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フルHDゲームやお絵かきもネット配信、ニコ動世代のキャプチャカード「AVT-C127」を色々試す
「ちょび姉」お絵かき動画つき Text by 石田 賀津男
(2013/8/27 00:00)
HDMIキャプチャカードは各社から様々な製品が発売されているが、アバーメディアの「AVT-C127」は、ゲーム機やPCなどのキャプチャに加え、iPhone/iPadなどのスマートフォン・タブレットの映像キャプチャや、その映像のライブ配信をウリとした製品だ。
最近はニコニコ生放送やUstreamなどのライブ配信サービスが充実し、ゲームの映像配信が盛んに行われている。
この製品は、そうしたライブ配信やビデオキャプチャが簡単に行える専用ソフトが付属するオールインワンパッケージとなっており、初心者から上級者まで様々なニーズに応える製品といえる。今回は、この製品を紹介したい。
まずは、配信動画の例を掲載してみた。利用サービスはTwitch.TV、ゲーム映像はフルHDで、配信解像度は1,280×720ドットだ。
Watch live video from wis_arle on TwitchTV※ 配信に使用したゲームは「ファンタジーアース ゼロ」(Windows、ゲームポット)
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1080/60pで入力OK、多彩な入力コネクタを搭載
まずは、製品の基本的な紹介をしよう。映像入力は、HDMI、コンポーネント、VGA(D-Sub15ピン)に対応する。VGA入力というのが面白いところで、これを使えばHDMI出力のないPCや、iPhoneのビデオ出力(別途VGAアダプタが必要)もキャプチャできる。対応スロットはPCI Express x1で、実売価格は11,980円前後。詳しいスペックについてはこちらを参照のこと。
入力できる最大解像度は、1080/60p(1,920×1,080ドット、秒間60フレーム)。つまりフルHDの映像を入力できる。
ゲームの録画環境では「1080/60pで入力できること」が重要だ。安価なHDMIキャプチャカードは1080p非対応のものが多く、ゲーム機側の解像度もそれに合わせて低いものに変更しなければならない。本製品ならばキャプチャカードの性能に合わせて設定を変える手間がなく、使用感はぐっと快適になる。
ただし、最大解像度での録画/配信データは1080/30pとなり、フレームレートが半減する。この点には注意したいが、実際の動画配信を60pで行うとデータ量がかなり大きくなるため、実用上は30pで十分ということが多いだろう。なお1080iや720pなど低い解像度では60pの録画にも対応する。
なお、本製品に限ったことではないが、プレイステーション 3、および現行型Xbox 360からのHDMIキャプチャは、HDCPによる制約があり録画できない。これらのキャプチャを行うには、アナログ接続となるコンポーネント端子を利用する。この場合も1080pでの入力が可能だ。
録画・配信のオールインワンソフト「RECentral」が付属
また、利用する上で最もポイントになるのが、付属ソフト「RECentral」。
録画と配信を統合的に扱う構成で、初心者、経験者(中級者)、熟練者(上級者)向けにそれぞれ別の設定画面を用意。ユーザーやニーズに合わせて様々な使い方ができる、なかなか練られたソフトだ。H.264エンコーダを搭載し、高圧縮率・高画質も実現している。
まずは、録画を例に利用手順を紹介しよう。
ソフトを起動すると、録画、またはライブ配信を選択するメニューが表示される。録画を選ぶと、初心者向け、経験者向け、熟練者向けという3つのメニューから設定方法を選択することになる。初心者向けは入力デバイスを選ぶだけで適切な設定を自動で行ってくれるもの。経験者向けと熟練者向けは、映像やオーディオのソース選択から、解像度、ビットレートなどを細かく設定できる。
設定が済んで準備完了のボタンをクリックすると、プレビューウインドウが立ち上がり、映像が表示される。このウインドウの下にある赤い丸のボタンをクリックすれば、キャプチャが開始される。同じボタンをもう一度押せばキャプチャ終了となる。
1080pのゲーム映像を入力すると、初心者向けの自動設定ではビットレートが12Mbpsに設定された。これだとかなり高画質で、映像が激しく動くシーンでもノイズは目立たない。経験者向け、あるいは熟練者向けの設定画面を使えば、ビットレートは0.3Mbpsから20Mbpsの間で手動設定が可能だ。キャプチャ時のCPU負荷は、Core i5-2300(4コア/2.8GHz)のPCでおよそ60%程度。処理がもたつくこともなく、ファイルも問題なくキャプチャできている。
単純なキャプチャについてはこれで完結している。導入から設定まで非常にわかりやすい。またキャプチャの設定項目も充実しており、キャプチャに慣れている人にも扱いやすい。
ニコ生/Ustreamの配信もワンタッチ初心者/経験者/熟練者の3レベルで個別に設定
次はライブ配信を見ていこう。
録画同様、こちらも初心者/経験者/熟練者の3メニューから選ぶ形で、設定項目も同じ。ライブ配信の経験者はまだ少ないと思うが、「初心者」メニューのおかげで簡単に設定できるのはメリットだろう。
設定画面を録画機能と比べると、動画配信サイトへのログイン機能が追加されている。「RECentral」のライブ配信機能は、ニコニコ生放送(niconico)、Ustream、Twitch.TVという3サービスがプリセットされているほか、カスタムRTMPにも対応しており、RTMPの情報を取得できる動画配信サービスなら手動設定で利用できる。
また、ライブ配信で便利なのが、マイク音声をミックスする機能。ゲームを実況しながら配信する場合、ゲーム音声とマイク音声を同時に配信するには、両者をミックスする必要がある。これにはそれなりの機器や知識が必要になるが、「RECentral」にはライン入力とマイク入力を両方同時に受け付ける設定があり、実況環境を簡単に作れる。これは使ってみると意外にありがたい。
ライブ配信を行うための手続きは、配信サービスごとに若干異なる。サービスごとにみていこう。
ニコニコ生放送
ニコニコ生放送は、ニコニコ動画のプレミアム会員のみが配信できるサービスなので、まず、月額525円の利用料金が必要になる。その上で、ニコニコ生放送のホームページにログイン、メニューから「放送する」を選択。コミュニティを作成し、続いて新規番組登録を行う。すると配信準備画面に移るので、配信方法の選択で「外部ツール配信」を選ぶ。
ここまで準備してから、「RECentral」でログインする。番組登録をしていないとログインできないので要注意。無事ログインでき、画質などの設定が済めば、プレビュー画面が立ち上がる。後は画面中央下のアンテナのようなアイコンをクリックすれば、配信を開始できる。ただし8月27日現在の「RECentral」では4:3でしか出力されないようで、16:9の映像は縦長になってしまう。これについては「ソフトウェアの更新で対応する」(アバーメディア)とのことで、今後改善されるようだ。
Ustream
次はUstream。こちらは無料でライブ配信できるサービスだ。使用方法は、こちらもまずはUstreamのホームページでログインし、「ダッシュボード」から「番組設定」を選択、番組情報を入力する。これを済ませたら「RECentral」を起動し、Ustreamにログイン。後はプレビューウインドウでアイコンをクリックすれば配信が開始される。
なお、「RECentral」で使用するUstreamのログインIDは、メールアドレスではなくユーザーIDを使用する。Ustreamのホームページではメールアドレスでログインできるが、「RECentral」ではメールアドレスは受け付けないので注意が必要だ。また現状では、配信した映像を記録し、配信後も見られるようにする設定が「RECentral」での配信時には選べないため、現状ではライブ配信のみに限定されることになる。
Twitch.TV
最後のTwitch.TVは聞きなれないサービスかもしれないが、無料で利用できるゲーム専門のライブ配信サービスだ。
こちらはTwitch.TVのホームページでユーザーIDを取得すれば、後は「RECentral」からログインするだけですぐに配信を開始できる。日本での知名度は「これから」といった感じだが、3つのサービスの中では「RECentral」との親和性が最も高く、とても使いやすい。配信した動画は1週間保存されるほか、後で永久保存設定もできる。配信した動画のタイトルなどの情報も後から修正できる。
最初に紹介したライブ放送は、このTwitch.TVを使った。配信品質は1,280×720ドット(元のゲーム映像は1,920×1,080ドット)、ビットレートは4Mbps。ゲーム配信動画としてはかなりの高画質設定だが、配信時のCPU使用率は約70%と余裕がある。ソフトウェアエンコードなのでそれなりにCPUパワーを使うが、1080pの映像をリアルタイムにH.264に変換処理して配信している割には、負荷は小さい方だと言える。
iPhone・iPadでもライブ配信アプリでもゲームでも
また、この製品の大きなウリが「iPhoneやiPadの画面をライブ配信/録画できること」。
なぜそこを強調しているのかと言うと、本製品がVGA(D-Sub15ピン)というユニークな入力端子を有しているからだ。「それならHDMIでいいんじゃないか?」(iPhone/iPadは別売アダプタでHDMI出力できる)と思う人もいると思うが、実はiPhone・iPadのHDMI接続には、PS3などと同様、HDCPによる制約がかかりキャプチャできない。そこで、アナログ出力となるVGAを使えば、iPhone・iPadの映像もキャプチャできるというわけだ。
アナログ出力と聞くと画質が心配になる方もいると思うが、そこは実際の映像をご覧いただきたい。元々がPCの精細な映像を出力するために使っていたケーブルだけに、十分な画質が得られている。
今回はゲームをキャプチャしてみたが、もちろんライブ配信も可能。スマートフォンのゲームプレイや、アプリの操作をニコニコ生放送などでライブ配信する、というのもなかなか面白いかもしれない。
イラスト描きもフルHDでライブ配信?~「ちょび姉」のちょび先生のイラスト描き~
さて、こういう製品は用途次第で様々な遊び方ができるのもポイントだ。
ここまではゲーム配信をメインにお伝えしたが、最後に弊誌連載「ちょび&姉ちゃんの『アキバでごはん食べたいな。』」を執筆しているちょび先生にイラストを1枚描いていただき、その様子を本製品でキャプチャしてみた。
描いている画面をキャプチャしただけで面白くなるかな……と思っていたら意外と楽しい内容になったので、どんなイラストが完成するのか期待しながらご覧いただきたい。今回はキャプチャ後、編集して20倍速再生の動画にしているが、ライブ配信しながらイラストを描いてみるのも面白そうだ。
以上でレビューを締めさせていただく。1080p入力に対応したキャプチャカードが、比較的安価に、かつ便利なソフトも付属した状態で入手できるというのは魅力的。配信にチャレンジしてみたい人、高画質で動画撮影したい人の両方の希望を高いレベルで叶える製品に仕上がっている。そしてiOSのゲームを録画したいという人には、貴重なVGA入力を持つ本製品が第一候補になるはずだ。