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「11acの速さ」を広げる“真面目で謎”な
ASUSの無線LANリピーターを試す

よく考えられた中継機能、そして謎なオーディオ機能とフットライト…… text by 日沼 諭史

ASUSの無線LANリピーター「RP-AC52」
見た目スタイリッシュなハードウェアだが、フツーのPC周辺機器ではない!

 最近、無線LANデバイスを続々強化しているASUSだが、「無線LANの電波範囲を拡張する」という基本機能をしっかり押さえつつ、謎機能も満載するという不思議なデバイスが登場した。

 「モノ」としては、無線LANの電波範囲を拡張する無線LAN中継器、あるいはリピーターなどと呼ばれる製品で、無線LANの速度向上や無線LANの空白地帯解消用、としてはなかなか便利に作られている。

 しかし、なぜかスピーカー出力やLEDライトも同時に搭載。通常機能がしっかりしているだけに、「どうしてこうなった(笑」とは言わずにはいられないのも特徴といえる。

 その製品名は「RP-AC52」。IEEE 802.11acに対応する。

 本稿では、「真面目な便利さ」と「風変わりさ」が同居するその魅力をお伝えしてみたい。

コンセント直結の無線リピーター/アクセスポイント……フットライトとサウンド機能付き

クリスタル感のある小型筐体

 今回の製品は、既存の無線LANルーターと組み合わせて使う、「無線LANリピーター」や「Wi-Fiエクステンダー」と呼ばれるものだ。

 筐体は手のひらに収まるコンパクトさで、背面の電源プラグをコンセントにそのまま差し込んで使うことができる。

背面には電源プラグ。コンセントに直接差して使える

 無線LANの仕様としては、IEEE802.11a/b/g/nに加え、高速な11acにも対応する。11n時に最大300Mbps、11ac時に最大433Mbpsの通信が可能で、周波数帯域は2.4GHzと5GHzに対応。5GHzで利用すれば、電波干渉の少ない安定した高速通信を実現できる。

 この「リピーター」がどういう時に役立つのかというと、広い自宅やオフィススペースなどで、1つの無線LANルーターでは電波を十分に行き渡らせることができない場合だ。

 たとえば、無線LANルーターのネットワーク名(SSID)が「ROUTER」なら、途中に設置したRP-AC52をそのネットワークにまず接続させ、改めて「ROUTER RPT」などのネットワーク名で他の無線LAN機器(PC、スマートフォン、タブレットなど)と通信できるようにする。これにより電波強度を補うことができ、通信できなかった場所で通信ができるようになり、比較的遅い速度でしか通信できなかった場所でも高速通信を保てるようになる。このほか、有線LANを接続し、アクセスポイントとしても利用できる。

 「広大なお屋敷に住んでいる」という人はあまり居ないと思うので、「通信できなかった場所で通信できるようになる」というメリットを体感できる人は少ないかもしれないが、注目したいのは「通信速度が遅かった場所を高速化できる」という後者のポイントだ。

 ネット動画がカクつくなど、速度が気になる場所があれば、こうした製品を検討するのが現代的な解決法だろう。

簡単設置なリピーター機能「普通の環境」に飽きた人にも?

本体下部のランプで電波の強弱を判断しながら設置場所を決められる
LANポートは他の有線LANルーターと接続し、アクセスポイントとして動作させる時に使える

 さて、まずは基本機能であるリピーター機能を紹介しよう。

 先述したようにコンセント直結型のこの製品だが、実はこの形状が「リピーターとしての便利さ」のポイントになっている。

 リピーターという製品は、「親機の電波が弱くなりすぎず、かつ、子機を使いたい場所に電波が届く場所」に設置したいものだが、この製品では、一度親機との接続設定をした後、「あちこちのコンセントに挿してみて、本体LEDの表示数が多い場所を探す」だけで最適な場所を見つけられる。親機との接続設定も、WPSボタンで簡単かつセキュアに行えるため、便利かつなかなか手軽だ。

本体側面に用意されたWPSボタンを使うとわずかな手間で初期設定を完了させられる

 さて、実際の設置の具合を筆者の自宅(木造2階建て)で試してみた。

 筆者の自宅は1Gbpsと2Gbpsの光回線があるのだが、有線機器や配線の都合でこれらは両方とも1階に設置。そのため、2階は仕事部屋になっているにも関わらず常に電波が届きにくい状態だ。

 これを改善すべく、RP-AC52を設置しよう、ということになったわけだが、先述の「設定して色々なコンセントを挿しまくり」………とするまでもなく、我が家では中間地点の階段付近に決定。これは家の構造次第だが、設置後「本当にここで良かったのか?」を確認するにも使えるので、やっぱり便利は便利だろう。

 さて、設置の効果、という点では5GHzの11acを安定して拾えるようになったのが大きく、時々通信がストップしていたような現象がほぼ完全に解消した。仕事もその分スピードアップ!………と言いたいところだが、残念ながらそううまくはいかず(苦笑。ボトルネックはネットワークではなく、別なところにあるようだ(編注:仕事してください)。

親切なウィザード形式の設定画面で、手動設定でも迷うことは少ない
ASUSのネットワーク機器の管理画面は相変わらずグラフィカルで、見ていて楽しい

実はヘンなこの製品………ヘンその1:スピーカー・ヘッドフォンを差せばラジオが聞ける! しかも各部屋に設置したりとか…

本体側面の端子にスピーカーやヘッドフォンを差し込めば、ラジオや音楽を聞ける

 さて、リピーターとして真面目に作られているこの製品だが、実は「それ以外」が謎仕様満載なのもポイントだ(笑

 例えば、本体側面を見てみると、そこには3.5mmイヤフォンジャックが設けられている。

 この端子、「まさか、ここにスピーカーやヘッドフォンを差し込むと音楽を聞けたりなんか…………聞けたーーー!」なんていう、ベタな展開をするためにしか思えないが、実際その通りに機能する。

 ただし、さすがに「スピーカー・ヘッドフォンを差し込むだけで設定完了」とまではいかない。少しだけ準備が必要だ。

管理画面で世界のインターネットラジオ局を選択して再生。音量もここで設定できる

 まず、手っ取り早く音楽を流したいなら、Webブラウザを使える端末があればよい。

 RP-AC52に無線接続後、所定のURLにアクセスして管理画面を表示し「オーディオ」機能にアクセスすると、世界中のインターネットラジオ局の一覧が表示される。そこから好きなラジオ局の再生ボタンをクリックすればすぐにストリーミング再生が始まり、RP-AC52の端子から音声が流れる。

 これだけでもけっこう面白い使い方ができそうだ。

 例えば家中の各部屋に1台ずつRP-AC52を設置して、それぞれで24時間インターネットラジオをストリーミング再生しておけば、いつでもスピーカーやヘッドフォンを差し込むだけでラジオ番組を楽しめてしまう。リビングでトーク番組を、寝室でヒーリング音楽番組を、トイレでロックをと、部屋ごとに再生する番組を変えておくのもアリ。

 サウンド出力は本体前面のタッチスイッチでON/OFFできるので、スマートフォンを使わなくても音楽再生をON/OFFできる。「部屋を移動したらタッチで音楽」なんてこともOKだ。

他の部屋にも設置して別の番組を流してみる。場所によってコンセントの向きが違ったりする家なので、不格好になってしまったが……
ネットラジオアプリのXiiLiveと後述のAiPlayerの組み合わせると、スマートフォンなどからネットラジオの再生をコントロールすることもできる

ヘンその2:NASと合わせれば、好きな音楽をいくらでも…

 インターネットラジオだけでなく、所有している好きな音楽を流すこともできる。

 これにはもうちょっと準備と機材が必要で、DLNA機能が使えるルーターとネットワークHDDを用意しなければならない。

 今回はASUSの無線LANルーター「RT-AC68U」とUSB HDDを組み合わせ、RT-AC68Uのメディアサーバー(DLNA)機能とAiDisk(USBデバイスサーバー)機能を利用した。

無線LANルーター「RT-AC68U」とUSB HDDなどでネットワークストレージを用意すれば、音楽ファイルの再生も可能に
「RT-AC68U」の管理画面上でAiDisk機能のメディアサーバーを有効にしておく

 次に、スマートフォン・タブレット用アプリの「ASUS AiPlayer」(Android版/iOS版)をダウンロードして、端末のWi-Fi設定でRP-AC52のネットワークに接続しておく。あとはネットワークHDDに楽曲ファイルを好きなだけ保管するだけで準備は完了。AiPlayer上で“Player”にRP-AC52を指定し、“Library”でネットワークHDD(ルーター)から再生したい楽曲(MP3/WAV/FLACなど)を選べばOKだ。

AiPlayerで再生デバイスにRP-AC52を指定
続けてソースファイルをネットワークHDD(RT-AC68U)から選ぶ
ハイレゾ楽曲も再生OK。ただし環境によっては転送間に合わず音が途切れてしまうことがある
布団にくるまりながらタブレットでネットを見つつRP-AC52で音楽鑑賞生活!

 つまり、RP-AC52自体はDLNAにおけるDMP(プレーヤー)に、ネットワークHDD(ルーター)はDMS(サーバー)に、スマートフォン・タブレットがDMC(コントローラー)になる、という仕組み。こう書くとちょっと難しく感じてしまうが、簡単に言えば、各部屋にRP-AC52を設置しておくと、「家中の部屋がオーディオ環境完備」になる、ということだ(たぶんちょっと違うw)。

 「スマートフォンやタブレットが手元にあるなら、そこにヘッドフォンを差してネットワーク再生すればいい」なんて突っ込みもありそうだが、「機能を持ち歩く」んじゃなく「部屋に機能がついている」ことがポイントだ。なんでもインターネットに繋がる時代だし、「部屋」がネットに繋がったり、音楽が鳴る、なんてのもアリ……かもしれない。いちおう、「いちいちヘッドフォンを持ち歩かなくて済む」「布団に寝転がる時も邪魔にならない」という利点もあるし(笑

ヘンその3:なぜか足下灯、ただし意外とムーディ

LEDライトが本体底部に仕込まれている
いい感じに照らしてくれる

 そして、さらに謎なのがフットライト機能。

 「コンセントに直差しするわけだし、コンセントって低い位置にあることが多いから、ついでにフットライトになってれば便利だよね!」というわりと軽いノリで作ったんじゃないか、と想像してしまいそうになるが、意外とこれがムーディ。

 この機能、本体底部にLEDライトが内蔵されており、明るい場所だとあまり目立たないが、薄暗いところだとややぼんやりとした怪しい光で照らしてくれる。RP-AC52の本体デザインがツヤのある白で、正面に施されたダイヤモンド風のパターン加工がおしゃれな雰囲気を演出していることもあり、ともするとデザイナーズ物件にも似合いそうなたたずまいだ。

前面の下3分の1ほどがタッチエリア。タッチのたびにオン・オフが切り替わる
RP-AC52の管理画面でタッチ時の機能をカスタマイズ可能

 ……ただし、筆者の自宅ではその「オシャレさ」を引き立てるのは難しかった(笑

 築36年の古い木造建築では仕方ないが、とりあえず暗い廊下でのつまづき防止や、枕元での目覚まし時計探しには役に立った。

 このLEDライトは、本体正面下3分の1程度の範囲を指でタッチするだけで点灯・消灯を切り替えられる。Webブラウザー経由でアクセスするRP-AC52の管理画面ではタッチ時の動作をカスタマイズでき、ライト切り替えの他、同じく本体正面下部にある受信電波強度を表すランプのON/OFFも切り替え可能。AV機器における、いわゆるディマーみたいな機能で、完全に暗くして使うこともできるのだ。

「真面目」と「謎」が同居するユニーク製品

 自宅ネットワークは「今のところ無線LANルーター1台でカバーできている」という人がほとんどだと思うが、今回のような製品を活用すれば、不安定だった通信を安定化させたり、隅々まで高速化したり、部屋を「サウンド化」したり、ムーディに演出したり………といったことができる。

 最後の方はリピーターとは関係ない気もするが(笑、真面目な機能と謎機能が同居するこの製品、色々活用すると面白い製品と言えそうだ。

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日沼 諭史