特集、その他
「九州最大級」のツクモ福岡店がオープン、
福岡に行って「なぜ今なのか?」を聞いてみた
「アキバの本店をそのまま福岡に」
(2014/12/19 12:05)
ツクモ初の九州進出、そしてPCパーツショップとしても「九州最大級」をうたうツクモの新店舗「ツクモ福岡店」が12月13日(土)にオープンした。
場所は福岡の中心地、天神の一等地にあるベスト電器福岡本店の8F。もともとはベスト電器の売り場だったフロアを全面改装、ツクモとしてオープンしたという。
PCパーツショップに関する最近の話題、と言えば閉店や店舗統合の話が多かったが、このツクモ福岡店はそうした動きとは正反対。なぜ、ここで新店舗、しかも九州進出なのか?実際のお店を見つつ、「なぜ、今なのか?」もおうかがいした。
ちなみに、先にバラしてしまうと、この「ツクモ福岡店」は面積、品揃えともほぼ「アキバ並み」。
具体的には「秋葉原本店とほぼ同じ面積、品揃えを実現した」そうで、一部はアキバにない展示品もあるとのこと。地方店舗にありがちな品揃えの悪さもなく、「今後も“アキバ並み”を目指していく」(店長の関矢氏)という。
以下、写真とインタビューでその様子をお伝えしよう。
「秋葉原並み」の品揃えを見て、触れる環境にほぼ「ツクモパソコン本店」相当
まず、お話をお伺いしたのは店長の関矢 健太郎氏だ。もともとツクモパソコン本店のスタッフで、PCパーツ担当のフロア長だったとのこと。お店の準備はもちろんのこと、引っ越しは慌ただしくて大変だったとか。
――まず、福岡出店の経緯をお聞かせください。
[関矢氏] 弊社のWeb通販は全国で展開していますが、地域ごとに売上データを見ていると、リアル店舗のある地域がWeb通販でも強い、というのが明白なデータとして出ています。九州地区の売上は他の地域と比べて低めでしたので、店舗がないことによって、潜在的な顧客が他に流れてしまっていたことが考えられたのです。そこで今回、九州で新たに店舗展開を行うことで、九州地区における売上の向上を図ったというのが一番の理由です。
また、せっかく出店するのであれば、中途半端ではなくBTOからパーツまで幅広く取り扱う“PCの超専門店”として展開しようと考え、この規模の店舗になりました。秋葉原並みの品揃えを見て・触れる環境を作ることで、九州全域のお客様にご利用頂きたいと考えております。
――福岡店の「こだわり」を教えて下さい。
[関矢氏] 3つありまして、1つ目はスタッフ、2つ目は品揃えの維持、3つ目はセールなどの店頭施策です。
秋葉原級の品揃えは当然として、「詳しいスタッフがいる」という点がとても重要だと思っています。
特にスタッフについては、東京、名古屋、札幌の各地区で販売に携わっていた精鋭スタッフを集めました。ディスプレイやゲームに強いスタッフや、BTOの「eXコンピュータ」を担当しているスタッフです。後ほどご紹介しますが、全員、販売に携わって7~8年になるベテランですし、今後も社内でも勉強会を実施して知識のアップデートをしていきます。
品揃えに関しては、たくさん売れるメインストリームの商品は押さえつつも、「あまり数は出ないけれど、こだわりのある方が購入される商品」もしっかり取り揃えたいと思っています。
秋葉原レベルの店舗をそのまま福岡へ持ってくることに意義があると思うのです。現物を見て、触っていただけるところがリアル店舗のいいところですし、せっかく品揃えがあるので、特に商品の見やすさと手に取りやすさは意識しています。
ちなみに、具体的な店舗名でいえば、「ツクモパソコン本店相当」のパーツ売り場をそのまま福岡に持ってきた、と言ってしまってもいいでしょう。
店頭施策は、セールやセット値引き、Web価格への対応といった店頭施策といった部分も、秋葉原と同様に展開していきます。
――福岡店として、他の店舗にない特色はありますか。
[関矢氏] PCパーツとBTOに特化し、得意分野に絞って構成している点です。売り場にはナショナルブランドのPCやプリンターは置いていません。ベスト電器さんのビルに入っているということもあって、取り扱う商品は切り分ける形にしています。その結果、相乗効果でお互いの売り場が盛り上がることも期待しています。
――来店したお客様にどういう気持ちで買い物をしてほしいのか、また、想定している客層を教えてください。
[関矢氏] メインの客層としては九州地区で自作PCをされる方や、新たにPCの購入を検討される方が多くなるかと思います。
また、最近は秋葉原でも「自作をやってみたかった」と仰るご年配や女性の方が増えてきていいます。自作PCを始めたばかりの方でも、実際にご来店いただければ、何を難しく感じていて、どこがわからないのか、そういった細かい話をスタッフと話していただいて、納得いただいたうえで商品をお買い上げいただけたらうれしいです。
さらに、福岡は地理的に台湾や韓国が近いこともあって、IT産業やゲーム系の企業が集まっているので、そういった企業の方にもご利用いただければと考えています。
――競合店をどう捉えていますか。
[関矢氏] PCに特化したショップの中でも、この規模で品揃えを充実させている店舗は少ないので、競合店と勝負できるポイントは、品揃えと接客というこだわりの部分かなと思っています。
――販売する製品のアップデートがなされないケースが地方のPCショップで見られることがあります。
[関矢氏] 新製品の投入にしても、在庫管理にしても、我々のオペレーションには決まったサイクルがノウハウとして確立しているので、そうした部分をしっかりしている限り、そうした問題は起こりえませんのでご安心ください。
――新規出店に際して苦労話はありますか?
[関矢氏] 私も含めて、当店のスタッフは全員転勤組なので、引越しと開店準備が大変でした(笑)。11月末に転勤して、什器一つないところから始めました。
今回はツクモとしては7年ぶり、経営がProject Whiteになってからは初めての新規店舗オープンです。札幌や名古屋への進出はもうずっと昔なので、それ以来になります。私としても初めてのことばかりだったので、スタッフと一緒に売り場を作っていくのは大変でしたが楽しかったです。
ゲーミングデバイスは「触れる売り場」がモットーRealForceも多数展示
キーボードなどのゲーミングデバイスやPCケース、電源を主に担当するのは名古屋店から来た長屋 徹平氏。自作歴は「10年くらい」で、最初に自分で買ったCPUはNorthwoodのPentium 4 3GHzだそう。
――担当している分野についてお聞かせください。
[長屋氏] 元々は名古屋店でディスプレイを担当していました。福岡店では電源とケースをメインに担当しています。どちらかというと何でも屋として福岡店に呼ばれた面もあって、専門分野以外でもお尋ねいただいたことにはひと通りお答えできるかと思います。
――それぞれの分野で、どこにこだわった売場作りをしていますか。
[長屋氏] 福岡ではたくさんの種類のゲーミングデバイスを実際に触れる機会が少ないと聞いていたので、とにかく種類を充実させた売り場を作りました。新製品もきっちり押さえていますので、なかなかいい売り場になったと思います。
今回はサンプルをたくさん置けることになりましたので、「触れる売り場」づくりをしています。
例えばマウスの展示機は肘より低い位置になるように工夫しました。というのも、肘より高い位置だとマウスの感覚がわかりにくくなってくるのです。
――ゲーミングデバイスについて、よそではなかなか試せないような展示品はありますか。
[長屋氏] マッドキャッツのアケコンや、スラストマスターのハンドルとフットペダルの展示品は、よそにはなかなかないと思います。もしかしたら、秋葉原でも難しいかもしれないですね。新製品についても、地方だからといって入荷が遅いということはないです。
――電源の品揃えについてこだわりはありますか。
[長屋氏] 80 PLUS Platinum電源をかなり厚めに取り揃えています。もちろん流行りものという側面はありますが、いい感じに価格もこなれてきているので、せっかくなら良い電源を使っていただきたいなと思っています。
というのも、私自身、品質の低い電源を使って何度か痛い目を見たという経験があるからです。長いこと自作PCをやっていると、電源だけはいいものを使おうという志向になってくると思うのです。
今後は様子を見つつ、品揃えを充実させたいと思います。
――ケースについてはいかがでしょう。
[長屋氏] 売れ筋はひと通り揃えていますが、おすすめはSharkoonやDALTONのケースは安価かつ組みやすくておすすめですね。しっかり組むのであれば、クーラーマスターの「CM690 III」も良いでしょう。個人的にはPCを組むときにパーツやケーブルを出し入れしたり、きっちり組むというのが苦手で、結果的に収まればいいかなと思うたちなので、そんな感じのチョイスになります。
――来店したらぜひ見ていただきたいというポイントはありますか。
[長屋氏] キーボードコーナーを見てほしいです。品揃えは多いので、ぜひご来店して悩んでいただければと思います。
――売り場作りにあたって苦労した点はありますか。
[長屋氏] 展示品を置ききれないところに苦労しました。ゲーミングデバイスを実際に触れる点が一番の売りになると思いますので、置けなくなるぎりぎりまで展示機を体験いただけるようにしました。
大きさや見た目、そして「格好良さ」もポイント?Quadroまで在庫あり
CPUやマザーボード、ビデオカード、SSD、HDDなどPCパーツ全般を見ているのが北海道から来た山北 賢氏。自作歴は10年以上で、最初に買ったCPUはPentium 4。自作を始める前に買ったCPUはPentium IIIだとか。
――担当分野についてお聞かせください。
[山北氏] PCパーツ全般を担当しています。トレンドや旬のパーツは私が見ています。
――PCパーツ売り場を作るにあたってのこだわりはありますか。
[山北氏] 売り場で見て、触れるという点を大事にしています。PCパーツに関して、九州では展示を出しているショップがそもそも少なく、展示していても売れ筋のものだけという場合が多いのですが、当店の場合は、商品をできるだけ売り場に出すことを心がけています。
例えばPCケースの場合、当店では小型ケースから大型ケースまで、色々な種類を展示しています。この点はクルマと同じで、大きさや見た目のデザインからお客様が選びやすいように、多くの選択肢を提示しています。
このほか、什器の棚を急遽増やして、倉庫に置いていた分の商品をできるだけ多く売り場に出すようにしました。
商品の置き方にもこだわりがあります。CDにジャケ買いがあるように、PCパーツにも見た目のかっこよさで興味を持っていただく機会があってもいいと思うのです。ですので、商品を売り場に置くときは、できるだけ面置きにしています。
――そうした観点では、来店されたお客様に見て欲しい展示はありますか。
[山北氏] ASUSのR.O.Gシリーズですね。
――売り場の中でAMDの展示スペースが大きいのが印象的でした。
AMDのコーナーだというのがひと目でわかるようにしています。札幌店でも同程度のスペースで展開はしていました。
AMDはコスト的にも比較的安価に組めるのが良いですね。予算はないが、ゲームがしたいというお客様、具体的には、高校生など若いお客様に提示するひとつの選択肢として、AMDのAPUは評価できると思います。あと店長がAMD好きというのもあります(笑)。
――山北さんはどんなPCを使っているのですか。
私は最新のゲームがまともに動けばいいので、今はコストパフォーマンスを重視して、Core i5の2500K、GeForce GTX660、16GBメモリを搭載したマシンを使っています。買い換えるにしても、基本的にはCPU、メモリ、マザーボードだけを買い換えれば済むようにしました。
もし次買い替えるのであれば、次の世代のCore i5を中心に、現在のマシンから2~3世代後のパーツで構成すると思います。
――売り場づくりで普通と違う、こだわっている部分はありますか。
[山北氏] 店頭で触れるデモ機はコンセプトを決めて組んでいますね。体験できる売り場づくりを心がけています。現在はASUSのSTRIXシリーズの体験コーナーを設置中です。
――品揃えでこだわっている部分はありますか。
[山北氏] ビデオカードとマザーボードは、現行の新製品として出ているものはひと通り揃えています。ビデオカードでしたら、QuadroやFireproの店頭在庫もある程度あります。ちなみに秋葉原で即完売したというMSIのGTX 970ゲーミングゴールドエディションも、こちらに在庫としてあったりします。
――小型自作キットや小型PCの取り扱いも多いですね。
[山北氏] 最近、NUCの需要が高まってきています。
法人のお客様でも、会社のPCをまとめてNUCに買い替えた事例があります。電気料金が上がってきているので、古いPCを使い続けるよりは、同程度のスペックで低消費電力のNUCやECSの「LIVA」などに買い替えた方が、ランニングコストが抑えられるということですね。法人に対しては、そういう提案もしていきたいと思っています。
――売場作りで苦労した点はありますか。
[山北氏] 特に苦労はしていないですね(笑
今回は什器もない全くのゼロから売り場を作り上げていくことができたので、何もない棚に商品が入っていくというのが楽しくて仕方がなかったですね。
特にGeForce GTX 980や970といったハイエンドビデオカードを並べているときが一番楽しかったです(笑)。
例えばGTX 980ひとつとっても、いままで九州の店頭では見られなかったラインナップをツクモならば目にすることができる。そうしたお客様の様子を想像する楽しみがあると思うのです。
液晶ディスプレイはとにかく大量、見せ方にもこだわりがショップブランドPCも工夫アリ
液晶ディスプレイとショップブランドPC「eX.computer」をメインに担当するのが元ツクモeX.パソコン館の今吉 真弘氏。自作歴は10年くらいで、最初に買ったCPUは「新品ならAthlon XP、中古ならPentium III」だそう。
――担当分野についてお聞かせください。
[今吉氏] eX.computerと液晶ディスプレイ担当です。以前は秋葉原のツクモeX.パソコン館に勤務していました。
――eX.computerで品揃えにこだわった点はありますか。
[今吉氏] 初心者の方でも、パーツとモデルごとの違いがわかるような工夫をしています。ある程度PCパーツに精通した方なら、型番を見てどのクラスで、どのくらいの性能差があるかはわかると思うのですが、初心者の方ですとそのあたりは少々難しいかと思います。ですので、実際に店頭のデモ機でベンチマークを動かしてパフォーマンスの違いを体感していただいたり、ベンチマークスコアを独自に集計した表を用意して、数値で違いが分かるようにしたりしています。
例えばGeForce GTX 750Tiを100としたとき、GeForce GTX 980にした場合に何%伸びるのか、GeForce GTX 750Tiで30fps出ているときに、GeForce GTX 980なら100fps以上出ているというようなデータをまとめておいて、すぐに出せるような工夫をしました。
見せ方という点では、デスクトップPCでは、特にゲーミング用途の製品に3画面ディスプレイやウルトラワイドディスプレイを繋いで、実際にゲームが動いている状態で見られるようにしています。店頭では、Final Fantasy XIVを動かしています。またノートPCに関しては、Quadroを搭載した製品の実機を展示しています。
――売り場を作るにあたって苦労した点はありますか。
[今吉氏] これは福岡店だからというわけではないのですが、お客様が詳しくなくても、商品についてわかりやすく説明するための準備が大変ですね。具体的には、日々の積み重ねの部分、特に新モデルの情報収集やベンチマークデータの蓄積といった作業部分です。
大変ではありますが、そのおかげで情報をわかり易く整理して、お客様に説明することに関しては、かなり自信がつきました。
例えばAMDのAPU「Kaveri」に関してお客様に説明する場合、ブルーレイの動画を再生する際にNVIDIAのビデオカードから映像出力するよりも、AMDのビデオカードから出力した映像の方が発色がいいという点に気づいてもらえるように説明するといった具合です。
――ディスプレイについてはいかがでしょう。
[今吉氏] 動画をデモ用として流しているのですが、そのほかにもディスプレイ選びのポイントを表示しています。展示している台数もかなり多いのですが、可能な限り同じ映像を流すようにして、色の違いが分かるようにしているのがこだわりです。
すべての画面で同じ映像が流れているので、ディスプレイ一つ一つの色味や表示性能の違いが比較しやすい点がポイントです。
また、パネルの種類、インチ数、解像度、アスペクト比、内蔵スピーカーの有無などの情報も、パッと見て直感的にわかるようにまとめてあります。
また、限られたスペースの中で、可能な限り魅力的な機種を選んで並べています。LGの4Kディスプレイ「31MU97-B」は17:9というちょっと変わったアスペクト比ですが、こういったマイナーなスペックのモデルも取り揃えているところも魅力かなと思っています。
――どのようにして同じ画像を映しているのですか。
[今吉氏] 映像出力を4つ備えた玄人志向のGeForce GT730を2枚と、Quadro K2200を1枚使って、11枚のディスプレイを繋いで出力しています。売り場ではそれでも足りないので、低解像度のものに関しては分配しています。
――どのようなディスプレイを展示していますか。
[今吉氏] 日本未発売のViewSonicの液晶ディスプレイを先行展示しています。おそらく今日本で見られるのはここだけでしょう。弊社の担当者がViewSonicに交渉したところ、本国から直接届いたものです。手頃な価格で十分な表示性能を備える点では、フィリップスの対抗馬になる見込みです。
このほか、ColorEdge Advanced Store認定を受けてカラーマッチングの体験も可能です。ウルトラワイドディスプレイや240Hzのディスプレイも滑らかさを体感できる形で置いてあります。
――ディスプレイコーナー全体のこだわりはなんでしょうか。
[今吉氏] ひと目でそのディスプレイのポイントがすぐわかるところです。
――売り場を作るにあたり苦労した点はどこでしょうか。
[今吉氏] 一番苦労したのは機材調達ですね。分配器や4系統出力があるビデオカードを探すのは大変でした。ちなみにデモ機を組んだのは私ではなく秋葉原のスタッフです。
――担当の範囲でお客様に見て欲しい部分はどこでしょうか。
[今吉氏] やはりColorEdgeは見ていただきたいです。一目見て映りが違うのがわかるはずです。こればかりは実際にご来店いただかなくてはわかりません。福岡地区における実機展示はあまりないはずですので、この機会にぜひご体験ください。
PC本体につきましては、デスクトップPCではQuadroとXeon搭載機のパフォーマンス、また3画面によるゲームをご体験いただきたいです。ノートPCではゲーミングノートですね。