
ビデオカード Radeon R9 290X
マザーボード GIGABYTEGA-F2A88XN-WIFI
メモリ DDR3-2400 8GB×2 (CorsairCMY16GX3M2A2400C11R
CPUクーラー CorsairH100i
SSD CorsairCSSD-F240GBLS
ケース CorsairOBSIDIAN 250D
電源 CorsairRM850
OS 日本マイクロソフトWindows 7 Ultimate(64bit)


「Mantleを使うだけ」で約1割の性能向上、フルHDでもBF4は遊べる?低負荷時の方が効果大

画質設定

 さて、まずはKaveriでのテスト、ということで、上記テスト用PCからビデオカードを抜き、まずはA10-7850K単体でMantle環境とDirectX環境でどの程度フレームレートに差が出るのか比較してみた。Mantle環境のスクリーンショットを撮れる環境が整わなかったため、以下のゲーム画面は全てデジタルカメラで撮影している。

 検証にはゲーム内設定などを確認するためのステージ「TEST RANGE」を使用し、マップに入った直後の状態を比較した。なお、「TEST RANGE」はそこそこの広さがあり、場所ごとに負荷の軽重はあるが、比較的負荷が軽い場面が多い。

 ゲーム内の描画設定は右の写真の通りで、解像度は1,920×1,080ピクセル、画質はMEDIUMを選択。その結果が下の画像だ。

Mantleモード
DirectXモード
(C) 2014 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.

 Battlefield 4は重いというイメージがあるが、意外にも普通に遊べそうなフレームレートが出た。今回はDDR3-2400メモリを使用しており、性能がだいぶ底上げされているため、その点は考慮する必要があるが、高速なメモリを用意すればAPU単体でもフルHDでゲームが楽しめそうだ。

 また、結果のフレームレートは、Mantle利用時が44fps、DirectXが40fps、つまりその差は10%。「APIを切り替えただけ」と考えるとかなり大きな効果で、APU利用者にとっては朗報以外の何物でもないが、「こだわったBF4環境を作るなら、やはりビデオカードが必要」といえる数字でもある。また、ベータ版ドライバだから、という可能性も大きいが、「最大45%」とアナウンスされていたAMDの公式アナウンスとの乖離も気になるところだ。

 そこで、まずはその特性を知るべく、ゲーム内の画質設定を変更してMantleとDirectXの環境を比較してみた。

LOW(Mantle)
MEDIUM(Mantle)
HIGH(Mantle)
ULTRA(Mantle)
(C) 2014 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.
LOW(DirectX)
MEDIUM(DirectX)
HIGH(DirectX)
ULTRA(DirectX)
(C) 2014 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.

 結果は上記の通り。

 画質設定をLOW、MEDIUM、HIGH、ULTRAと変更し、フレームレートを計測したわけだが、画質を下げる(≒低負荷)ほど性能向上幅が大きくなり、画質を上げる(≒高負荷)ほど性能向上幅が小さくなる、という結果となった。

 最も差が付いた画質LOWの性能向上幅は「13%」で、計測シーンでのフレームレートも50fps。画質を調整すれば、APU+フルHDでもなかなかの数字が出るようだ。反面、「ULTRA」設定時の性能向上幅は見た目上ゼロ。例示したシーンでは、1フレームの差に満たない性能向上幅(この場合は6%)しかなかった、ことになる。

 こうした結果は、「APIの処理の無駄を省く」というMantleの性質を考えると、確かに納得できるもの。つまり、Mantleは「スペックが厳しすぎるPCで、なんとかゲームをプレイするため」というよりは、「スペック的にちょうどいいPCで、ゲームプレイの快適度を向上させる」のに最も適したAPIといえそうだ。


マルチプレイモードで遊んでみたMantle+高速メモリで、多人数プレイも大丈夫?

 さて、テスト用ステージの「TEST RANGE」ではなかなかのフレームレートだったが、本当にゲームが遊べるのかマルチプレイ用ステージの「Siege of Shanghai」で試してみた。

 まず、上記テストでそこそこのフレームレートがでていたLOW/MEDIUM設定で、Mantle/DirectX環境を比較した。

LOW(Mantle)
MEDIUM(Mantle)
(C) 2014 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.
LOW(DirectX)
MEDIUM(DirectX)
(C) 2014 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.

 「TEST RANGE」とは負荷が違うためフレームレートが落ちているが、Mantle/DirectX環境ともにLOW設定であれば30~40fpsの間でフレームレートが安定しており、普通に遊ぶことができる。同じシーンで比較すると、Mantle環境の方がDirectX環境よりも1~3fpsほど高fpsとなる事が多いようだ。

 また、MEDIUM設定でMantle/DirectXの差が小さくなるのも同じ傾向。差がでない場面も多く、1~2fpsほどMantleの方が有利な場合もあるといった感じだ。また、Mantle/DirectX環境ともに30fpsを割り込むことが多く、「ギリギリ普通に遊べない」といったイメージ。30fps維持で画質を極めたいなら、LOW設定とMEDIUM設定を微妙に調整する、ということになるだろう。


 さて、ここまではDDR3-2400メモリでテストしているが、メモリ性能の影響を見るため、DDR3-1333にクロックを落として「Siege of Shanghai」をLOW設定で遊んでみた。その結果が下の画像だ。

LOW(Mantle)
LOW(DirectX)
(C) 2014 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.

 Mantle/DirectX環境ともに常時30fpsを割り込んでおり、DDR3-1333でフルHD、というのはやはり無理なよう。

 ただし、Mantle環境ではギリギリ30fpsに届かない感じだったので、DDR3-1600やDDR3-1866などを使用した際は30fps以上をキープできる可能性がある。こうした30fpsに届くか届かないかの場面であれば、数fpsの向上でも価値のあるもの。Mantle対応の可否は大きな意味を持つことになる。


APU+GPUでは、なんと1.5~1.8倍に性能向上ビデオカード1ランク分

画質設定

 最後に、A10-7850K + Radeon R9 290Xを組み合わせて使用した際のフレームレートをMantle環境とDirectX環境で比較してみたが、こちらはかなり驚きの結果となった。

 ハイエンドカードを使うならやはり最高画質だ!ということで、解像度は1,920×1,080ピクセル、画質設定は最高設定のULTRAを選択してテストを行っている。こちらも、「TEST RANGE」と「Siege of Shanghai」の2マップで検証した。

Mantleモード
DirectXモード
(C) 2014 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.

 まず、ステージ「TEST RANGE」での結果だが、数値的にはMantle環境で大幅に性能が向上、なんと1.5倍ものフレームレートを記録した。数値的にはビデオカードをワンランク上のモデルに変えたような変化が見られる。

Mantleモード
DirectXモード
(C) 2014 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.

 ステージ「Siege of Shanghai」でのフレームレートはさらに開き、実に1.8倍。「Siege of Shanghai」ではフレームレート差を体感しやすいところで性能差が出ており、Mantle環境に切替えた際の変化にはかなり驚かされた。

 DirectX環境では一部で30fpsを割り込むなど、ULTRAの画質で遊ぶのは快適ではない「Siege of Shanghai」だったが、Mantle環境ならフレームレートが落ちても50fps前後で留まることが多い。負荷が軽めの場所ならば70~100fps程度は出ており、Mantle環境はなかなか快適。

 「いい環境をさらに良く」という法則は、ここでも同じ傾向だ。

 なお、ビデオカード使用時、Kaveri内蔵GPUが性能に影響しているのかどうかをチェックするため、内蔵GPUをEFI上からオフにしてテストしようと試みたが、今回の環境では内蔵GPUをオフにするとPCが立ち上がらず、テストはできなかった。仮に、Kaveri内蔵GPUが性能向上に影響しているとすれば、Mantle対応ゲームでは「Kaveri + Radeon」がコストパフォーマンスで優位になる可能性もある。


対応ゲームソフト増に期待大

 以上、Mantleの性能をざっと見てきたが、環境によって劇的な性能向上をもたらすのは確か。ドライバはまだベータ版だが、Battlefield 4用にRadeon R9 290Xを購入するのは「もちろんアリ」だろう。

 APU単体の場合は、今のところ効果が限定されるが、それでも10%の性能向上があり、さらに今後、Radeon系ビデオカードの増設で性能向上する可能性もある。また、Battlefield 4よりも軽いゲームであれば、Mantle対応で大きく性能が向上、たとえばフルHD/60fpsを達成するゲームもあるだろう。

 現状の対応ソフトはBattlefield 4とベンチマークソフトのStar Swarm Stress Testしかないため、Battlefield 4のプレイヤー以外に実益はないが、最適化次第で大化けする可能性があるのは確か。多くのゲームソフトが対応することを願わずにはいられない。

久保 勇