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高橋敏也がゲーミングチェアを使ってみた!
抜群のホールド感で「まさにレーシングシート」

PCと向き合う戦士たちに朗報! text by 高橋敏也

とにかく座ってみる。ホールド感が抜群だということが分かる。モデルは中年のライター。
AKRacing Pro-X

 最近のゲーマーとライターには一つ大きな共通点がある。どちらも椅子に座って長時間、PCを操作するということだ。

 ライターは原稿を書くし、ゲーマーはゲームソフトをプレイする。「座り仕事で楽じゃないか」という意見はもっともなのだが、実はこの座っている、座り続けるというのが落とし穴なのだ。そう、椅子が合ってないと大変なことになるのである。

 私も20年以上、PCの前に椅子を置いて長時間座り続けているライターだ。椅子と身体が合っていないと背中や腰が疲れたり痛くなったりするのは当たり前、肩コリの主な原因も状況によっては椅子のせいなのだ。実際、椅子を変えたら肩コリが軽くなったというのを私は経験しているし、知人のライターも同じことを言っていた。

 別の言い方をするとゲーマーやライターにとって、快適なPC操作環境を実現する上で重要視すべきは「椅子」なのである。

 まず椅子、椅子を自分に合ったもの、品質の高いものにすることが最優先ということである。そんな流れで紹介したいのがテックウインドから発売されたAKRacingのゲーミングチェア、AKRacing Pro-X(以下、Pro-X)だ。

レーシングシート譲りの究極性能

アームレストは「4Dアジャスタブル」仕様(後述)。かなり自由に調整でき、快適な位置で腕をサポートしてくれる。
体にフィットするホールド感がわかるだろうか?

 もう見た目で分かる通り、Pro-Xはレーシングシートを意識したデザインである。

 というよりそもそもAKRacingはレーシングシートのメーカーであり、その開発歴は10年を超えている。そんなメーカーがレーシングシート開発で培った技術を惜しみなく投入した結果がPro-Xということなのだ。格好良いからという理由でレーシングシートに似ている訳ではなく、そもそもレーシングシートからスタートした椅子ということなのである。

 座ってまず感じるのはレーシングシート特有のしっかりしたホールド感。背もたれの左右が身体を包み込むようになっており、そこにスッポリと身体が収まるような感覚がある。カーレースの場合、コーナーで発生するGに対抗してレーサーの身体を支えなくてはならない。……なのでホールド感は重要なのである。

実際に仕事をしてみる。かなり快適で、書くことに集中することができる。
ゲームもしてみる。かなり快適で、プレイに集中することができる。でも上手くなる訳では無い。
座面となるクッションはかなり分厚い

 そして次に感じるのが高級感のある分厚いクッションと、そのコントロールされた硬さ。

 特に座面の分厚さと感触はいい感じである。例えて言うならヨーロッパのスポーツカーが装備しているシートといったところか。

 尻が痛くなるようなレベルではないのだが、ポジションを微調整する際に抵抗となるような柔らかさでもない。例えばゲームをプレイしている最中にちょっと腰の位置を直そうと思った時には、ほぼ無意識でそれを行うことができる。表面を覆う人工皮革、PUレザーも滑りすぎず抵抗になりすぎずでちょうどいい。ちなみにこのPU(ポリウレタン)レザー、シックで高級感がある上に耐久性も高い。

キャスターは高品質な台湾製ポリウレタン素材で静寂性と滑らかな動きを実現

 さて、レーシングシート譲りの技術といってもそこはそれ、Pro-XはPCを操作するための椅子である。レーシングシートとは異なり高さを調整するガスシリンダーや、移動するためのキャスターを装備している。

 これらに関してPro-Xに妥協は無い。ガスシリンダーは国際認証機関の基準をクリアしたクラス4と呼ばれる高品質で安全性の高いものを使用し、キャスターはポリウレタン大口径で台湾製のものを使用している。ガスシリンダーの方はスムーズに高さの調整が出来るし耐荷重は150キログラムと余裕があり、キャスターの方もやはりスムーズに、そして静かに椅子の移動が可能だ。

 このようにクオリティの高さを感じさせるPro-Xなのだが、椅子で怖いのは「座ってみなければ分からない」ということ。初めてPro-Xに座った時は、恐らく誰もがレーシングシート譲りの上質なホールド感を得られるだろう。だがPro-Xは、そこに座って快適にPC作業を行うための椅子なのだ。果たしてその点に関してはどうだろうか?

人間工学に基づいた快適さ

 ホールド感は確かにあるし、身体の微妙なポジションを直す際にはそれを無意識に行える。では実際にPCの前にPro-Xを持っていき、作業をしてみるとどうだろう?

 実はこの記事、私が普段愛用している椅子ではなく、Pro-Xに座って書いているのだが、これがまあ快適なこと。まず前提として普段私は肘掛け、アームレストを使わない。だが、このPro-Xのアームレストだったら使ってもいいと感じた。これは「4Dアジャスタブルアームレスト」の効果と言っていい。

 「4Dアジャスタブルアームレスト」というのはアームレストの「高さ」、「前後」、「左右」を調整でき、さらにはアームレストのポジションを「回転」させて調整できることを意味する(注:左右のポジション調整だけはネジを緩めて行う)。

 ここまで自由に調整できるので、自分に最適なアームレストのポジションを見つけることも可能なのだ。特にマウスを多用するゲーマーの場合、このアームレストが使える使えないはプレイに大きく影響するはずだ。

肘掛け、すなわちアームレストは高さを段階的に調整可能。
さらに角度も調整可能であり、これをメーカーでは「4Dアジャスタブルアームレスト」と称している

フルフラットもOK……つまり、寝ることができる!

フルフラットで寝る! 寝るといったら寝る!
決して小柄では無い中年男には無理のある姿勢だが、オットマンかその代わりが見つからない場合はこれもあり。

 そして椅子で気になるのがリクライニング機能である。Pro-Xで一番紹介したかったのが、実はこのリクライニング機能。

 なんとPro-Xは「180度」、すなわちフルフラットまで背もたれを倒すことが可能なのだ。まあ、大ざっぱに言ってしまうと「背もたれを倒して寝ることができる」椅子なのである。もちろん段階的にリクライニング可能なので、自分好みの角度にすることができる。その上でPro-Xなら「ああ疲れた」とか「眠い!」という時に、背もたれと座面をフラットに出来るのである。

 もちろん実際にやってみ訳だが、確かに寝ることができる!

疲れたので寝る。これを咄嗟にできるのが素晴らしい。

 ホールド感の高い椅子なので自由に寝返りという訳には行かないが、そのホールド感のお陰で身体を安定させることができる。座ったままリクライニングで180度倒すのには、最初のうち恐怖も感じたが、Pro-Xの場合は背もたれがどの位置にあっても安定感が高い。

 このため「疲れた」とか思うと、すぐに背もたれを倒して休んでしまおうとする困った一面もあるのだが。

 なお、フルフラットにして休むと多少足がブラブラしてしまうので、出来ればオットマン代わりになる台(ほかの椅子とか箱とか)があるとさらに快適だ。

ヘッドレストは好みや状況に応じて脱着、あるいは位置を調整する。
ランバーサポートも上下かなりの幅で位置を調整できるし、もちろん不要と感じたら取り外してしまえばいい。

 このほかPro-Xには脱着可能、位置の微妙な調整が可能なヘッドレスト、そしてランバーサポートが付属している。

 ヘッドレストは首を支え、ランバーサポートは腰、腰椎を支えてくれる。初めて使うと多少違和感があるかも知れないが、これらのクッションは椅子に座っている時に正しい姿勢となるようサポートしてくれるのだ。自分なりのポジションを見つけて活用するといいだろう。もちろん取り外しても構わないのだが。

組み立て式だが手順は簡単

配送を依頼するとこのように巨大な箱が届く。縦横で90×70センチ、高さ約24センチの箱だ。箱全体の重さは約25キログラムで、チェア自体は22キログラムとなっている。
その場で開封し、パーツごとに組み立てる場所へ持っていくことをお勧めする。
全てのパーツを取り出した状態。とにかく背もたれと座面が分厚いという印象。

 さてこのPro-X、基本的には購入したユーザーが組み立てて使用する椅子だ。届いた時には箱の巨大さや重さに驚くかも知れないが、組み立て自体は簡単そのもの。

 写真で見て分かる日本語組み立てマニュアル、そして工具も付属しているし、この手のことに慣れている人なら30分もあれば充分だろう。実際私も写真を撮りながら組み立てたのだが、1時間ぐらいしかかからなかった。コツはネジを締めすぎることなく、それでいてしっかり締め込むことぐらいだろうか。

【組み立ての様子】
剥いてみました。このように広げて記念撮影でもしない限り、組み立てスペースはさほど広く取らなくていい。
ガスシリンダーなど小物パーツたち。
使用する工具は付属の六角レンチ2本、ネジは3本だけ。手を保護するためのグローブ(軍手的なもの)が親切に付属している。
組み立ては購入者の仕事となるが、さほど時間はかからない。私は撮影しながら組み立てたが、それでも1時間程度しかかからなかった。写真入りの親切な組み立てマニュアルが付属しているので、まず最初にしっかり目を通すこと。
まず座面の両脇にあるネジ4本を付属のレンチで取り外す。
背もたれを差し込むようにして取りつける。
外したネジ4本で背もたれを固定する。ここが難しいと言えば難しいところ。落ち着いて慌てず作業しよう。
金具を覆うようにカバーを取りつける。3本別に用意されているネジのうち、長い方を使用する。反対側も同じようにカバーを取りつける。
リクライニングレバーの無い方へ、さらにカバーを取りつける。1本だけある短いネジを使用する。これで別に付属していた3本のネジは使い切ることになる。
背もたれ側に椅子を倒し、座面の裏面を見る。そこにネジが4本あるので取り外す(肘掛けを固定しているネジではないので注意)。
シリンダー固定台を取り外したネジ4本で固定する。締めすぎは良くないが、しっかりと締めて欲しい。またシリンダー固定台の取り付け方向を間違えないように注意。
ガスシリンダーとそのカバーを用意する。
シリンダー固定台にガスシリンダーを奥まで差し込む。カバーを忘れないように。しっかり差し込まれると、座面上下レバーが少し持ち上がる。
キャスターを5本足ベースにしっかり差し込む。
5本足ベースをガスシリンダーに差し込んで、慎重に椅子を起こす。
【完成!】

「高い剛性」も特徴「座って確認」するのがベスト

 組み立てている間に感じたのは、Pro-Xの高い剛性だ。

 それもそのはずで、Pro-X内部には「プロゲーマー」による酷使を想定したメタルフレームが組み込まれているのである。そして組み上げて感じたのは、安い椅子にありがちな軋みや歪みがまったく無いこと。

 この椅子が実売で5万円を切っているとは、とても思えない仕上がりだ。ゲーマーだけでなくプログラマー、デザイナー、ライターなどなど、とにかく机の前に座ってPC作業をする人には絶賛お勧めしたい製品である。

 といってもそこはそれ、好みが激しく分かれる椅子の話。もし可能なら座ることができるサンプルのあるショップへ行って、実際に座ってみて欲しい。

おやすみなさい。「AKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェア」でいい夢を(仕事しなさいよ……)。

 しばらく座って高さやアームレスト、リクライニング、ヘッドレストやランバーサポートを調整してみて欲しい。出来れば前方に手を伸ばし、キーボードやマウスを操作するところも想像してみて欲しい。おそらくほとんどの人が気に入ってくれると思うのだが。

 最後にこの「AKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェア」、レッド、ブルー、ホワイト、ブラックの4色が用意されている。色でも好みのものを選ぶのがいいだろう。

[制作協力:テックウインド]

高橋 敏也