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Seasonic的「電源の選び方とハイエンド電源最新事情」

そして同社の最新電源は? text by 石川ひさよし

同社製電源の最新モデル「XP3」シリーズ。80PLUS Platinumの認証製品だ

 自作PCにおいて「電源は心臓」だ。

 各部のパーツをキッチリと安定して動作させるために重要なパーツであり、弊誌でも、これまでにも機会あるごとに電源メーカーにお話を聞いてきた。

 そこで今回は、Seasonicの新モデルリリースに合わせ、同社の代理店であるオウルテック 江口 晶氏に電源選びのポイントと、新モデルにおける強化ポイント、電源活用術をお聞きした。

Seasonic電源選びのキホンウリは「手厚いサポート」と「日本メーカー製部品による信頼性」

オウルテックの江口 晶氏
「まず壊れた話を聞いたことがない」という山洋電気製の12cm角ファン。14cm径ファン搭載モデルと比べ静音性では不利だが、Seasonicでは「静音性より耐久性」を掲げ、合わせて準ファンレス機能によって「アイドル〜低負荷時の静音性」を実現している。なお、後述のとおり実質ファンレス運用も狙える
製品保証を受けるためには保証書やレシートが必要。余ったプラグインケーブルの収納を兼ねてパッケージに入れて保管しておくとよい

―― まず、Seasonicの電源の特徴について教えてください

[江口氏] Seasonic電源の第一の特徴は信頼性です。現在、ATXサイズは80PLUS GoldとPlatinum電源のみのラインナップですが、下位のGold電源にも5年間新品交換保証を付けています。

 同時に、新品交換保証なので、修理品が海をわたって、お客様のお手元に届くまでに何週間もかかるようなことはありません。製品によっては保証期間中に終息してしまうものもありますが、そうした製品でも、同等のグレードの製品をご提供しております。

 また、主要なパーツが日本メーカー製であることも大きなポイントです。Seasonic製電源として展開しておりますが、オウルテックがコンデンサやファンなどをSeasonicに指定し、これを搭載したモデルを展開しております。コンデンサなどに関しては、ロットによっては同一メーカーでの調達ができない場合もありますが、そうした場合でも、日本メーカー製の、同一グレードの代替品を用いておりますのでご安心ください。

 オウルテックも長らく電源を扱ってきましたが、日本メーカー製パーツによる信頼性の高さは好評です。電源のパーツの中でも信頼性の要求されるコンデンサはもちろんですが、とくに山洋電気製ファンとサイレント・ファンコントロール機能は好評でして、まず山洋電気ファンが壊れたという報告を聞きません。逆に、山洋電気には14cm径25mm厚ファンのラインナップがありませんので、そのため現在のラインナップは12cm角ファンを搭載しております。静音性の面では不利ですが、そこは準ファンレス機能「Hybridモード」や柔軟なファンコントロール機能によってカバーしております。

 こうした特徴は、お客さんと相談する中で決まっていき、そうした日本の顧客動向をSeasonicに説明していく中で、現在の形に落ち着きました。なお、Seasonicの海外モデルの並行輸入版も少なからず流通しているようですが、それらの製品では、ファンやケーブル、コンデンサなどが異なる可能性がありますし、当社の保証外ですので、お気を付け下さい。

Seasonic電源選びのポイント(1)−グレード編−

オウルテック取り扱い製品のラインナップ。ATXだけでも11シリーズ存在する

―― Seasonicの電源はラインナップも豊富ですが、この中からどのような製品がどのようなユーザーにオススメなのか、まずはグレードとセグメントについて教えてください

[江口氏] 現行のSeasonic製電源ラインナップは、まず入門機としての「Gシリーズ」、1,000W未満(600W台〜800W台)の中容量帯をカバーするメインストリームに「KM3Sシリーズ」、「XP2Sシリーズ」、1,000W以上の大容量帯をカバーするハイエンド製品として「XM2シリーズ」、「XP3シリーズ」をご用意しております。

 Gシリーズ、KM3Sシリーズ、XM2シリーズは80PLUS Gold、XP2S/XP3シリーズはグレードが一つ上の80PLUS Platinum認証電源です。

 想定ユーザーとしては、小容量のGシリーズは主にオンボードGPUをご利用される方、KM3SやXP2Sシリーズはミドルレンジ〜ハイエンドGPUの1枚構成、XM2やXP3はハイエンド構成のユーザーです。

 具体的には、マルチGPU構成のPCや、常時稼働のPC、準ファンレス機能を活用されたい方向け、ということになります。マルチGPUの指標としましては、GPUの消費電力値が250Wとして、2-wayなら1,000W、3-wayなら1200W以上をオススメします。なお、NVIDIA GeForce GTX 980のように消費電力値が低い場合は若干緩くなりますが、最大出力に対して余裕をみたほうがよいですし、一部のAMD Radeon系のGPUは、電力表記が最大消費電力ではない場合もありますので、そのような製品をお使いの場合は、余裕を少し多めに見積もっていただくとよいかと思います。

入門機となるGシリーズはセミプラグイン

―― 入門という位置付けの「Gシリーズ」とそのほかのモデルとの違いを詳しく教えていただけますか

[江口氏] 入門機とはいえ、Gシリーズも5年間新品保証の対象製品で、主要なパーツに関しては日本メーカー製を使用しております。ただし、2次側回路の一部に関しては、海外メーカー製のパーツを使用しています。が、これは先にご説明したとおり、ロットによって調達メーカーが変わる可能性があります。

 機能面では、準ファンレス機能に対応していないという点が大きいです。同時に、ファンコントロール機能も異なってきます。また、フルプラグイン式ではなく、セミプラグイン式であることも外見的には大きいですが、ATX24ピンとATX/EPS12V(4+4ピン)が直付けというだけですので、実際の運用面ではそれほど変わらないでしょう。とはいえ、上位モデルと比べ、スペックは落としておりますので、そこをどうとらえるかというところが製品選びのポイントです。


三つ並んでいるのが1次側のコンデンサ
左がXP3の1,200Wモデル、右は同じXP3の1,050Wモデル。ほぼ同じロットでも1次側コンデンサが異なるが、品質としては同等グレード。105℃対応の日本メーカー製だ。そのほか、容量が異なるため、2次側のコンデンサの数に違いが確認できた

―― では上位モデルの特徴を教えてください。

[江口氏] まず上位モデルには2次側を含め日本メーカー製コンデンサを、ファンは山洋電気製の12cm角ファンを採用しております。この点、信頼性や安定性という点でも一つ上ととらえてください。ケーブルも、セミプラグイン式からフルプラグイン式ですので、使い勝手の面でも向上しています。

 また、準ファンレス機能の「ハイブリッド・サイレントファンコントロール機能」が搭載されているのが大きな特徴です。ハイブリッド・サイレントファンコントロール機能では、まず本体にあるスイッチを「Normalモード」にすれば負荷率50%までファンを低速回転、それ以上で温度や負荷率に応じて可変制御します。準ファンレス機能は、スイッチを「Hybridモード」にした際に利用でき、XP3シリーズなら負荷率35%以上、それ以外のモデルでは負荷率30%以上まではNormalモードと同様の制御をしますが、それ未満の負荷率ではファンを停止します。

 また、最新のXM2、XP3シリーズでは、従来のハイブリッド・サイレントファンコントロール機能での動作に加え、ヒステリシスゾーンというものを設けました。これは、温度上昇時なら負荷率30%(XP3では35%)からファンを低速回転させ、温度下降時なら負荷率20%(XP3では25%)まではファンを低速回転させるという仕組でして、ファンレス動作に切り換わる際、十分に内部を冷却しておくことで、ファンのON/OFFの頻度を下げることが可能です。

ファンの回転を、停止、低速、可変と3段階に制御するハイブリッド・サイレントファンコントロール機能
新モデルが搭載する「ハイブリッド・サイレントファンコントロール」では、温度下降時にはファンを回し続け、温度上昇時はファン回転を抑止する「ヒステリシスゾーン」を作り、できるだけ長くファンを停止させつつ、十分な冷却ができるようにしている。
 温度上昇時のファンの回転開始は負荷30%(XP3では負荷35%)から、温度下降時の回転終了は負荷20%(XP3では負荷25%)。
低負荷時はファンが停止するのがウリの一つ

Seasonic電源選びのポイント(2)−容量・買い時編−

―― 電源容量を選ぶ基準は、「そのPCのフルロード時の消費電力の倍」と言われていますが、そういう理解で良いのでしょうか?

[江口氏] 電源には熱と音という二つの選び方があると思います。

 まず「熱」。これは、コンデンサ寿命に影響します。電子回路では、変換ロスが熱となって放出されますので、電源ではより効率なものほど熱を抑えることができます。その中でも、80PLUSの指標を見てもお分かりのとおり、負荷率が50%の際がもっとも効率がよく、もっとも消費電力の大きな高負荷時が、ちょうどこの付近の負荷率になることが望ましいと言えます。

 同時に、「音」についても負荷率が50%を境にファンが高回転になりますので、静かな電源を求める際にも負荷率50%がフルロードになることが望ましいと言えます。

―― 電源の買い換えタイミングはどのようなときがベストでしょうか?

[江口氏] まずシステムの大幅な変更時です。ご利用になるシステムの消費電力が大きく変わるような際は、お使いの電源がその消費電力量に対応できるのか、あるいは最大消費電力量に対してどれだけ余裕があるのかをご検討いただいた上で買い換えをオススメいたします。

 また、保証期間が切れたタイミングというのも目安です。5年もすれば、PC側の規格もいろいろと変わってきます。Haswell登場時のように、新しい基準が求められる場合もあります。

電源使いこなし術ハイエンドビデオカードでは+12V系を分けて使うことで安定性が向上する!

PCI Express補助電源用のケーブル。1本から二つの6+2ピンに分岐するケーブルと、6+2ピン1基のみの1対1になるケーブルが両方同梱されている。どうしてもという場合でなければ、1対1側のケーブルを用いたほうが安定性は向上するとのこと
PCI Express補助電源ケーブルは、分岐タイプが4本、1対1タイプが2本ついており、1対1で接続しても6個のコネクタが利用できる

―― 電源メーカーとして、最近の自作PCでここはおさえておきたいポイントとなるような点はありますでしょうか?

[江口氏] ビデオカードをご検討の際、とくに250W超のハイエンドビデオカードでは二つ以上のPCI Express補助電源コネクタが搭載されていますが、その際、各コネクタを別々の+12Vラインから取得することを推奨しています(1本の+12Vラインから2系統の6+2ピンを取り出すケーブルも付属しているが、これとは別に1対1となるケーブルも十分な数が同梱されている)。

 コネクタの接触部分に負荷がかかり過ぎることで発熱し、それによってケーブル不良が発生するといった事案が報告されているからです。もちろん、ケーブルやコネクタ側は、十分に対応できるだけの品質を確保しておりますが、ビットコイン採掘など想定外の長時間稼働の際にこうした問題が発生しやすいようです。また、接点が増えるという点で、延長ケーブルや変換ケーブルなどでも同様の問題が生じる可能性があります。

 この点に関しましては、2系統の6+2ピンのケーブルが同梱されている750W超モデルでマニュアルにも記載しておりますので、御覧ください。

―― 新旧モデルでのケーブルの使い回しなどは可能でしょうか

[江口氏] 同じSeasonic製電源でも、モデルによってピンアサインが異なる場合もありますので、おやめください。最悪の場合、故障の原因となります

―― 故障なのかどうか判断できない場合にはどのような対処方法があるんでしょうか?

[江口氏] 現在の電源には、各種の保護機能が搭載されております。落雷などで完全にヒューズが飛んでしまうこともありますが、保護回路が働くだけという場合もあります。そうした際は、電源をコンセントから完全に外した状態で一定時間おき、再度通電することで保護回路の起動ロックが解除されます。

 また、市販の電源テスターなどを使うことなどでも、電源の故障なのか、マザーボードから先の故障なのかが判断できます。ほか、故障ではなく不調という場合、「検査」(※保証期間内)も受け付けております。製品をお送りいただければ、弊社にて検査を行ないます。

新モデルでは「電流の質」がさらに向上

新製品のXM2シリーズ(右)とXP3シリーズ(左)
純銅製の板「Dual Copper Bar」(矢印の部分の金属部品)を新設することで、トランスからDC−DCコンバータまでの間の+12Vの質が向上したという
このコネクタの向きは「電源下置きレイアウト向け」とのこと

―― 新モデルとなるXM2、XP3シリーズは、従来のXM、XPシリーズとどのようなところが異なるのでしょうか

[江口氏] 新たな機能としては、先にご紹介したヒステリシスゾーンの追加、ハードウェアとしてはヒステリシスゾーンの追加に伴うファンコントローラICの変更が挙げられます。また、電源の質としましては、Tight Voltage Regulation機能を強化しております。

―― Tight Voltage Regulation機能とはどのような機能でしょうか

[江口氏] Tight Voltage Regulation機能自体は、従来のモデルから搭載しておりまして、入門機であるGシリーズにも搭載されております。

 XP3・XM2シリーズのUltra Tight Voltage Regulatorは、12VラインのGNDにセンサーを組み込み、電圧を制御するものでして、高負荷時でも電圧低下を防ぐことができます。その結果、XP3シリーズでは、旧XPシリーズよりもブレ幅を抑え、XM2シリーズでは例えば+12Vで+2〜0%(ATX規格では±5%までが許容値)、+5/3.3Vで1%まで抑えています。

 そのほか基板上では、「Dual Copper Bar」という純銅製の板を追加しています。基板上の銅板と言いますとノイズ対策のシールドように思われがちですが、これはトランスからDC−DCコンバータまでの間の+12Vの抵抗値を下げ(+5/3.3VはDC−DCコンバータで変換生成される)、インピーダンスの低減、電圧降下を抑えるための機能です。

 ほか、細かなところでは、最新の電源事情に合わせたケーブルコネクタの改良も行なっています。XM2シリーズもXP3シリーズも1,000W超の大容量モデルですので、組み合わせるPCケースも、昨今のトレンドである電源を底面に配置する製品を想定しております。そこで、ケーブルのコネクタについても下置きレイアウトを考慮した向きのものに変更してあります。

「ファンレス狙い」で大容量モデルを選ぶのもアリ

XP3シリーズのパッケージ
XM2シリーズのパッケージ
XP3、XM2ともに1,200W級の大容量モデルが用意されている

―― 新モデルはいずれも1,000W超の大容量モデルですが、どのようなユーザーにオススメなのでしょうか

[江口氏] もちろんハイエンドユーザーがターゲットです。そもそもは、少し古い話ですが、ビットコイン採掘のようなハイエンドGPUを複数枚搭載して24時間365日稼働させるようなPCがはやりまして、そうした用途に向けて開発をしたのですが、ご存じのようにSeasonicの製品はリリースのタイミングがいつも少し遅い(笑)。ただ、そうした長時間の用途であっても、安定して動作させられるだけの品質の製品ですので、幅広い用途でご利用いただけると思います。

 また、おもしろい活用法として、大容量と準ファンレス機能を用いたファンレス運用があります。XP3シリーズなら35%まで、XM2シリーズなら30%までファンが停止しますので、フルロード時の消費電力をこれ以下に抑えることで、実質的にファンレスで運用することができるわけです。

 ファン停止の条件は容量と負荷率ですので、大容量モデルのほうがより大きな消費電力でもファンレス運用ができます。30%までファンを停止するXM2シリーズなら1050Wモデルで315Wまで、1250Wモデルで375Wまで、35%までファンを停止するXP3シリーズなら1050Wモデルで367.5Wまで、1200Wモデルで420Wまでとなり、統合GPUを用いたPCはもちろん、XP3の1200Wモデルと組み合わせれば1本までであればハイエンドGPUを組み合わせたPCも視野に入ってきます。

―― ファンレスの電源はリリースされないのでしょうか

[江口氏] これが興味深い話でして、完全なファンレス電源は、過去、Seasonicでも販売しておりましたが、それでは不安になるらしいのです。「ファンレス運用だけど、万が一のときにはファンが回転を始めて冷却できる」という「担保」がユーザーにはウケているようなのです。

「見た目重視・ファンレスゾーン拡大」の純白モデルも登場!?

Seasonicが開発中の「Snow Silent-1050」。質実剛健というイメージのあるSeasonicからホワイト外装のモデルが登場するとは新鮮
プラグインコネクタの数も不足なく、ハイブリッド・サイレントファンコントロール機能用のスイッチも搭載。しかしファン停止ゾーンは負荷率50%まで拡大され、ハイエンド構成の静音PC自作に最適かも

―― なるほど、それは面白いですね。今後の製品として何かご紹介いただけますでしょうか

[江口氏] 現在「Snow Silent-1050」というモデルを検討しております。このモデルは「XP3シリーズの発展型」という位置付けになりまして、特別モデルとして、外装やファン、基板を白で統一しております。ケーブルが黒という点が残念ですが……。

―― 機能面では何かXP3シリーズとの違いがあるのでしょうか

[江口氏] ハイブリッド・サイレントファンコントロール機能によるファン停止機能を強化しております。XP3シリーズでは負荷率35%までファンを停止しますが、Snow Silent-1050ではこれを50%にまで高めております。つまり525Wまで実質的にファンレス運用できる設計です。

 まだ国内投入に関しましては検討中の段階でして、現時点でリリース時期や販売数量、価格などはご紹介できませんが、ご期待ください。

―― 80PLUS Titanium電源のリリースのご予定はいかがでしょうか

[江口氏] Titanium電源につきましては準備中ということにしておいてください。Seasonic製の製品は、他社と比べると少し遅れて登場するのがいつものパターンですので(苦笑)。すでに効率面では達成できているようなのですが、彼らは技術屋集団ですから、いろいろとこだわりがあるのではないでしょうか。

―― 最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします

[江口氏] 「電源は心臓」という言葉もありますように、安定性を左右する重要なパーツです。システム構築時に予算削減の対象にするのではなく、本当によい物を選んでいただければと思います。そしてよい物を長くご利用いただけるよう、われわれは長期の保証を付与しております。

 マザーボードやビデオカードはせいぜい1年、半年といった短期の流行ですので、すぐに交換されるパーツですが、電源は、そうした流行の短いパーツの交換後も、使いまわせるだけの長寿命モデルを選択したほうが、長期的に見れば低コストになるかと思います。PCライフにとってプラスになる電源をお選びいただければ幸いです。

(石川 ひさよし)

Seasonic 電源