特集、その他
Fallout 4にGTAV、SWBF……、
こだわりの「ハイエンドPCゲーム環境」をフルR.O.G.で作ってみた
text by 石川ひさよし
(2016/1/18 00:01)
「全てR.O.G.」でゴージャスなゲーミングPCを!
今回は初夢気分のゴージャス自作ネタをお届けしよう。
今回目指すのは「R.O.G.」コンセプトのゲーミングPCだ。R.O.G.はRepublic of Gamersの略。ASUSのオーバークロック&ゲーミング向けブランドとして2006年に登場し、2016年で11年目を迎える。今回は、そのR.O.G.ブランドのパーツをふんだんに用い、ザ・ハイエンドというPCを組んでみた。
今回R.O.G.を選んだ理由は、「コンセプト」と「統一感」だ。
自作PCは、その自由度から、様々なメーカーのパーツを組み合わせることも多いが、逆にこれを統一することで、機能やデザインに統一感が出てくる。特に、ASUSの場合、ハイエンドにそびえる「R.O.G.」ブランドで揃えれば、機能もデザインも相当なものとなる。
しかもR.O.G.であれば、マザーボードやビデオカードはもちろん、ディスプレイ、マウスなど、様々なデバイスが用意されており、さらに他社製の「認証パーツ」まで用意されている。
そもそも「R.O.G.」ってなんだっけ?
……といったところで、まずは、「現在のR.O.G.ブランド」の概要を見ていきたい。
基本的なコンセプトとして、「ゲーマーとオーバークロッカー向けに最高級な製品を、そして最先端の機能を備えた製品を」というのがR.O.G.だ。
このコンセプトは当初から揺らぎなく、(実験的なものも含め)様々な機能をいち早く搭載、そして設定なども「最もいじれる」のが特徴。そして、そうした機能のうち、廉価モデルでも搭載できる機能はのちの世代の下位モデルにも新機能として搭載されていく(コストなどの関係で下位モデルに搭載されないものもある)。
さて、R.O.G.ブランドとして最も認知されているのはマザーボードとビデオカードだろう。
ASUSとしてもここが最も力を入れているところであり、歴代のR.O.G.マザーボードは、いずれも当時最先端の機能を満載。トップとなる製品はとんでもなく高価なのが通例だが、その代わりオーバークロックでも、オーディオでも、ネットワークでも「最上級」かつ「最もいじれる」製品だ。
一方、ビデオカードでも、DirectCUIIに代表されるクーラー技術をいち早く採用、冷却性能と静音性を追求したモデルで知られる。とくにオーバークロックという点では、早くより各部の電圧をモニタリングするための計器接続用接点を備えたり、液体窒素冷却用の機能を搭載したりと、先端の機能が魅力だ。
マザーボード、ビデオカードに続くR.O.G.製品がディスプレイだ。
ASUSでは、液晶ディスプレイもかなり幅広く扱っているが、R.O.G.ブランドの液晶ディスプレイは、当然、ゲーミング向けの機能を搭載したモデル。ハイリフレッシュレートは当然として、NVIDIA G-SYNCやAMD FreeSyncなどの機能を搭載したモデルが中心だ。R.O.G.として先端機能を備えるのは当然として、デザインもR.O.G.が意識されており、PC本体とディスプレイで統一感が出せるのもメリットだ。
また、実はR.O.G.ブランドの入力デバイスやペリフェラルも存在する。キーボードやマウスは、クリック感や機能、キー/ボタン配置など、かなり好みに左右される面もあるが、これらもR.O.G.で揃えると、デザイン的には統一感が出るだろう。
こうしたパーツを集めると、PC内外でR.O.G.ブランドでの統一が実現する。
いわゆる「メーカーで揃える」場合はPC内部のみで終わってしまうことが多いが、R.O.G.ならば「目に見えるほぼすべて」を統一できる。ここがR.O.G.ならではの魅力と言えるだろう。
ちなみに、この「R.O.G.」、「R.O.G.認証製品」というカタチでASUS以外のメーカーからも「R.O.G.パーツ」が登場している。今回はそうしたパーツも含め、どこまで追求できるのかを試してみた。
「R.O.G.」で揃えたらこうなった!
今回用意したPCパーツが以下のとおりだ。
CPU | Intel Core i7-6700K | 45,000円前後 |
マザーボード | ASUS MAXIMUS VIII EXTREME | 71,000円前後 |
ビデオカード | ASUS MATRIX-GTX980TI-P-6GD5-GAMING | 120,000円前後 |
ディスプレイ | ASUS ROG SWIFT PG279Q | 120,000円前後 |
メモリ | Avexir RED TESLA AVD4UZ126661508G-2RDROG(DDR4-2666 8GB×2)×2 | 国内未発売 |
CPUクーラー | CRYORIG R1 Universal | 13,000円前後 |
CPUクーラーカバー | CRYORIG CUSTOM MOD COVER RED | 2,000円前後 |
キーボード | ASUS STRIX TACTIC PRO | 13,000円前後 |
マウス | ASUS ROG Gladius | 9,000円前後 |
マウスパッド | ASUS ROG Whetstone | 5,000円前後 |
OS | Microsoft Windows 10 Pro 64bit DSP版 | 21,000円前後 |
SSD | Intel SSD 750 400GB(PCI Expressカード版) | 53,000円前後 |
ケース | CoolerMaster MasterCase Pro 5 | 21,000円前後 |
電源 | CoolerMaster V Series V1200 Platinum | 32,000円前後 |
(1/18 17:20更新)記事初出時、MATRIX-GTX980TI-P-6GD5-GAMINGの市場価格に誤りがありました、お詫びして訂正させていただきます
マザーボード「MAXIMUS VIII EXTREME」
PCパーツの要となるマザーボードは、2015年末に発売されたばかりの「MAXIMUS VIII EXTREME」。
そしていきなり実売価格は70,000円前後。本製品が採用しているチップセットはIntel Z170。Intel Z170搭載マザーボードは、安いものなら1万円台後半から販売されているわけだが、それらとどこが違うのかをかいつまんで説明していこう。
本製品は、現在のR.O.G.マザーボードの最高峰。ゲーミングはもちろん、シビアな動作が要求されるオーバークロック側も重視した構成だ。
その第1のポイントは「OC Panel II」のバンドル。これは、5インチベイに装着、あるいは有線リモコンとして利用できるオーバークロック用操作パネルで、ソフトウェアを介することなくハードウェアを直接制御できる。情報表示では各部の電圧やクロック、温度などに対応しており、業務用計測器で用いられている「Kタイプ」の温度センサー用端子も装備。ファンコンとしても利用可能だ。
このほか、メモリスロットをチャンネル単位で無効化する「DRAM Channelジャンパー」や、検証などのためにCPUクロックを一時的に下げる「Slowモード」、PCI Expressスロットをオン/オフできる「PCIe x16 Laneスイッチ」なども搭載。
さらにオーディオやネットワーク、ストレージやソフトウェアなど、多数の面でR.O.G.ならではの機能を装備。搭載パーツについても通常モデルよりもさらにハイグレードなパーツが利用され、UEFI BIOSでは通常モデルよりもさらに細かい設定が可能となっている。詳細については製品情報を見て欲しいが、価格に相応しいこだわりようが見て取れると思う。
ビデオカード「MATRIX-GTX980TI-P-6GD5-GAMING」
ビデオカードは「MATRIX-GTX980TI-P-6GD5-GAMING」。
NVIDIAのGPUでは上位にTITANシリーズもあるが、そちらは基本的にオリジナルクーラーが許されていないため、R.O.G.シリーズとしての最上位はGeForce GTX 980 Ti搭載モデルのこちらの製品になる。DirectCUIIクーラーに10mm径ヒートパイプを組み合わせ、さらなる冷却性能を狙ったオーバークロックモデルだ。そして、さらなるオーバークロック、いわゆる液体窒素冷却用の特別な機能も搭載している。まあ、一般的な自作で活用する機能ではないが、R.O.G.の目指すところ、ブランドコンセプトとしてのフラグシップである。
液晶ディスプレイ「ROG SWIFT PG279Q」
次のR.O.G.パーツはディスプレイだ。今回用意したのはゲーミング液晶ディスプレイシリーズの製品である「ROG SWIFT PG279Q」。
サイズは27型、解像度は2,560×1,440ドットで、ゲーミングという点でのポイントは、NVIDIA G-SYNCに対応する点と、165Hzというハイリフレッシュレートに対応している点だ。60Hzの製品の倍以上のリフレッシュレートで、これに強力なGPUを組み合わせれば、いわゆるテレビの倍速駆動と同様に、スムーズな描画が得られるとともに、G-SYNCの可変リフレッシュレート機能によってチラつきやテアリングが解消される。
そして、この製品がプレミアなのは、IPSパネルを採用しているところ。
ハイリフレッシュレート液晶ディスプレイは、性格上TNパネルであることが多いがこの製品はIPSであるため、発色もよく、視野角も広い。IPS方式のハイリフレッシュレート液晶、さらに2,560×1,440ドットの高解像度モデルというとまだ選択肢が少ないので、この点でも注目のモデルだ。
入力デバイス「ROG Gladius」「ROG Whetstone」「STRIX TACTIC PRO」
今回のR.O.G.純正パーツの最後は、周辺機器とサプライ。
マウスの「ROG Gladius(P501-1A)」、マウスパッドの「ROG Whetstone(NS01-1A)」だ。これらを組み合わせることで、机の上の入力デバイスでも統一感が出せる。
なお、キーボードに関しては、R.O.G.シリーズではなくASUSの静音ブランド「STRIX」の製品を組み合わせた。R.O.Gの適当な製品が無かったためだが、「STRIX TACTIC PRO」キーボードであれば、ASUS製でもあり、カラーコンセプトの点でもR.O.G.に近いものがある。
メモリ「Avexir RED TESLA」
メモリについては、R.O.G.認証製品のAvexir「RED TESLA」を用意した。
こちらの製品はまだ日本では販売されていないのだが、今回の企画に合わせて取り寄せてみた。R.O.G.認証ということでR.O.G.ロゴもしっかり付いた大型ヒートシンク搭載モデルだ。動作モードはDDR4-2666で、スタンダードなDDR4-2133よりも高クロック動作をサポートしている。
R.O.G.ロゴと、R.O.G.でお馴染みのマヤ文明風のパターンがヒートシンクに刻まれている。DDR4-2666の動作モードで8GB×2枚のデュアルチャネルキットを2つ用意した。
その他のパーツも「R.O.G.のイメージ」で
その他のパーツは、「R.O.G.」のイメージで選んでみた。
まず、CPUクーラーに選んだのはCRYORIG「R1 Universal」。本来ならカバーがホワイトの製品だが、オプションとして用意されている「CUSTOM MOD COVER RED」を使えばカバーがレッドに。組み換えの手間はあるが、カラーリングが統一できる。
そのほかのパーツはさらりと流すが、CPUはMAXIMUS VIII EXTREMEに装着できる最上位のCPUとしてIntel「Core i7-6700K」を、SSDはパフォーマンス志向でPCI Express x4接続のIntel SSD 750を、電源とケースはまずATXサイズのブラックありきでCoolerMasterの「V Series V1200 Platinum」と「MasterCase Pro 5」を、OSは最新版のWindows 10 Pro 64bit版だ。
なお、ケースについては、R.O.G.認証ケースのIN WIN「H-Tower」も揃えたかったところだが、こちらはまだ製品化前であり入手できなかった。
スマホと連動し、電動で開閉するギミックを備えた「よくわからないが凄い」製品だ。スタンダードモデルとブラック/レッドのR.O.G.モデルが展開され、R.O.G.モデルを組み合わせれば、なかなかインパクトのある見た目になる。まあ、一般的な自作PC1台分以上の価格になりそうなのでおいそれと手を出せないが、徹底的にこだわりたい方………というよりも自作猛者と言ったほうがよいだろうか、そうした方はチャレンジしてみて欲しい。
いずれにせよ、こうした「関連パーツ」が他社から出てくるところもR.O.G.の強みだろう。
全部「R.O.G.」なゲーミングPCが完成
というわけで、パーツ選定が終わったわけだが、まずは、そのできあがりと組み立て途中の写真をご覧いただこう。
電源は出力1,200WのV1200 Platinumを用いたが、今回の構成でシングルビデオカードで用いるならば、もう少し出力を抑えてもよい。理想は750W程度だろうか。逆にマルチGPU構成を検討しているのならば1,000W超級が必要となる。将来を見越した構成と捉えてほしい。
今回の構成でひとつ目論見が外れたのは、MAXIMUS VIII EXTREMEの目玉であるOC Panel IIとMasterCase Pro 5との相性だ。MasterCase Pro 5の5インチベイにはツールレス機構が採用されており、これ自体は便利なのだが、残念ながらOC Panel IIの5インチベイアダプタのように奥行きの短いものでは固定できない。このように、購入してみたものの、いざ組み合わせてみると問題が生じることは、自作PCをしていれば度々ぶちあたるもの。そのような場合は解決力が必要だ。今回は「両面テープ」で貼り付けた。粘着力の強い、厚みのあるテープであれば、ちょっとやそっとではグラつかない程度に固定することは可能だ。
ゲーミングパフォーマンスもバッチリ!「G-SYNC対応」がひとつ上の映像を実現する
さて、組み上がったR.O.G.コンセプトPCだが、スペック上、据え置きゲーム機を超えるパフォーマンスが出るのは当然。やはり、「数字で見たい」のが心情だろう。
まず、最初に3DMarkのFire Strikeのスコアを見てみると16,411。世に出回っている3DMarkスコアと見比べれば、すでに十分なゲーミングパフォーマンスであることが分かるだろう。
では実タイトルでのフレームレート計測に移ろう。
用意したのは「Fallout 4」、「Grand Theft Auto V」、そして今が旬の「Star Wars バトルフロント」の3タイトルだ。計測するのは最高画質での2,560×1,440ドット時のフレームレート。
つまり、据え置きゲーム機を超える画質と解像度というPCゲーミングの本髄をしゃぶり尽くそうというわけだ。
Fallout4
まずFallout 4。画質は「Ultra」だ。
Fallout 4は、デフォルトで60fpsのV-Syncがかかっているので、「マイゲーム」内の「Fallout4」フォルダにある「Fallout4.ini」、「Fallout4Prefs.ini」の2つのファイル内で「iPresentInterval」を探し、その値を1から0に変更してV-Syncをオフとした。合わせてNVIDIAの「NVIDIA Control Panel」からも垂直同期(V-Sync)の設定を「オフ」に切り替えておくとよいだろう。また、NVIDIA Control Panelでは、G-SYNCの設定も忘れずに。
Fallout 4の2,560×1,440ドット、Ultra画質でのフレームレートは84.5fpsだった。快適度の目安となる60fpsからさらに上積みできているので、滅多なことでは60fpsを下回ることはない。ハイリフレッシュレートの液晶ディスプレイとG-SYNC機能を十分に活用でき、映像は実になめらかだ。
Grand Theft Auto V
続いて最高画質がFallout 4よりもさらに重いGrand Theft Auto V。
GeForce GTXカードなので、NVIDIA TXAAとNVIDIA PCSSを用いて若干軽くしているが、ほかはすべて最高/ウルトラといった設定にしている。2,560×1,440ドットでもビデオメモリの目安は4281MBとなっているところがポイントで、GeForce GTX 980 Tiの6GBというビデオメモリとその広い帯域が効いてくる。これが足りない場合、ビデオメモリへの負担が重くなり、それ以下の解像度と比べ極端にフレームレートが下がるといったことが起きるわけだ。
Grand Theft Auto Vのビルトインベンチマークのフレームレートは平均50.72304fps。
60fpsには少し及ばなかったが、こうしたフレームレートであってもチラつきなくスムーズに、そして綺麗な描画が得られるのがG-SYNC液晶のメリット。G-SYNCはハイリフレッシュレート液晶が中心なので見逃しがちだが、60fps以下の場合においてスムーズな描画を得られるというのが実は重要なところ。
視力が追いつくフレームレートで、カクつきやテアリングが生じない。これは重要だ。もちろん、FPSタイトルなどで、敵の先手を取るといった状況ではさらにフレームレートが必要で、例えば画質設定を落としたり、あるいはマルチGPU構成をとるといった選択が必要だが、Grand Theft Auto Vに関しては、これで十分に快適なプレイができる。
Star Wars バトルフロント
最後はStar Wars バトルフロント。こちらはプリセットの「最高」を選んでいる。
最高画質におけるグラフィックスへの負荷は、Fallout 4よりも若干軽い印象だ。「トレーニング」におけるフレームレートを計測したところ91.606fpsで、ほかのマップも概ね平均90fps前後だった。
見た目も機能も「魅せるPC」に
組むこと、魅せることが目的の今回の企画。作例を見てどう思うかは読者の方に委ねるとして、組んだ側の感想をいくつかお伝えしておこう。
まず、職業柄、作例というものをよく組むことがあり、もちろんひとつひとつにコンセプトを掲げて組んでいる。ただ、デザインで言えば、今回のようにデスクの上全部を対象としたコンセプトPCというのは初めてだった。当初は、どこまで統一感が出せるのか、ただの黒いケースのPCになりはしないかと心配したが、組み上げてみればケースの前面にもしっかりとR.O.G.ロゴが付き、ディスプレイやマウス、マウスパッドもブラック/レッドで統一され、アクリルパネル仕様のケースからは赤色LEDの光がほのかに光るといった具合で、想像以上の出来栄えだ。
まあ、夢の企画だけあってコストは度外視の構成だが、R.O.G.シリーズとして見ればマザーボードもビデオカードも、いくつかグレードが存在する。もちろんそれらもひとつ上のハイエンドではあるのだが、PCを超えたPCを実現したい方は、今回の作例をベースにアレンジしてみてはいかがだろうか。
[制作協力:ASUS]