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3メーカーに聞く、Haswell時代の電源選び
【SilverStone編】トレンドメーカーを自負、「サイズは小さく、でも大容量」
Text by 石川ひさよし
(2013/7/4 12:20)
自作PCの隠れた重要パーツといえるのが電源。
CPUやSSDなどの華々しいパーツに隠れがちだが、PCを長期間安定動作させるには電源選びが大切だ。新たに発売されたHaswell環境でも、その性能を活かしきるには「対応電源」が必要という。
こうした重要さの反面、電源選びのポイントはわかりにくい。変換効率を示す「80PLUS」のグレードや機能面の違いはあるが、似たようなスペック表が並んでいることも多い。しかし、スペック表に現れにくい設計やコンセプトで違いが出るのも「電源」の特徴。単に「安いだけ」で選んでしまうと、安定性に影響が出たり、「相性問題」に泣かされることになりがちだ。
では、電源をどのように選んだら良いか?。今回、そのヒントを3つのメーカーに聞いてみた。各メーカーのポリシーやこだわりもお聞きしたので、電源選びの参考にしてほしい。
SilverStoneと言えば、PCケースと電源の2本柱で知られる。
ケースでは、アルミ素材のフラットフェイスでシンプルなデザインの製品を中心に据えつつも、ユニークな煙突型、HTPC向けのデスクトップ型など、自作PCならではのマニアック製品も多い。一方、電源でもモジュラー式ケーブルの採用に早くから取り組み、また、昨年リリースされた80PLUS Gold対応SFX電源「SST-ST45SF-G」のように、今や数少なくなったSFX電源を取り扱う「かゆいところに手が届く」製品で自作PCに新しい風を吹き込む姿勢が特徴だ。
今回は、COMPUTEX TAIPEI会場にて、同社プロダクトマネージャーのBenh Huang氏に同社のこだわりや製品の特徴をお伺いした。
ユーザー視点、実環境目線の製品開発コンセプト
--まずSilverStoneの電源に共通するこだわりをお聞かせください。
[Huang氏]SilverStoneの電源は、まず小ささにこだわりがあります。出力・性能はそのまま、なるべく体積をコンパクトにすることで、様々なケースに問題なく搭載できるよう心がけています。
また、実際にPCを動作させた時に近い温度での出力を提示している点もこだわりです。出力表の環境温度として、25℃を提示するメーカーもありますが、実際にPCを動作させると、PC内部の温度は40℃以上になります。SilverStoneでは、環境温度が40℃における出力を各製品に表記しています。
SilverStoneは電源業界の「トレンドメーカー」今年の注力点は「高出力な電源のサイズを小さく」
--SilverStone電源の特徴はどのような点でしょうか。また、今後展開する予定の製品の特徴をお聞かせください。
[Huang氏]SilverStoneは、フル・ケーブルマネジメント(フルモジュラー)や80PLUS認証など、電源業界のトレンドを積極的にリードしてきました。最初のフルモジュラー製品の「SST-ST60F」は2006年にリリースしましたし、「SST-ST50EF-PLUS」は80PLUSスタンダードが登場した当初に認証を得た電源製品です。業界をリードするSilverStoneの精神は、他社も真似するところと自負しています。
+12V出力ではシングルレールにフォーカスしています。シングルレールでの+12V出力をサポートすることで、ビデオカードをどのケーブルに接続しようかと悩む必要はありません。
また、2013年は小型化、具体的いうと、高出力な電源を極力小さく設計する「High Density」のコンセプトを推し進めて参ります。昨年、「SST-ST45SF-G」という80PLUS Goldで450W出力のSFX電源をリリースしましたが、今年はより大容量な、550Wモデルや650Wモデルをリリースしたいと考えています。なお、SST-ST45SF-Gも、当初、動作音が大きいという指摘をいただきましたが、現在出荷中のロットではこの点を改め、ファン回転数を発売当初のロットの1,800rpmから1,200rpmへと抑え、静音化を実現しています。
現行製品は全てHaswell対応買い替えどきは「保証期間が過ぎたタイミング」
--電源と言えば、今話題なのがHaswellへの対応が挙げられると思います。この点、SilverStoneの電源はどのように対応されていますか。
[Huang氏]Haswellでは、省電力機能の「C-State」が拡張され、そのC6/C7ステートにおいて「Zero Load」、具体的には最小電流値「0.05A」出力をサポートすることが電源に求められます。
しかし、実際にはIntelよりも以前から、3~4年前にNVIDIAが同様の電力基準を求めていたのです。SilverStoneでは、当時よりこの基準に対応を進めていたため、Haswellでの対応に慌てることもありませんでした。ウェブサイトでも公開しているとおり、現行のSilverStoneの電源製品は、全製品、Haswellでの動作を確認しております。
--Haswellのタイミングで電源買い替えを考えているユーザーもいると思いますが、一般論として、どのようなタイミングで電源を買い換えるべきか、考えをお聞かせください。
[Huang氏]電源の寿命は長くてもおよそ5年程度と考えています。故障の主な原因はコンデンサの電解質の劣化で、これが進行してしまうと、電圧が不安定になったり、最悪の場合はショートが起こることも考えられます。SilverStoneでは製品に対し3年保証をつけていますが、3年が経過したタイミングでの買い替えがよいと思います。また、保証期間に関わらず、長期間使用していれば必ず劣化が起こります。
SilverStoneの電源は用途別に4シリーズ
--SilverStoneの電源のラインナップを教えて下さい。また、製品を選ぶ際、どのような点をポイントに絞り込めば良いのでしょうか。
[Huang氏]SilverStoneのコンシューマ向け電源には、大きく分けてZEUSシリーズ、Striderシリーズ、Nightjarシリーズ、そしてSFX製品があります。それぞれの製品シリーズは、(大容量の)ZEUSシリーズがオーバークロック向け、Striderシリーズが静音向け、ファンレスのNightjarシリーズがHTPC向け、と性格を分けています。そして小型PCにはSFX製品をお選びください。(※コンシューマ向け以外では、サーバ向けのリダンダント電源なども取り扱っている)
Striderシリーズは、シリーズ内でGold、Plus、Essentialと3つに分かれています。Goldは80PLUS Goldでフルモジュラー、Plusは80PLUS SilverまたはBronzeでフルモジュラー、Essentialはエントリー向け製品で、80PLUSスタンダードのセミモジュラーとなっています。そしてそれぞれ、様々な容量の製品を展開しています。
最近は凝ったデザインのPCケースも多数出ていますが、なかには奥行きの短いケースなど、搭載できる電源の奥行きに制限があるものもあります。そうしたケースをご利用の際は、コンパクトな弊社の電源を是非ご検討ください。とくに小さなケースの場合、内部の容積が小さいため、内部の温度は上昇しがちです。発熱の少ない高効率な電源を組み合わせることがATXケースの場合よりもさらに重要になってきます。
現在はエコの時代です。変換効率が最も高いのは、消費電力が750Wであれば1500Wモデルというように、出力の50%に収まることが大切です。電源の買い換えを検討であれば、こうした点を念頭にお選びください。
--こちらに展示しているZEUSの新製品は、派手なデモをしていますね。
[Huang氏]今回展示したZEUSは、オーバークロック向けの製品です。無線接続とソフトウェアによって、電源の電圧を詳細に調査、調整することができます。
調べることができます。例えば3Dにおいては+12Vの安定性が重要ですので、そうした点をモニタリングできます。GPUへの+12Vが安定するということは、CPUやメモリも安定して動いていることになります。
PCと無線接続しているのも特徴で、専用のUSBレシーバが付属します。電源を接続したPCはもちろん、ほかのPCからでも電源を調整できますので、オーバークロックには便利かと思います。日本でも発売したいと考えていますが、具体的には検討中です。