今回紹介するパソコンはシャープの「MZ-80B」。「MZ-80K」シリーズの上位機種として1981年4月に発表されたモデルです。
独特の重厚感を持ったシルバーカラーの本体は、キーボード一体型で10インチのグリーンモニタやカセットデッキを内蔵。デザインはMZ-80Kよりも直線的な印象を受けます。
デザインの変更だけではなく、機能面も大幅に強化されており、MZ-80Kにはなかった80桁×25行のテキスト表示や、プログラム制御が可能になったカセットデッキ、別売りオプションでしたが、320×200のドット分解能力を搭載するなど、当時としては憧れの機種でした。
それでは、スペック、外観、内部をご案内しましょう。
iPhone 5(液晶サイズ 4インチ)との比較です。モニタ部分は10インチタブレット相当で、本体重量は約15kgです。キーボードは現在のレイアウトとほぼ変わりませんが、カーソルや挿入、削除などの編集キーが集まった中央部のブロックがありません。 キーボード部です、左SHIFTの上にある「SFTLOCK(SHIFTLOCK)」は、現在のCaps Lockです。GRPH(GRAPH)をロックすると、外字や飾り文字の入力モードに切り替わります。左上にある青いキーはファンクションキーです。右下にあるENT(ENTER)と右SHIFTの上にあるCR(Carriage Return)は、表記は違いますが同等な機能です。 本体に内蔵されたカセットデッキ。記録速度は2,000ビット/秒です。3桁の数字はテープカウンターで、テープを再生すると増加します。この数値を覚えておけば、目的のプログラムが記録されているテープ位置に辿り着くための目安になります(頭出しとも呼ばれます)。MZ-80BではAPSSと呼ばれる、自動頭出し機能が搭載されており、その機能を活用することもできました。 内部へのアクセスは、本体背面にまわり、モニタやカセットデッキが収められている本体上部を跳ね上げて行います。作業中、突然倒れてこないように左にある支持アームを忘れないようにセットします。 内部の様子。左が電源で、現在のATX電源よりも大きい容積です。右上がマザーボード、右下が別売りオプションの拡張I/Oポート「MZ-8BK」です。 上部のモニタ、カセットデッキが収められている上部のユニットは分解、組み立てが困難なため、今回は分解しませんでした。 背面の様子。本体中央付近にある2つのつまみが、音量とモニターの輝度調整つまみです。本体中央右には押しボタンが2つありますが、右側(よく見ると小さな突起がある)はリセットスイッチで、現在のCTRL+ALT+DELと同じです。左側はIPLリセットスイッチで、現在のリセットスイッチと同じです。本体右下にある平らなコネクタはFDD接続用です。 マザーボードです。主に右半分は演算系で、右上がCPU、右下がメインメモリです。写真ではサブボードの32KB分しか写っていないのですが、下に32KB分のメモリが隠れています。一方、左半分は映像系で、左上にはフォントが納められたCG-ROMや文字表示用S-RAM、左下には画面モードの変更や、アドレスが重なっているメインメモリとビデオメモリの切り替えを制御する周辺ICが集まっています。 電源投入直後の様子。BASICなどのシステムプログラムの読み込み以外は何も出来ないIPL(Initial Program Loader)です。ちなみに、フロッピーディスクを搭載していない場合は、「Make ready CMT」という表示になり、キー入力の確認無しにカセットデッキが開きます。 グラフィック用のビデオメモリを搭載したカード「MZ-8BG」です。右にある4つの大きなICで、合計8KBの容量があります。ちなみに、ICは東芝製です。このロゴは懐かしいですね。現在のビデオカードと違い、このカードに描画能力はありません。 グラフィック用のビデオメモリを更に8KB追加する「MZ-8BGK」です、前述の「MZ-8BG」と合わせて搭載します。別途、拡張I/Oポートも必要です。 FDD I/Fカード「MZ-8BFI」です。基板中央の左にある一番大きいICが、主役のFDC(floppy disk controller)である富士通「MB8866」です。接続するFDD「MZ-80BF」はMZ-80B本体よりも2万円ほど高価ですが、当時としては珍しいことではありませんでした。 拡張I/Oポート「MZ-8BK」です。「MZ-8BG」以外の拡張カードを増設する場合は必須です。左下がプリンタI/F、右上は「MZ-8BGK」、右下がFDD I/Fとそれぞれ挿す場所が決まっているので注意が必要です。 MZ-80Bのエンブレムロゴ。1982年11月にMZ-80B2というモデルが発売されましたが、外観は変わらず、エンブレムロゴの文字だけがMZ-80B2に変更されていました。 標準価格
・MZ-80B(本体+キーボード+モニタ) 標準価格:278,000円
・MZ-8BG(グラフィックビデオメモリカード) 標準価格:39,000円
・MZ-8BGK(拡張グラフィックビデオメモリカード) 標準価格:39,000円
・MZ-8BK(拡張I/Oポート) 標準価格:19,800円
・MZ-8BFI(FDD I/Fカード) 標準価格:38,000円
・MZ-80BF(FDD 2ドライブ) 標準価格:298,000円
※当時の物価:はがき 1枚40円(1981/1 ~ 1981/3までは暫定30円)・国鉄(現JR)初乗 110円・タクシー初乗430円
スペック
・CPU:SHARP LH0080A(Zilog Z80A セカンドソース)
・動作周波数:4MHz(0.004GHz)
・メインメモリ:64KB(0.000064GB)
・CPU周辺:SHARP LH0081A(Zilog Z80A-PIO セカンドソース)
・同時発色数:2色
・テキストビデオメモリ:4KB(0.004MB)
・グラフィックビデオメモリ:8KB+8KB(0.016MB) 別売
・解像度:320×200ドット
・サウンド:1音モノラル
・記憶装置:データレコーダ
・記憶メディア:コンパクトカセット
・記憶装置容量/60分テープ装着時:約500KB(2,000ビット/秒)
・表示装置:10インチ内蔵グリーンモニタ
おまけ
残念ながら既に受け付けは終了していますが、6月末頃からシャープのWebサイトで、シャープ復刻ロゴステッカーの応募者全員プレゼントキャンペーンが行われていました。収録されている機種の中には今回のMZ-80Bも入っています。
※7月16日13:30追記。初掲載時に「MZ-8BG」と「MZ-8BGK」の解説が入れ違いになっていたため、修正いたしました。訂正してお詫びいたします。