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期待のゲーム用API「Mantle」をテスト、性能は最大1.8倍、APUだけでも1.1倍
「BF4+フルHD」もAPU単独でなんとかプレイOKに?
(2014/2/8 14:00)
AMDがゲーム向け性能強化の一環として注力する独自ドライバ「Mantle」だが、ようやくベータ版の対応ドライバ「Catalyst 14.1 Beta(V1.6)」が公開、対応ゲーム(Battlefield 4)と合わせて出揃った。
Mantleは「(DirectXに比べ)最大45%性能が向上する」とアナウンスされていることもあり、対応ドライバを心待ちにしているユーザーも多かったと思う。そこで今回、A10-7850KとRadeon R9 290Xを利用した対応環境を用意、ざっくりと性能をテストしてみた。
色々検証しがいのありそうなMantleだが、今回は、その端緒として読んでいただければ幸いだ。
CPU AMDA10-7850K
ビデオカード Radeon R9 290X
マザーボード GIGABYTEGA-F2A88XN-WIFI
メモリ DDR3-2400 8GB×2 (CorsairCMY16GX3M2A2400C11R)
CPUクーラー CorsairH100i
SSD CorsairCSSD-F240GBLS
ケース CorsairOBSIDIAN 250D
電源 CorsairRM850
OS 日本マイクロソフトWindows 7 Ultimate(64bit)
「Mantleを使うだけ」で約1割の性能向上、フルHDでもBF4は遊べる?低負荷時の方が効果大
さて、まずはKaveriでのテスト、ということで、上記テスト用PCからビデオカードを抜き、まずはA10-7850K単体でMantle環境とDirectX環境でどの程度フレームレートに差が出るのか比較してみた。Mantle環境のスクリーンショットを撮れる環境が整わなかったため、以下のゲーム画面は全てデジタルカメラで撮影している。
検証にはゲーム内設定などを確認するためのステージ「TEST RANGE」を使用し、マップに入った直後の状態を比較した。なお、「TEST RANGE」はそこそこの広さがあり、場所ごとに負荷の軽重はあるが、比較的負荷が軽い場面が多い。
ゲーム内の描画設定は右の写真の通りで、解像度は1,920×1,080ピクセル、画質はMEDIUMを選択。その結果が下の画像だ。
Battlefield 4は重いというイメージがあるが、意外にも普通に遊べそうなフレームレートが出た。今回はDDR3-2400メモリを使用しており、性能がだいぶ底上げされているため、その点は考慮する必要があるが、高速なメモリを用意すればAPU単体でもフルHDでゲームが楽しめそうだ。
また、結果のフレームレートは、Mantle利用時が44fps、DirectXが40fps、つまりその差は10%。「APIを切り替えただけ」と考えるとかなり大きな効果で、APU利用者にとっては朗報以外の何物でもないが、「こだわったBF4環境を作るなら、やはりビデオカードが必要」といえる数字でもある。また、ベータ版ドライバだから、という可能性も大きいが、「最大45%」とアナウンスされていたAMDの公式アナウンスとの乖離も気になるところだ。
そこで、まずはその特性を知るべく、ゲーム内の画質設定を変更してMantleとDirectXの環境を比較してみた。
結果は上記の通り。
画質設定をLOW、MEDIUM、HIGH、ULTRAと変更し、フレームレートを計測したわけだが、画質を下げる(≒低負荷)ほど性能向上幅が大きくなり、画質を上げる(≒高負荷)ほど性能向上幅が小さくなる、という結果となった。
最も差が付いた画質LOWの性能向上幅は「13%」で、計測シーンでのフレームレートも50fps。画質を調整すれば、APU+フルHDでもなかなかの数字が出るようだ。反面、「ULTRA」設定時の性能向上幅は見た目上ゼロ。例示したシーンでは、1フレームの差に満たない性能向上幅(この場合は6%)しかなかった、ことになる。
こうした結果は、「APIの処理の無駄を省く」というMantleの性質を考えると、確かに納得できるもの。つまり、Mantleは「スペックが厳しすぎるPCで、なんとかゲームをプレイするため」というよりは、「スペック的にちょうどいいPCで、ゲームプレイの快適度を向上させる」のに最も適したAPIといえそうだ。
マルチプレイモードで遊んでみたMantle+高速メモリで、多人数プレイも大丈夫?
さて、テスト用ステージの「TEST RANGE」ではなかなかのフレームレートだったが、本当にゲームが遊べるのかマルチプレイ用ステージの「Siege of Shanghai」で試してみた。
まず、上記テストでそこそこのフレームレートがでていたLOW/MEDIUM設定で、Mantle/DirectX環境を比較した。
「TEST RANGE」とは負荷が違うためフレームレートが落ちているが、Mantle/DirectX環境ともにLOW設定であれば30~40fpsの間でフレームレートが安定しており、普通に遊ぶことができる。同じシーンで比較すると、Mantle環境の方がDirectX環境よりも1~3fpsほど高fpsとなる事が多いようだ。
また、MEDIUM設定でMantle/DirectXの差が小さくなるのも同じ傾向。差がでない場面も多く、1~2fpsほどMantleの方が有利な場合もあるといった感じだ。また、Mantle/DirectX環境ともに30fpsを割り込むことが多く、「ギリギリ普通に遊べない」といったイメージ。30fps維持で画質を極めたいなら、LOW設定とMEDIUM設定を微妙に調整する、ということになるだろう。
さて、ここまではDDR3-2400メモリでテストしているが、メモリ性能の影響を見るため、DDR3-1333にクロックを落として「Siege of Shanghai」をLOW設定で遊んでみた。その結果が下の画像だ。
Mantle/DirectX環境ともに常時30fpsを割り込んでおり、DDR3-1333でフルHD、というのはやはり無理なよう。
ただし、Mantle環境ではギリギリ30fpsに届かない感じだったので、DDR3-1600やDDR3-1866などを使用した際は30fps以上をキープできる可能性がある。こうした30fpsに届くか届かないかの場面であれば、数fpsの向上でも価値のあるもの。Mantle対応の可否は大きな意味を持つことになる。
APU+GPUでは、なんと1.5~1.8倍に性能向上ビデオカード1ランク分
最後に、A10-7850K + Radeon R9 290Xを組み合わせて使用した際のフレームレートをMantle環境とDirectX環境で比較してみたが、こちらはかなり驚きの結果となった。
ハイエンドカードを使うならやはり最高画質だ!ということで、解像度は1,920×1,080ピクセル、画質設定は最高設定のULTRAを選択してテストを行っている。こちらも、「TEST RANGE」と「Siege of Shanghai」の2マップで検証した。
まず、ステージ「TEST RANGE」での結果だが、数値的にはMantle環境で大幅に性能が向上、なんと1.5倍ものフレームレートを記録した。数値的にはビデオカードをワンランク上のモデルに変えたような変化が見られる。
ステージ「Siege of Shanghai」でのフレームレートはさらに開き、実に1.8倍。「Siege of Shanghai」ではフレームレート差を体感しやすいところで性能差が出ており、Mantle環境に切替えた際の変化にはかなり驚かされた。
DirectX環境では一部で30fpsを割り込むなど、ULTRAの画質で遊ぶのは快適ではない「Siege of Shanghai」だったが、Mantle環境ならフレームレートが落ちても50fps前後で留まることが多い。負荷が軽めの場所ならば70~100fps程度は出ており、Mantle環境はなかなか快適。
「いい環境をさらに良く」という法則は、ここでも同じ傾向だ。
なお、ビデオカード使用時、Kaveri内蔵GPUが性能に影響しているのかどうかをチェックするため、内蔵GPUをEFI上からオフにしてテストしようと試みたが、今回の環境では内蔵GPUをオフにするとPCが立ち上がらず、テストはできなかった。仮に、Kaveri内蔵GPUが性能向上に影響しているとすれば、Mantle対応ゲームでは「Kaveri + Radeon」がコストパフォーマンスで優位になる可能性もある。
対応ゲームソフト増に期待大
以上、Mantleの性能をざっと見てきたが、環境によって劇的な性能向上をもたらすのは確か。ドライバはまだベータ版だが、Battlefield 4用にRadeon R9 290Xを購入するのは「もちろんアリ」だろう。
APU単体の場合は、今のところ効果が限定されるが、それでも10%の性能向上があり、さらに今後、Radeon系ビデオカードの増設で性能向上する可能性もある。また、Battlefield 4よりも軽いゲームであれば、Mantle対応で大きく性能が向上、たとえばフルHD/60fpsを達成するゲームもあるだろう。
現状の対応ソフトはBattlefield 4とベンチマークソフトのStar Swarm Stress Testしかないため、Battlefield 4のプレイヤー以外に実益はないが、最適化次第で大化けする可能性があるのは確か。多くのゲームソフトが対応することを願わずにはいられない。