特集、その他
新定番GPU「GeForce GTX 960」、「ファン停止+スーパーOC」の実力を探る
GIGABYTE「GV-N960G1 GAMING-2GD」レビュー text by 石川ひさよし
(2015/1/30 12:05)
NVIDIAからMaxwell世代のミドルレンジGPU「GeForce GTX 960」が発表、搭載ビデオカードも発売された。そしてこのGPU、けっこうな方が「待っていた」GPUではないだろうか。
GeForce GTX 960が採用するのは「第2世代Maxwell」アーキテクチャのGPUコア「GM206」。第2世代Maxwellと言えば、GeForce GTX 980/970から採用されており、同GPUでは圧倒的な電力効率によって、優れた3D性能を(ハイエンドGPUとしては)低い消費電力で実現。また、低負荷のゲームでもGPU性能を活かしてゲームを高画質化できる「DSR」が利用できるなど、幅広い範囲で活躍できるのも特徴だ。
その第2世代Maxwellが、ついに3万円前後で買えるアッパーミドルクラスで登場した。こうした意味で大注目の新GPUを、GIGABYTEの「GV-N960G1 GAMING-2GD」にてパフォーマンスチェックしてみよう。
選別GPUで100MHz以上速い“スーパーオーバークロック品”……でも静かファン停止機能と高冷却ファンがウリ
GIGABYTEは、今回のGeForce GTX 960に際し、4つのビデオカードラインナップを投入している。
ひとつは3連ファンを搭載し、「スーパーオーバークロック」をうたいつつ、ファン停止機能も備えるゲーミングモデル「GV-N960G1 GAMING-2GD」、2つめと3つめはデュアルファンを搭載し、やはりファン停止機能を備えるオーバークロックモデル「GV-N960WF2OC-2GD-GA」と「GV-N960WF2OC-2GD」(前者は「メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ」のダウンロードクーポンが付属する)。そしてシングルファンで奥行きもコンパクト、にもかかわらずオーバークロック仕様だという「GV-N960IXOC-2GD」。
今回注目したいのは、その中の最上位となるスーパーオーバークロック品「GV-N960G1 GAMING-2GD」。
この製品は、トリプルファンを搭載するため奥行きが長めだが、代わりにファン回転時でも驚くほど静か。そこに加え、今回一番の注目が、低負荷時の「ファン回転停止機能」を搭載してきたことだ。
停止・回転の条件は、「温度上昇時は62℃まで停止、63℃から回転開始、温度下降時は高温時のファン自動調節を経て、62℃~43℃は最小回転で十分に冷却。その後、GPUの消費電力が32W以下で、温度が42℃まで下がると回転を停止する。もっとも、ファン回転時も極めて静かなので、正直なところ動作音に悩まされることはない。
ちなみに、GIGABYTEでは「ファン回転停止機能と、冷却性能の高いWINDFORCEとの組み合わせ」にかなり自信を持っているそうで、「WINDFORCEの冷却機能が高いため、他社製品ではファンが動作するようなシチュエーション(2Dゲームやビデオ再生)でも、ファンを止めたままに出来る場合がある」という。実際には、ケースのエアフローなどにもよるとみられるが、音を気にする人にはかなり気になる情報だろう。
また、動作クロックについても、「スーパーオーバークロックモデル」とされているだけあり、なかなかアグレッシブ。
まず、GV-N960G1 GAMING-2GDは同社のGeForce GTX 960カード4モデルのなかで唯一、「GPU Gauntlet Sorting」されたGPUチップを採用している。これは、Sortingという名のとおり、より高クロックで動作するGPUチップを選別したもの。
クロック設定は、コアクロックが1,241MHz、ブーストクロックが1,304MHzであり、これは定格の1,126MHz/1,178MHzに対して100MHz以上引き上げられている。
GeForce GTX 960世代のビデオカードは、定格クロックの製品があまりなく、標準的な製品でも1,165MHz程度のオーバークロックモデルが多いが、それに比べてもかなり高速で、大手メーカーのGeForce GTX 960カードではトップクラス。もちろん、ユーザーによるさらなるオーバークロックもできる。
クーラーは、同社の3連ファンでは標準的な「WINDFORCE 3X」とされているが、GeForce GTX Titanなどで利用される高冷却モデルのデザインがいくつか採用されている。
具体的には、ファンブレードはエアフロー向上のためのスジを備えた「3Dファン」になっており、基板背面にも放熱効果を狙ったバックプレートも装備する。もちろん、上位製品との違いはもちろんあるようだが、発熱量の減ったGeForce GTX 960ではたとえばGeForce GTX Titan並みの冷却能力は必要ないわけで、そのあたりは調整されているようだ(一部資料では「WINDFORCE 3X 300W」という名称も見られる)。
ブラケットのディスプレイ出力端子は、DVI×2(DVI-I/DVI-D)、DisplayPort 1.2×3、HDMI 2.0×1というGIGABYTE独特のレイアウト。
画面出力は、GPUの仕様通り、これらのうちの4つが同時利用できるが、GIGABYTEが「Flex Display テクノロジー」と呼ぶ独自技術を採用、コネクタの組み合わせを気にすることなく、「どれでも4つ」という意識で画面出力を行える。今後、ディスプレイをステップアップしたり、あるいは旧製品を2台目、3台目としてマルチモニタを構築しようという方には、選択肢が豊富になるな構成だ。また、4Kディスプレイ出力も最大4画面(DisplayPort×3とHDMIの組み合わせ)までサポートされる。
補助電源コネクタは6ピン×2基と強化した構成。
低消費電力がウリのGeForce GTX 960は、リファレンス仕様では6ピン×1基だが、この「スーパーオーバークロック」モデルの電源回路は更なるオーバークロックも想定してか電源回路を強化しており、結果としてこうした形になっているようだ。6ピン×2基であれば現行の多くの電源ユニットがサポートしているため、実際上、問題になることはないだろう。ちなみに、GIGABYTEの製品でもシングルファンのGV-N960IXOC-2GDは6ピン×1基の設定だ。
さて、その強化された電源回路はリファレンスの2倍となる6フェーズで、設計出力も同社シングルファンモデル(GV-N960IXOC-2GD)より30Wも多い160W対応。6フェーズ構成としたことで「電源部品にかかる負担に余裕ができるため、温度上昇を抑え、OCパフォーマンスが安定化し、製品も長寿命化する」(GIGABYTE)という。
3D性能は旧世代より一つ上消費電力もハッキリと差が現れる
では、製品のパフォーマンスを検証していこう。
用意したのはIntel Core i7-4790KとZ97チップセット搭載マザーボードの環境だ。そのほかシステム用にSSD、メモリはDDR3-1600(PC3-12800)の8GB×2、電源は80PLUS Platinumの1000Wモデル、OSはWindows 8.1 Update 64bit版とした。
比較対象は、GIGABYTEの歴代アッパーミドルGeForce GTXカードを用意した。1世代前となるのはGeForce GTX 760を搭載する「GV-N760OC-2GD」、2世代前となるのはGeForce GTX 660 Tiを搭載する「GV-N66TOC-2GD」だ。
また今回は、リファレンスクロックではなく、動作クロックを1,165MHzに落とした場合の検証も行ってみた。
3DMark
まずは3DMark。
この製品のスコアは、Fire Strikeで6,907ポイントとなり、全てのテストでトップとなった。
Ice Stormなどのスコアが大きすぎるため、アドバンテージが少々分かりづらいところもあるが、Fire Strikeを見れば一目瞭然で、旧世代GPU搭載モデルに対し1,000ポイント以上高いスコアをたたき出している。
BATTLEFIELD 4
次はFPSタイトルのBATTLEFIELD 4。
最高画質設定でテストしたが、この製品は平均50.094fpsをマークした。
これは旧世代GPU搭載モデルに対して5fps程度高い。たかが5fpsと思うかもしれないが、3枚を並べて比較をしてみると、描画のスムーズさでも体感上、違いが分かる。また、ミニマムfpsに関しては、40/38/36fpsとなった。
Metro: Last Light
次はMetro: Last Light。こちらはGV-N960G1 GAMING-2GDがトップフレームレートであるのは当然として、旧世代GPUに対して10fps程度高かった。
ファイナルファンタジーXIV
最後はファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編。
ここも桁の大きなスコアなので、差を確認しづらいが、おおまかに「10,000ポイントを超えるGV-N960G1 GAMING-2GD」、「9,000ポイント台の旧世代GPU搭載モデル」と分けることができる。もっとも、フレームレートで見るとどれも80fps台後半なので、体感的な差はない。
とはいえ、こうした十分なフレームレートを稼げるタイトルでは、GeForce GTX 960が搭載する「DSR」という新機能が有効だ。ファイナルファンタジーXIVでは確認できなかったが、DSRを有効化すれば、フルHDディスプレイであっても、仮想的に4KなどフルHD以上の解像度でレンダリングし、それをダウンサンプリングでフルHDに戻すという手法で、草原の草や建物の角といったエッジをチラつくことなくスムーズに描画することができる。つまりより高画質で楽しめるということだ。
消費電力
消費電力は、OS起動後10分放置した間の最小値と、3DMark FireStrike実行中の最大値を計測した。
GeForce GTX 960を搭載するGV-N960G1 GAMING-2GDは、ここまで見てきたように、3D性能でトップであるとともに、消費電力でも旧世代GPU搭載モデルを抑えて最も省電力だった。
とくに高負荷時では旧世代GPU搭載モデルと比べ30W前後低く、これはかなり大きな差と言えるだろう。当然、電気代にも関わってくる。
また、最後に動作音についても言及しておこう。
これについては、そもそも3製品ともかなり静かで、一般的な部屋で動作させるのであれば気になることはない。あえていうのならば、デュアルファンのGV-N66TOC-2GDは最大回転時に多少気になるかなという程度。トリプルファンのGV-N760OC-2GDはゲーム中もかなり静かだ。
そして、今回のGV-N960G1 GAMING-2GDはさらに一歩上を行く。「WINDFORCE 3X」の性能で、高負荷時も一つ上の静かさだが、低負荷時にはファンが停止するようになり、残るノイズ源というとCPUクーラーや電源・ケースのファンのみとなる。こうしたパーツも静かな製品を組み合わせれば、ゲーム環境はグッと快適になるだろう。
「同じGTX 960」……でも周りを出し抜きたい人のための「GV-N960G1 GAMING-2GD」
以上、今回の製品を見てきたが、大注目のGeForce GTX 960にあって、少しでもフレームレートを稼ぎたいユーザーにはうってつけの製品といえそう。今回試した感触では、BATTLEFIELD 4やMetro: LLといったFPSタイトルをフルHDの最高画質で動かす場合、50MHzのオーバークロックが0.5fps程度の向上に相当するよう。つまり、大幅なオーバークロックモデルである本製品は、そのぶんフレームレートでのアドバンテージがある。
そして、強化された電源回路や高耐久性部品の採用、選別チップモデルである点からすれば、さらなるオーバークロックも期待できるし、にもかかわらず「WINDFORCE 3X+ファン停止機能」で動作音の点でもかなり優秀。
同じGeForce GTX 960カードでも、周りを出し抜きたいという野心ある方に選んで欲しい製品だ。
【コラム】コア1.3GHz/メモリ7.2GHzにOCしてみた
GV-N960G1 GAMING-2GDにはオーバークロックツールの「OC GURU II」が付属する。
既に大幅なOCモデルである本製品だが、さらにオーバークロックしたらどのようになるのか、試してみた。
設定は、コアクロックが1.3GHz、メモリが7.2GHz。コア側のオーバークロック幅は60MHz弱なのでそこまで大幅ではないが、GeForce GTX 960のリファレンスクロックからは170MHz強のオーバークロックになる。
このオーバークロックでの結果はかなり好感触だ。とくにフレームレートがグッと向上している。コアクロック側のオーバークロックももちろん有効だが、とくにメモリをコアクロックに見合う分までのオーバークロックするのがかなり効くようだ。