1999年4月3日号

新たなx86互換CPU「Rise mP6 266」の販売スタート
形状がユニーク、実クロックは200MHzで価格は5,800円

mP6 266(表)mP6 266(裏)
【mP6 266(表)】【mP6 266(裏)】
価格表mP6と黄金戦士
【価格表】【mP6と黄金戦士】
黄金戦士(表)黄金戦士(裏)
【黄金戦士(表)】【黄金戦士(裏)】

 まったく新しいx86互換CPUがアキバに出現。Rise Technologyが独自設計したSocket 7用の新型CPU「mP6」が何の前触れもなく販売開始となり、100MHz×2=200MHzで動作する「mP6 266」に実売価格5,800円という初値がついている。ただし、販売していたのは確認できた範囲でBLESSパソコンCity支店の2店のみで、それも3日(土)までにはすべて完売してしまったため、現時点ではすでに入手不可の状況になっている。両店とも再入荷の予定はあるそうで、BLESSでは来週末にも再入荷する予定としている。

設計がユニーク

 このmP6は、メインフレーム(大型汎用コンピューター)を開発していたAmdahl社の元技術者らが中心となって開発した新しいCPUで、そのユニークな設計で注目されている。低消費電力かつ低クロックで動作しながら、高い性能を発揮するというのが特徴で、実クロックが200MHzでありながらPR値は「266」と1.33倍も高い値が設定されている。x86命令を最大で3つ同時にデコードし、実行ユニットも整数演算とMMXユニットが3個、浮動小数点演算ユニットが2個など比較的多く用意され、高い確率で並列に命令を実行できるように設計されている。スペック上では、パイプラインの段数が6段と少なく、アウトオブオーダー機能もなく、複数用意された実行ユニットもそれぞれフル機能を持たずに役割分担させるかたちになっているなど、省略されているようにみえる部分もあるが、Riseはこれも最適なパフォーマンスをえるためにあえて選択したものだと説明している。

 このような特異な設計内容であるため、使い方によって向き不向きがはっきりでてくるものと考えられるが、今のところ実績がないだけに、具体的にどんな用途でどれだけの性能を発揮するのかはまだ未知数。これに関しては、RiseがCOMDEXでmP6 266(200MHz)を使ってソフトDVDのスムーズな再生をデモし、「IntelやAMDでは300MHzが必要だ」とコメントしたことなどが一つのヒントになりそうだ。

 なお、mP6には今回販売された100MHz×2=200MHzの266以外に、95MHz×2=190MHzの233と、83MHz×2=166MHzの166というモデルもある。電圧は、I/O電圧が3.3V、コア電圧が2.8V。

形状はまるで「黄金戦士」2号

 設計がユニークなmP6だが、見た目の形状もかなりユニーク。本体そのものはビデオチップやマザーボードのチップセットによくみられるBGAパッケージで、これはこれでCPUとしては珍しいのだが、さらにSocket 7に対応させるため、それをそのままSocket 7用信号ピンがついた基板の上に実装するかたちをとっている。これは、'98年6月に台湾で販売されているのが確認された「黄金戦士」を彷彿とさせる形状と言える。黄金戦士はノートPC用に製造されたTCPパッケージのMMX Pentium 200MHzを、やはりSocket 7用のピンがついた基板に実装した改造CPUで、その当時3,000元~3,500元程度で売られていた(その後、アキバでも17,800円で少量限定販売された)。ただし、黄金戦士はいかにも手作りの印象がぬぐえないやや不細工な面持ちだったが、mP6は綺麗に加工され、どこか美しい印象さえ残る仕上がりになっている。

 また、データシートを見ると、さらにユニークな点があることがわかる。どういうつもりなのか、CPU IDでベンダーコードを取得すると「RiseRiseRise」と、メーカー名を3回つなげたデータが返ってくることになっている。

人柱用には魅力たっぷり

 今のところ、mP6は完全に人柱用のようだ。BLESSのテストによると、Riseが公開している動作テスト済みマザーボードのいくつかで試したところ、なかなか安定した環境が得られず、同店がテストしたマザーボードの中では、唯一FIC VA-503+(PCB1.2Aと最新BIOS)のみがWindows 98で安定動作したとのこと(ただし、これはあくまでも内部的なテスト結果で、mP6の販売においてショップ側が動作保証しているものではない)。もちろん、今後のBIOSの更新などで状況は変わると考えられるが、今はさまざまな環境でイレギュラーな現象が発生することは想像に難くない。

 ただし価格が安いため、このあたりをよく理解した人柱志願の人にはもってこいのCPUと言えそうだ。実績がなく、海外でもほとんどテスト事例がない新しいCPUというのは、チャレンジ精神旺盛な人柱達にはこれ以上ない魅力的なモノに違いない。

 それにしても、海外ですら販売実績がないmP6が真っ先にこのアキバに現れ、そしてすぐに売れてしまったというのだから、これはいかにも世界のテストマーケット「アキバ」を象徴する出来事ではないか。約6,000円でまったく新しい設計のCPUが今すぐ試せるというのだから、この街は恐ろしい。おそらく、来週にも再入荷するというmP6も、またすぐに売り切れてしまうに違いない。

□mP6(Rise Technology)
http://www.rise.com/products_frame.html
【'98/6/6】ビックリ仰天!? 光華商場では謎のCPU「黄金戦士」も販売中
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/980606/taipei98.html
【'98/6/27】「黄金戦士」が5個限定で販売される
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/980627/etc.html#gold

[撮影協力:BLESSパソコンCity支店]


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