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フルカラーフィギュアもバッチリ制作、「DMM 3Dプリント」を取材してきた
~金属素材や染色もOK、研磨で指輪まで~ Text by 藤山 哲人
(2013/8/1 12:10)
3Dプリンタと言えば、従来、製造系企業の開発セクションがプロトタイプを製作するために使うプロフェッショナルユースの機械、だった。それゆえプリンタ本体の価格は、高級車が何台も買えるほど高価で、とうてい個人所有することは不可能だった。
しかしここ数年、いやここ1年で様相が変わってきた。20万円を切るホビーユース向けの製品がいくつも発売され、海外では数万円で手に入る3Dプリンタもある。ただ3Dプリンタの価格は、精度と相容れない関係にある。極論すると、安いホビーユースの3Dプリンタは、小さなホットボンドで溶かした樹脂を積み重ねていく方式で、層ごとの凸凹が発生しやすい。またボンドやクリームのように、いったん造形物から樹脂を離すとツノのようなとがりが出てしまう。
安価な3Dプリンタが発売されているとはいえ、プラモデルのように正確でキレイな造形を作るには、どうしてもプロフェッショナルユースの3Dプリンタが必要だ。DPEのプリントサービスではないが、3Dプリントサービスを使うと、価格的にも安く、高い精度の造形ができる。なかでも映像配信などでお馴染みのDMMがはじめた3Dプリントサービス「DMM 3Dプリント」は、石膏や樹脂、金属などの素材を選べ、国内の拠点でプリントするため、短期間で安くできるのが魅力だ。
ここでは、そのサービスの全貌と、いったいどんなものが作れるのかを取材してきた。
作れるものはコレ!
まずは3Dプリンタでどんなものを作れるのかを見てもらおう。工作をする人ならもちろん、そうでない人も「こんなものが作れるのか!」と驚くはずだ。
1万円以下で手ごろに遊ぶなら、フルカラー石膏モデルや、ポリアミド製がいいだろう。
出力代は材料代と、出力する時間によって変わってくるので、大きく複雑なものは石膏やポリアミド製でも高価になってしまうが、金属やアクリルよりは安くできる。
価格が例示されている「制作例」はWebサイトに掲載されているが、石膏フルカラーの小型モデルで4,300円、ポリアミドのバラが5,500円、アクリル樹脂の小型の龍が9,700円、シルバーの指輪が8,200円、チタンの指輪が21,000円など。
石膏のフルカラーモデルはこうして作る
さて「3Dプリンタでこんなものができるのか!」と驚いた次は、創作意欲が沸いてくるだろう。え!?俺だけ?
まずは3Dソフトを手に入れて基本的な使い方から覚える必要があるが、ここでやっちゃうと1年ぐらいの連載になってしまうので、3Dソフトが使えると仮定しよう。ただ3Dソフトは高価なものばかりではなく、フリーウェアで手に入るものや、安価で高機能なものもたくさんあるのでいろいろ調べてみるといい。DMM 3Dプリントでも作成ソフトやその使い方を紹介中だ。
ソフト選びで重要なのは、データ出力機能だけ。3Dデータの標準的なSTL形式やPLY形式、VRML形式が出力できればいい。フルカラーの石膏モデルを作る場合は、PLYやVRMLのモデリングデータの上に貼るテクスチャデータも必要になる。また機械部品などをCADで作っている場合も、たいていDXF以外にSTL形式が出力できるので、実際のモデルで実験したり、操作感覚などを確かめたりという使い方も可能だ。
なお、出力できるモデルの大きさは、素材によっても異なるが石膏の場合は380(W)×250(D)×200(H)mmとなる。ただ、近日中に700×350×380mmの大型モデルも出力できるようにするとのことだ。
さて3DのモデリングデータがそろったらDMMの3Dプリントサービスにアップロードする。DMM 3Dプリントでは、データの受付後に「そのデータが出力できるものなのかどうか」が手作業で確認され、その後見積もりが提示、利用者がそれを確認すると、3Dプリンタでの出力が始まる、という流れになる。
3Dプリンタのしくみは極めて単純なもの。3Dデータは病院で撮影するCTスキャンのように、数十μm単位の断層(ラスタライズ)画像に変換され、それを重ねて印刷することで立体にしている。まず1層分の石膏パウダーを印刷面に敷き詰める。次にラスタライズしたデータの形に合わせて、インクジェットプリンタの要領でノリを吹き付ける。あわせて着色する場合は、ノリと一緒にインクも吹き付けるというわけだ。最後は石膏パウダーの中に埋まった造形を取り出す。
石膏モデルというと、美術室にある石膏像のようにツルツルしたものを想像してしまうかもしれない。しかし3Dプリンタで出力したものは、かなりザラザラしていて、表面は60番の紙やすり程度に凸凹している。また石膏独特のもろさは微塵も感じなかった。
また、遠目ではまったく気にならないが、フィギュアとして近くで見るものは、ラスタライズした積層が若干目に見えてしまうのが難点だ。ペイントしないモデルで出力して、ヤスリをかけてから自分でペイントするとキレイに仕上がるかも知れない。とはいえパーソナルユースの3Dプリンタに比べれば、その精度の高さに驚くだろう。
虎の写真のような大きさのモデルは、石膏モデルでおよそ4,300円。記事冒頭に写真を掲載したカラーフィギュア(高さ68mm)であれば送料込み・税込みで4,600円になるという。個人のホビーユースでは少し高めに感じるかもしれないが、CADデータを短期間で出力して完成物を確かめられるとしたら安いだろう。
ポリアミドやアクリル製ならカラーリングもOK
石膏ではなく安価な樹脂製にしたい場合はポリアミド=ナイロン製がいい。
ナイロンというと衣服の柔らかいイメージがあるかも知れないが、造形はかなり硬い。ちょうどナイロンローブを火であぶって、ほつれ防止したような硬さだ。その硬さは、歯車などにポリアミドが使われていることからも分かる。
ただ、しなやかさも兼ね備えているので、キリ欠きを作ったロック機構なども作れる。表面は石膏モデル同様にザラついているが、荒さは120番の紙やすり程度で積層面は見えない。
さらに精度を要求するならアクリル製だ。表面はすべすべで積層面もほぼ見えず、樹脂も非常に硬いのが特徴だ。なお、それぞれの樹脂の仕上がりを手にとって見たいという場合は、写真のようなサンプルも販売している。違う素材で、別々に出力しているのにピッタリ凸凹が噛みあってて、ちょっと感動した(笑)。
さらにポリアミドやアクリル製ならカラーリングも可能だ。現在選べるカラーは黒、赤、青、紫となっていて、いわゆるスプレーで塗るペイントではなく、素材に色をしみこませる染色でカラーリングする。とくにポリアミドの発色はキレイで、染色しただけでワンランク上に見えるから不思議だ。
さらに金属製の場合は、研磨加工もしてくれるという。チタンもアルミも3Dプリンタで出力した肌は、鋳物の肌に近くザラザラだ。そこで金属の小さい玉を造形物にぶつけて研磨する「ショットプラスト」という方法で研磨してくれるというのだ。
特にチタンは硬いので、ショットブラストである程度磨いてもらってから、手磨きすればアクセサリ並みの仕上げ加工ができるだろう。
フィギュアの原型やオリジナルのスマートフォンケース製作などに
3Dプリンタの面白さをお伝えしてきたが、ナニに使えるの?という読者も多いだろう。
可能性は無限大だが、たとえば最近実施されたフィギュア展示即売会、ワンダーフェスティバルなどで考えると、ガレージキットの原型に使えるだろう。また、原型製作者が「復刻版」を少数再販する、というのもDMMレンタルの3Dスキャナと今回の3Dプリントサービスを併用すればできるはずだ。
また一般的なところでは、スマートフォンのオリジナルハードケースを作るなんてことも可能だ。売っているケースよりは高くつくが、世界にたった一つしかないケースなども作れる。
DMMの話によれば、将来的にはデータを登録販売したり、掲載されているデータを購入して3Dプリンタで出力したりといった、総合的なサービスも視野に入れているという。
おそらくAKIBA PC Hotline!読者であれば通じると思うが、筆者にはDMMの3Dプリントサービスは「造形の秋月電子」に見えて仕方がない(笑)。趣味のホビイストから企業の小ロット生産まで、モノ創りで一番楽しいところをサポートしてくれるのがDMMの3Dプリントサービスだ。