「店内の書籍を店内で電子書籍化できる」とうたって昨年末に仮オープン、物議を呼んだ「自炊の森」（ブロックD1-[f6]）がシステムを変更、21日（金）に本オープンした。

　新システムのコンセプトは「自炊スペースの時間貸し」という比較的穏当なものになった反面、物議を呼んだ「裁断済み書籍の展示」は、（ショップ側からの位置づけは変わったものの）そのまま継続。そのままサービスインしている。

　なお、オープン初日となった21日（金）は、「厚い専門書などを持ち込んで自炊する方が多かった」（同店）という。

●「自炊スペースの時間貸し」をコンセプトに変更
　店内の書籍展示は継続、利用法は「利用者が判断」

時間貸しされるスキャンコーナー
「裁断サンプル」として展示されている書籍類	「裁断サンプル」として展示されている書籍類
業務用の高速スキャナ。商業マンガ一冊を1分でスキャンできるという。データの持ち帰り用には、メモリーカードリーダーとiPhone/iPadのDockコネクタが用意されている。	業務用の裁断機。裁断場所をmm単位で調整できるという。仕様上、7cmまで裁断できるとか。「前日に書籍を予め送付、スタッフに裁断しておいてもらう」というサービスも実施予定。
糊剥がしのためのアイロンコーナー。「糊が残るぐらいギリギリの裁断もできるように」（同店）とのこと	ショップが用意する簡易スキャンマニュアル

　変更前のシステムは、「（主に店内の書籍を対象に）一冊いくら」という料金でスキャン機材をレンタルする、というものだったが、変更後は単なる「時間単位でのスキャン機材レンタル（15分1,000〜1,500円）」となり、持ち込み書籍を主眼としたものになっている。

　これに合わせて、店内の業務用裁断機を使った裁断サービスも開始（1冊50〜100円）、「持ち込んだ書籍をスムーズに、かつこだわって自炊できる」ことをテーマにしたという（詳細は写真キャプション参照のこと）。

　ただし、仮オープン時に物議を呼んだ、裁断済み書籍の陳列は継続。

　見た目もあまり変化が無いが、ショップ側の位置づけは「店内で電子書籍化できるもの」から「裁断した書籍のサンプル」に変更。利用方法も「電子書籍へのスキャン用」から「どう利用するかは来店者にゆだねる」（同）となり、今後の拡張についても大きくトーンダウンしている（後述）。

　こうした変更の理由として、同店は「（他人の著作物なので）“コピーできる”という許可を我々が出すわけにはいかない」という新しい見解を説明しており、ショップのウリからもこうした文言は消滅。

　ただしその一方、「スキャンブースに持ち込まれる書籍がどのようなものなのかは、僕らとしては関知できない」と説明。また、同店が以前から主張している「自らが購入していない本であっても、それを自分の私的使用の為に複製する行為は合法」という法解釈に変更はないという。

　ショップでは「法律で定められた権利にのっとって、ちゃんと労力を払って私的複製をしたい、という人のためのスペースにしたい」と話しており、スキャンブースは「“コンビニのコピー機”と考えてもらうとわかりやすい」（同店）という。

●今後の書籍展示についてはトーンダウン

　なお、以前は「積極的に拡張していく」という方向で語られていた書籍の展示コーナーだが、現在は「お客さんが“もう要らない”という本を引き取り、追加する可能性はあるが、それ以外は全く未定」（同）とトーンダウン。

　同店では「作家さんと喧嘩するつもりはないので、（現在展示されている書籍などの）権利者さんから連絡があれば、是非話し合いたい」と話しており、商業ベースの出版社や（同人含む）作家などからの連絡を待っているという。なお、ショップによると「今のところどこからも連絡はない」とのこと。

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[撮影協力:自炊の森（ブロックD1-[f6]）]