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PS4のHDDを1TB SSDに換装してみた、ロード時間が半分以下になる例も
ロード時間が半分以下になる例も、その快適さを検証 text by 石田 賀津男
(2014/4/29 14:55)
PCにSSDを搭載するのは当たり前の時代……になったと筆者は思っている。HDDでは決して体験できない圧倒的な快適性の差は、一度でもSSDを使ったことがある人ならば誰もが理解してくれる感覚だろう。
しかし今回の話題はPCではなく、2月に発売されたばかりの新型ゲーム機PlayStation 4だ。標準で500GBのHDDを内蔵しているのだが、インターネット経由で数十GBのゲームソフトを購入できるようになったことで、「500GBでは足りない!」と早速1TB超のHDDに換装する人が続出。2.5インチで1.5TBのHDDや1TBのSSHDが秋葉原全体で品薄になるという事態も起こった。
ただ、誰もが考えつつ、実践しづらい選択肢がある。容量も速度も一切妥協しない、大容量SSDへの換装だ。
障壁となるのはSSDの価格だが、今や5万円以下で購入できる1TB級のSSDもある。PS4の本体価格が4万円強なので、本体よりも高いデバイスとなるが、非現実的と言うほどの価格でもない。
というわけで、今回は最強のゲーム環境を求めて、PS4に1TB級のSSDを導入してみた。使用するSSDは、Crucial M500 960GB。秋葉原の店頭では税別4万5千円台で販売されており、このクラスでは格安のSSDだ。
HDD→SSD換装の実際は?
PS4で換装に使えるHDDは、2.5インチで厚さ9.5mm以下、容量160GB以上のものとされている。Crucial M500はHDDではなくSSDだが、2.5インチで厚さ7mm、容量960GBなので、条件はクリアしている。
換装に際しては、1GB以上の空き容量を持つUSBメモリ等のUSBストレージが必要。PS4アップデートサイトから、アップデートファイル(再インストール用)をダウンロードし、USBストレージにコピーしておく。またUSBストレージはPS4のHDDに保存しておいたセーブデータの退避・復旧にも使える。
換装の手順については、PS4本体に付属のセーフティーガイドに書かれているので、そちらを参照していただきたい。今回はCrucial M500に交換する流れを簡単に紹介しておく。
筆者のPS4に内蔵されていたHDDは、HGST製HTS545050A7E380(500GB、5,400rpm、SATA2)。厚さは7mmだったので、Crucial M500と同じ形状だ。Crucial M500のパッケージには、9.5mm厚に合わせるためのスペーサーが付属しているが、それも使わず換装できた。
その後PS4の電源を入れ、アップデートファイルをSSDにインストールすると、何事もなく起動した。PS4のメニューから本体ストレージを確認すると、容量826GBのうち、813GBが使用可能となっていた。
その後、ゲームのインストールも行ったが問題なし。Crucial M500への換装は何の問題もなく完了した。SSDだからといって特に注意することもなく、あまりに簡単過ぎて逆に驚いてしまった。
換装でどれだけ速くなる?ロード時間が半分以下になる例も
換装が無事終わったところで、引き続きSSDのパフォーマンスを見ていきたい。PS4に便利なベンチマークプログラムはないので、実使用時の読み込み時間などを比較する。
まずはPS4の起動時間。電源ボタンを押してメニューが表示されるまでの時間を計測した。初期状態では29.2秒、SSD換装後は21.9秒となった。PS4の起動のプロセスはSSDからのデータ読み込みだけではないはずだが、それでもなかなかの効果があるようだ。
続いては、4月14日に発売された「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」を使ったテスト。まずはPS4のメニューからログイン画面が出るまでを計測した。初期状態で25.1秒、SSD換装後は23.8秒。ネットワークのチェックが入るプロセスなので、あまり差が出ないようだ。
次はキャラクターを選択して、ゲーム画面が表示されるまでの時間を計測した。初期状態では38.0秒、SSD換装後は14.8秒となった。この時間はサーバーやネットワークの混雑状況にも影響は受けるが、ここまで大きな差が付いているのは、データのロード時間が大幅に短縮されたのが大きな要因であることは間違いない。
これ以外にも、プレイ中にエリアが切り替わるなど、データのロードが発生する場面では、SSD換装後の方が快適になっていることが体感できるほど違いがある。旧世代のゲーム機で、HDDにデータをインストールできるゲームでは快適性がぐっと増した経験があるが、Crucial M500への換装はそれに似た変化を感じさせてくれた。
おまけ:Crucial M500 960GBとPS4内蔵HDDをPCで速度比較
換装やパフォーマンス比較があまりに簡単に済んでしまったので、弊誌らしくPCでのベンチマークも見てみることにする。
Crucial M500 960GBと、PS4から取り外したHDD(HGST製HTS545050A7E380)をCrystalDiskMarkで計測してみた。(テスト環境:Core i7-3160QM、HM76 Express、SATA3、メインメモリ4GB)
ちなみにPS4で使用したHDDやSSDは、Windowsで認識できるデータフォーマットではないので、PCでのベンチマークの前に領域確保からやり直している。当然ながらPS4で使用していた際のデータは失われるので、試してみたい方はご注意いただきたい。
Crucial M500 960GBは、容量が大きいこともあり、シーケンシャルライト、ランダムライトともに良好な数値を出している。HDDも悪くないパフォーマンスだが、やはりSSDに比べるとかなり分が悪い。
スタンバイモードも問題なく利用可能
最後にSSDの利用で気になるポイントを2点考えておきたい。1点目は、一部のSSHDをPS4で使用した際に、スタンバイモードから復帰できなくなるという問題だ。原因がはっきりしていないため、もしかするとSSDでも発生するのでは……という懸念がある。
筆者がCrucial M500 960GBに換装してから1日ほど経ち、試しに10回ほど連続でスタンバイモードからの起動を試してみたが、そのような症状は見られなかった。絶対に問題がないことを保証するものではないが、とりあえず大丈夫そう? という気はしている。
もう1つは、PS4が裏で15分間分のプレイ動画を記録し続けている点。シェアボタンでいつでもプレイ動画を共有できるよう、PS4ではストレージに確保されているシステム領域を使って、動画を記録し続けているのだ。このため、「メモリセルの書き換え回数に限界があるSSDには向いていないのではないか?」という指摘が一部でされている。そこで、実際にトラブルが発生するまでテスト……はものすごい時間がかかってしまうので、今回は計算だけしてみることにする。
Crucialの情報によると、耐久性は書き込み総量で72TBとされている。1日40GBを書きこんだとすると5年間という計算だ。PS4が保存する動画のビットレートは不明だが、仮に10Mbps程度の高画質だとすると(実際はもう少し低いと思われる)、15分で約1GB。10時間で40GBに達し、これを5年続ければ72TBになる計算だ。
となると、PS4でずっとゲームを動かしたままにしたところで、数年は大丈夫であろう。毎日数時間プレイしたところで、SSDが故障するより先にPS4の製品寿命が来る。机上の計算に過ぎないが、「SSDにPS4のプレイ動画が保存されることを問題視する必要はない」というのが筆者の印象だ。むしろディスクとヘッドが物理的に動くHDDの方が先に壊れる可能性が高いのではないかとさえ思う。
またメモリセルの寿命の観点で言えば、SSDの容量が大きいほど書き込み総量の耐久性は上がる。Crucial M500シリーズは120GBの製品でも書き込み総量で72TBとされているため、960GBの製品ならば期待値はもっと高くなるはずだ。公式発表ではないので憶測ではあるが、より安心できるデータとは言えるだろう。
以上でPS4にCrucial M500 960GBを換装するレポートを終わらせていただく。金額的に購入が厳しいということなら、2万円台で購入できる480GBモデルを選ぶという手もある。容量アップにはならないが、パフォーマンスを上げたいという場合はいい選択肢になるだろう。