【 2012年5月22日 】
[不定期連載]PCパーツ最前線:
日本サムスンに聞く「SSDにかけるこだわり」
独自3コアのメリットや、テストコマンドまで使ったチューンなど
Text by 平澤寿康


Samsungの最新SSD、SSD 830。トリプルコアの独自コントローラを搭載、シーケンシャル速度だけでなく、マルチスレッドでの性能の良さや信頼性も売りという。
 正規パッケージ品のラインナップは、容量が64GB/128GB/256GB/512GBの4種類、製品タイプがデスクトップPC向け/ノートPC向け/ベーシックキットの3タイプで、都合11種類
 昨年11月に発売された、Samsung製SSDの最新モデル「Samsung SSD 830」シリーズ。

 パフォーマンスの高さや安定性から海外での評価は高い反面、日本での流通量はこれまで少なく、結果として注目度もあまり高くなかった。しかし、この4月に国内での流通体制が整備、国内サポートが付いた正規パッケージ品が発売された。

 そこで今回、日本サムスンで営業を担当している岡田圭介氏に技術面を含むSSD 830のこだわりや、パッケージ販売の経緯などをうかがった。

 「なぜ3コアなのか」の理由や、テストコマンドまで動員したチューニングなど、非常に興味深い話もおうかがいできたので、ぜひ参考にしてほしい。

 また、SSD 4台を使ったレビューも実施、RAID 0時の特性も簡単に確認している。こちらは4台で2GB/s超え。パフォーマンスを気にする方はこちらも参考にしてほしい。

聞き手:平澤寿康
協力:日本サムスン
実施日:2012年4月26日

 
トリプルコアの独自コントローラを採用
「シーケンシャル」「ランダム」「インターフェイス」の分業でパフォーマンス向上


日本サムスン Memory営業Team 次長 岡田圭介氏
−まず、日本でパッケージ販売を始める経緯を教えて下さい

[岡田氏] SSD 830シリーズは、昨年11月に海外での発売を開始しました。

 日本ではSSDの販売を行う特約代理店として「ITGマーケティング株式会社」という会社を今年3月9日に設立、4月から販売を開始致しました。

 特約代理店を作ったことで、単に販売するだけでなく、日本国内でのサポートなど、しっかりした体制を整える事が出来たと自負しています。ITGマーケティング経由の製品は、保証期間も3年ついておりますし、専用の「サムスンSSDサポートセンター」も用意しています。


−SSD 830シリーズの特徴はどこにありますか?


SSD 830の内部

搭載している独自コントローラ。「インターフェイス制御」「シーケンシャルアクセス」「ランダムアクセス」のそれぞれを担当するコアが用意されている

NANDフラッシュももちろん自社製
[岡田氏] やはり、なんと言っても全て自社で開発、製造しているところです。

 我々はNANDフラッシュ、DRAMのナンバーワンサプライヤーですので、これらのチップは当然、自社のものを利用しています。

 NANDフラッシュは世代が変わったり機能が変わったりしますので、その性能をフルに引き出すにはファームウェアを含めたコントローラ部分が重要になります。つまり、NANDフラッシュの特性を隅々まで知り尽くしたうえで、カスタムにチューニングされたコントローラが不可欠なのです。SSD 830搭載のコントローラはこういった必然性から開発された「NANDフラッシュメーカーが作ったコントローラ」なのです。

 そして、このコントローラは、トリプルコアのコントローラという点が大きな特徴です。

 一般的なSSD向けコントローラは、ホスト側インターフェイスを制御するコアと、NANDフラッシュの制御を行うコアの2つのコアで構成されています。それに対し、SSD 830のコントローラでは、ホスト側インターフェイスを制御するコアと、NANDフラッシュのシーケンシャルアクセス制御用コア、NANDフラッシュのランダムアクセス制御用コアと、3つのコアを用意しました。

 このコアは全てARM9ベースですが、こうした機構で、シーケンシャルアクセスとランダムアクセスをマルチタスクで処理、より高いパフォーマンスを引き出せるようにしています。

−「トリプルコアのメリット」を具体的に教えてください

[岡田氏] SSD 830では、データサイズの小さいものはランダムアクセスと判断、大きいものはシーケンシャルアクセスと判断してハンドリング方法を大きく変えているのですが、その全く異なるオペレーションをディレイなく行えるのが大きな利点です。

 雑誌などで見るSSDのベンチマークはシーケンシャルアクセスのトップスピードだけが注目されがちです。シーケンシャルアクセスは大容量のファイルなどの転送パフォーマンスには優れていますが、PCのユーザーが実際に使う大半のデータはWord、Excel、PowerPointなどのファイルであり、ランダムアクセスでの性能が重要です。

 そこで、サムスンはこういった実使用に重点を置き、デュアルコアでは難しかったランダムアクセスのパフォーマンスをいかに上げるか?という課題解決の為、トリプルコアの仕様に行き着いたわけです。また、このコントローラではデータ転送の際に圧縮をしておりません。つまり、既に圧縮されたMP3、WMV、JPEGなどのマルチメディアファイルでも転送速度が速いというのも他社製品に比べた強みです。

−データサイズでシーケンシャルとランダムを切り分けるのは単純そうですが、それで大丈夫なものなのですか?

[岡田氏] 大きいサイズのアクセスは、コマンドキューイングのオペレーションが頻繁に発生しますので、単純にデータサイズというわけでもないのですが、切り分ける部分も含めて独自アルゴリズムで処理し、また、そのように単純にわけてもパフォーマンスを維持できるようにしています。

 具体的な動作例としては、データを書き込む際、大きいデータサイズが来た場合には、例えばブロック丸ごとを1つの目的としてアサイン、小さいデータサイズが来た場合には、単位をより小さく、ブロックからページに落とし込む、といったイメージでしょうか。

−そもそも「ランダムの処理が重い」というのはどういう理由からなのでしょうか?

[岡田氏] NANDフラッシュの書き込み単位である「ページサイズ」は8Kバイトですが、Windowsでいちばん多い書き込みサイズは4Kバイトです。

 8Kバイトの部分に4Kバイトのデータを書き込む場合には、NANDフラッシュは上書きができないので、4Kバイトが不必要な部分として残ってしまいます。最終的には、違うページに書かれたデータを合わせて完全に1つのページとして埋めきるとという処理を行います。これはユーザー環境からすると不必要なオペレーションですので、処理が重い、ということにつながってしまいます。

−PCやサーバーなど、利用形態によってアクセスパターンは大きく変わると思いますが、SSD 830シリーズはどういった利用形態をメインターゲットにしているのですか?

[岡田氏] それは一般のPCです。我々はエンタープライズ向けの製品も扱っていますが、そちらは異なるファームウェアや異なるコントローラを採用しています。

 
テストコマンドまで縦横に駆使
信頼性やパフォーマンスを引き出す

−データをどのように処理するかという点だけではなくて、NANDフラッシュの特徴に合わせた特別な仕組みのようなものも搭載されていたりしますか?

[岡田氏] SSD 830で採用しているNANDフラッシュは、DRAMのDDRメモリのように1クロックで2つのデータを出し入れできるというスペックのものです。

 また、NANDフラッシュで最も重要なのは信頼性ですが、実はNANDメーカーしか持ち得ないコマンドというものが存在していて、そういったコマンドを使って信頼性を高める仕組みをコントローラやソフトウェアで実現しています。

−ということは、NANDフラッシュを作っているので、NANDフラッシュの特性を全てわかっていて、その特性に対してもコントローラが完ぺきに対応できるというところが、他社に対する大きな強みになるわけですね。

[岡田氏] そうですね。パフォーマンスに関しては、ハードウェアでできるだけオートメーション化した方が速いに決まっていますよね。ですからハードウェアに落とし込める部分は極力ハードウェアに入れ込んでいます。NANDフラッシュは現在は2x nmプロセスです。今後は1x nmやさらに微細化が進んで進化していきますが、それらの情報もいち早く入手できますし、他社には公開していない非公開コマンドの情報も活用しています。

 現在だけでなく、将来も見据えたうえで、様々な機能をハードウェアに落とし込んでいけるという点は、我々サムスンにしかない非常に大きな強みです。

 他社さんのSSDでは、汎用コントローラを使い、NANDフラッシュも複数のメーカーから調達する、ということになると思いますが、NANDフラッシュに対して最適化するにはファームウェアで対処することになりますので、どうしても処理が重くなります。

 逆に言えば、我々のコントローラは我々のNANDフラッシュに対してしか対応していませんので、他社のNANDフラッシュと組み合わせる場合にはファームウェアを作り直さないといけません。ただし、コントローラを外販するつもりは一切ありません。

−その非公開コマンドというのは、どのようなコマンドなのですか?

[岡田氏] ほとんどがテスト用のコマンドです。我々がNANDフラッシュの出荷テストなどを行う場合に、普段見えない部分をレポートするようなコマンドがたくさんあります。

 他にも、データ保護/回復に使える様々なコマンドがありますし、実はパフォーマンスにも関わります。

−そういったコマンドが他社でも使えると便利そうですが、公開していない理由はあるのでしょうか?

[岡田氏] 本来、テストモードは、テストをいかに効率的に行うかというもので、設計情報などに関わる内容です。センシングのばらつきやセルの状態などを全て見られる状態になるので。

 そうした情報は、普通にNANDフラッシュを使ったデバイスを作る場合は必要ありませんし、我々の設計ノウハウですので外には出さないわけです。

−ちなみに、このコントローラはサムスン製コントローラとして何代目になりますか?

[岡田氏] 6代目です。1代目は、6x nmプロセスのNANDフラッシュを採用していた頃で、2005年か2006年頃ですね。

 当時からSSDは発売していますが、過去、他社製コントローラを使ったことはありません。



搭載DRAMもSamsung製。これも専用パッケージ品
−もしかして、キャッシュ用のDRAMも何らかのカスタマイズが施されていたりしますか?(笑

[岡田氏] DRAMも独自のパッケージを採用しています。現在は1.8VのDDR2を利用していますが、将来は省電力メモリのモバイルDRAMを採用していくことになるでしょう。とにかく、全て自社で開発していますので、対応の時間も速いんですね。開発コストを下げるという意味もありますし、今後も全て自社開発でやっていきます。

 あと、これまでコントローラの話が中心でしたが、我々はNANDフラッシュの性能にも自信を持っています。いちばんの競争力の源泉はNANDフラッシュにあります。いいNANDフラッシュを持っているので、コントローラもいいものを作って製品にすることで、NANDフラッシュメーカーの強みが出せるわけです。

−では、サムスンのNANDフラッシュの強みのポイントはどこでしょうか。

[岡田氏] まずはプロセスの微細化が早いところですね。次に品質です。

 SSD 830採用のNANDフラッシュはウエハー処理からパッケージング、組立、テストまでの全工程を全て自社工場内で完結することで品質を高めています。

 これにより、NANDフラッシュ単体で高い信頼性を出しています。また、パフォーマンスに関しては、トグルモードというDDRメモリのようなアクセス方法を実現しています。今後もさらにSSDのパフォーマンスを高めるために考えられた設計を追求していきます。

−NANDフラッシュの微細化が進むと信頼性の問題が出てくると思いますが、そのあたりの対策はどうなっているのでしょうか。

[岡田氏] 微細化を進めていくと、NANDフラッシュ単品ではどうしても信頼性は落ちていきますが、それをコントローラでフォローし、SSD全体の信頼性は変えない、というのが基本戦略です。これによって、信頼性を保ちつつ微細化も進めていくことになります。


 
サポート体制や見た目にもこだわり
Norton Ghost付属モデルも用意


ノートPC向けキットにはNorton Ghost 15のフルバージョンが付属

ITGマーケティング経由を示す表示。国内の電話サポートセンターも開設されている。
−他にも特徴はありますか?

[岡田氏] こういった独自のコントローラを使う部分はもちろん大きな特徴ですが、製品パッケージとしても特徴があります。

 例えばデスクトップパソコン用やノートパソコン用のキット製品にはNorton Ghost 15のフルバージョンが添付されています。フルバージョンですから、単なるデータのマイグレーション用としてだけでなく、交換後にバックアップ用途にも活用できます。また、取り外したHDDを外付けで利用できるUSB変換ケーブルも付属(ノートパソコン用キット)しています。そういった意味で、キット製品は非常にお買い得となっています。

−ソフトウェアといえば独自のユーティリティソフト「Magician Software」も付属していますね。こういったツールの付属も大きなセールスポイントになりますね。

[岡田氏] その通りです。

 「Magician Software」はSSD 830専用に開発されたソフトウエアで、トリムやガベージコレクションを実行することでSSD 830のパフォーマンスを最適化する機能や、安全で完全なデータ消去、ディスクパーティションの再設定、ファームウエアのアップデートなどSSD 830のパフォーマンスをきめ細かくコントロールできる統合ソフトウエアです。もちろん、日本語マニュアルも入っています。

 また、もうひとつ大事なのが、日本で売る以上、日本人による日本語でのサポートが非常に重要だということです。そこで、日本での修理やサポートのための「サムスンSSDサポートセンター」を日本国内に開設しました。当然日本人による日本語での対応です。アーリーアダプタの方々は、本体さえあれば自分で何とかするという方が多いかと思いますが、これからコモディティ化が進んでいく過程では、このような日本語パッケージで日本語のサポートなど、お客様に安心してお使いいただけるサービスの提供が重要であると考えています。

−SSD 830は本体の厚さが7mmとなっていますが、これはやはり薄型ノートへの対応を意識してのものですか?

[岡田氏] その通りです。今回のシリーズから、2.5インチのものは7mm厚以外は作っていません。

 ノートが薄型になっていくということで、今後は9.5mmのものの需要はほぼなくなっていくだろうと思っています。HDDも1プラッターですでに7mmに対応していますし、Ultrabookなどの薄型ノートへの対応も考えて7mmのみとしました。デスクトップパソコン用キットには3.5インチ用のマウンタが付いていますし、ノートパソコン用キットには厚さを9.5mmにするスペーサーが付いていますので、サイズが問題になることはないはずです。

−デザインもなかなかかっこいいですよね。


表面にはヘアライン加工が施されている

裏面

側面にもデザインが入っている
[岡田氏] 我々は外観にもこだわっています。

 単体で見ばえのするデザインですし、ノートパソコン用キットのSATA-USBケーブルを接続すれば、そのまま外付けSSDとして格好良くお使いいただけます。

−ボディはアルミですよね?

[岡田氏] B2B OEM様向けのものは、片側がプラスチックでもう一方はアルミです。基板の実装は片面のみですので、アルミの方に放熱するような形になっています。

−熱に関してはどうでしょうか?

[岡田氏] もちろん、発熱は低ければ低いほどいいんですが、速度が速いと言うことは、その時の消費電力は高いと言うことになります。

 速度が速いのでオペレーションは一瞬なのですが、その瞬間の発熱は大きくなるので、その熱は逃がしてやる必要はあります。

−PCショップの方に聞くと、「SSD 830は相性によるトラブルがほとんどない」と聞きますが…

[岡田氏] 我々のラボでは全世界のPCを常に200台ほど揃えていまして、その全てでテスト、1台でも問題が発生したら改善します。

 事前に問題があるかどうか検証していますので、相性問題が少ないんだと思います。また、OEMメーカー様をずっとやってきて、実際にたくさんのメーカーに採用されているということも、互換性の高さがあるからだと思います。


 
付加価値を高めブランドを育てたい

−将来の展開についてはいかがでしょうか?

[岡田氏] 現在は2x nmプロセスのNANDフラッシュメモリですが、将来は1x nm世代の製品が出てきます。当然将来はそういった微細化したNANDフラッシュメモリを採用した製品が登場してくることになります。今後も我々は自社のコントローラと自社のNANDフラッシュを使って作り込みをしていく予定です。

 また、インターフェイスもSATAだけではなくてPCI Expressなどいろいろなインターフェイスを採用していく可能性もありますし、もちろん将来は新しいインターフェースも出てくるでしょう。そういった部分にも対応していく必要があります。

−インターフェイスに関しては、SSDの速度はそろそろSATA 3の上限に近付きつつありますよね。

[岡田氏] SASは12Gbpsの規格化が終わったんですが、SATAは次がないんですよね。SATA 3.2でSATAポート2つをつなげて速度を2倍にしようという話もあるようですが、それはちょっとないですよね。ですから、次のターゲットはPCI Expressになると思います。

 今、NANDフラッシュチップ単体でリード最大180MB/秒ぐらいの速度が引き出せます。それを8チャンネルパラレルで動作させることを考えると、現在でもSATA 3の6Gbpsという速度はNANDフラッシュの性能を半分以下で止めているようなものなのです。

−最近はmSATAタイプのSSDも増えていますが、そちらも予定はありますか?

[岡田氏] すでに我々もmSATAタイプのSSDを生産していますし、B2B OEMでは供給していますので考えています。ただ、取り扱いが難しいので、店頭で販売するのは難しいのではないかと思っています。例えば、「mSATAタイプのSSDを搭載しているノートPCをお持ちいただき、換装してお渡しする」というような方法は考えられると思いますので、市場が盛り上がってくれば考えたいと思っています。

−これまで日本で販売しなかったのが逆に不思議に思っていましたが。

[岡田氏] 正直、アーリーアダプタだけの市場で終わりそうならば、参入しなかったと思います。しかし、これからは、ニッチからメジャー、メインストリームへと伸びていくでしょう。

 今年後半はWindows 8が控えていますし、Ultrabookもありますので、HDDからSSDへ一気にシフトすると考えています。これからの市場の成長に期待しています。

−実際に販社を設立して、手応えはいかがですか?

[岡田氏] すでに並行輸入品も販売されていましたが、ショップの方からは「やっと来たな」という多くの歓迎の声を頂きました。

 SSD 830がいいのは知っていても、並行輸入品なので入荷しにくかったり、保証がないので勧めにくいというのが実情だったそうです。サポートや流通がしっかりすることで、やっとお勧めできるとおっしゃっていました。

−最後に一言お願いします。

[岡田氏] 我々は、パフォーマンスやサポートなどを含めて、「ブランドを育てていきたい」と思っています。

 ハードウェアについてはこれまでお話しした通り、自信を持っておりますし、ローカルなサポートも日本では大事ですので、我々日本サムスンが独自に日本語のサービスセンターを作り、特約代理店も立ち上げました。

 これからも、店頭プロモーションやキャンペーンなども積極的に行っていき、サムスンならではの付加価値の提供とブランドを育てるようなマーケティング活動をしていきたいと思います。

 今後とも、よろしくお願いいたします。


 
RAID 0を組むとどうなるか?
台数増加で素直な伸び、4台ならば2GB/s超

 今回、インタビューのついでに256GBモデルを4台お借りできたので、RAIDカードを使ってRAID 0を構成、どれだけの速度が発揮されるのか検証してみた。

 用意したRAIDカードは、LSI製のRAIDカード「LSI MegaRAID SAS 9265 8i」だ。SATA 6Gbps対応のSATA/SASポートを8ポート備えるPCI Express x8仕様のRAIDカードで、SSD 830を4台接続、RAID 0で動作させても、最大限の速度を引き出せるものと思われる。このRAIDカードに、SSD 830を2台、3台、4台接続してRAID 0構成で動作させ、それぞれの状態でCrystalDiskMark v3.0.1bを利用して速度を計測した。また、1台での速度は、マザーボードのSATA 6Gbpsポートに接続した状態で計測した。実際のテスト環境は下にまとめたとおりだ。

 ちなみに、SSD 830シリーズの詳しい仕様や単体の性能などに関しては、PC Watchで掲載しているレビューを参照してもらいたい。


●テスト環境
CPU:Core i7-3770K
マザーボード:Intel DZ77GA-70K
メモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2
グラフィック:HD Graphics 4000(CPU内蔵)
OS導入用SSD:Intel SSD 520 240GB
OS:Windows 7 Professional SP1 64bit

【ベンチマーク結果】

4台

3台

2台

1台
 結果を見ると、2台、3台、4台と増えるに従い、シーケンシャルリード、シーケンシャルライトともほぼ2倍、3倍、4倍と向上している。RAID 0では、ほぼリニアに速度が向上していくと考えてよさそうだ。

 それに対しランダムアクセス速度は、ほとんどの結果でそれほど向上していない。しかし、512KBのランダムライト速度は台数が増えるに従って速度が大きく向上しており、ランダムアクセス速度にも恩恵はありそうだ。

 ちなみに、テスト中に動作が不安定になったり、台数が増えると正常に認識しなかったりといたトラブルは皆無であった。これは、相性問題が少なく、どういった環境でもしっかりパフォーマンスが発揮されるという特徴があるからだろう。


 

【0 Fill設定でのベンチマーク結果】

4台

3台

2台

1台

 また、SSD 830はデータの圧縮・非圧縮に関係なく常に安定した速度が発揮されるという点も特徴だ。

 先に紹介したデータはテストデータが「ランダム」での結果だが、念のためテストデータを「0 Fill」に設定した状態でも計測してみた。結果はほぼ同等で、データの性質に関係なく速度が発揮されることがわかる。

 PC Watchで詳細レビューした単体利用時はもちろん、RAID環境でも安定して高速な速度が発揮されるSSDと言えるだろう。


□日本サムスン
http://japan.samsung.com/#SAMSUNG
□ITGマーケティング
http://www.itgm.co.jp/

□SSD 830
http://japan.samsung.com/consumer/computersperipherals/ssd/ssd/
http://www.itgm.co.jp/product/ssd830/

□MegaRAID SAS 9265-8i(LSI)
http://www.lsi.com/products/storagecomponents/Pages/MegaRAIDSAS9265-8i.aspx

□関連記事
【2012年4月13日】 Samsung「830」シリーズ 〜Samsung独自コントローラ採用の高速SSD
(PC Watch/平澤寿康の周辺機器レビュー)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hirasawa/20120413_525891.html
【2011年11月12日】SAMSUNG初の6Gbps SSD登場、3コアの独自コントローラ搭載
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20111112/etc_samsung.html
【2011年11月12日】現行最速クラスのRAIDカード「LSI MegaRAID SAS 9265-8i」を試す
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20111112/sp_lsi0.html

SAMSUNG SSD 830

※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。