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9種類ものGTX 980 Tiを開発、MSIが語るハイエンドビデオカードへのこだわり

実は知られていなかった「GPU選別」の裏話も text by 清水 貴裕

 ビデオカードの人気モデルは、静音クーラーや高品質パーツを採用するモデルの割合が増えており、ここ数年の売れ筋は「メーカーオリジナルデザイン」という部分が大きなポイントになっている。

 MSIは早くからオリジナルデザインのビデオカードに注力し、特に「Twin Frozr」クーラーを採用する「GAMING」シリーズは、多くのユーザーから支持を得て定番モデルになっている。

 MSIのGeForce GTX 980 Ti搭載モデルにおいては、リファレンスモデルやコストパフォーマンス重視モデル、定番の「GAMING」などのほかに、簡易水冷クーラーを搭載した「GTX 980Ti SEA HAWK」、究極OCモデルの「GTX 980Ti LIGHTNING」、プレミアムモデルの「GTX 980 Ti GAMING 6G GOLDEN EDITION」など、日本未発売モデルも含めれば合計9製品もラインナップされている。ちなみに、その中で今のところ日本で発売/発売予定のモデルは6製品だ。

 ハイエンドモデルはラインナップ絞るメーカーが多く、何故MSIが多くのモデルをラインナップするのかは気になるところ。そこで、東京ゲームショウ2015の開催に合わせ来日した本社のプロダクトマネージャーJay Wang氏に、ハイエンドモデルの特徴から今後の戦略まで、同社製ビデオカードのポイントを聞いてみた。

日本発売モデルその1 高クロックなまま長時間動作可能な「GTX 980Ti SEA HAWK」MSI製では久々の水冷仕様ビデオカード

「GTX 980Ti SEA HAWK」、日本では10月発売予定
MSIビデオカード部門のプロダクトマネージャー Jay Wang氏
GTX 980Ti SEA HAWKのパッケージ、ヘリのイメージ画はSH-60 シーホークがモデル?

――まずは、東京ゲームショウで発表された最新モデルの「GTX 980Ti SEA HAWK」について聞かせて下さい。

 MSI製ビデオカードで「OCシリーズ」というと、これまでは「LIGHTNING」のようにオーバークロック専用といえるような尖ったイメージのモデルのみがラインナップされていたと思うのですが、「GTX 980Ti SEA HAWK」もオーバークロック性能を最優先したモデルなのでしょうか。

[Jay氏]「GTX 980Ti SEA HAWK」は「OCシリーズ」ではありますが、「高クロックなまま長時間運用が可能なモデル」をコンセプトに設計した製品になります。

 「LIGHTNING」はイメージされているように世界最速を狙うために究極のパフォーマンスを追求したモデルで、ピーク性能を求めるニーズにこたえるものです。尖ったモデルが注目されがちですが、実は、OCモデルには安定して長時間使える「扱いやすい高性能モデル」が欲しいというニーズもあります。そうした要望にこたえるため、今回「GTX 980Ti SEA HAWK」を開発しました。

 水冷クーラーは長時間の使用でも動作温度を安定させやすく、高負荷状態が続いても高クロックをキープしやすい特性があります。もちろん、ただ水冷クーラーを取り付けてクロックを上げただけではありません。

 パフォーマンスを向上させるために、VGA BIOSにはOCシリーズに相応しいハイレベルなチューニングを施しています。動作クロックもコアがベース1,190MHz/ブースト時1,291MHz、メモリが7,096MHz と「LIGHTNING」に迫るものになっています。

――基板のデザインがリファレンス準拠に見えますが、「GAMING」シリーズや「LIGHTNING」シリーズなど、ハイクオリティなオリジナル基板があるにも関わらず、何故リファレンスデザインの基板を採用したのでしょうか?

[Jay氏]リファレンスの基板を採用した理由は、オリジナルデザインの基板よりもサイズが小さいからです。基板のサイズが小さくなる事で、Mini-ITXケースなどの小型マシンへの搭載が容易になります。

 「GAMING」シリーズや「LIGHTNING」シリーズの基板を使って水冷モデルを作る事もできますが、基板サイズが大きいため小型ケースへの搭載は難しくなります。「GTX 980Ti SEA HAWK」は小型マシンへの搭載や汎用性の高さも意識して開発したモデルです。

 基板はデザインこそリファレンス準拠ですが、コンポーネントは「Military Class」準拠の厳選された物を使用しているので、耐久性は大幅に向上しています。

「SEA HAWK」の水冷クーラーはCorsairと共同開発扱やすさにもこだわったOCシリーズの新ラインナップ

「GTX 980Ti SEA HAWK」はリファレンスモデル比で性能が20%、冷却性能は30%優れるとされる
水冷チューブは本体から斜めに出ている
バックプレートのデザインは「SEA HAWK」オリジナル

――ハイブリッド水冷やDIY水冷に対応したモデルなどを各社がリリースしていますが、何故メンテナンスフリータイプの水冷クーラーを採用したのでしょうか。

[Jay氏]我々も以前は「HydroGen」シリーズというDIY水冷用のブロックを搭載したビデオカードを発売していました。しかし、これらの製品は冷却性能こそ高いものの、自分で本格的なDIY水冷システムを組み上げなくてはならないので、導入の敷居が高いというデメリットがありました。

 そこで、今回水冷モデルを出すにあたり目を付けたのがメンテナンスフリーの水冷クーラーです。水冷ヘッドやポンプ、ラジエータが一体型になっていおり、本格的なDIY水冷のように冷却パーツを一つずつ揃えて組む必要がないので、ラジエータの設置場所さえ確保すれば手軽に導入する事ができます。

 また、購入後即使えるタイプのモデルが欲しいという要望もこれまで多く頂いており、冷却性能と扱いやすさを両立するためのベストな選択肢がメンテナンスフリータイプの水冷クーラーだったのです。

――水冷クーラーを発売しているメーカーはたくさんありますが、何故Corsair製のクーラーを採用したのでしょうか。

[Jay氏]メンテナンスフリーの水冷クーラーを黎明期から発売しているCorsairは、水冷クーラーについて多くのノウハウを持っているからです。

――水冷クーラーを搭載するうえでこだわっている部分はありますか。

[Jay氏]カードを設計する我々としてはクーラーの取り付け方法にこだわっています。

 1点目はクーラーのマウント方法です。表面にはメモリやMOSFETも冷却可能な一枚板になったヒートシンク、裏面にはバックプレートを搭載し、基板が歪むことがない設計になっています。こうした構造はGPUコアと水冷ブロックを完全に密着させるためのもので、クーラーの性能を余す事なく発揮できるようこだわった部分です。

 次にこだわったのが水冷チューブの向きです。通常であればカードに対して90°に取り付けられることが多いのですが、ケースへ組み込んだ際の取り回しを容易にするため、あえて角度を付けて取り付けています。

 こうする事でラジエータの取り付けが容易になるだけでなく、チューブに負荷が掛かって壊れてしまうような事も防げます。ホースにはメッシュ加工が施されているので、斜めに取り付けた事と相まって耐久性は抜群です。


側面のロゴは光らせられる
表面の一部はクリアパーツを搭載

――カード側にファンが付いていますが、VRM部分やメモリ部分を冷却するためのものでしょうか。

[Jay氏]はい、メモリチップやVRMなどの発熱があるパーツもきちんと冷却出来るようにファンを搭載しています。

 また、クーラーのカバーにもこだわりがありまして、温まった空気がケース内に排気されないよう密閉性の高いデザインになっており、ブラケット部分からしっかり排熱されるように設計しています。

 ちなみに、性能とはあまり関係のない部分ですが、カバー側面の「msiロゴ」が黄色に光るようになっていたりします(笑)。

――こういうギミックは所有欲が満たされるので、個人的には好きです(笑)。表面のアクリルウィンドウの中は光らないのでしょうか。

[Jay氏]開発段階では発光させようとしたのですが、思ったように綺麗に光らなかったので、製品版では「msiロゴ」のみが光るようにしました。

日本発売モデルその2 プレミアムモデル「GTX 980 Ti GAMING 6G GOLDEN EDITION」ユーザーからの要望も多い銅製ヒートシンククーラーを搭載

「GTX 980 Ti GAMING 6G GOLDEN EDITION」、日本では10月中の発売が計画されている
基本的な仕様はGTX 980 Ti GAMING 6Gがベースになっている

――続いて、同じく東京ゲームショウ2015で公開された「GTX 980 Ti GAMING 6G GOLDEN EDITION」についてですが、このモデルはどういった製品なのでしょうか。

[Jay氏]このモデルは銅製クーラーを搭載した特別なモデルです。これまでも「GOLDEN EDITION」を冠するモデルを販売していますが、今回のモデルはかなり生産数が限られるので、流通量はかなり少量となる見込みです。

――銅製だけあって重量感があり、しっかりしたつくりですね。製品のポジションとしては、どういったユーザー層に向けたモデルになるのでしょうか。

[Jay氏]「GAMING」モデルをベースにしたモデルなので、「OCシリーズ」のようにパフォーマンスを追求したモデルではありませんが、他社にはない製品を求めるユーザーや、MSIブランドを気に入ってくれているユーザーへ向けたモデルとなります。ヒートシンクが全銅製のGeForce GTX 980 Tiはこのモデル以外に存在せず、数も限られるので、プレミア感のあるモデルといえます。

――銅製クーラーが欲しいというユーザーは多いのでしょうか。

[Jay氏]このモデルの前に「GTX 970 GAMING 4G GOLDEN EDITION」を発売したのですが、より上位のGPUで銅製クーラーを搭載したモデルが欲しいといった要望があり、そうしたニーズに応えるべく今回のモデルを用意しました。

 ちなみに、同社初の銅製クーラー搭載モデルは「N465GTX Twin Frozr II GE」なのですが、このモデルの評判がなかなか良く、銅製クーラーを求める声も多かったことから、何か節目となるGPUが登場した際などに銅製クーラー搭載モデルを製造するようにしています。

日本発売モデルその3 エンスージアスト待望の究極OCモデル「GTX 980Ti LIGHTNING」OCのための超高耐久パーツや冷却能力700Wのクーラーを搭載

GTX 980Ti LIGHTNING
リファレンスモデルとの性能比較、大幅にクロックが引き上げられているが、温度・動作音ともにリファレンスよりも低く抑えられている
電源は8ピン×2と6ピン×1を備え、カードスロット側と合算で最大450Wの給電に対応している

――それでは、現在のMSI製ビデオカードでは最高速モデルとなる「GTX 980Ti LIGHTNING」についてお伺いします。

 GTX 780 TiやGTX 980では「LIGHTNING」モデルが発売されなかったので、待っていたファンも多いと思うのですが、まずは製品の特長などをお聞かせ下さい。

[Jay氏]「GTX 980Ti LIGHTNING」は世界記録レベルを塗り替える事を目標に開発された製品です。コアクロックはリファレンス仕様の1,000MHzを大きく上回る1,203MHzまで大幅にオーバークロックされており、ブーストクロックは1,304MHzに達します。

 GTX 980Ti SEA HAWKと同じくメモリもオーバークロックされており、リファレンス仕様の7,000MHzに対して、7,096MHzまでオーバークロックされています。

――メモリもオーバークロックされているのは珍しいですね。ハードウェアの面での特徴は何かありますか。

[Jay氏]オーバークロック耐性を向上させるために、基板の設計にとことんこだわっています。基板のレイヤーを10層にしているだけでなく、GPU用に12フェーズとメモリ用に3フェーズの合計15フェーズのVRMを搭載しています。

 そのため、PCI Express補助電源のコネクタは8ピンが2本と6ピンが1本という仕様になっており、PCI Expressスロット側と合わせると、合計450Wもの給電を可能としています。電源回路の作りはリファレンスデザインとは比べ物にならない位パワフルな仕様です。

 そして品質の要とも言えるコンポーネントには「Military Class4」準拠の物を使用しています。モスフェットには「DrMOS」、チョークコイルには「SFC(スーパーフェライトチョーク)」、コンデンサには「HI-C CAP」と「DARK CAP」が使用されています。軍用製品に求められる基準での耐久性を持っている、現時点では最高レベルのコンポーネント達です。

 世界最速を狙うために、基板の設計もコンポーネントの品質も世界レベルでの戦いに耐えうる高耐久な仕様になっています。


実装パーツは「DrMOS」や「スーパーフェライトチョーク」、「HI-C CAP」など、高耐久性を追求したもの
形状の異なる2種類のブレードを搭載する「Trox Fan」
ヒートシンクは700Wの冷却能力をほこる
側面のLIGHTNINGのロゴは発光機能付きで、好みのカラーやパターンで光らせられる

――ハードウェアの仕様はかなり頼もしいですね。それに伴いクーラーもかなり重厚な物になっているようですが、どのような特徴があるのでしょうか。

[Jay氏]クーラーは3基の90mmファンを備える「Tri Frozr」を採用しています。搭載されているファンはMSI独自の「Trox Fan」です。ファンは2種類のブレードが交互にならぶ構造になっており、空気の拡散性に優れた形状のファンブレードが追加されています。これにより、エアフローを向上させつつも大型ヒートシンクへ満遍なく風を吹き付けられるという特徴があります。アメリカでの厳しい試験に合格し、現地の特許も取得している高性能ファンです。

 ヒートシンクの部分ですが、8mm径のヒートパイプ3本と6mm径のヒートパイプ6本を備える「SuperPipe」構造と、ニッケルメッキ処理がされた銅製ベースの採用で、最大で700Wもの放熱をサポートします。

 クーラーの性能面にもこだわっていますが、こだわりはそれだけではありません。ドレスアップ要素として、LEDライトの色を変更可能な「Mystic Light」機能を搭載しました。クーラー側面の「LIGHTNING」の文字とその周辺を自分の好みのカラーに光らせる事が出来ます。

――「GAMING」シリーズではデュアルファンの「Twin Frozr」が採用されていますが、何故「LIGHTNING」ではトリプルファンを採用したのでしょうか。

[Jay氏]基板のサイズが特に大きい「LIGHTNING」ではデュアルファンではエアフローが不十分だったからです。より効率的に巨大なヒートシンクを冷やすために「Tri Frozr」を採用しました。

「LIGHTNING」は世界記録を狙うためのプロ向けオーバークロック機能も搭載実は「LIGHTNING」になれるGPUは少ない?あまり知られていないGPUの選別の裏話も

「LIGHTNING」に搭載されているOC向けの特殊機能「3×3 OCキット」
液体窒素冷却向けの動作モードも備える
液体窒素冷却時に使用するVRM用のヒートシンク

――「LIGHTNING」ならではの独自機能などがあれば教えてください。

[Jay氏]独自機能としては「3×3 OCキット」という機能を実装しています。

 まずは、ハードウェア面での実装になりますが、基板上に「V-CHECK POINTS」という電圧の測定ポイントを実装しています。付属の測定ケーブルを接続すれば、市販のデジタルマルチメーターを使って、「GPUコア」や「メモリ」、「PLL」などのオーバークロックで重要な3つの電圧を直接測定出来ます。

 ソフトウェアの面では、「AFTERBURNER」による電圧モニタリング機能である「TRIPLE TEMP MONITOR」と電圧設定機能の「TRIPLE OVERVOLTEGE」があります。

 「TRIPLE TEMP MONITOR」では、CPUやメモリに加えて発熱しがちなVRMの温度までモニタリング出来るようになっています。そして「TRIPLE OVERVOLTEGE」機能では、GPUコアやメモリ、PLL(Aux Voltage)などの各種電圧の設定可能です。基板の改造を行わずにソフトウェア上で電圧をコントロール出来るのがポイントです。

 また、「LIGHTNING」はLN2モード(液体窒素冷却モード)に動作を切り替えるスイッチを備えています。

――液体窒素冷却を用いた世界記録レベルの戦いになってくると超高電圧設定が必要になってきますが、そうした設定はユーザーが行うことができるのでしょうか。

[Jay氏]基板上に実装された「LN2 MODE」のスイッチをオンにすればある程度は設定可能ですが、実は安全面を考慮してリミッターが掛かっています。電圧などはソフトウェアの「AFTERBURNER」上から設定可能で、リミッターの範囲内でも、一般のオーバークロッカーであれば十分満足して頂けるはずです。

 なお、リミッターが掛かっていない「極冷OC専用のAFTERBURNER」も用意しているのですが、あまりにも危険な仕様のため、プロのオーバークロッカーにのみ提供しています。

――「極冷OC専用のAFTERBURNER」は提供されるにあたり条件などはあるのでしょうか。

[Jay氏]提供基準ですが、極冷オーバークロックの経験者で、ある程度のスキルがあるという事が大前提です。ランキングの成績や活動実績など示して頂く必要がありますが、MSIには上を目指したいオーバークロッカーをサポートする用意があります。ただ、大々的に募集している類いのものではないので、イベントや展示会の時にこっそりとスタッフに話し掛けて頂ければ……といったところです(笑)。

――ひとつ気になっている事があるのですが、フラッグシップの「LIGHTNING」ともなると。選別されたいわゆる「当たりGPU」が載っているんでしょうか?選別の方法なども気になっていたりします。

[Jay氏]GPUの選別方法ですが、実はNVIDIAからチップを買った時点ではどのチップが良いチップなのかは分かりません。チップを単体でテストする装置もあるのですが、価格が日本円にして100万円程する上、デリケートで壊れやすく、少数のGPUをテストしただけで壊れてしまうこともあります。

 どうやって我々がGPUを選別しているのかというと、実際に製品として完成させてから動作テストを行っています。完成状態で動作テストを行わないと、良いチップなのかどうか判断する事が難しいのです。

――簡単に「選別」といっても実際にはかなり手間の掛かる作業ですね、メモリチップのように完成品になる前に簡単に選別できるものだと思っていました。

[Jay氏]チップ単体で全数チェックなどは行えないので、GPUの耐性は実際にカードになってから判明するといえます。

 なお、選別する際の負荷テストですが、我々が定めた品質基準である「OC Certified」に基づくテストを行っています。テスト内容は、45℃の高温環境下で24時間に渡る負荷テストを行い、厳しいテストをクリアした個体のみが「LIGHTNING」として出荷されているのです。「LIGHTNING」は全数チェックを行っており、クリアした証としてパッケージ内に認定証が同梱されています。

――クリアできなかった個体はどうなるのでしょう。

[Jay氏]超高クロック動作に向かない個体は、下位モデルの「LIGHTNING LE」として出荷されます。コンポーネントの品質は「LIGHTNING」と全く同じなので、耐久性の高いモデルや実装パーツの品質が良いモデルが欲しいという場合には、実はお買い得なモデルだったりします(笑)。

ユーザーのニーズを汲んだ製品開発、性能も品質も一段上を目指すMSI

「LIGHTNING」の設計思想は「BUILT TO BE PERFECT(常に完璧を求めて)」を理念としている
MSI PM DirectorのSam Yang氏

――最後に、今後の製品展開などに関してお伺いさせてください。

 製造技術ではビデオカードの自動生産を成功させているメーカーもありますが、今後製造を自動化する予定はありますか。

[Jay氏]生産の自動化については現在研究中です。ハイエンドカードともなると、基板サイズが大きく実装部品も多いためクリアすべき課題は多く、今すぐに移行する事は出来ないというのが現状です。特に「LIGHTNING」のような特別なモデルの場合は困難になります。

――年末にかけてさらに新モデルの投入なども検討されているのでしょうか。

[Jay氏]開発中の新製品もあるのですが、まだお話出来ないのでごめんなさい……。近々発売される製品は、東京ゲームショウで発表した「GTX 980Ti SEA HAWK」と「GTX 980 Ti GAMING 6G GOLDEN EDITION」の2モデルとなります。

 新しい技術が開発されればそれを取り入れてさらに良いモデルを投入する方針で開発は行っているので、その点は期待してもらえればと思います。

――PC DIY市場の縮小が叫ばれる中、ラインナップを絞る方針を取るメーカーもありますが、なぜ御社は多くのモデルをラインナップするのでしょうか

[Sam氏]ユーザーのニーズに応えるということは、我々が製品を開発する上で重要な要素のひとつです。今回発表した「GTX 980Ti SEA HAWK」も、「GTX 980 Ti GAMING 6G GOLDEN EDITION」も、ユーザーの声から生まれたモデルです。ラインナップが多いというのは、そうしたユーザーの声を大事にした結果でもあります。

 MSIのブランドに対しては、「開発にこだわる」、「高品質な製品を製造する」といったポジティブなイメージを持ってくれているユーザーも多く、我々自身もクリエイティブなメーカーだと思ってもらえるよう、今後も様々な製品を開発していくつもりです。

 他のベンダーとは違ったアプローチを続けていく事でMSI独自のカラーを出していきたいですし、限定モデルを含め、これからも他社とは一味違う製品をユーザーに提供していきたいと考えています。

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[制作協力:MSI]

清水 貴裕